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超小型ビデオプレーヤー登場
レトロなTVデザインがかわいい
アイリバージャパン 「U10」
9月上旬発売
標準価格:オープンプライス
直販価格:29,800円(1GB)
     24,800円(512MB)


■ ビデオプレーヤーの新顔登場

 レコーダやPCで録画した番組を転送して、持ち運ぶポータブルビデオプレーヤーは、各社がそれなりに取り組んではいるものの、今ひとつ大きな盛り上がりに欠けている。ポータブルオーディオは、iPodに代表されるデジタルプレーヤーが人気だが、オーディオと違って「ビデオを持ち運ぶ」というスタイルがアナログ時代になかったこともあり、爆発的な普及には至っていない。

 しかし、最近では「PSP」やGBA/ニンテンドーDS用ビデオプレーヤー「プレイやん」など、携帯ゲーム機をビデオプレーヤーとして利用する製品が、高機能かつ低価格で発売され、かなりの人気を集めている。また、PSPでは、専用の動画配信サービス「Portable TV」なども始まり、本格普及の兆しも見え始めている。

 しかし、単体のポータブルビデオプレーヤーでは、かつてMicrosoftが提唱したプラットフォーム「Windows PMC」は見る影もなく、最近では国内大手メーカーの新プレーヤーも発売されていない。PSPやプレイやんが2万~3万円程度で、高いレベルのビデオプレーヤー機能を実現してしまっているので、価格競争力という意味でも、なかなか製品を投入しずらい状況とも言えそうだ。

 そうした中、アイリバーが発表したのが、2.2型カラー液晶とMPEG-4再生機能、MP3/WMA/OGG再生機能を搭載した小型マルチメディアプレーヤー「U10」だ。512MBで24,800円、1GBで29,800円という価格は、単なるオーディオプレーヤーとしてはやや割高だが、ビデオプレーヤーと考えると割安といえるだろう。

 また、外形寸法69×47×16mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約69.5gというサイズは、ビデオプレーヤーの中では圧倒的に小型軽量。別売のクレードルと組み合わせたデザインもユニークで、新インターフェイスの採用などさまざまな新機能を盛り込んだプレーヤーだけに、その使い勝手にも期待がかかる。量産前の試作機を借り、早速検証した。


■ ビデオ対応プレーヤーとしては超小型

 同梱品は本体の他、USBケーブルと、イヤフォン、転送ソフト「iriver Plus2」を収録したCD-ROM、キャリングポーチ。パッケージは、小型の箱の中に「MAIN SET & POUCH」、「EARPHONE」、「CABLE」などの小箱を収録しており、シックなデザインもなかなか格好いい。


パッケージ 同梱品ごとに小箱を用意

同梱品

 本体のデザインは2.2インチ液晶を前面に打ち出したシンプルでスクエアなもの。外形寸法は約69×47×16mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約69.5gと小型で軽量だ。従来の動画プレーヤーは大型の液晶を備えるため、それなりに大きなサイズとなっていたことを考えると、直接的な競合機種というのは思い当たらない。

 前面の液晶は上下左右を押し込むと、「カチッ」というクリック感のあるもので、これが新開発のタッチパネル式インターフェイス「D-Click System」となっている。

 上面にはボリュームボタンとマイク、左側面にはヘッドフォン出力、右側面には電源ボタンと縦横表示切り替えボタンを装備。下面はHOLDボタンと専用のPC接続/USB端子を装備する。本体の充電もUSB経由で行なう。


本体正面。液晶は2.2型320×240ドット 上面にボリュームとマイクを装備 左側面はヘッドフォン出力
右側面には電源ボタンと縦横表示切り替えボタンを装備 下面。USB接続用専用端子やHOLDボタンを装備する 背面

 また、オプションの「クレードルセット」(直販価格9,980円)を利用して、充電や音声のライン出力も可能となっている。なによりユニークなのはそのデザイン。U10をクレードルに装着すると、レトロなテレビ風になる。付属のリモコンでの操作も可能となる。

 クレードルにはスピーカーも内蔵しているので、U10と組み合わせて簡易ステレオとしても利用できるほか、アラームクロック機能を利用して目覚まし時計として利用できるのも嬉しいところ。さらにライン入出力も備えているので、外部のアンプなどに接続してU10の音楽ファイル再生が可能だ。ただし、ビデオ出力機能は備えていない。

クレードルにはリモコンも付属する クレードルの装着例 側面。ユニークな曲線が特徴
スピーカーやライン入力/出力を装備する リモコン


■ 新UI「D-Click System」のシンプルな操作性

起動スプラッシュ

 起動時間は約4秒。こうしたマルチメディアプレーヤーであることを考えれば、まずまず高速と言えるだろう。起動スプラッシュとしてiriverのロゴとともに、カラーバーが表れるなど、なかなかユニーク。

 MEPG-4動画やJPEG画像、MP3/WMAオーディオ、テキストファイルなど、どさまざまなメディア再生が可能なU10だが、基本的なユーザーインターフェイスは全てのメディアで統一されている。それが、新開発の「D-Click System」だ。

 D-Click Systemは、液晶に触れて操作するインターフェイスなのだが、指のふれを感知して操作を行なうタッチセンス式ではなく、液晶部を上下左右の4方向に押し込む機構となっており、「カチッ」とクリック感があるため、操作を確認しやすい。また、物理的な反応があるので誤まった操作をしにくいというメリットがある。


メインメニュー 縦横表示切り替え

 起動すると、ミュージック/FMラジオ/録音/写真/ビデオ/テキスト/フラッシュゲーム/アラームクロック/ブラウズ/設定の各モードが選択できるメインメニューが表れる。ここで、各モードを選択して利用モードを決定する。画面には上下左右に4方向の矢印アイコンが表示される。

 例えばビデオモードを選択する場合は、右矢印(液晶右端)を押し込むとモードを選択し、再生映像の選択画面に切り替わる。そこで、右矢印を再度押し込むと映像の再生が始まるというもの。この操作はほぼ全てのメディアファイルに共通しているので、どのモードを選択しても統一した操作感覚で利用できる。ただし、タッチパネルのように触れるだけでは選択できないので、最初は戸惑うかもしれない。

 また、下部のHOLDスイッチでロックすると、液晶を物理的に押し込むことができなくなり、誤動作を防ぐことができる。電源脇のボタンを押すと液晶の縦/横表示切替も行なえる。



■ 小型液晶でも画質は満足。動画作成ソフトは?

 USBストレージクラスに対応するほか、オーディオと写真データの転送は付属ソフトの「iriver Plus2」でも可能となっている。パソコンからの動画ファイルの転送はルートフォルダ以下の[Video]フォルダにドラッグアンドドロップで転送するだけ。

ビデオ再生画面

 対応ビデオファイル形式はMPEG-4 Simple Profile(MPEG-4 SP)で、解像度320×240ドット、フレームレート15fps以下となる。期待されるのはAVI系のMPEG-4コーデック、つまりDivX 5などの対応だろう。なお、U10には専用のエンコードソフトは付属しないので、別途自分で用意する必要がある。

 となると、困るのがエンコードソフト。まず、MPEG-4 SP対応のソフトというのはさほどポピュラーではない。とはいえ、MPEG-4 SP対応の機器は大抵DivXやXviDなどに対応しているので楽観視していたが、思いのほか条件が厳しくてなかなか適したファイルを作成できなくて苦労した。


エラーメッセージ

 まずはUlead VideoTool Boxで作成したMPEG-4 SPファイル(音声MP3 64kbps/拡張子.MP4)を転送してみたが、本体からは認識されない。どうやら.mp4のMPEG-4ファイルは認識できず、認識される拡張子はAVIのみのようだが、拡張子をAVIに変換しても、このファイルは再生できなかった。同様にプレイやん用のMediaStage for Nintendoで作成した320×240ドット/15fpsのSD-Videoファイル(.asf)も再生できなかった。

 手持ちのDivXファイルの多くは30fps以上ということもあり、そのままだとほとんど再生できなかった。エラーメッセージを見ると映像は320×240ドット/15fps以下、音声はMP3 128kbps CBR以下のファイルを利用しろとのこと。早速メッセージに沿ってDivXファイルを作成したが、ほとんど再生できず。製品収録されていたサンプルのコーデックを調べたところ「DivX4」との表記が……。

 ということで、古えのDivX4を探しだして320×240ドット/15fps、MP3 128kbps以下のAVIファイルを作成したが、再生できず……。対応ソフトの情報や、ファイルの簡単な作り方などの情報の公開を期待したい。


液晶の上下で早送り/戻し用のバーが表示される

 動画の操作は再生中に上下ボタンを押すと早送り/戻しに割り当てられる。早送り/戻しの倍速は2/4/8/16/32倍速が選択できる。ドットピッチが狭いこともあり、QVGA解像度でもかなり精細感が高い。映り込みが多いことと、コントラストが若干足りないようにも感じるが、15fpsの割にフレームレートの不足も感じず、かなり満足できる画質だ。

 液晶サイズが小さいために、臨場感はPSPに及ばないものの、番組の内容はきっちり確認できる。ただし、注意したいのは液晶部をタッチすることから、指紋が付きやすい点。キャリングポーチにはクリーナが付いているので活用したい。

 なお、Windows Media Video(wmv)、メモリースティックビデオ(mp4)を用意してみたが、拡張子をAVIとしても再生できなかった。


■ 普通のオーディオプレーヤーとしても十分使える

[ミュージック]メニューを選択。アーティストやジャンルごとの検索が可能

 メインメニューの一番上部が[音楽]となっているので基本は音楽プレーヤーともいえるU10。オーディオプレーヤーとしての機能はベーシックだ。

 オーディオデータの転送は付属ソフトiriver Plus2から、もしくはUSBストレージクラスとしてRootフォルダの[Music]以下に転送する。対応オーディオ形式はMP3/WMA/OGG。AAC音声には対応せず、iTunes Music Storeで購入したAACの再生もできない。なお、Windows Media DRMはサポートしており、Windows Media Playerから転送すればWMA系の音楽配信サイトで購入した音楽は再生できる。

 iriver Plus2はアルバムやアーティストごとの検索機能が今ひとつだが、MusicID機能を活かした楽曲タグ補完機能が面白い。楽曲を選択して右下のボタンを押すと、MusicIDのデータベースと照合して、楽曲データを補完してくるのだ。たとえばコンピーレーションアルバムでアーティスト名が[Various Artist(VA)]などとなってしまう場合でも、MusicIDのデータからアーティスト情報を確認して、簡単に修正できる。MusicIDを活かしたユニークな機能で、コンピーレションCDなどを多数持っている人には使い勝手のあるだろう。ただし、アルバムの楽曲順に再生できなくなってしまうケースもあり、万能ではないので適用には注意が必要だ。

iriver Plus2 タグの自動補完が面白い。全てVarious Artistとなっていたアーテスト名がきちんと修正された

音楽再生画面

 操作メニュー自体は動画再生時と同じ「D-Click System」で、当然日本語表示にも対応している。液晶の上下左右を押し込んで選曲操作を行なう。再生画面で上下を押し込むと曲スキップ/バック、下を長押しすると早送り、上を長押しすると巻き戻しとなる。左右じゃなくて上下にスキップ/バックが割り当てられるので、慣れるまでは戸惑うが、基本的にはシンプルな操作体系なので、さほど戸惑うことはない。ファームウェアは最終版ではないが、動作のレスポンスも悪くない。

 また、再生画面で右を長押しすると評価設定(レーティング)やEQ選択、再生モードなどを設定できる。同様に左を長押しするとメインメニューまで一気に戻れるなど、細かなショートカット機能もしっかり用意されている。使いこなすまでに慣れは必要だが、「この操作できないかな?」と思うような機能には、だいたいショートカットが用意されているので操作を覚えられれば、さらにスムーズに操作が可能。なにより、基本構造がシンプルなので戸惑うような点はほとんどない。iriver Plus2で作成したプレイリストの再生機能も搭載している。

再生画面で右長押しすると各種設定を呼び出し EQ設定

付属のイヤフォン

 イヤフォンはT10などの最近のアイリバー製品と共通のもので、カラーはホワイト。音質の傾向もT10とほぼ共通で、出力の高く、ドライなサウンド。中低域の力強さが魅力で、ダイナミックレンジも十分。イヤフォンとプレーヤーの相性もいい。周波数帯域的にはそれほど下まで出ている印象ではないのだが、ボーカルのセンター定位や各楽器の音像のくっきりした元気な音で、特にロック系のソースなどに最適だ。

 イコライザはNormal/Classic/Live/Pop/Rock/Jazz/Ubass/Metall/Dance/Party/Club/カスタムEQ/SRS WOWを用意。各モードともややクセのある派手な音作りなので好みは分かれるだろう。ポップスに掛けるとなぜか変な位相とハイ上がりになるClubなどイマイチよくわからない設定もあるが、選択肢は多いし、カスタムEQもあるので好みの音に合わせやすい。SRS WOWも搭載しているが、もとの音作りがSRS WOWをONにしたような立体感のある音像なので、基本はOFFのほうがベターと感じる。

 オーディオプレーヤーとしての機能も充実しており、最新のオーディオプレーヤーと比較しても、十分競合できる機能/使い勝手を備えている。よほど頻繁に選曲するような人でなければ満足できるだろう。唯一残念だったのが、大きな液晶を搭載しているのにジャケット表示機能が無いこと。最近のトレンドになっているので、できれば対応して欲しかったところだ。

 また、静止画表示機能も搭載。デジカメなどで撮影したJPEG写真もiriver Plus2から転送できるので、楽曲や写真データ管理を行ないたい人はiriver Plus2を利用したい。

 メインメニューの[写真]から、静止画の確認できるが、この確認画面でデジタルカメラのEXIF情報が確認できるなど、なかなか良くできている。写真の再生は全画面表示とスライドショーが用意されている。音楽を聴きながらのスライドショーも可能となっている。ただし、画像の拡大表示機能は備えていない。


EXIFも確認できる 写真の再生画面


■ ユニークな付加機能。クレードルは高価だが面白い

 また、FMチューナも搭載し、FM録音(MP3形式)も可能。さらに、MP3形式のボイスレコーディング機能も搭載しているほか、付属のクレードルを利用することで、ライン録音にも対応する。さらにテキストビューワ機能やフラッシュを利用したゲームも備えている。

FMラジオモード ボイスレコーディング

アラームクロック機能

 そして一番ユニークかつ気に入ったのは、アラームクロック機能。U10では本体にスピーカーを内蔵しないため、付属クレードルが必須となるのだが、このクレードルの上部にSNOOZEボタンを備えるなど、見た目からして目覚まし時計っぽい。

 また、アラームもベルや鳥の鳴き声などのプリセット以外に楽曲やアルバムを指定できるなど機能的にも充実している。日時設定画面で右を長押しすると時間設定やアラーム設定が表れて、設定できる。目覚ましを消すときはリモコンでOFFにしてもいいが、当然クレードル上のSNOOZEボタンでもOFFにできる。

 クレードルの利用方法としては音楽ファイルを多数収録して、デスクトップ上のオーディオジュークボックスとしても活用するなど、さまざまな応用例が考えられそうだ。リモコンで全ての操作が可能で、レスポンスも良好だ。クレードルはやや高価ではあるが、これがあるとかなり活用の幅が広がる、非常に面白いオプションだ。

クレードルのSNOOZEボタン フラッシュを利用したゲームも内蔵している


■ 小型マルチメディアプレーヤーの新提案

 ビデオプレーヤーとして考えると、動画ソリューションについては、物足りない足りない面もある。しかし、オーディオプレーヤーの付加機能と考えれば、画質や使い勝手のレベルでは満足度は高い。何より、このサイズでこのレベルの画質を実現している製品は他には無いだろう。

 ただし、動画を中心に考えると、512MB/1GBという容量はやはり心許ない。動画だけで利用するには十分だが、動画と音楽、写真に対応したメディアプレーヤーとして使うには動画と音楽でそれぞれ1GBぐらいは欲しいところだ。

 SDメモリーカードや、メモリースティックDuoなどの拡張スロットを備えた上位モデルなども期待されるが、そのためにこのユニークなデザインとサイズが実現できないのは本末転倒だ。そうしたなか良くバランスをとった製品だが、ユーザーの使いこなし次第、といった側面も強い。

 価格は1GBで29,800円。オーディオプレーヤーと考えると1万円ほど高いのだが、HDD搭載のビデオプレーヤーなどと比較すると、かなり安い。この価格に競合するビデオプレーヤーとして直接の競合となるのはPSPやニンテンドーDSP+プレイやんなどのゲーム機をベースとしたソリューションだろう。

 ポータブルビデオとしての「臨場感」は、液晶が小型ということもあり、とくにPSPと比較するとやや物足りないが、オーディオプレーヤーと考えると、ゲーム機ベースのプレーヤーより遙かに上。なにより、使う楽しさや、所有の満足感という意味でも充実している。ユニークなデザインやオプション製品による「デジタルガジェット」としての魅力も十分だ。

 トータルなメディアプレーヤーとしての使い勝手も優れているので、スペックを見て、自分なりの楽しみ方を思い描ける人以外でも、店頭で実機を見て、単にデザインが気に入ったという人が、普通に音楽プレーヤーとして使っても十分に対応してくれる。小さいけれど、何でも入っていて、「使う楽しさ」も併せ持った、他に比類無いユニークな製品に仕上がっている。

□アイリバージャパンのホームページ
http://www.iriver.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.iriver.co.jp/company/news.php?article=189
□製品情報
http://www.iriver.co.jp/product/?U10
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http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050629/iriver1.htm

(2005年9月2日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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AV Watch編集部

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