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最新MPEG-4レコーダ/プレーヤーの実力は?
ワイド4型液晶搭載のDivX/XviDプレーヤー
コウォンジャパン「COWON A2」
11月24日発売
標準価格:オープンプライス
実売価格:49,800円


■ 「iAUDIO」でなく「COWON」ブランドでビデオプレーヤー参入

 iPodも第5世代で、ビデオ対応を果たし、いよいよマルチメディアプレーヤー市場が立ち上がる機運も見え始めた昨今。しかし、本格的にビデオを見たい場合、iPodでは2.5型/320×240ドット液晶はややもの足りない。一方、低価格プレーヤーとして人気のあるPSPも、メモリースティックDuoの容量の制限により、大容量のコンテンツを蓄積できないという点で不満は残る。

パッケージ

 大容量HDD搭載の大型ビデオプレーヤーと言う点では、先日クリエイティブが発売した、3.7型/VGA液晶と30GB HDDを搭載した「Zen Vision」があるが、iAUDIOブランドを展開するコウォンジャパンも、20GB HDDと4型ワイド液晶を搭載した「COWON A2」を24日に発売する。

 COWONは、オーディオプレーヤーについては「iAUDIO」のブランドで人気を集めており、HDD搭載の上位モデル「iAUDIO X5」では小型ながらカラー液晶を搭載し、メディアプレーヤーとして展開していた。しかし、本格的なビデオ/マルチメディアプレーヤーにおいては社名の「COWON」を全面に打ち出したブランド展開とするようだ。

 対応ビデオファイルは、DivX/XviD/WMV9/MPEG-4 SimpleProfile。MPEG-1/2の非サポートは残念ではあるが、Zen VisionでもMPEG-2に関しては、あまり実用的に扱えなかったことを考えると、競合との比較に置いてマイナスとなることはないだろう。

 また、Zen Visionと比較するとCFカードスロットは省かれているものの、USBホスト機能を搭載し、デジタルカメラやオーディオプレーヤーのMP3データの取り込みが可能。さらに、MP3のダイレクトエンコード機能に加え、MPEG-4の録画機能を搭載するなど、COWON A2ならではの特徴も有している。今回は韓国COWONで公開されている最新のベータファームウェア(Ver.1.38c)を利用してテストを行なった。



■ 4型ワイド液晶搭載。重量感あるデザイン

パッケージ

 同梱品は、ACアダプタやAVケーブル、イヤフォン、USBケーブル、CD-ROM、ストラップなど。

 前面に480×272ドット/1,600万色表示の4型ワイド液晶を搭載。その右脇に4方向操作を押し込み可能なジョグレバーと、BACKボタン、A/B/Cボタンを備えている。外形寸法は133×22×78mm(幅×奥行き×高さ)、重量は298g。PSP(170×23×74mm/280g)と比較すると横幅は小さいが、ずっしりとした重厚感がある。ジョグレバーの採用により、片手でほぼ全ての操作体系は新鮮だ。

 電源ボタンは本体右脇で、その上部にはストラップホールも用意。ステレオスピーカーも内蔵している。ヘッドフォン出力や、AV入出力、USBなどは本体左脇にまとめられている。また、本体下面にはHOLD/AV出力切替兼用のスライドスイッチを用意している。

 液晶の解像度はZen Visionに及ばないが、Zen Visionでは無かったストラップホールの装備は嬉しいポイントだ。付属のイヤフォンは従来のiAUDIO製品とはひと味違うスクエアなデザイン。音質は悪くないのだが、イヤーパッドを付けていないと、滑りやすく耳から外れがちだ。


4型/480×272ドットのワイド液晶を搭載 背面 上部にステレオスピーカーも装備
左側面にヘッドフォン出力やAV入力、AV出力、USB 2.0、USBホストなどを装備する 右側面に電源ボタンを装備。ストラップホールも用意している 底面のHOLD/AV出力切替スイッチ
付属イヤフォン PSPとの比較 PSPや第5世代iPodとの比較


■ DivX/XviDでの利用が中心に

Video Converter

 PCと接続すると、USBストレージとして認識され、[VIDEO]、[MUSIC]などの各フォルダにそのまま転送できる。オーディオ統合ソフトの「JetAudio」と「JetShell」がバンドルされており、その一機能としてビデオ変換ソフトの[Video Converter]が用意されている。

 このVideo Converterを利用することで、COWON A2に最適化したXviDファイルを作成できる。MPEG-2ファイルを登録すると、416×272/368×272ドットなどCOWON A2に適した解像度を自動登録し、ビットレートは768kbpsに固定。オーディオはMP3 128kbpsで変換される。

 対応の動画ファイル形式はAVI/ASF/WMVで、コーデックはDivX 3.11/4/5と、XviD/WMV9/MPEG-4 SimpleProfileをサポートする。解像度は最大720×576ドット、フレームレートは30fpsまでサポートするが、WMV9に関しては352×288ドットまでに制限される。

 VGA/約1Mbps以上のDivXも特に問題なく再生される。音声をMP3としたDivX/XviDで、フレームレート30fps程度であれば、問題なく再生できた。WMV9については、320×240ドット/CBR/30fpsのファイルは問題なく再生できる。しかし640×480ドット/2Mbps/30fpsのWMVファイルを転送したところ、一応再生開始したものの、コーミングが激しく、時折止まってしまうなど、実用レベルでは使えない。また、映像/音声をVBRにしている場合も再生できないので注意が必要だ。

 MPEG-2は本体から認識されず、拡張子をAVIとしても再生できない。また、PSP用のH.264/MPEG-4 AVCファイルと、MPEG-4ファイル、iPod用のMPEG-4 AVCファイルも転送したが、同様に認識されず、拡張子をAVIに変更しても、「ファイルフォーマットが違う」とのエラーメッセージが表示され、再生できなかった。基本的にはDivX/XviDでライブラリを構築している人向けという、位置づけだ。

メインメニュー ビデオ選択画面。右下にファイル情報が表示される MPEG-2は再生できない


■ シンプルな使い勝手。MPEG-4録画機能の使い道は?

 本体右脇の起動時間は7~10秒程度。ファイル数が増えても起動レスポンスはさほど変わらない。起動すると、ビデオ/オーディオ/フォト/テキスト/ファイル一覧/FMラジオ/レコード/設定の各モード選択画面が立ち上がる。ここでビデオを選択することでビデオプレーヤーモードとなる。

再生できないファイルは[×]で示される

 ビデオモードでは[VIDEO]フォルダ以下のファイルがアルファベット順に表示され、これらを選択することでビデオ再生が可能だ。フォルダ階層管理も可能なので、PC上でフォルダを切ってビデオ管理を行なっていれば、そのままの状態で転送ができる。

 また、このブラウズ画面では、液晶右下にファイル情報が表示され、ファイルサイズやビデオ/オーディオコーデック、再生時間などが確認できる。再生できないファイルの場合、液晶右に[×]と表示される。再生前にファイルの対応状況を確認できるので、なかなか便利だ。

 本体右上のジョグレバーで再生ファイルを選択し、レバーを押し込むことで再生開始となる。ファイル選択時の操作レスポンスは第5世代iPodとほぼ同等という印象。レバー操作後に若干引っかかりというか描画の遅れを感じるが、1秒以内の遅延なので、待たされるという感じではない。

 決定操作後、約6~10秒程ローディング時間が必要で、ここでは少し待たされる印象はある。なお、1時間など長尺のコンテンツを読み込んだ場合でも、ローディング時間はさほど変わらない。

 ジョグレバーを押し込むことで再生/停止となり、左右に倒すと早送り/戻し、上下はボリュームコントロールになる。非常にシンプルな操作体系なので、戸惑うことはないだろう。早送り/戻しもスムーズで、レスポンスも良好だ。また、ブラウズ画面でビデオファイルを選択し、登録するとプレイリストも作成可能。ブラウズ画面でCボタンを押すと、プレイリスト再生も選択できる。

 BACKボタンを1回押すとビデオを再生しながら上層のブラウズ画面を表示。BACKボタンの2回押しでメインメニュー、3回で再生画面に戻る。Bボタンを押すと、設定変更メニューを呼び出して、アスペクト比の変更や字幕表示モード、字幕同期、サブタイトルカラー、3Dステレオ、液晶輝度、コントラストなどの各種設定を、映像を見ながら調整できる。

 アスペクト比は自動/16:9/4:3が選択できる。自動はソースのアスペクトを維持して再生するモードとなっている。また、[字幕]については字幕ファイル(.smi)がある場合に利用するモードとなる。

操作はジョグレバーと、4つのボタンで行なう 再生画面。OSDから設定変更が行なえる

ビデオ再生しながら、設定などの操作が行なえる

 液晶の表示画質は良好で、解像感も十分。画質はソースにも依存するが、色再現もPSPと遜色なく、応答速度も十分だ。ただし、映り込みはそれなりにあるので、蛍光灯下で暗いシーンになると自分の顔がしっかり見えてしまう。また、晴れた日の屋外でも内容は確認できるが、字幕付きの映画などでは厳しいかもしれない。

 液晶の視野角は、上下方向の方がかなり狭くなるように感じた。それでも、左右方向については視野角の変化に応じた色再現の変化も少なく、Zen Visionより視野角は広そうだ。バックライトに起因する白飛びや黒浮きも押さえられており、暗部再現性もなかなか良好だ。暗いシーンの多い、「バットマン・ビギンズ」の予告編などでも十分細部が確認できる。


付属ケーブルでAV出力も可能

 AV出力機能も備えており、付属のAVケーブルを介して、テレビに出力できる。出力品質も良好で、VGAのDivXであれば20インチ台のテレビに出力しても、地上アナログ放送と遜色ないレベルで視聴できる。

 さらに、COWON A2ならではの特徴として、ASF形式(MPEG-4/MP3)のビデオ録画機能も搭載している。録画モードは640×480ドット/1Mbps、640×480ドット/800kbps、362×272kbps/800kbps、362×272kbps/500kbpsの4モードを用意している。

 録画品質も良好だが、外部入力検出録画や、タイマー録画などが無いのが残念。つまり、録画する場合は、録画するテレビ番組放送時間にあわせて、ビデオデッキなどにA2を接続し、本体で録画を行なうなどの手間が必要となる。外部入力を検出して録画開始してくれれば、テレビチューナやCATVのSTB、レコーダなどと接続して、それらでタイマーセットしておけば、自動的に録画できるわけで、そうした使い勝手の向上も望みたいところだ。

 もっとも、この機能をCOWON A2の重要なセールスポイントとしているようだが、テレビパソコンやDVDレコーダの普及率が高い日本の市場では、あまり必要ないようにも思える。

レコーディング画面。録画中はプレビュー画面の表示が行なわれない 録画モードは4モードが用意される


■ オーソドックスなオーディオプレーヤー機能

 メインメニューから[オーディオ]を選択することで、音楽プレーヤーモードとなる。ビデオモードと同様に[Music]フォルダ以下の、フォルダ/ファイルが表示される。再生モードはシンプルで、フォルダの昇順に再生される。MP3/WMA/OGG/WAV/mp3PROの再生が可能となっている。

情報量の多い音楽再生画面

 操作は[ビデオ]モードとほぼ共通で、ジョグレバーを中心に楽曲を検索し、中央に押し込んで決定。特殊な機能は無いものの、操作はシンプルでレスポンスも悪くない。普通にオーディオプレーヤーとして利用できる。ただし、楽曲再生中でボリューム操作ができるのは再生画面のみ。ビデオも同じなのだが、楽曲検索中にボリューム変更ができないのがやや気になった。

 音質も良好で、同社のiAUDIOシリーズと基本的な音作りは似ており、しっかりした再生品質を確保している。iAUDIOシリーズの特徴ともいえる独特の高域の艶はそれほどでもないが、BBEやMach3Bass、MP3Enhanceなどの独自の高音質機能も引き続き搭載し、好みにあったカスタマイズが行なえるのは相変わらず魅力的。ビデオプレーヤーと同様に再生中にBボタンを押すことで、BBEやMach3Bassなどの設定を変更できる。

 特徴的なのは4インチの大画面で楽曲情報を表示するため、アーティストや楽曲情報に加え、イコライザや各種設定まで一覧できること。同社のiAUDIO 5などでも、大型液晶による情報量をアピールポイントとしていたが、そうしたiAUDIOのノウハウがCOWON A2に活かされていると感じられる。

BBEなども引き続き搭載 音楽再生画面から各種設定変更が行なえるのも魅力

フォトビューワも搭載

 また、フォトビューワ機能も搭載。フォルダを選択して、ジョグレバーで決定するだけでJPEG/BMP/PNGファイルの表示が可能。レバーの左右で、前/次のファイルに移動、レバーを押し込むことで2段階のズームが行なえる。スライドショー機能は備えていない。

なお、当初のファームウェアでは、400万画素以上のJPEGは読み込めなかったが、韓国COWONに掲載されたベータファームウェアVer.1.38cを適用したところ、600万画素のデジタルカメラ画像も表示可能となった。機能的にはまだシンプルだが、今後の機能強化にも期待したいところだ。テキストビューワ機能も備えている。

 さらにUSBホスト機能を搭載し、デジタルカメラなどからのデータ読み込みも可能。「ファイル一覧」のメニュー画面で、Cボタンを押すとUSBホストを有効となり、デジカメやMP3プレーヤー上のデータを読み込みできる。今回、デジタルカメラ「オリンパス E-1」は認識されなかったが、「iAUDIO 5」上のMP3ファイルはコピーでき、再生も行なえた。なお、2MBの楽曲転送に約15秒かかり、速度的にはUSB 1.1のようだ。

 バッテリは内蔵リチウムポリマ(4,300mAh)で、バッテリ駆動時間は動画再生時が10時間(MPEG-4/480×272ドット/24fps時)、音楽再生時が約18時間(MP3/128kbps)。

USBホスト機能は[ファイル一覧]から利用する iAUDIO 5から取り込んだMP3ファイルは自動的にMusicフォルダ以下に格納された


■ 充実のメディアプレーヤー。ファームアップによる機能強化にも期待

 機能的には充実しており、動画の再生品質も良好。再生時の読み込みと停止時にやや時間がかかるのは難点だが、レスポンスが悪いというほどでもない。再生フォーマットが、汎用的なDivXなので、テレビキャプチャカードなどテレビパソコンとの親和性はいい。しかし、iPodのビデオ対応により、人気のコーデックも変わってきているのも事実。PSPやiPodでも利用できるMP4にも対応して欲しいと感じる。今後のファームアップでの対応も期待したいところだ。

 もっとも、現状でもDivXでライブラリを作成しているユーザーにとっては、手に取りやすい製品。競合機としてクリエイティブのZen Visionを想定すると、パネル解像度ではZen Visionの方が上だが、色再現ではCOWON A2のほうがナチュラルで好ましいと感じる。また、外部出力の画質も良好で、USBホストやダイレクト録画などはCOWON A2のアドバンテージと言えそうだ。

 とはいえZen VisionはHDDが30GBと1.5倍の容量ながら、価格は同等のため、容量を重視する人には、Zen Visionの方が魅力的に写るかもしれない。第5世代iPodやPSPなどの競合は多いが、大画面/HDD型という意味では数少ない選択肢。社名をブランド名に持ってくる当たりにも意気込みを感じさせてくれる。今後の発展にも期待が持てるプラットフォームで、実際、JPEGが400万画素までしか表示できなかったものが、ファームウェアのアップデートで1,000万画素まで拡張される(ベータファームだが)などの機能強化が行なわれている。MP4対応など将来の拡張にも期待したい。

□コウォンジャパンのホームページ
http://www.cowonjapan.com/
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(2005年11月11日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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AV Watch編集部

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