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第216回:オペアンプが交換可能な「Prodigy 7.1XT」
~ 測定値の差はわずかだが、アナログ出力は高音質 ~



 Ego SystemsからAudiotrakブランドの新サウンドカード「Prodigy 7.1XTが」がまもなく登場する。このProdigy 7.1XTは既存製品である「Prodigy 7.1」のハイグレードモデルという位置づけで、アナログ回路/デジタル回路を大幅に見直し、高音質な製品に仕上がっているという。

 また、オペアンプの交換も可能にしているなど、マニア受けしそうな製品だ。今回、国内ではまだ発表されていないものの、入手することができたので、検証を行なった。



■ 1/2ch用、7/8ch用に交換可能なオペアンプを搭載

Prodigy 7.1XT

 発売時期や実売価格は未定だが、Prodigy 7.1XTが近いうちに国内で発売される。D/Aは最高24bit/192kHz、A/Dは最高24bit/96kHz対応で7.1ch出力のこのカードは、すでに韓国のAudiotrakのサイトでは発表されている。最初に見て、インパクトがあるのが、基板が「Juli@」と同様、真っ白なこと。

 Ego Systemsは、プロオーディオブランドの「ESI」と、コンシューマブランドの「Audiotrak」の2ブランド戦略で展開している。Juli@はESIブランドであるのに対し、Prodigy 7.1TXはAudiotrakブランドとなっており、端子の形状はステレオミニジャックを用いるなど、オーディオカードではなくいわゆるサウンドカードという仕様。


端子の形状はステレオミニジャックを採用している


付属の同軸ケーブル

 RCAの出力は用意しておいて欲しかったと思うものの、S/PDIFは光、同軸ともに入出力を装備。同軸は添付の専用ケーブルを利用しての接続となる。

 Prodigy 7.1XTの面白いところは、見た目が真っ白というだけでなく、従来のProdigy 7.1と比較し、大きなコンデンサがところ狭しと並んでいて、アナログ回路に力を入れたことが一目で分かる。こうしたコンデンサがいっぱい並んだサウンドカードというと、オンキヨーの「SE-100PCI」や「SE-90PCI」などがあるが、それに近いコンセプトのようである。

 Ego Systemsによると、「Prodigy 7.1 XTはマザーボード上で発生するノイズを遮断するためにPNK(PCI Noise Killer)回路というものが搭載されている」という。具体的には、デジタル回路/アナログ回路に安定した電源供給を実現するために、電源回路に専用のレギュレータと大容量のコンデンサを搭載している。数多くあるコンデンサはPNKの構成要素というわけだ。これによりコンピュータ内部で発生するノイズや電圧の変化による影響を受けることなく高音質を実現するとしている。

 また、デジタル回路部分にESDダイオードおよび専用のトランスを採用し、安定性/耐久性をハイエンドオーディオインターフェイスクラスまで引き上げているという。そのほかにもライン入力/マイク入力には専用の24bit/96kHz対応のCODECを採用し、アナログ外部入力からの影響を最小限に抑えている。またアナログ出力にはアンチポップ回路を採用し、起動/終了時に発生するノイズを低減している。

 さらにProdigy 7.1XTがユニークなのは、7.1chの出力のうちメイン出力であるフロントの1/2ch用、およびヘッドフォン出力としても利用できる7/8ch用にそれぞれ1つずつ専用のオペアンプが搭載されていること。1/2ch用には、ハイエンドオーディオなどで採用されているTIのバーブラウン「OPA2134PA」を搭載している。

 そしてこのOPA2134PAはソケットの上に載っているため、オペアンプを交換して違う音にすることを可能にしている。オペアンプ交換可能なサウンドカードとしては、以前、玄人志向からもENVY24HT-HG8PCIという製品が発売されていたが、考え方としては同様のもの。

1/2ch用には、TIのバーブラウン「OPA2134PA」を採用 オペアンプは交換も可能

ヘッドフォンアンプとして新日本無線のJRC5532が搭載されているが、交換も可能

 さらに、7/8ch用にもヘッドフォンアンプとしてデュアルタイプ・オペアンプが採用されている。16~600Ωまでのヘッドフォンをドライブすることが可能。標準では新日本無線の「JRC5532」が搭載されているが、これも交換可能となっている。

 出力だけでなく、入力側にも力が入っている。マイクプリアンプには同じく新日本無線の「JRC4580」を採用し2段階増幅回路(20dB GAIN)にすることでローノイズを実現。またマイク端子は、+5Vのファンタム電源に対応しており、コンデンサーマイクやピンマイク、ヘッドセットなどと接続して使用することが可能となっている。

 なお、DAC/ADCはProdigy 7.1と同様、Wolfson「WM8770」。この辺はProdigy 7.1の設計をそのまま踏襲しているようだ。



■ PCI対応サウンドカードとしては明らかにいい音

 最近PCIスロットを持つPCも減りつつあるから、そろそろPCIバスのサウンドカードも終わりが近いと思いつつセットアップしてドライバをインストール。さっそくアナログでスピーカーに接続して音を出してみると、「あれ?」と思うほど、いい音。RCA出力もないし、Prodigyシリーズということであまり期待はしていなかったが、普通のサウンドカードとは明らかに音が違う。

タスクトレイにドライバのコントローラが常駐し、設定画面で各チャンネルのバランスがとれる

 モニタ用に使ったのはEDIROLのMA-10Dで、Prodigy 7.1XTのS/PDIF出力とアナログ1/2chの出力の両方を接続して、音を聞き比べてみたのだが、明らかにアナログのほうがいい。Windowsの起動音を聞いて、「こんなに広がりのある深い音だったか? 」と思ってしまったほど。CDやMP3などをWindows Media Playerで鳴らしてみても、広がりのあって深みのあるサウンドだ。

 一方、サウンドカードとしての機能はというと、これはProdigy 7.1やProdigy 192LTなどとまったく同じといってよさそうだ。ドライバをインストールするとタスクトレイにドライバのコントローラが常駐し、ここをクリックすると設定画面が立ち上がる。ここで各チャンネルのバランスがとれるとともに、QSoundの機能により、イコライザや音の広がり、またさまざまなエフェクト効果なども得られるようになっている。


QSoundの機能により、イコライザや音の広がりなども得られる

 さらにEgo Systemsお得意のE-WDMによるDirectWIREなども搭載されている。この辺の機能については、以前「Prodigy 192LT」のときにも紹介しているので、ここでは省略することにする。ちなみに、Windowsの出力先としてはProdigy 7.1XTとQVE 96-24という2つのドライバが見え、Prodigy 7.1XTにするとストレートに出力され、QVE 96-24にするとQSoundの効果が得られるという点でも同様だ。

E-WDMのDirectWIREも搭載 Windowsの出力先としてProdigy 7.1XT、QVE 96-24の2つのドライバを用意

 またASIOドライバの利用も可能で、バッファを48サンプルに設定してみたところ、24bit/96kHz動作時のレイテンシーを0.5msecにまで追い込むことができ、音切れなどもなかった。

ASIOドライバも利用可能 バッファを48サンプルに設定すると、24bit/96kHz動作時のレイテンシーは0.5msecまで可能に

 ただ今回使ったのが、まだ発表前のバージョンであったためか、ドライバはやや不安定であった。QVE 96-24にすると、うまく音が出ないことがあったり、入力がうまくいかないことがあるなど、ハードの性能すべてを十分には評価できなかったが、これらについては、発売までにはしっかりしてくれるだろう。なお、前述での音質評価は、QSoundをかけていない、ノーマルな状態だで行なった。



■ はっきりと違いは出ないが、波形が微妙に異なる

 実際、音の違いが測定できるものなのか、いつものように入出力を接続し、ループさせた状態でのテストをしてみようと思ったが、そのドライバが不安定というせいで、うまく実験することはできなかった。しかし、単に出力することだけは確実にできたので、この音をEDIROLのUA-1000の入力に接続して、特性を見てみた。基本的な実験方法はいつもと同じ。無音でのノイズ状況を調べるとともに、サイン波とスウィープ信号の結果を波形で見た。

 それぞれの結果を見る限り、とくに大きな特徴があるというほどではないが、やはりループさせていないためなのか、サイン波測定におけるS/Nなどはいい結果にはなっているが、無音時の測定結果などは必ずしもいいわけではない。

特に大きな特徴はなし。サイン波測定でのS/Nなどはいいが、無音時の測定結果などがいいわけではない

 では、オペアンプを交換するとどうなんだろうか? これについても少し試してみた。用意したのは同じTIのバーブラウン製「OPA2604AP」と、ヘッドフォンアンプにも利用されている新日本無線の「JRC5532」の2つ。

 聞いた感じ、確かに音が違うけれども、すぐ切り替えての音の聞き比べができるわけではないので、何がどう違うのかハッキリは掴めなかった。では、データでは捉えることができるのか、それぞれ同じ実験をしてみた。ここでもハッキリとした差はでないが、サイン波の波形などは微妙に違ってはいた。

バーブラウン製「OPA2604AP」での結果

新日本無線「JRC5532」での結果

 今回試してみた限りでは、Prodigy 7.1XTは見た目どおり、アナログ回路はかなりしっかりしてそうだ。またオペアンプの交換が可能などマニアにとってはなかなか面白い。他社の似たスペックの製品と同価格帯になるとのことだが、日本での発売が待ち遠しい。


□エゴシステムズのホームページ
http://www.egosys.co.jp/
□Audiotrakのホームページ(韓国語)
http://www.audiotrak.co.kr/esi/home.php
□製品情報(韓国語)
http://www.audiotrak.co.kr/zeroboard/view.php?id=sin&no=32
□関連記事
【1月17日】【DAL】EGOSYSの24bit/192kHz対応サウンドカードを検証
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【2003年4月21日】【DAL】コンシューマ用7.1chオーディオカードを試す
~その1:8ch完全パラ出力が可能な「Prodigy 7.1」~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030421/dal97.htm

(2005年12月12日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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