■ ブラッカイマーとニコラス・ケイジの強力タッグ
ただ、これほどのヒットメーカーであるにもかかわらず、製作総指揮となると、TVドラマでは「CSI」シリーズなどがあるが、映画では「キャット・ピープル」('81年)など数えるほどしかない。実績がありながらも、現場にこだわっているということだろう。 そんなブラッカイマー製作の最新作が、トレジャー・ハンティング・ムービー「ナショナル・トレジャー」だ。主演は、「ザ・ロック」や「コン・エアー」、「60セカンズ」などでブラッカイマーとタッグを組んできたニコラス・ケイジ。米国では2004年に公開されてヒットし、日本では3月19日に劇場公開された。 日本では米国ほどヒットしたという印象はなかったが、劇場公開から半年もたたない8月24日にDVDがリリースされた。リリースされるDVDは、「ナショナル・トレジャー 特別版」のみとシンプル。もっとも、他社ではDTS版や豪華版など、色々なバージョンを用意することも多いが、ブエナではバリエーションが用意されること少ない。選ぶ楽しみはないが、どのバージョンを買うか迷わなくてすむという、ブエナの親切心かもしれない。 価格も2,940円と、最新作としてはお手ごろな設定となっている。また、先着購入特典として、「秘宝を探せ! たいまつ型ミニ・キーライト」がプレゼントされた。鍵などに取り付けられるたいまつ型の小型ライトで、炎の部分が赤く点灯。暗い場所でも鍵穴などを照らせる。 さらに、「ナショナル・トレジャー 特別版」と、再販キャンペーンの16作品など計19タイトルの中からいずれか1作品の合計2作品を購入すると、抽選で1,000人にプレゼントが当たる「100ドル紙幣を見てみよう」キャンペーンも実施。映画の1シーンを再現する、本物の100ドル紙幣1枚と、ペンシルタイプのマルチスコープ「ZIPPO MMスコープ」をセットにして100人に当たる。2つのキャンペーンを展開し、販促にも力を入れていることからも、ブエナが期待の大きさが伺える。
■ やっぱり、インディ・ジョーンズ? 2,000年も前に封印され、現代まで受け継がれた伝説の「秘宝」。エジプトのファラオの墓や、フランスのテンプル騎士団のアジト、コンロブスのサンタマリア号などで目撃され、その秘宝の近くには、いつも「全能の眼と未完成のピラミッド」からなるマークが記されていた。しかし、1779年、独立戦争が激化する米国で歴史上から忽然と、秘宝は姿を消した。しかし、秘密結社フリーメーソンにより守られ、その言い伝えは先祖代々ゲイツ一族に伝承されていた。 そして2004年。ゲイツ一族の末裔で歴史学者にして冒険家のベン・ゲイツ(ニコラス・ケイジ)は、一族の夢としてこの秘宝の謎を追い求めていた。ベンは、トレジャー・ハントに多額の資金が必要となり、不本意ながら、富と名声のために秘宝を探すイアン(ショーン・ビーン)と手を組むことになった。 ベンが一つの暗号を説くと、新たな暗号が現れ、新しい謎を呼ぶが、それを解き進むうち秘宝の謎を解く鍵が「アメリカ合衆国独立宣言書」にあることを突き止める。しかし、イアンらの裏切りにより、命を狙われることになる。アメリカの魂ともいえる「独立宣言書」をイアンらに冒涜されることを恐れたベンは、彼らよりも先に「独立宣言書」を入手し、伝説の秘宝を探し出し守ることを決意する。 独立宣言書の奪い合いに勝利したベンは、「独立宣言書」を手にして暗号解読に取りかかり、そこに謎の数字が浮かび上がる。しかし、それはまだ、伝説の秘宝を解く鍵の入口でしかなかった……。 知性的でタフな冒険家といえば、一番に頭に浮かぶのが「インディ・ジョーンズ」だろう。弊誌で掲載したインタビューでもブラッカイマーは、「インディ・ジョーンズシリーズは素晴らしいシリーズで、大好きな映画。物語や設定、キャラクターはもちろんナショナル・トレジャーとは違うが、子供から大人まで、誰もがハラハラドキドキできる映画という点では似ている」と語っている。 この映画の要となるのは、歴史的な出来事や、100ドル札に絵柄など実際にあるものを使った謎解き。ただ、スピード感重視で、詳細な部分にはあまりこだわっていない。フリーメーソンが堂々と出てくるのは、大作映画では珍しいが、フリーメーソンがいったい何なのか、宗教や民族、思想という部分には深くは踏み込まない。その辺のバランス感覚は、よくも悪くもディズニー映画であり、ブラッカイマーの映画であるなと思う。 特にこれといった理由も描かれず、ベンとヒロインのアビゲイル・チェイス博士(ダイアン・クルーガー)が恋に落ち、ハリウッド的御都合主義で問題は解決されていくので、突っ込みだしたらきりがない。しかし、そこらへんには目をつぶり、スピーディな展開に身を任せるのが、正しい鑑賞方法だろう。
インディ・ジョーンズに比べるとストーリーに奥行きはないが、誰にでも理解できるという面もある。ただ、約131分は長すぎる、もう少しエピソードを削った方が、スッキリして、より観やすくなるように感じた。また、個人的にはベン・ゲイツという“知的な冒険家”キャラクタが、ニコラス・ケイジが演じていることに少し違和感があった。
■ 映画さながらに暗号解読が楽しめる(?)映像特典
DVD Bit Rate Viewerで見た平均ビットレートは5.8Mbps。本編が131分、映像特典も一緒に収めていることもあり、低めだ。ただ、うまくエンコードされており、MPEGとしての破綻はほとんど見られなかった。チャプター数は19で、チャプタメニュー画面は静止画で各チャプターのタイトルもない、シンプルな仕様となっている。 映像は、彩度とコントラストが高く、クッキリ、ハッキリしている。暗いシーンであっても、登場人物などの主被写体にはしっかりとライティングされており、雰囲気を重視のために見づらくなっているようなシーンはない。画面に重みがないともいえるが、非常に見やすく、最近の世間一般の映像の流れからすると、銀残しのような奥行き感があるがノイジーな画質より、このDVDのような鮮やかな画質の方が好まれるだろう。 音声は、英語と日本語吹替えをドルビーデジタル5.1chで収録している。ビットレートは英語が448kbps、日本語吹替えが384kbps。この程度のビットレートの差だと、音質には差を感じないことが多いが、このDVDは英語と、日本語吹替えの音質差をかなりある。なにより、音圧が日本語吹替えの方が低いので、AVアンプのボリュームが同じ位置だとかなり違って聞こえる。また、全体的に日本語吹替えの音声は、環境音との馴染みが悪く、セリフだけ浮いているような印象だ。 音を重視するなら、英語音声での視聴をお勧めしたい。音響設計は、最近のハリウッド映画なので、当然サラウンド感は必要十分なだけはあるものの、冒険映画の割にはあまり派手さはない。LFEもあまり使われていないので、音で驚かせられるようなことはほとんどなく、安心して鑑賞できる。
メインのコンテンツは、やはりメイキングだろう。その中でも、もっとも興味深かったのが、ブラッカイマーが企画を見て、「すぐに脚本の問題点を直し、ディズニーが配給したがるものにした」と語っていたこと。こうでなければ、ヒットメーカーになれないと感心した。そのほかには、フリーメーソンの集会所を各地に訪ね、調査したことや、CGについての解説、ダイアン・クルーガーが本職顔負けのスタントを彼女自身が行なったことなどが明かされている。ただ、収録時間は決して長くはないので、多少物足りなさはある。 未公開シーンは、冒頭にジョン・タートルトーブ監督が、「最初の編集は4時間あった。不備があるわけじゃないが、調味料の加減なんだ」とカットされた理由が語られる。収録されているのは、「トーマスと大統領」と、「トリニティ教会の地下縦穴(ノーカット版)」の2シーン。 アニマティクス映像によるオープニングは、「方向性つかむためにアニメーションで作った。ストリーボードのアニメ版。アニメータの解釈による、脚本の具体化したもの」(ジョン・タートルトーブ監督)だという。CGで描かれているが、仮に作られたものなので緻密なものではない。 もうひとつのエンディングでは、ジョン・タートルトーブ監督が「最初に撮ったラストは気に入っていた」というエンディングを見ることができる。監督が気に入ったエンディングが差し替えられたのは、「モニター試写を行なったところ、続編をにおわせるという反応だった。そんな意図はなく、登場人部を意欲を見せたかっただけなので、意外な反応だったから」だという。モニター試写でエンディングまで変えてしまうところは、まさにハリウッド映画だろう。 これらの映像特典に加え、隠しコンテンツも存在する。それにたどり着くまでには、シークレットコードや、マスターコードなど、映画本編さながらに、暗号を解いていく必要がある。それほど難しいというわけではないが、この映画にはまった人であれば、この謎解きこそが、一番の特典といえるかもしれない。 シークレットコードがわかると、実際に宝探しをする人々や、宝探しのマナーも紹介する「トレジャー・ハントの世界」(約8分)や、フリーメーソンの話や、今回の映画についての真実味と史実についてが語られる「テンプル騎士団の歴史」(約5分)を見ることができるようになる。 最終的にマスターコードまでたどり着けば、「トリビア・トラック」として、本編にあわせて字幕コメンタリを再生可能になる。この字幕コメンタリでは、監督やスタッフ、出演者、歴史についてのトリビアが表示される趣向となっている。 なお、ブラッカイマーのDVDと言うと、ブラッカイマー自身が撮影した製作現場の写真が収録されていることが多く、インタビューでも、「入れてもらえれば良いんですが……」と答えていた。しかし、今回はDVD1枚に本編も特典もすべて収めているため、入らなかったようだ。
■ やっぱり、続編が 今までのブラッカイマー映画と変わらず、批評家や、自称“映画通”には受けが悪そうな映画ではあるが、肩肘張らずに鑑賞するのにはちょうどいい。子供にも理解しやすく、ドキドキ、ワクワクできるだろう。いわゆるポップコーンムービーとしては、一定の水準にある。 DVDの価格も2,940円と買いやすく、映像特典も一通り揃っている。特に、暗号を解くのは子供は喜ぶだろう。大人だと、面倒なことをさせないで、普通に見せてくれと思う人も多いだろうが……。子供と一緒に見るのであれば、購入して損はないだろう。 ちなみに、UMD版(品番VWUM-0010)も用意されている。UMD版の本編はDVDと同じで、音声はフォーマットはATRAC3plusで、英語と日本語をステレオで収めている。字幕も日本語と英語、吹き替え用の3種類収録。ただし、価格が3,990円とDVDより高価になっている。 なお、映像特典の中で、監督はあまり乗り気には見えなかったが、続編の製作がすでに決定しているという。ジョン・タートルトーブ監督が続投し、グレゴリー・ポイリアーが脚本を担当。ニコラス・ケイジや、ダイアン・クルーガーの出演はまだ決まっていないという。 監督自身は、続編を意図していないような口ぶりだったが、インディ・ジョーンズのようにシリーズ化しやすい設定であることは間違いない。ただ、このDVDの売れ行きによっては、日本での劇場公開がどうなるかはわからないだろう。
□ブエナ・ビスタのホームページ (2005年8月30日) [AV Watch編集部/furukawa@impress.co.jp]
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