今秋続々と登場する720pフロントプロジェクタ。液晶系ではエプソンの新D5パネル搭載製品などが各メーカーから発売。一方DLPも新720pチップを搭載した低価格帯の製品が続々発売されている。 今秋の「大画面☆マニア」では、実売20~30万円台の売れ筋製品をピックアップ。毎週新製品のレビューを掲載する。(編集部)
■ 設置性チェック
箱形の直線を基調としたシンプルなデザインは先代LP-Z3を彷彿とさせるが、実は細かい外観デザインの変更が随所に施されている。 まず、ボディカラーが濃いシルバーと薄いシルバーの2トーン塗装になり、存在感が増した。 レンズシフトの調整つまみは本体側面に移動。先代LP-Z3では本体正面、しかも投射レンズの真横に設定されていたため、調整中に手の影が映ってしまうこともあったが、LP-Z4ではそうした問題はない。
ボディ周りで、最も目を引くのが、「電動スライドシャッター機構」。電源を投入するとガーというモータ音と共にレンズ前の扉が横にスライドして開く。 常設設置の場合、レンズキャップを閉め忘れがちで、しかもそのまま長期使っていないとレンズにほこりが付着してしまう。この電動レンズカバー機構の採用により、そうした心配は少なくなる。LP-Z3にも、手動で開閉できる扉が正面に付いてはいたが、「扉を閉めていると電源が入らない」という面倒な仕様であった。LP-Z4では、電源に連動してシャッターが開閉する。 大胆な筐体変更が行われたことにより、寸法自体は382×304.3×126.8mm(幅×奥行き×高さ)と、LP-Z3よりも少々マッチョになった印象がある。ボディサイズの大型化に伴い、本体重量も5.0kgとLP-Z3の4.1kgから、大分重くなったが、設置面積的にはA4ファイルサイズノートPCよりも一回り大きい程度で、大人であれば問題なく一人で移動できる。 本体外形寸法は変わったものの、取り付け金具類はLP-Z1/Z2からのものがそのまま使える。天吊り金具用取り付け金具「POA-CHB-Z2」(15,750円)はLP-Z2からの純正オプション設定で、一般家庭向きの低天井用の天吊り金具「POA-CHS-US01」(31,500円)はなんと初代LP-Z1から同じものが最新LP-Z4でも利用できる。従来のLP-Zシリーズユーザーは、難なく最新モデルへの買い換え移行が可能だ。
LP-Zシリーズといえば、LP-Z2の時に提案された画期的な「壁掛け設置」への対応についても気になることだろう。壁掛け設置とは部屋の最後部の壁に投射レンズを上向き(映像を天井に投射する方向)にプロジェクタ本体を設置し、鏡で反射させて相対する壁側のスクリーンに投影するという設置方式。設置台が不要であり、部屋のデッドスペースに設置できることから常設設置でありながら省スペース性を両立する。ただし、専用のエアフロー設計、熱設計、ランプ配置の最適化などが必要で、初めから壁掛け設置に対応したデザインでなければ実現が難しいとされる。 最新のLP-Z4でもこの壁掛け設置対応の設計がなされている。ただし、専用の壁掛け設置取り付け金具はLP-Z2/Z3で利用できた「POA-CH-EX01」ではなく、LP-Z4専用の「POA-CH-EX02」(52,500円)へと変更されている。天吊り金具は歴代LP-Zシリーズとの共用だが、壁掛け設置金具は専用のものが必要になるという点は、留意しておきたい。
投射レンズはLP-Z3の光学1.3倍ズームから、一気に光学2.0倍ズームへと強化された。TH-AE900、PJ-TX200Jなど、競合が軒並み1.6~2.0倍を採用していることもあり、足並みをそろえた格好だろうか。 なお、ズーム倍率は向上したが、100インチ(16:9)の最短投射距離は先代LP-Z3と同じ約3.0mに据え置かれている。2.0倍のズーム倍率は、短焦点性能の向上というよりも、投射距離が長くなっても任意の画面サイズで投射できる、という設置性向上のために備えた性能と考えた方がよい。 LP-Z3では12畳(投射距離約6m)ではズーム最小にしても150インチ(16:9)にまで画面が広がってしまっていたのだが、LP-Z4では同じ投射距離で画面サイズを100インチ~150インチ(16:9)の任意のサイズで投射できるようになった。 投射レンズが一新されたものの、レンズシフト機能は従来通りの性能を継承。シフト量は上下±50%(1画面分)、左右±25%(0.5画面分)で、LP-Z3の仕様と同じだ。 上下のシフト量はそれなりにあり、本体サイズも大きくなったとはいえ、奥行きもギリギリ30cm程度なので、部屋の最後部に置かれたサイドボードや大きめの本棚の天板に載せての「オンシェルフ設置」でも、画面の高さを任意の位置合わせられるだろう。天地逆転しての疑似天吊り設置は行わなくてもいいのだ。 光源ランプはLP-Z3と同じく超高圧水銀系UHPランプを採用するが、出力は10Wアップとなり、145Wのものが採用されている。交換ランプもLP-Z4専用の「POA-LMP94」(31,500円)が設定されることとなったが、値段はLP-Z3から据え置かれ、ランニングコストには変化がない。 静粛性はLP-Z3からさらに高められ、低輝度モードで公称22dB、高輝度モードでも公称26dBを達成しており、非常に優秀。かろうじて聞こえる、という程度の動作音で、ブライトモードでもプレイステーション2(SCPH-30000モデル、以下PS2)よりかなり静かであった。 吸気は背面のスリットから、排気は正面向かって左側面のスリットから行なうデザイン。光漏れは正面向かって左側からの排気スリットより多少あるが、投射光軸と無関係なので投射映像に影響は少ない。背面には吸気スリットがあり、ここにはエアフィルタが装着されている。マニュアルには定期的な交換を促されているので、常設設置であまり背面を壁に寄せてしまうと、この交換がやりづらくなってしまうばかりか、吸気効率に影響が出る可能性がある。LP-Z4は極端に背面を壁に寄せて設置するのは避けた方が良さそうだ。
■ 接続性チェック
アナログビデオ入力系はコンポジットビデオ、Sビデオ、コンポーネントビデオ、D4が各1系統ずつ。コンポーネント系はRCA端子×3のコンポーネントビデオ接続端子だけでなくD4端子までも用意してくれているあたりが、日本市場に配慮した感じがして好印象だ(前回取り上げたPJ-TX200JはD4端子未搭載)。 デジタルビデオ入力系としては、LP-Z3より採用されたHDMI端子を実装。PC入力は、D-Sub15ピン端子によるアナログRGB入力に対応する。市販のHDMI-DVI変換アダプタを用いてPCとのデジタルRGB接続も可能だ。
■ 操作性チェック
リモコンは前回取りあげたPJ-TX200Jと酷似した小型タイプを採用。OEMと思われるこの系統のリモコンは、多くのプロジェクタ製品に採用されているが、プロジェクタ側の機能が増えてボタンの数の増加に対応するのにはもはやギリギリという感じだ。特に今回のLP-Z4のリモコンでは、LP-Z3の時以上にボタンが小型化され、ボタン上の文字も小さくなっている。 小型リモコンは、現在の家電のトレンドではあるのだが、小さすぎて使いにくいのでは困る。前々回取りあげたTH-AE900のように、リモコンをあえて大型化し、学習リモコン機能まで付けてしまう、という逆のアプローチの方が、かえって便利に思える。 リモコン上の最上段左端の[LIGHT]ボタンを押すことで全ボタンが緑色にライトアップされる。なお、[LIGHT]ボタンそのものは蓄光式で暗闇で鈍く光る。 各ボタンは小さくも字も小さく、たとえば[LAMP]ボタンの「M」の文字の全幅は実際に計ってみると1mm。これを判読するのは至難の業かもしれない。 電源ボタンは赤みを帯びているが別に赤く光るわけではない。電源ボタンを押してから三洋のロゴが表示されるまでが約8.5秒(実測)、その後、投射開始までのカウントダウンがはじまり、実際にHDMI入力の映像が表示されるまでは約31秒(実測)かかる。スタートアップ時間は先代LP-Z3とほぼ同等で、最近の競合機と比較すると遅めといわざるをえない。 [LAMP]ボタンはLP-Zシリーズ伝統の特徴的な調光回路の動作モードを設定するもので、[LAMP]ボタンを押すたびに設定モードを順送り式に切り替えられる。切り替え所要時間は体感でゼロ秒。 [NO SHOW]ボタンは投射映像を一時的に非表示にしてブラックアウトさせるもの。[FREEZE]ボタンは投射映像の表示を一時的に停止させるものだ。このあたりの機能はプレゼンテーション用途などに役立つことだろう。 その下の[MENU]ボタン、[RESET]ボタン、十字キー、[OK]ボタンは、LP-Z4のメニューを操作するためのものになる。 [MENU]ボタンでメニューを起動し、十字キーの上下でメニューアイテムを選択、[OK]ボタン(あるいは十字キーの右ボタン)を押すことで、その項目の調整に取りかかるという操作系。
実際の調整操作は、メニュー画面が消え、調整中のパラメータのみが画面下部に表示される方式なので調整の影響がどう投射映像に及ぶのかをリアルタイムにチェックしながら行なえる。調整中、[RESET]ボタンを押せばその瞬間に基準値に戻すことができるので、ためらいなく大胆な変更を行なって効果を試すことができる。調整を完了して、調整操作メニューから一階層戻るには[OK]ボタンを押せばよく、調整操作自体を完了するには[MENU]を押す。 LP-Z3では十字キー左でメニュー階層を戻ることができなかったが、LP-Z4ではこれが可能になった。メニュー操作のレスポンスも良好で、きびきびとした動作に洗練された印象を受ける。しかし、相変わらず、メニューアイテムが多すぎて、希望の調整項目を捜すのにページ送り操作が必要で一覧性に欠ける点は改善されていない。
[SCREEN]ボタンは表示映像のアスペクト比の切り替えボタン。順送り式に切り替わり、その所要時間はゼロ秒。押した瞬間に切り替わり、連打してもその操作に追従してくるほど高速だ。アスペクトモードは非常に多彩で、以下のモードが用意される。
[IMAGE]ボタンは、画調パラメータ調整メニューへ直接飛べるショートカットキー的な役割を果たす。 LP-Z4では、「明るさ」、「コントラスト」、「色の濃さ」、「色合い」、「色温度」、「ホワイトバランス」、「画質(シャープネス)」、「ランプコントロール」、「ガンマ補正」といった基本画調パラメータに加え、「プログレッシブ」、「レンズアイリス」、「ランプアイリス」、「黒伸張」、「コントラストエンハンスメント」、「輪郭補正」といった映像エンジンの動作に関わるパラメータのユーザー調整値をユーザーメモリに記録することができる。なお、ユーザーメモリは4つあり、全入力系統から共有される管理方式を採用する。 十字キー直下に配置される[BRIGHT]、[CONT.]、[COLOR]の各ボタンは、それぞれ「明るさ」、「コントラスト」、「色の濃さ」の調整メニューを直接呼び出すもの。調整マニアがよく使うボタンを、ショートカットキーとして用意したという感じだろう。
そしてLP-Z4には、ユーザーオリジナルの画調モードを直感的に作り込めるようにと、「カラーマネージメント」機能という凝った調整モードが新設されている。この調整モードを起動すると、表示映像が静止。続いて十字キーで表示映像の任意の箇所をポイントして調整した色を選択する操作になる。 あとは選択した色を「レベル(明暗)」、「色相(色合い)」、「ガンマ(階調)」の3パラメータを調整していき、希望の発色に追い込んでいく。調整結果はリアルタイムに適応され、映像の変化を確認しながら調整が可能だ。調整ポイントは1ユーザーメモリにつき8個まで登録可能。人肌がどうしても好みの色合いにならないときなど、特定の系統の色だけの発色を選択式に調整可能なので、初心者にも好みの画調に追い込みやすい。 [IRIS]ボタンは、投射レンズ側に仕込まれた「レンズアイリス」の絞り状態を設定するもの。-63(最小絞り)~0(開放)の64段階に設定が可能だが、LP-Z4では、これも画調パラメータという扱いになるため、プリセットの画調モードの切り替え等で設定はリセットされてしまう。設定を維持したいのであればユーザーメモリを活用する必要がある。
[PRESET]はプリセットの画調モードを順次方式に切り替えるボタン、[USER]は4つあるユーザーメモリを順次切り替え方式に呼び出すためのボタンになる。切り替え所要時間はアスペクト切り替えよりもややもたつくが、それでも0.5秒(実測)程度で、「待たされる」という感じではない。 リモコン最下段にあるのは入力切り替えボタン群。[VIDEO]=コンポジットビデオ、[S-VIDEO]=Sビデオ、[C1]=コンポーネントビデオ、[C2]=D4、[HDMI]=HDMI、[PC]=アナログRGBという各入力に1対1に対応する入力切り替えボタンが用意されており、希望する入力に一発で切り替わる直感的な操作系を採用する。切り替え所要時間はSビデオ→HDMIで約1.5秒(実測)、HDMI→D4で約2.1秒(実測)と、早くはないのだが、順送り切り替えではないのでストレスはない。
■ 画質チェック 液晶パネルが、開口率向上を果たしたエプソン製D5パネルとなったことと、光源ランプの出力が10Wアップしたことの相乗効果で、最大輝度は1,000ANSIルーメンとなった。先代LP-Z3の800ANSIルーメンから200ANSIルーメン明るくなったことになる。なお、この最大輝度はランプを「ブライトモード」で駆動したとき、あるいは画調モードを「パワフル」とした時の値になる。 1,000ANSIルーメンという輝度性能はスペック的にはTH-AE900、PJ-TX200Jなどよりも低いが、蛍光灯照明下であっても映像の内容が普通に理解できるほど、必要十分な明るさがある。TH-900やPJ-TX200Jと比較して暗いという実感はない。昼間でもちょっとカーテンを閉めた程度で、ニュースやバラエティ番組、スポーツ中継などをテレビに近い感覚で見ることができる。 公称最大コントラストは7,000:1という、PJ-TX200Jに並ぶ数値を示してきたが、これは前回のPJ-TX200Jの時に解説したように、値自体にそれほど大きな意味はない。 7,000:1というコントラスト性能は「ツインアイリス」と呼ばれる2つの絞り機構と、可変輝度ランプ駆動の「リアクトイメージ」モードを組み合わせた時の値になる。具体的には2つの絞り機構を最大に絞り、ランプを最も暗く駆動したときの黒と、2つの絞り機構を開放してランプを最も明るくした時の白の輝度値から算出しており、1フレームを表示している限りでは絶対に視覚できないコントラスト比なのだ。実際に映像を静止して見たときの体感上のコントラストは800:1~1,000:1前後という印象だ。 最近の透過型液晶プロジェクタでは、原理上どうしても限界があるコントラスト性能に対し、時間積分型のアプローチで、コントラスト性能を稼ぐようになってきている。時間積分型とは、一定時間映像を連続で見ることによって、そのシーンの移り変わりの中で視覚される明暗の対比をコントラストと感じさせる方策だ。 LP-Z2より搭載され続けている「リアクトイメージ」モードは、入力された映像の平均輝度に応じてランプ輝度を変化させるもので、これも時間積分型のコントラスト演出法であった。リアクトイメージは、ランプ出力70%~100%の範囲で駆動制御を行なう「リアクトイメージ1」と、70%~90%の範囲で駆動制御を行なう「リアクトイメージ2」の2モードが用意されている。モードの切り替えは動的ランプ駆動を行わないランプ100%出力固定の「ブライトモード」、ランプ70%出力固定の「シアターブラックモード」を含めて、4つの中から選択し随時行なえ、設定値は画調モードを切り替えると上書き設定される。
今回LP-Z4より採用された「ツインアイリス」は、文字通り、2つのアイリスを本体内に内蔵した新機構。 1つ目のアイリスはランプからの光源を無段階に増減することができる「ランプアイリス」で、こちらも入力映像の平均輝度に応じた開度制御を行なう。2つ目のアイリスである「レンズアイリス」は投射レンズ側に組み込まれており、主に迷光を低減して黒浮きを抑える役割を果たす。こちらは入力映像とは無関係に、ユーザーあるいはプリセット画調モードが設定した絞り開度が維持される。 ランプアイリスは「自動」、「オープン(開放)」、「クローズ(最小)」の3つの設定が可能。「自動」が映像の平均輝度に応じて絞り具合を変化させるモード。なお、変更は随時可能だが、その設定値は画調モードを切り替えると上書き設定されてしまう。 レンズアイリスは-63(絞り最小:開度60%)~0(開放:開度100%)の設定が行なえ、こちらも変更は都度可能なものの、画調モードの切り替えで設定値は上書きされてしまう。 実際に使ってみた感じでは、ランプアイリス=「自動」は、PJ-TX200Jの時と同じで、絞り変更速度が映像の移り変わりについて来られず、シーンが切り替わったときに遅れて明るくなったり暗くなったりする。たとえばDVD映画ソフト「アビエイター」のチャプター7の夜間飛行シーンなどは、カメラの切り替わりで明暗が変わるので、そのたびに絞り状態が変更され、フッと暗くなったり明るくなったりして違和感がある。PJ-TX200Jのように、ランプアイリスの「自動」は効き具合を抑えたモードバリエーションがほしかった。 遅れて明暗が変わる現象はランプアイリス=「自動」と、動的ランプ駆動のリアクトイメージモードと併用したときに顕著だが、どちらか一方のみを活用するのであればこの不自然さはかなり軽減される。実際の活用ではどちらか一方のみを活用したほうがよさそうだ。 黒浮きは、画調モードやランプ駆動モードにもよるが、暗いシーンでは黒が大部灰色っぽく発光していることに気づかされることがあり、やはりあるにはある。これは透過型液晶プロジェクタの原理的な弱点なので完璧になくすことは難しいわけだが、それでも、レンズアイリスを-50以下にまで絞ると低減される。 階調表現は概ねリニアにまとめられており、明から暗へのグラデーションもスムーズだ。特に中明部から中暗部がなだらかに感じる。LP-Z4では階調演算をLP-Z3の10ビットの4倍の精度を持つ12ビットに拡張されたが、その恩恵かもしれない。 暗部の階調は明部とのバランスを考えると相対的にやや沈み込んでおり、三洋らしいコントラストを稼ぐ方向に振ったチューニングになっている印象を受ける。やや作為的とはいえ、店頭などでの他機種との比較投射では一番クリスピーに見えるかもしれない。 発色は、これまでのLP-Zシリーズの派手目な傾向が大部抑えられ、ナチュラルかつ理性的な印象がつよくなった。純色は、青と緑にパワーが感じられる。強いて言えば、光源ランプの傾向か、赤はやや朱色よりに感じられるが、嫌気がさすほどではない。 中明部から中暗部の階調表現に力が入っている恩恵だろうか、人肌の陰影のリアリティが素晴らしい。超高圧水銀系ランプによる人肌への黄緑感がないだけでなく、わざとらしい赤みの付加もなく、非常に自然なのだ。
パネル解像度は1,280×720ドット。画素形状は正方形の上辺の角2つが取れたような形。画素を縦横に区切る格子線はあるにはあるが60~80インチ程度で2mも離れてみればわからないレベル。100インチオーバーになったり、CGやアニメのような斜め線がくっきりと見えやすい映像では格子感を感じることがあるが、実写映像で気になったことはなかった。 フォーカス性能は、近づいて画素を見る感じではLP-Z3よりも大部改善されたと思われる。画面外周と画面中央付近のフォーカスに差が小さく、色収差による色ズレも最低限に抑えられている。投射性能としての解像感はこのクラスとしてはかなりがんばっていると感じる。レンズ性能に自信を持っているPJ-TX200Jにひけを取っていないと思う。
さて、ツインアイリスとリアクトイメージの他、LP-Z4には「黒伸張」「コントラストエンハンスメント」「輪郭補正」という3つの高画質化機能が映像エンジンに付加されている。 「黒伸張」は暗部階調をさらに沈み込ませるものでオフ/L1~L3(沈み込ませ量:最大)の設定が選べる。特に使い道が見あたらないので普段はデフォルトのオフ設定でいいだろう。 「コントラストエンハンスメント」は文字通り、コントラストを強調化するものだが、入力映像に対して適応型処理がなされるようでなかなか興味深い挙動を示す。映像中に明色が多い場合は、明色を暗めにし、暗色が多い場合はこれを持ち上げる。L2/L3はやりすぎ感があるが、L1設定では、映像に適度なメリハリが増して面白い。 「輪郭補正」は色エッジを明確化する処理が適用されるもので、オフ/L1~L3(強調量:最大)の設定が選べる。HDMI接続では必要性は感じないが、アナログビデオでは埋もれていた色ディテールが再現されることもあり、実用性はそれなりにある。実写映像では髪の毛の線表現や衣服の陰影に立体感が増す。単色の面表現にはほとんど影響を出さないので、アニメなどでは黒色の輪郭線のみを際立せることができかなり効果的。L1あるいはL2設定を活用するユーザー画調モードを作っておくといい。
■ まとめ 4世代目となったLP-Zシリーズ。画質面では、荒削りだった初代からトゲが取れ、ますます洗練されてきた印象がある。輝度優先で、やや派手目な画作りは相変わらず受け継がれている感じはあるが、そこがLP-Zシリーズの個性とも言える。
ツインアイリス機能は、PJ-TX200Jのデュアルアイリス同様にスペックのために用意されたという感じで、この機構の熟成は次期モデルの完成を待たなければならないという気がするが、レンズアイリスとリアクトイメージだけでもLP-Z4の持つ表現能力は必要十分に体感できる。 また、新開発の2.0倍ズームレンズは設置性向上のみならず、LP-Z3で気になったフォーカス斑、色収差による色ズレを完璧ではないもののかなり低減されており、これがさらなる画質向上をもたらしている。 LP-Z1/Z2あたりまではコストパフォーマンス重視という印象もあったが、LP-Z4ではそうした妥協部分もなく、画質に関しては他機種に見劣りする部分はない。こうなると製品選びは機能差が重要になる。LP-Z4のアピールポイントというと、小さな部屋から大きな部屋まで対応する設置性の自由度や電動レンズカバー。また、壁掛け設置ということになるだろう。
□三洋電機のホームページ (2005年10月27日) [Reported by トライゼット西川善司]
AV Watch編集部 |
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