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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第235回:ビデオカメラはテープレスの時代へ
~ XactiのHDモデル、gigashotの1.8型HDDモデル ~


■ 活気あふれるLVCCセントラルホール

 現地時間で1月5日、2006 International CES本会場開幕初日である。今回はLVCC セントラルホールに出展しているメーカーの、ビデオカメラ関連のニュースを紹介しよう。

 セントラルホールには、映像系デバイスという切り口で見ると関わりの深いメーカーが揃っている。昨日レポートしたソニーをはじめ、松下、東芝、パイオニア、シャープ、三洋といった大手国内メーカーが集結しているのである。

 その一方で例年CES会場に出展せず、別途ホテルのボウルルームを貸し切って展示を行っていた日立が、今年はサウスホールに出展している。そちらの模様も、後日レポートを予定している。


■ 三洋、Xactiのハイビジョン対応モデルを発表

セントラルホール中央付近にあるSANYOブース

 昨年は総合家電メーカーから撤退など元気のないニュースが続いた三洋電機だが、CES会場では非常に大きなブースを構えており、なかなか勢いのいいところを見せている。

 以前から噂があった三洋XactiのHDバージョンだが、家電撤退の報道を受けて行く末を心配していた方も多いことだろう。だがXactiに関しては業績としても好調のようで、ブース正面にコーナーを設けて実働モデルが複数台展示され、自由に触れるようになっている。

 名称は「Xacti HD1」。C6などのスリム型に比べて若干厚みがあり、それゆえに背面のボタン類は、若干初代機のデザインに近い感じだ。だが適度な厚みがあるところが逆に、バランスの取れた安定感のあるイメージに繋がっている。

ついに登場したハイビジョン撮影対応Xacti HD撮影モード時には、画面下にHDと表示される

参考出展されたコンバージョンレンズ

 スペックとしては、CCDが1/2.5インチの5.26Mピクセルで、有効画素数は5.1Mピクセル。レンズは光学10倍ズームレンズで、画角は35mm換算で38~380mmとなっている。

 また会場では、Xactiシリーズとしては初となる純正ワイドコンバージョンレンズと、テレコンバージョンレンズも参考出品されていた。価格や発売時期などは未定だが、もしリリースされるとしたら非常に楽しみだ。

 また今回モニタ部には2.2インチの有機LEを採用している。アスペクトは4:3で、HD撮影時には上下が切れて16:9画面となる。その際画面下の余ったスペースにHDの文字が表示されるため、今どちらのモードなのかがすぐにわかるようになっている。

 肝心のHD動画撮影だが、1,280×720ピクセルの、いわゆる720Pでの撮影が可能。ファイルフォーマットはMPEG-4で、音声はAAC 48kHz 16bit 2chとなっている。ビットレートは9Mbpsと6Mbpsの2モード。

HDとSDはボタンで切り替える。連写ボタンも装備

 実際に撮影してみたところ、あいかわらずズーム途中ではフォーカスが追従しないといった弱点はあるものの、動画的な破綻は見られない。詳細は大型HDモニタに接続してみないとわからないが、国内で発売されれば、レビューしたいところ。

 HDとSDの切り替えは、モニタ収納部内側にあるボタンで行う。実際にはそれほど頻繁に切り替える必要はないと思われるが、切り替えは高速でストレスは感じさせない。各画質モードは、以下のようになっている。

モード解像度fpsビットレート2GB SD
収録時間
HDHD-SHQ1,280×72030fps9Mbps 28分45秒
HD-SQ1,280×72030fps6Mbps42分42秒
SDTV-HR640×48060fps6Mbps42分42秒
TV-SHQ640×48030fps3Mbps1時間22分
TV-HQ640×48030fps2Mbps2時間
Web-HQ320×24015fps非公開約7時間

 SD撮影で注目されるのは、60fpsでの撮影をサポートしたところだ。これまでのXactiでは、30fpsで撮影したものを60fpsで再生する機能があったが、60fpsでの撮影を可能にしたのは初めてだ。

 ご承知のように、すでにテレビはフラットディスプレイが中心となっており、家庭用ビデオカメラにおいてインターレースで撮影する意味はほとんどなくなりつつある。今後プログレッシブ記録のビデオカメラは、新しいトレンドになりそうな予感がする。

モード解像度
10M3,680×2,760
5H-H2,592×1,944
5M-S2,592×1,944
2M1,600×1,200
1.2M1,280×960
0.3M640×480

 一方静止画機能だが、これまで固定であったフラッシュが、横のボタンを押してポップアップするスタイルに変更されてる。撮影可能画素数は右表の通り。

 さらに今回は連写機能が新たに設けられた。モニタ内側のスイッチで切り替えを行う。ただし10Mモードでは連写はできないようだ。米国での発売は3月以降を予定しており、価格は799.99ドル。


■ 東芝、好調gigashotの新モデルを投入

多くの来場者でにぎわうTOSHIBAブース

 国内では直販オンリーながらも、好調な売れ行きを見せた「gigashot V10」。ここCESの会場ではV10を使って撮影している姿も時折見かけるが、おそらく広告を兼ねて東芝の社員が行なっている、一種のデモンストレーションであろう。

 そんなgigashotに、自社製1.8インチHDDを搭載した大容量モデルが2機登場した。「GSC-R60」は60GBのHDDを搭載、「GSC-R30」は30GBのHDDを搭載している。以前のプロトタイプでは、1.8インチHDD搭載モデルは横型であったが、結局V10で好評だった縦型で行くようだ。

60GB HDD搭載の「GSC-R60」 正面には静止画用フラッシュを装備

 両モデルの違いはHDDの容量のみで、外観を含めてほかの仕様は共通。撮像素子は2MピクセルのCCDで、2.5インチ21万画素の液晶モニタを装備する。レンズは光学10倍ズームレンズで、手ぶれ補正は電子式となっている。

見た目はほとんど同じだが、こちらは「GSC-R30」 クレードルにセットしたところ

 60GBのR60では、MPEG-2 9.6Mbpsの最高画質で13時間、6Mbpsで20時間、LPモードでは最高55.4時間の撮影が可能となっている。R30に関しては容量が半分なので、録画時間もそのまま半分になる。

ズームレバーの方向が、多くのビデオカメラと逆になっている

 デザインとしては、V10でも多少感じた角張ったイメージで、サイズ的にはまった普通のDVカメラと同等。正面には静止画用フラッシュを装備しており、右手の人差し指でズーム操作と静止画撮影を行うあたりも、一般的なDVカメラと同じだ。

 ただズームレバーは、ワイドとテレの方向が多くのビデオカメラと比べて、逆になっている。このズームレバーの方向というのはコンシューマの世界では謎の1つで、横方向にスライドするタイプのズームレバーは大抵手前に引くとテレ、押すとワイドという具合に決まっている。

 一方プロ用ビデオカメラでは、ズームレバーは縦方向に付いており、自分側に倒すとワイド、被写体側に倒すとテレとなるのが決まりだ。この感覚を横方向に持って来ると、当然手前に引くとワイド、奥に倒すとテレのような気がするのだが、多くのコンシューマ用ビデオカメラでは、なぜか逆になっているのである。このためプロカメラマンにコンシューマのビデオカメラを持たせると、大抵逆方向にズームしちゃうのである。

 だがこの点、新型gigashotは感覚的にプロ用ズームレバーと同じに使えるため、縦方向ズームに慣れている身には非常に使いやすい。また液晶画面内に表示されるズーム位置表示の方向とも合致しており、このあたりの割り切りというかしがらみのなさは、新規参入メーカーならではのメリットだろう。

 操作系では、V10と同じくジョイスティックとダイヤルを使ったGUIを採用しており、操作感覚は同じだ。電源スイッチは液晶内部ではなく、背面のスライドスイッチとなっている。

 クレードルも付属し、インターフェイスはUSB 2.0とEthernetで、PC以外にも同社製DVDレコーダへも画像転送が可能としている。

 しかし考えてみれば、V10にはコンパクトカメラというヒキがあったが、ここまで普通のビデオカメラ然としてくると、HDD記録以外の部分でも、あえて「東芝」を選択するポイントが欲しい。例えばメディアチェンジが不要なところをポイントとするならば、大容量の拡張バッテリは、今後どうしても必要だろう。GSC-R30は米国価格で799ドル、GSC-R60は999ドルとなっており、発売は双方とも今年2月を予定している。


□2006 International CESのホームページ(英文)
http://www.cesweb.org/default_flash.asp
□関連記事
【1月5日】【EZ】ソニー、同社初のHDD内蔵型カムコーダを発表ほか
~ HDD、DVDと役者は揃ったが、新型HDVはなし ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060105/zooma234.htm

(2006年1月7日)


= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]



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