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HDMI搭載低価格32型液晶テレビの実力は?
ハイビジョンレコーダとの組み合わせが最適
アイ・オー・データ機器 「FTV-320H」
11月中旬発売
標準価格:オープンプライス
実売価格:139,800円


■ 低価格大型液晶テレビもHDMI搭載

 液晶/プラズマテレビの価格下落は年間30%以上という猛烈な速度で進み、フラットパネルテレビ普及の目安といわれたインチ1万円を簡単に突破。既に大手国産メーカー製でも、ローエンドモデルであれば、インチ7~8,000円程度、32型では20万円台で購入できるまで価格は下がっている。

 また、大手家電メーカー以外でも、30型以上の低価格テレビが増えている。特に家電系のルートでなく、大手流通や量販店ベースで中国台湾メーカーとの競業による戦略価格の製品が多く、イオンやバイ・デザイン、ノジマなどから30型以上の製品がリリースされている。その多くが液晶テレビで、デジタルチューナは付かないが、99,800円から14万円程度とかなり安価になっている。

 まさに、フラットパネルテレビ花盛りの昨今だが、「将来のディスプレイ環境」を考えた時に重要となるのがHDMI端子。1本のケーブルで映像/音声をそのままの画質でデジタル伝送できるというメリットはもちろんのこと、Blu-ray/HD DVDなどの次世代光ディスクでは、時限的にアナログ出力が許可される可能性もあるが、将来的にはHDMIによるデジタル伝送が必須となる予定。そのため将来を考えて購入するならば、HDMI搭載機を選択したい。

 大手メーカーでも、今年の夏商戦まではHDMIを上位モデルのみの差別化ポイントとして位置づけており、ミドルからローエンドの製品ではほとんど搭載していなかった。ようやくこの年末商戦でローエンド近くまで降りてきた感じではあるが、ソニーのBRAVIAのエントリーモデル「S/Vシリーズ」など搭載を見送るメーカーもあり、本格的な普及にはまだ時間がかかりそうだ。

 さらに低価格液晶テレビに至っては、HDMI搭載の30型以上というと、アイ・オー・データの「FTV-320H」とユニデンの「TL32WRJ」程度。しかし、大手メーカーでも行き渡っていないHDMIを、いち早く低価格テレビに搭載したというのは大きな差別化ポイントだ。デジタルチューナは搭載しないが、デジタルCATVの加入者にはそもそもデジタルチューナは不要だし、その分よけいなコストを削減できるというメリットもある。今回は「FTV-320H」を使って、低価格液晶テレビの実力を検証した。



■ 至って普通の液晶テレビ

 32型の液晶パネルを搭載し、解像度は1,366×768ドット。輝度は500cd/m2、コントラスト比は800:1、応答速度は12msで、視野角は上下左右170度。パネルメーカーは非公開だが、国産メーカーとのこと。

 本体デザインはオーソドックスなアンダースピーカー型で、グレー系のパネル部とシルバーのスピーカー部のツートンカラーは、一昔前の東芝製液晶テレビの印象も。ただ、今日の大手メーカー製品と比べるとやや額縁が広めではある。

 台座を含む外形寸法は818.3×280.5×643.8mm(幅×奥行き×高さ)で、端子部も背面下側に出すデザインなので、奥行きは30cm程度あれば設置できる。台座を含む重量は19.5kg。一人でもなんとか持ち運べなくもないが、液晶パネルをキズつけないためにもできれば2人以上で設置作業を行ないたいところだ。

 チューナは地上アナログ(UHF/VHF/CATV)。映像入力端子としてHDMI×1、D4×2、コンポジット×3、S映像×1(コンポジット1つと排他利用)、アナログRGB(D-Sub 15ピン)×1を備える。音声入力はアナログ×5を用意。側面の、S映像、コンポジット、アナログ音声の各入力と、イヤフォン出力を除いて、入力端子は背面に集中しており、端子下部のケーブルカバーでケーブルをまとめられる。


アンダースピーカー型のデザインを採用 側面。スタンドを含む厚みは280.5mm。右側にヘッドフォン出力とS映像、コンポジット、アナログ音声入力を装備する
背面 HDMIやアナログRGB、2系統のD4端子を装備する スピーカー上部に操作ボタンも装備し、本体でも基本操作が可能。リモコン受光部もここに備える

リモコン。入力切り替え用のダイレクトボタンや子画面ボタンなどを装備する

 リモコンのデザインはオーソドックスで、きちんと12チャンネル分のキーが付いている。さらに、12キーの下に十字キーや音量、チャンネルボタンを備えるほか、上部には入力切替ボタンを用意し、ビデオ/D端子/HDMI/PC/テレビの独立ボタンから各入力にアクセスできるなどなかなか良くできている。

 さらに、[子画面]表示関連のボタンを6つも装備。オン/オフ下部設定や、画面切替/入力切替/サイズ/位置/音声入替など妙に子画面表示機能が充実しているあたりが、ユニークだ。



■ HDMIモニターとしては魅力的

・地上アナログ表示は今ひとつ

 電源を入れてまずは地上アナログを視聴してみた。リモコンの応答は、普通に使う分には悪くないが、上からの受光性能が非常に悪い。そのため、床置きして、イスに座りながら見下ろすような設置状況で使う場合は、右下部の受光部にきちんとリモコンを向けて操作しないとまず反応してくれないので、床置き設置を念頭に置いている人は注意されたい。

 画質モードはモード1/2/3とユーザーの合計4モードを用意。とりあえず、モード1がいわゆる[ノーマル]モード扱いということなので、このモードで視聴してみた。

 32型/1,366×768ドットというサイズ/解像度は、地上アナログ放送の表示には大きく、高精細すぎる。もっともこれは、大手メーカーの高級機でも同じで、基本的にはデジタル放送などのHDコンテンツを中心に位置づけたモニターと考えるべきだろう。

 ただ、地上アナログ放送の表示品質は国内大手メーカーと比較すると一段落ちる印象。特に、輪郭の処理が甘く、映画ではアップした人の顔の輪郭が落ち着かないほか、シャツの襟にジャギーがのるなど違和感がある。動きの大きなソースでも輪郭の処理が乱れがちで、ひっかかるため、かなり残像感がある。同じ放送のデジタル放送のHDMI入力と比較して応答速度が劣っているように感じてしまうのだ。

2画面表示で15型相当のテレビとしても利用できる(右は15型の液晶ディスプレイ)

 また、バックライトの輝度がやや高めなのか、明部では白飛びのピークが早く、CMなどでも結構白飛びしがち。顔の明暗表現などの階調処理も今ひとつで、明るい方が白飛びして暗部は黄色に転んでしまうなど、さまざまなシーンでの限界性能やは大手メーカーには及ばないところは感じる。

 しかし、2画面表示のピクチャアウトピクチャ(POP)で表示すると15インチの液晶テレビ程度のサイズになるので、そうすると大きな破綻を感じず、ちょうど良く楽しめる。

 同社でも、地上アナログ用のスケーラにはさほど力を入れずに、外部チューナを接続したデジタル用のモニターやPC入力の充実などを意識しているようだ。テレビも見れるHDディスプレイという位置づけということだが、PC入力やHDMIの機能が充実しているので、そのあたりを使いこなしてサブ機能としてPinPやPOPでアナログテレビを楽しむ、というのが正しい使い方かもしれない。


・HDMIモニターとしての能力は十分

 最大の特徴とも言えるのはHDMI入力を備えたところだろう。HDMIは音声伝送可能なVer.1.1で、シャープ製のハイビジョンレコーダ「DV-AR12」と接続してみたところ、問題なく音声も出力された。

 まずはそのままデジタル放送を視聴してみたが、パネルのスペックを十分に活かした高精細な映像を堪能できる。もちろん地上アナログの時のような輪郭の破綻はほとんどなく、しっかりした階調表現となる。真っ青な青空などのグラデーション表現では、マッハバンド状の境界が出てきてしまうこともあった。

 元のソースがいいことに加え、輪郭の破綻もないので、アナログ放送視聴時のような引っかかりというか、見かけ上の応答速度の低下は感じない。サッカーの試合の急速なパンなどでは若干残像感もあるが、テレビ観賞用としても十分使えるクオリティといえる。ただ、DV-AR12との組み合わせでは近づくとモスキートノイズが目立つこともあった。

 画面モードはノーマル/ワイド/パノラマ/ズームの4モード。ノーマルは4:3表示、ワイドは16:9表示、パノラマは入力信号を問わずフル画面表示、ズームは中央部の拡大表示。表示モードは各画質モードごとに割り当てできる。

 画質モードは、映像1/2/3の3モードと、1つのユーザーモードの合計4つ。ユーザー1/2/3についてはどれがどのモードか全く分からず、リモコンの[画面表示]を押してもこのモード名しか表示されない。しかも、取扱説明書にもなんの記載もない。

 アイ・オー・データによれば、画面モード1が標準、モード2が映画、モード3がゲームを想定しているとのこと。例えば、いつもと見え方が違うかな? と思った時に、モードを確認しても、[モード3]と表示されて即座にそれがどんなモードだったか分かるようになるにはかなりの時間を要するだろう。国内大手メーカーと比べると、このあたりの基本的な機能の完成度がイマイチという点は残っている。

 通常の視聴では標準モードの[モード1]で問題ないだろう。モード1は、リビングでの用途を想定しているためか、かなり明るく、蛍光灯下でもはっきりとした画調のため、他のテレビメーカーの[ノーマル]よりは[ダイナミック]に近い印象だ。

ユーザー設定の画面

 そのため部屋の明かりを落としたり、映画を見たりするとまぶしすぎたり、黒浮きが気になることも。そこで、映画用という[モード2]にしてみたところ、なぜかモード2のほうがより明るく、暗部を持ち上げ、ノイズが多くなる。[映画]モードだと、色温度を暖めにして、輝度を落としながら黒の締まりを向上させるものが一般的だが、「モード2」はどうもそういう映画モードでは無さそうで、今ひとつ使い道が分からない。なお、ゲーム用のモード3ではぐっと明るさが落ち、モード1より暗くなる。

 各モードでバックライトの明るさ調整ができるほか、ユーザーモードではバックライト、明るさ、コントラスト、色の濃さ、色合い、シャープネスの設定が可能。基本はモード1で、映画観賞用にユーザーモードを活用するといいだろう。

 また、D4端子も2系統を装備しているので、HDMI出力のないデジタルチューナやハイビジョンレコーダでもハイビジョン映像を楽しみむことができる。DV-AR12との接続ではD4入力の方が若干色味が濃くなる傾向があり、特に濃い赤の発色などはD4接続の方がきれいにも感じたが、これは出力機器側の性能にも依存するのでどちらがいいかは接続してみないと分からない。ともあれ、レコーダをデジタルチューナとして使用し、モニターとして「FTV-320H」を活用するという組み合わせは非常に相性がいいように感じた。

 ただし、DVD視聴となるとまた事情は異なってくる。というのも、FTV-320Hのスケーリング性能がいまいちのため、D端子入力の画質があまり良くないのだ。

 今回利用した「DV-AR12」などのHDMI搭載DVDレコーダ/DVDプレーヤーでは、ほぼ全ての製品が1080iへのアップスケーリング機能を有しているため、スケーリング処理を出力機器側が行なってくれる。出力機側の性能にもよるが、元のDVDの480i信号よりは精細感があり、ノイズの少ない映像を楽しめる。

 ところが、DVDプレーヤー/レコーダのアナログコンポーネント出力は通常480iもしくは480pまでで、1080iで出力できる機器は多くない。そのため、スケーリングをFTV-320Hが行なうこととなるが、前述の通り、FTV-320Hのスケーリング性能は今ひとつなので、ここでかなりの画質差が出てくるのだ。

 色味もかなり違うのだが、精細感がなくなり、カラーノイズが見えるなど、比べてみるとかなりの違いが確認できる。DVD視聴にはHDMI接続で使いたいというのが正直な感想だ。

・充実のPC入力と子画面表示機能

PC画面

 また、PC入力もRADEON X600を搭載したPCからアナログRGB(D-Sub15pin)で接続してみた。対応解像度は、640×400/640×480/720×400/800×600/1,024×768/1,152×864/1,280×960/1,280×1024/1,360×768ドット。1,360×768/1,024×768ドットで表示したところ、PCディスプレイ並にしっかりと表示され、ブラウザ上の文字も読みやすい。

 おまけ程度のアナログRGBでなく、実用的なレベルで利用できると感じた。32型でデジタルカメラの画像などを見ると、一般的なPC用ディスプレイより大型なため、細部まで見えて面白い。近付きすぎるとドットが見えてしまうが、20型以下のディスプレイと違った見え方という点で、かなり楽しめる。

 HDMIからのPC入力については、「VGA程度しか表示できず、実際に使用することは難しい」とのことだったので、期待せずに一応チャレンジしてみたが、RADEON X600のDVI出力にAudio QuestのDVI-HDMI変換コネクタ「A-HDMI/DVIF2M」を利用してHDMIと接続してみたのだが、うまく映像出力することはできなかった。

 また、やけに充実しているのが子画面表示。ピクチャー・イン・ピクチャー機能を備えており、PCディスプレイとして利用しながら小画面でテレビ表示や、その逆などでも利用できる。

 リモコンには6つの子画面機能用ボタンを備えており、子画面のON/OFFから、画面の切替や入力切替、サイズ切替、位置設定、音声切替が行なえる。表示サイズは3段階に変更でき、表示位置も左側の下/中央/上、中央の上/下、右側の下/中央/上と設定できる。

 ピクチャー・アウト・ピクチャーも備えており、2画面表示も可能。たとえば、PC入力でウェブブラウズしながら、アナログテレビを見るといった用途には最適だ。なお、子画面/2画面表示の場合、PC入力とHDMI、D4を同時に表示することはできないほか、HDMIの1080i映像も表示できないので、注意が必要だ。

PinP機能 ピクチャー・アウト・ピクチャーによる2画面表示機能 PinP、POPの入力切替


■ チューナはレコーダ任せもあり

 液晶テレビとしての機能は十分で、デジタルチューナ非搭載という点をHDMIで補えれば、大画面テレビを低価格で購入したいという人にはかなり有力な選択肢となるだろう。

 家電メーカーのHDMI搭載32型製品は25万円以上で価格差は10万円程度ある。デジタルチューナーが無くても、CATVのデジタルサービスに入っている人は、チューナは補完できるし、さらに、デジタルチューナはハイビジョンレコーダに任せて、テレビ側は純粋なディスプレイと位置づけ、普段の番組視聴もレコーダからのHDMI入力を見る、という使い方もいいだろう。特に今シーズンは各社のハイビジョンレコーダが増えているので、そうした製品と組み合わせることで、デジタル視聴/録画環境をより安価に揃えることができるというのも魅力的。

 画質的には最新のハイエンド製品にはおよばないが、ローエンド製品にはHDMIを備えていないものも多い。デジタル入力によるメリットと価格を考えれば競争力は十分ある。あとはPC周辺機器メーカーらしいPC入力の品質の良さも魅力的で、こうした特徴を活かしながら、独自の差別化の方向を探っていって欲しいと感じる。

□アイーオー・データのホームページ
http://www.iodata.jp/
□ニュースリリース
http://www.iodata.jp/news/2005/10/05_pr013.htm
□製品情報
http://www.iodata.jp/prod/display/tv/2005/ftv-320h/
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http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050930/uniden.htm

(2005年11月4日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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