■ ポータブルプレーヤーの中心は携帯に? iPodを始めとするポータブルオーディオの普及や、PSPやニンテンドーDSなどの携帯ゲーム機によるビデオ対応などにより、「いつでも、どこでも」オーディオ/ビデオを楽しめる機器が増加している。 しかし、携帯端末の王様と言えば、なんといっても携帯電話。ひところからオーディオ機能を強化した携帯電話や、テレビ機能を搭載した携帯電話が発売されてきたが、auはテレビ視聴と番組BGMダウンロードサービスなどを組み合わせた新サービス「EZテレビ」を6月中旬より開始した。
EZテレビは、地上アナログ放送と通信機能を組み合わせたサービスで、テレビを視聴しながら、放送中の番組を録画できるほか、放送局の協力により番組に関連した情報が表示される「お知らせウィンドウ」や、EPG番組検索機能なども備えている。また、楽曲検索サービス「聴かせて検索」と連動して、番組BGMなどの「着うたフル」、「着うた」ダウンロードも可能となっている。 「W32SA」は、このEZテレビにフル対応した携帯電話。今回はこのW32SAのAV機能の使い勝手を検証した。なお、AV機能以外の詳細なレポートは僚誌ケータイWatchで予定している。
■ ステレオスピーカーなどを搭載
外形寸法は50×28×103mm(幅×奥行き×高さ)、重さは129g。個人的には、現在利用している「A5505SA」とほぼ同サイズなので、違和感はない。ボディカラーは、ボディカラーはレイヤードオレンジ/デュアルブラウン/グルービングシルバーの3色が用意される。 液晶は240×320ドットの2.3インチ/26万色表示のTFT液晶で、オートフォーカス機能付きの126万画素CCDカメラを装備。QRコードの読み取りにも対応する。操作キー配列は、オーソドックスで、上部にセンターキーと4つの操作ボタンなどを装備している。 アンテナは、テレビ、FMチューナ兼用として伸縮式を搭載し、EZwebや通話用のアンテナは内蔵型となっている。上ブタの上部に赤外線ポートも備えている。端末の向かって左側には外部接続端子、右側にはminiSDカードスロットや、シャッターボタン、マナーボタン、イヤホン端子を備えている。イヤフォン端子は平型の携帯電話用のもののため、ステレオミニのヘッドフォンとは付属の平型変換アダプタを介して接続する。
■ ユニークなEZテレビ。比較的安定した放送受信が可能
まずは、新たに搭載したテレビ機能を利用してみよう。本体のメインメニュー[EZテレビ]を選択。もしくは、EZアプリのメインメニューを立ち上げると、「EZテレビ」、「聴かせて検索」、「安心ナビ位置確認」、「EZナビアプリ」などのEZアプリの選択画面が現れ、ここでEZテレビを選択すれば、テレビ視聴が可能となる。 EZテレビは、地上アナログテレビ放送と通信機能を組み合わせたサービスで、テレビを視聴しながら、放送中の番組を録画できるほか、番組に関連した情報が表示される「お知らせウィンドウ」や、EPG番組検索機能なども備えている。 チャンネル設定は地域選択方式。約6~7秒程度で起動して、テレビ画面が出画される。液晶下部には「お知らせウィンドウ」を備え、放送局からの告知情報が表示される。
操作はシンプルで、センターキーの左右でチャンネル切り替え、上下でボリューム操作。また、チャンネル切り替えは、0~9までのダイヤルキーでも可能。右上の操作ボタンを呼び出して、メニューを呼び出して、録画や、スピーカー/イヤフォン切替、設定、曲名選択などが行える。 画質は受信環境にかなり依存するが、液晶品質としてはNHJの腕時計型ポータブルテレビ「VTV-101」よりもかなり上。受信状態が良ければ、解像感が高く、精細なテレビ放送を楽しむことができる。ベストなのは遮蔽物の少ない屋外の日陰。直射日光の当たる環境などではさすがに視認性は悪くなってしまう。
室内ではやや砂嵐が混じるものの、窓から離れなければ番組を楽しめるクオリティは維持できる。また、画像の乱れが多いチャンネルでも、音声はさほど乱れないので、何が放送されているのか、ということは十分わかる。 解像度がQVGAと高いこともあり、映画の字幕やバラエティの字幕に加え、時刻表示などもしっかりと視認できる。また、視聴中に、通話ボタン(ペアボタン)を押すと、通常の縦位置から横位置での全画面表示に切り替わる。大人数で見たり、より大きな画面で見たいときはこちらを利用したほうがより楽しめるだろう。 ディスプレイ下部の[番組情報]で、テレビ番組の情報を確認できるほか、番組表から、各チャンネルの放送予定を確認できる。また、番組表からスケジュール設定を行なうことで、番組の視聴予約が可能。オプションの「デラックスメニュー(315円)」を申し込むと、DIGAやRDシリーズの対応機種を利用した遠隔予約も行なえる。 さらにテレビ録画機能も搭載。メニューから、[録画]を選択すると、録画画面が立ち上がる。記録解像度は240×320ドットもしくは180×240ドットを選択できる。また、テレビ録画中の静止画キャプチャにも対応し、最大9枚まででのキャプチャが行なえる。
動画はデータフォルダのEZムービーフォルダに保存され、SDメモリーカードに保存することはできない。著作権保護のため、外部機器へのコピーや移動もできない。メインメニューでは[ビデオプレーヤー]という項目もあるが、ビデオプレーヤーからは録画したテレビ放送データにアクセスすることはできず、データフォルダからアクセスして視聴する。
録画ファイルの再生もなめらかで、解像度240×320ドットの場合、録画時の受信環境が良ければ、放送と遜色ないクオリティを維持できる。センターキーを押し込むことで再生開始、センターキーの上下で音量調整、左を押し込むと頭出し、左右を1秒以上長押しすると、早送り/巻き戻しとなる。 また、240×320ドットの映像の場合、デフォルトで横表示、180×240ドットの場合、縦表示となるのだが、[0]キーで表示方式の変更が可能。また、[*]ボタンで前のデータへ、[#]ボタンで次のデータへスキップする。取扱説明書を見るまでは、次のデータスキップの仕方がわからなかったが、一度操作キーさえ覚えてしまえば、スムーズに操作できる。
また、EZテレビを一時停止しながら、音声をBGMとして聴く機能も搭載。テレビ画面で電源ボタンを押して、中断を選択すると、アプリ自体は一時停止するが、音声は引き続き聞くことができる。これがなかなか便利で、ラジオ的に利用できるのが案外面白い。 なお、EZテレビ機能は、バッテリの残量が残り一目盛りになると利用不可となる。待受/通話できなくては、携帯電話としての本分を果たせない訳で、ユーザーのための配慮と言うことだろう。 待ち受け時間は約250時間で、連続通話時間は約200分だが、EZテレビでは駆動時間がもう少し短くなる。ほぼ満充電状態から、20分番組をQVGA録画して、その番組を再生し終えたころに一目盛り減ったが、録画を行なわなければ、より長時間の視聴が可能と思われる。 また、楽曲検索サービス「聴かせて検索」と連動して、番組BGMなどの「着うたフル」、「着うた」ダウンロードも可能となっている。
■ かなり使えるビデオプレーヤー機能
SD-Video(ASF形式)でminiSDカードに記録した映像を再生できる「ビデオプレーヤー」機能も搭載している。対応形式がSD-Videoというのもなかなか嬉しいところ。パナソニックのDIGA DMR-E500HやPDP/液晶テレビ「VIERA」の新モデルで搭載しているSD-Video録画機能などを使って録画したSDカードの再生が可能だ。 また、テレビキャプチャカードやビデオ編集ソフトでもSD-Videoの作成機能を搭載している製品が多いため、これらの機能を使って録画したSD-VideoデータがW32SAで再生できるのは大きなメリットだろう。 対応ファイルとしては、ビデオコーデックがMPEG-4で、オーディオコーデックはG.726。解像度がQVGA(320×240ドット)/QCIF(176×144ドット)/Sub-QCIF(128×96ドット)の3種類で、ビットレートはビデオが最大384kbps、オーディオが最大32kbps。フレームレートは最大15fps。 早速、DMR-E500Hで作成したデータをテストしたところ、「エクストラファイン(320×240ドット/30fps)」や、320×240ドット/15fpsでビットレートが高い「スーパーファイン」など動作条件を満たさないファイルは再生できなかったが、それ以外のファイン、ノーマル、エコノミーのファイルが再生できた。 再生操作としては、基本的に本体で録画した場合と共通。また、音声出力は本体スピーカーもしくはヘッドフォンに加え、FMトランスミッタも選択でき、カーオーディオのFMラジオなどから音声を出力することも可能となっている。 SD-Video録画対応機器を持っている場合はほとんど問題ないと思うが、パソコンで作ったファイルをminiSDに転送する際には注意が必要だ。というのもファイルの転送フォルダ名が決まっており、再生したいSD-Videoは、ROOTフォルダ以下に[SD-Video]フォルダを作成し、サブフォルダ名を[PRLxxx]、ファイル名を[MOLxxx]と指定する必要がある([xxx]は000を除いた0~9、A~Fの半角英数字)。 とはいえ、SD-Video対応機器を持っている人には非常に嬉しい機能だろう。逆に、W32SAのユーザーにとっては、レコーダやテレビ選びの一要素としてSD-Video対応を考えてもいいかもしれない。気になるのはバッテリ駆動時間だが、オプションのバッテリも「32SAUAA」も3,465円で販売されている。 また、テレビ関連機能としては、赤外線リモコンとしてW32SAを利用する「アプリモコンEZ」も搭載している。国内主要メーカーのテレビ/ビデオ/DVDプレーヤー/DVDレコーダ/スカパーチューナのリモコンコードをプリセットで内蔵しており、機種設定を行うことで、それらの機器のリモコンとして利用できる。 「アプリモコンEZ」上でEPGの番組検索も行なえるほか、プレミアム会員登録を行なうことで、EPG画面から、赤外線通信機能を利用して、家庭のテレビやビデオ、DVDへの録画予約も行なえる。
■ 機能は充実も対応フォーマットに難あるオーディオ
オーディオプレーヤー機能は、メインメニューから「ミュージックプレイヤー」を呼び出して利用する。ただし、再生形式はSD-Audioとなり、MP3やWMAは再生できない。 SD-Audioというのは、別売のアプリケーションソフト「SD-Jukebox(3,990円)」で作成したAACファイルのこと。iTunesで作成したAACなどには対応しない。「Let's note CF-W4」を利用してAAC 128kbpsでリッピング(ミュージックソムリエへの登録無し)したところ、アルバム17曲で、5分50秒とかなり時間がかかるのも気になった。
W32SAに直接転送するには別売のUSBケーブル「USBケーブルWIN(1,050円)」が必要で、転送は「SD-Jukebox」から行なう。USBケーブルを利用することで、W32SAをUSBストレージとしても利用できるが、USBストレージ時にminiSDに転送したオーディオデータは再生できなかった。 SD-Jukeboxで転送したオーディオデータは、ミュージックプレーヤー機能から呼び出し可能で、SD-Jukeboxで作成したプレイリスト、もしくはプレーヤーのメニューでminiSDを選択し、SD-Audioのメニューを呼び出すことで再生できる。基本的にはプレイリストで管理するのが扱いやすく、大量のアルバムデータを管理する場合は、アルバムごとにプレイリストを作成して置くと良いだろう。
もっともアルバムや多くのライブラリを管理すると言うよりは、基本的な考え方がダウンロード楽曲など、一曲一曲選別した楽曲を管理するのに適しているという印象。「とにかく、いつでも好みの曲を聴きたい」という人は一番身近な携帯電話にデータを入れておくのもありだろう。ただし、大量の曲データを扱うのであれば、やはり専用機がベストと感じる。 音質については特筆すべき点もないが、バランス良くまとまっている。付属のイヤフォンも装着感、音質ともに満足いくものだ。再生機能はシンプルで、操作方法もビデオプレーヤーとほぼ共通。センターキーの上下がボリューム、左右の長押しが早送り/戻し、[*]ボタンが曲バック、[#]ボタンが曲スキップ。プレイリスト登録楽曲の一覧表示は[0]。 また、再生中に[7]を押すとイコライザ選択画面となり、Bass/Clear/Pop/Rockなどのイコライザを選択できる。また、FMトランスミッタも内蔵しており、コンポやカーオーディオなどへのFM経由のオーディオ出力も行なえる。さらに、再生中に左上のキーでBGMモードにすると、プレーヤー画面はOFFにしながら、楽曲を再生し続けて、メール確認/作成やブラウズなどが行なえるBGMモードも搭載している。楽曲レジューム機能もついており、オーディオプレーヤーの機能としてはしっかりしているが、やはりW32SA用にSD-Audioファイルを作成しなければならないという点は、他の専用プレーヤーと比較して、あまり気軽とはいえない。 また、ユニークなのは「聴かせて検索」機能。テレビや街中に流れる音楽を携帯電話に聴かせることで楽曲検索できるというサービスで、アプリを起動してW32SAの通話口に、音楽を聴かせることで約10秒程度で楽曲を検索してくれるというサービス。検出率も高く、様々なシーンで楽しめそうなサービスだ。
もちろんFMチューナ機能も搭載している。ミュージックプレーヤー機能と異なり、センターキーの上下が局選択、左右がボリュームとなるあたりにやや戸惑いを感じるが、FMの受信品質も良好で、録音機能も備えている。FM画面で[クリアメモ]ボタンを押し、局を選択して[REC START]を選択することで、FMの録音が可能となる。録音したデータは、データフォルダのサウンドフォルダ以下に収録されるほか、ミュージックプレーヤー機能からも再生できる。 センターキーを押し込むと、[NOW ON AIR]の楽曲情報を取得できる。この情報を元にMENUからオンエア中の着うた検索を行ない、オンエアされた楽曲を即座に購入できるなど、携帯電話らしいサービスもある。
ボイスレコーダ機能も搭載。音声録音品質は、標準と高音質の2モードを選択可能だ。個人的に携帯電話のボイスレコーダはほとんど使ったことがなかったが、マイクの集音性能が高いのと、特に高音質の録音品質が良いことに驚かされた。ICレコーダを忘れてしまった会議などでもかなり活用できそうだ。 ポータブルオーディオプレーヤーでもボイスレコーダを搭載した製品は多いが、メモ程度には十分使えてもセパレーションの良さを感じさせる機器は多くない。W32SAの録音性能の高さが印象に残った。録音先もminiSDを選択できるため、大容量のminiSDを用意すれば、長時間のボイスレコードが可能だ。
■ 携帯電話ならではのユニークな機能 EZテレビのユニークな携帯電話機能を生かしつつも、メディアプレーヤーとして考えた時の作りもよい。SD-Audioに形式が限られてしまうオーディオプレーヤー機能は単体プレーヤーの比較対象にはしづらい面もあるが、操作感は良く、ヘビーユーザーでなければこちらの方がわかりやすいのかもしれない。 また、EZテレビやFMチューナと連携した、楽曲検索など携帯電話らしい機能も魅力的。考え方は単体のビデオプレーヤーやオーディオプレーヤーとはかなり違うものの、携帯電話ならではの面白いサービスと感じる。ポータブルプレーヤーのユーザーでも、今までと違った楽しみを体験できるだろう。 □KDDIのホームページ (2005年7月15日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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