■ 各社のハイエンドキャプチャカードがXCode II-Lを採用 DVDレコーダの低価格化が進み、160GB HDD搭載のハイブリッドレコーダが5万円程度で購入できるようになった。対して、PCベースのテレビ録画への注目度は以前ほど高くなく、落ち着いた市場になっている。 その理由としては、メーカー製PCでテレビ録画機能が当然の機能となったことで、単品のキャプチャカードへの注目度が下がっていることや、画質の向上や機能強化が一段落したことも原因に挙げられるだろう。また、現在のレコーダのトレンドであるデジタル放送録画が、著作権保護の観点から、PCのオープンなアーキテクチャにマッチしないということもその要因かもしれない。 沈静化しているテレビキャプチャ市場ではあるが、昨年秋以降のトレンドとして、2~8chのマルチチャンネル録画に各社が着手。大きな市場とはなっていないが、PCならではの提案として、注目されている。
マルチチャンネル録画の流れを受けて、今春の新製品では各社がエンコードチップにViXSの「XCode II-L」とダブルチューナを搭載した製品を投入。カノープス 「MTVX-WHF」、アイ・オー・データ機器「GV-MVP/GXW」、ピクセラ 「PIX-MPTV/P8W」は、いずれも各社のフラッグシップモデルと位置づけられている。 XCode II-Lは2ストリームを同時にMPEG-2エンコードできるエンコーダチップで、低ビットレート時の画質の高さも特徴。一昔前は、エンコードチップの違いで、高画質化を図っていたが、今回の新製品では、各社とも同一のエンコーダチップを搭載しながら、独自の高画質を謳っている。差別化のポイントは、エンコーダチップの前段までのクオリティをどこまで高めることができるか、という点。各社チューナ構成やビデオデコーダの変更などで高画質化を図っている。
■ 差別化ポイントはエンコーダの前段
カノープスの「MTVX-WHF」は、外付けのチューナユニットを利用し、DINケーブルでPCIキャプチャカードに接続するという構成。「PCが発するノイズの影響から逃れるため、チューナ部を外付けにした」とのことで、とにかく画質向上に注力している。 また、他のキャプチャカードではアンテナ入力1系統で、内部で分配しているが、「MTVX-WHF」では2系統のアンテナ入力を備えている。この点についても内部分配による、画質の劣化を防ぐためで、「ぜひブースター付きなどのアクティブな分配器を使って欲しい」とのこと。 チューナは、ソニー製のスプリットキャリアチューナを2基搭載。チューナユニット接続用の付属の同軸ケーブルはアルミ箔と編線で2重にシールドしており、ノイズの低減を図っているという。不安なのは、ケーブルに固定する機能がないため、少しの力が加わっただけで外れる可能性がある点だろうか。
アイ・オー・データ機器の「GV-MVP/GXW」は、松下製のチューナを2基搭載するほか、ゴーストリデューサや3Dノイズリダクション、3次元Y/C分離回路、フレームシンクロナイザーなどの高画質化回路を搭載する。 また、NEC製のビデオデコーダも2基搭載。さらに、3次元Y/C分離と3Dノイズリダクションの同時利用も可能。独自の録画ソフト「mAgicTV5」をバンドルし、おまかせ録画などが行なえるのが特徴。 ピクセラの「PIX-MPTV/P8W」は、オーソドックスなPCIバス用のキャプチャカードで、カードサイズも3モデルで最も小さい。 最大の特徴はパイオニアマイクロテクノロジー製のADCチップを搭載したこと。民生用のDVDレコーダなどでも採用されているチップで、全行程で10bit処理を実行、3次元Y/C分離や、クロマモジュレーション、フレームTBCなどの機能も内蔵している。チューナは日立製。
■ 画質は良好。若干の絵作りの違いも 画質についてはサンプルを参考にして欲しい。エンコーダチップが共通なので、基本的な画調はかなり似ているが、絵作りには違いが感じられる。「GV-MVP/GXW」は、若干明るめ、「MTVX-WHF」はナチュラルな発色で、「PIX-MPTV/P8W」はしっかりした解像感と、階調表現が印象に残る。 もちろん、各製品とも詳細な画質設定が可能なので、好みの画調にカスタマイズすることが可能だ。また、2~3Mbpsでも十分実用的な画質が得られるのもXCode II-L搭載カードならではだろう。
■ それぞれ個性あるソフトウェア
カノープス「MTVX-WHF」の録画ソフトは、「FEATHER 2005 V2」。10feetGUI風のインターフェイスだが、マウスで全ての操作が可能。オプションのリモコン「CRM2005」を利用してリモコン操作が行なえる。 EPGによる録画予約画面もリモコン用とマウス用の2モードが用意される。また、通常のWebブラウザから「テレビ王国」などのEPGサイトを呼び出して録画予約を行なうことも可能。 シンプルな操作性で、録画予約や再生操作などは、今回テストした3つのソフトでも一番使いやすいと感じた。2画面表示機能も装備。また、MUSICモードやPHOTOモードなどのコンテンツ再生機能に加え、NETWORKモードも搭載している。
同梱のFEATHER 2005 V2は2ライセンスが用意されており、NETWORKモードを利用することで、同一LAN内の他のPCにFEATHERをインストールし、ストリーム再生などが行なえる。 なお、MPEG-2のハードウェアトランスコード機能は搭載しない。「GV-MVP/GXW」のGVencoderのように、任意のビットレートにMPEG-2変換するためには、オプションの「X-Transcoder4(2,940円)」が必要となる。 オプションキットでは、「テレビ王国」を利用したおまかせ録画機能(1,050円)や、「X-TransCoder4 for FEATHER2005(2,940円)」、「DivX変換キット(2,100円)」、「SD-Video変換キット(2,100円)」、「WMV変換キット(1,050円)」などが用意される。5万円近い実売価格を考えると、このあたりの機能もバンドルしてほしかったところだ。 FEATHER2005 V2で、ユニークなのはスキップポイント編集機能。これは、FEATHERで再生した番組で、ユーザーが行なう早送りや巻き戻しの動作を記憶する機能で、「CMを早送りで飛ばし、本編が始まると再生ボタンで元の速度に戻す」といった動作をスキップポイントとして記憶。再度再生した際は、早送りされた部分(CM)をカットした状態で再生するというもの。 さらに、ライブラリのスキップポイント編集を呼び出せば、記憶したポイントが表示され、IN/OUT点の調整のみで編集が行なえる。スキップポイントはFEATHERでDVDオーサリングを行なう際にも引き継がれ、不要な部分をカットし、スマートレンダリングで繋ぎ合わせた状態でライティングが行なえる。
MTVX-WHFでは、変換ケーブルによりコンポーネント入力も可能。外部入力と連動したデジタル放送の録画にも対応する。
アイ・オー「GV-MVP/GXW」の録画ソフトは「mAgicTV5」。同社キャプチャカードでおなじみのソフトウェアだが、機能的には充実しており、おまかせ録画機能も標準搭載。 トランスコーダソフトの「GVencoder」を利用して、XCode II-Lを利用したMPEG-2のハードウェアトランスコードに対応するほか、3GPP/3GPP2、WMVへの変換も行なえる。機能としては非常に充実している。また、ネットワークDVDプレーヤーの「AVeLLink Player」との連係機能も搭載。サーバーソフトに「Advanced Server」を利用する必要があるが、LinkPlayerから録画番組予約などが行なえるなど、AVeL製品ユーザーにはメリットの多い製品だろう。
ピクセラのPIX-MPTV/P8Wの録画ソフトは「StationTV G2」。10feetGUIを利用した家電ライクな操作感が特徴で、リモコンによるシンプルな操作を実現している。ナノ・メディアや加賀電子と共同企画開発したEPGサービス「REC Station」を組み込んでおり、EPGのシンプルな表示や、見やすさは確かに民生レコーダに近い印象だ。 また、テレビの表示画質が良く、解像感の高さが印象的。アイ・オーやカノープスの製品もPC用のテレビのプレビュー表示としてはかなり良いが、PIX-MPTV/P8Wのナチュラルな色表現が個人的にはベストと感じた。 2画面表示機能も搭載。表示サイズ変更などはできないが、使いやすい。「PCを民生機のように使いこなす」という点では、良くできているが、残念なのは、リモコンが無いと使いにくいこと。PCで別の作業をしながら視聴するには、[コンパクトモード]に設定して、操作するのだが、この使い勝手が今ひとつだ。 Xcode II-LをMPEG-2のハードウェアトランスコーダとして利用する機能は備えていないが、後日対応予定という。また、ソフトウェアによるMPEG-4への変換機能なども備えていない。
また、最新OSへの対応状況という面でも、カノープスはベータ版とはいえWindows XP 64bit Editionで利用可能となっている。一方、ピクセラはまだ未定ではあるが、Windows XP Media Center Editionへの対応を目指しているという。さらに、キャプチャカードの複数枚差しによるマルチチャンネル録画については、カノープスは3枚/6チューナ(サポート外)、ピクセラは今夏対応ドライバを投入予定、アイ・オー・データは3枚/6チューナの録画に対応する。
■ まとめ 同じエンコーダチップを搭載しながら、各社の高画質化のアプローチが異なっており、実際の画質についても各社の傾向の違いというか、個性が感じ取れる。また、機能の面でも家電の操作感を重視すればピクセラ「PIX-MPTV/P8W」、もしくはカノープス「MTVX-WHF」になる。1パッケージで全ての機能が欲しいのであればアイ・オーの「GV-MVP/GXW」といえるだろう。 画質については、好みの問題もあるだろうが、どのカードを使っても6Mbps程度でかなり高画質。また、どのカードでもXCode II-Lの採用により2Mbps程度でもD1解像度でキャプチャできるというのも、おまかせ録画などを多用するユーザーには大きなメリットだろう。改めてViXSの高画質性能というのを感じさせる。 民生のハイブリッドレコーダでも、ダブルチューナ搭載モデルが9万円弱で購入できるようになりつつあるが、キャプチャカードならではのファイルの扱いやすさや編集/オーサリングソフトを用いた高度な編集を行なうのであれば、高画質なテレビキャプチャカードの登場は非常に魅力的。用途や目的にあわせたさまざまなカードがリリースされる現状は素直に歓迎すべき状況といえるだろう。あとは、MPEG-4系のハードウェアエンコードに対応して、メモリースティックビデオやSD-Videoの変換機能が追加されることを期待したい。 □ピクセラのホームページ (2005年7月8日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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