■ W-ZERO3をようやく入手 昨年末にWILLCOMから発売された、第3のコミュニケーションツールと言われる「W-ZERO3」。発売日当日には行列もでき、WILLCOMのオンラインストアでは当初抽選による販売が行なわれるなど、ポータブルデバイスとしては久々にアツい商品となっている。
年が明けて早20日を過ぎ、供給も次第に安定してきているようで、かく言う筆者もずっと買いそびれていたのだが、たまたま立ち寄った量販店で入荷しているのを目撃、遅まきながら購入してみた。同機のレビューはWEB系の各メディアでも盛んに取り上げられ、若干食傷気味かもしれないが、今回はこのW-ZERO3をAV的に使ってみようという話である。 普段は携帯電話など取り上げないElectric Zooma!なのだが、そういえば昨年もCESのあとに「Vodafone 702NK」を取り上げている。このときはCES帰りの電車の中で、それまで使っていた「京ぽん」を紛失するという事故がきっかけだったのだが、今回は無くしたわけではない。そういう意味では、このコーナーで能動的に携帯電話を扱った最初のレビューと言えるかもしれない。 そんなわけで、早速W-ZERO3の実力を試してみよう。
■ ネットワークドライブ対応 すでに電話機としてのスペック、あるいはWindows Mobile機としてのスペックは各所でレポート済みであるので、いまさらここで取り上げるまでもないだろう。そのあたり、読者諸氏にはすでに織り込み済みという前提で進めさせていただく。
本機にデフォルトで搭載されているマルチメディア再生環境としては、Windows Media Player 10 Mobileがある。本体やminiSDカードにWMVやWMA、MP3などを転送しておけば、これで再生は可能だ。つまりMicrosoftの手の内で遊ばせて貰うというのであれば、話は簡単である。 だがそれもどうだろうか。せっかくワイヤレスLANまで搭載したデバイスであるのに、ローカルに転送したのち再生というのでは、これまでのポータブルマルチメディアプレーヤーとなんら変わるところがない。結局デカいメモリカードを買わなければ遊べない、というのであれば、PSPのほうが全然楽しいわけである。 そこで今回は、本体にファイルを持たずにどれだけマルチメディアが楽しめるか、というところに絞って、様々な試みを行なってみた。すなわちホームネットワーク上やインターネット上にあるコンテンツを、コピーせずに直接視聴するというスタイルである。 それにはまずW-ZERO3から、LAN内にあるNASなりPCの共有フォルダなりといったストレージが見えなければならない。しかし標準状態の「ファイルエクスプローラ」には、Windows XPのエクスプローラのように「マイネットワーク」があるわけではない。
まず最初にファイル操作の便宜を図るためのユーティリティとして、「GSFinder+ for HTC Universal」というファイラをインストールした。オリジナルの「GSFinder+」でも同等のことができるとは思うが、「for HTC Universal」のほうがW-ZERO3で動作確認が取れているようだ。 このファイラには、「ネットワーク接続の割り当て」という設定項目がある。Windows XPで言えば、「ネットワークドライブの割り当て」に相当する機能だ。ここにリモートパスと、ローカル名を入力する。リモートパスは例によって、以下のような書式に従う。
\\<デバイス名>\<共有フォルダ名> ローカル名はW-ZERO3上に表示される名前なので、わかりやすい名前を付けておく。設定を行なうと、一度再起動するよう求められるが、再起動後は「マイポケットPC」の下に「ネットワーク」というアイコンが表示されるようになる。ネットワーク接続として割り当てたドライブやフォルダは、この下に表示される。
一度ネットワークの共有フォルダが見えるようになると、それ以降は標準のファイルエクスプローラでも見えるようになる。今回はユーティリティを使用して設定を行なったが、ファイルエクスプローラ自身にも「パスを開く」という機能があるので、同様の作業が行なえるのではないかと思う。 また標準のファイル選択ダイアログを改良するため、「gsgetfile.dll」および「FileDialogChanger」もインストールしておいた。 ここまではAVとは直接関係ないものの、今後の操作のために必要な作業である。
■ 写真の閲覧は簡単 マルチメディア機能の基本として写真、音楽、動画の3つは欠かせない要素だ。一度LAN上の共有フォルダが見えるようにしてしまうと、できることは格段に広がってくる。まずは写真のブラウジングからやってみよう。W-ZERO3に標準で装備されているビューワーに、「画像とビデオ」というアプリケーションがある。基本的には本体内にある画像や、本体で撮影した写真を管理、ブラウジングするアプリケーションだが、LAN上のフォルダが開けるようになるので、本体内ばかりではなく、PCやNASに保存してある写真のブラウジングや、スライドショー表示が可能になる。
またWindowsやLinuxでフリーの画像ビューワーとして古くから知られる「XnView」にも、PocketPC版がある。これも共有フォルダのブラウジングが可能だ。 入手するにはいったんメールアドレスを登録したのち、指定のサイトからダウンロード、さらに初回起動時にプロダクトコードを入力するなど若干面倒だが、画像編集やバッチリネームなどができるので、持っておいて損はないだろう。
■ 可能性を感じる音楽再生
次に音楽再生を試してみよう。共有フォルダが見えるようになったことで、Windows Media Player 10 Mobileから音楽ファイルを開けば、そのまま再生できそうな気がするが、試した環境ではエラーとなってうまく再生できなかった。 そこで別のプレーヤーを試してみることにした。GSPlayerは、PocketPCの世界では定番とされている音楽プレーヤーのようだ。こちらの「Open File」から共有フォルダのMP3ファイルを選択すると、無事再生することができた。EQやBass Boostなどのエフェクトも使えるので、音質もある程度変更できるのもいい。 プレイリストが保存できるので、一度読み込んだファイルをプレイリストとして本体のマイドキュメントにでも保存しておけば、次回の再生からはいちいちネットワーク上のフォルダまで、ファイル探しに行く必要がなくなる。
またGSPlayerは、インターネットラジオにも対応している。「Open URL」の画面にラジオ局のURLを入力して「OK」ボタンをクリックすれば、少しバッファリングしたあと再生が始まる。ラジオ局のURLは履歴が残るが、これも別途プレイリストとして複数のラジオ局を登録しておけば、次回からはプレイリストを開くだけでラジオ局の切り替えができるようになる。 インターネットラジオ局のURLは、こちらのサイトがものすごい量のデータベースとなっているので、参考になるだろう。趣味丸出しで申し訳ないが、URLのパターンとして3つほどご紹介しておく。
【 S K Y . F M - Best of the 80s 】 【 80s Grooves 103.9 FM 】 【 Virgin Radio Classic Rock, live from London, UK 】 「WifiTunes」は、PC上で動いているiTunesの共有機能にアクセスして、プレイリストを一気にロードし、再生できるプレーヤーだ。 まず始めに、iTunesの「共有」で、プレイリストを共有する設定を行なっておく。本来この機能は、LAN上にある別のPCのiTunesから音楽を聴くためのものである。 WifiTunesは、W-ZERO3が無線LANのアクセスポイントに接続してから起動する。すると共有名を探し出してくれるので、プレイリストがロードできるわけだ。複数のプレイリストがあっても、WifiTunes上では一緒くたになってしまうのが難点だが、いちいち共有されているフォルダからMP3ファイルを探す必要がないので、導入は最も簡単だろう。
注意点としては、ライブラリ全体などあまり大量の曲を共有しても、WifiTunes側でプレイリストの読み込み中にメモリ不足でエラーしてしまう。試した限りでは、1,200曲ぐらいのプレイリストなら読み込めるようだ。 また共有設定でパスワードを設定していると、エラーが出てプレイリストが読み込めない。現時点でのバージョンでは、パスワードを入力するところもないので、パスワードには対応していないと見るべきだろう。
■ 小さいファイルならOKの動画再生 次に動画再生を試してみよう。もともと内蔵の無線LANはIEEE802.11bなので、MPEG-2の再生は難しい。従って各種MPEG-4系コーデックのファイルをストリーミング再生するというのが現実的だ。これもWindows Media Player 10 Mobileを試してみたのだが、うまくいかなかったので、ほかのプレーヤーを試してみることにした。動画対応プレーヤーとしては、多くのコーデックに対応できる「The Core Pocket Media Player(TCPMP)」が人気のようだ。各種コーデックまで一緒になっている0.71dというアーカイブが便利だろう。またAAC音声に対応するため、別途TCPMP用AAC Decorder「BetaPlayer AAC plugin」のWindows Mobile versionも入れておく。
W-ZERO3はVGAサイズのディスプレイを備えており、VGAサイズの動画も再生可能だ。VGAサイズのWMVやDivXを試してみたところ、通信速度の関係で時折再生がひっかかり、若干コマが落ちる箇所も見られる。ビデオ撮影の動画よりも、アニメなどのほうが気持ちよく鑑賞できるだろう。 いくつか試した中で快適だったのは、「携帯動画変換君」を使ってPSP用に作成した、MPEG-4 AVCだ。解像度がQVGAのため、全画面表示にすると若干荒さはあるものの、ストリームサイズが小さく押さえられるため、引っかかりが少ない。これならPSPで見ても良し、W-ZERO3で見ても良しというわけで、いろいろツブシの利く運用方法だと言えそうだ。
最後に、ポータブルな視聴環境という意味では、イヤホンの使用は欠かせない。しかしW-ZERO3のイヤホン端子は、携帯電話によく使われる平型端子となっており、一般的なイヤホンが使えない。そこでこの平型端子を、普通のステレオミニプラグに変換するためのアダプタが必要になる。家電量販店などに行けば、いくつかこの手の製品は見つかるだろう。また携帯用イヤホンマイクにも、この変換アダプタが付属するものがあるようだ。 実際に購入したのは、ソニーの「DRC-M10SF」という製品である。これはコネクタの先にマイクが付いており、普通のイヤホンやヘッドホンと組み合わせて通話もできるというものだ。 この変換コードとiPod付属のイヤホンで試してみたところ、AVプレーヤーとしては最大音量が若干小さいと感じた。もっとも通常聞く分には、最大音量で少し大きめかな、ぐらいの音量にはなるのだが、インピーダンスの高いヘッドホンでは音が小さいかもしれない。
■ 総論 携帯電話や音楽プレーヤーなど、ポータブルデバイスには今後、2つの道があるように思う。一つは大容量メモリや小型HDDを搭載し、本体に大量のコンテンツを転送して持ち歩くという方向性。すでに国外では、SamsungやNokiaからHDD搭載の携帯電話が発表されている。また日本でも来月には、国内初のHDD搭載携帯電話が発売される。そしてもう一つは、ローカルにコンテンツを持たず、通信インフラを使ってすべてストリーミングで再生するという方向性だ。もちろんこれは電話回線ではなく、ワイヤレスLANのアクセスポイントに依存する。だが大容量とはいえ限られた空間にコンテンツを選んで格納するのではなく、ある意味無限のライブラリにアクセスできるという自由度がある。 携帯電話の立場としては、通信料を消費してダウンロードし、本体にコンテンツを貯めるという方向に舵を取りたがるのが当然だろう。そういう意味では、Bluetoothではなく無線LANを搭載したW-ZERO3のユニークさが光る。 もっともW-ZERO3自体がストリーミング再生という方向性を目指しているわけではないと思うが、自分でプログラムをインストールできるWindows Mobileマシンだからこそ、こういうことが可能なわけだ。そしてその部分こそが、無線LANを搭載しつつもコンテンツはローカルに落とすという手法と取っているPSPと、大きく袂を分かつ部分でもある。 W-ZERO3は、体裁としては電話機ではあるものの、今後のAVポータブルデバイスの可能性を探るという意味においても、非常に面白いマシンだ。 最後に、まだW-ZERO3を購入して2日程度しか触っていないが、それでもネット上に公開されている情報のおかげで、かなりのところまで実験することができた。一つ一つの名前をあげるわけにはいかないが、情報サイトならびにまとめサイト運営者の皆様に、深くお礼を申し上げたい。
□ウィルコムのホームページ (2006年1月25日)
[Reported by 小寺信良]
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