~ RolandがNAMM2006出展製品を国内発表 ~ |
発表会 |
1月19日~22日にアメリカのアナハイムで開催された楽器関連の展示会「NAMM2006」で、Rolandは数多くの製品を参考出品していたが、それらの製品が2月10日、国内でも正式に発表された。
いつもの様にRoland、EDIROL、BOSSの3ブランドで合同で、東京・渋谷のライブハウスでプレス・販売店向けの発表会が行なわれ、11日には一般向けにも行なわれた。
R-09 |
今回はRoland、EDIROL、BOSSともに、なかなか魅力的な製品が勢ぞろいであったが、AV Watch的な目玉はEDIROLのデジタルレコーダ「R-09」だろう。R-09は昨年発売された「R-1」の後継といえるレコーダで、リニアPCMでのレコーディングを単体でできるようにした機材だ。最高24bit/48kHzまでのWAVEファイルとMP3ファイルに対応。内蔵のステレオ・コンデンサマイクだけで高品位な録音が可能。
R-1の登場後、M-Audioからは「MicroTrack 24/96」、SONYからはPCM-D1が発売されるなど、リニアPCM対応の小型レコーダのちょっとしたブームになったが、R-1の後継であるR-09の最大のポイントは小型化だ。体積比で1/2以下となり単3電池×2本込みで145gを実現。またメモリメディアはコンパクトフラッシュからSDカードへと変更になっている。
そのほかにも、X-Y型のマイク配置を採用して、よりステレオ感を得られるようにしたり、ボディーのサイド部分をラバーコーティングすることなどで、グリップノイズを最小限に留めている。また、dB表示機能付きのレベル・メーターをはじめとした、さまざまな情報を表示する本体ディスプレイに、有機ELを搭載したことも大きな特徴。これによって、視野角も大きく広がっている。また、オプションとして三脚と専用ケースのセットや、専用設計の外部マイク、専用キャリング・ケースも発売される予定。
X-Y型のマイク配置を採用 | オプションの三脚と専用ケース | 専用の外部マイク |
詳細については、R-09を借りることができたときに紹介したいと思うが、なかなか期待できそうな製品だ。発売は4月末の予定で、オープンプライス(店頭予想価格は3万円台後半)。
□製品情報(R-09)
http://www.roland.co.jp/products/dtm/R-09.html
Cakewalkのソフトシンセ新製品 | Z3TA+ |
さらにDIMENSION PRO、RAPTUREというソフトシンセも登場。これらは、Windowsだけでなく、ついにMacintoshにも対応し、プラットフォームとしてはWindowsのDXi、DXi64(SONARの64bit版で動作するもの)、VSTi、そしてMacのVSTi、AU、RTASの計6つの環境で動作する。
DIMENSION PRO | RAPTURE |
まずDIMENSION PROはProject5 Version2に入っていたDIMENSIONとほぼ同じソフトシンセで、いわゆるプレイバック・サンプラーだ。Project5版との最大の違いはライブラリが追加されたこと。ライブラリとしても著名なGarritan Pocket Orchestra、Electronica Collectionなどを含むDVD2枚分7GBで、1,500以上のサウンド・プログラムが収録されている。
一方、RAPTUREのほうは、今回の完全な初登場で、オシレータごとに2系統のフィルタを装備した6オシレータのウェーブ・テーブル・シンセサイザーだ。グラフィカルなモジュレーション・コントロール、ホストに同期したパラメーターのステップ・シーケンス機能などを装備している。
いずれも4月発売予定でオープンプライス。店頭予想価格はZ3TA+が、20,000円前後、DIMENSION PROが30,000円前後、RAPTUREが25,000円前後となっている。なお、Intel Macへの対応については、現時点では未定。また、これを機会に、SONARがMac版に対応してくるという可能性はなさそうだ。
□製品情報(Z3TA+/DIMENSION PRO/RAPTURE)
http://www.roland.co.jp/products/dtm/CWI.html
BR-600 | 端子部 |
とはいえ、性能的には従来のものを踏襲。8トラック×8バーチャルトラックの計64Vトラックを備え、2トラックの同時録音、8トラックの同時再生が可能。また記録メディアはコンパクトフラッシュで128MBが標準で添付されている。サンプリングレートは44.1kHzで、量子化ビット数は24bitとなっているが、圧縮方式によってHi-Fi(MT2)、STD(LV1)、LONG(LV2)の3つのモードがある。同梱の128MBのメディアに収録可能な時間としては1トラック換算でMT2が約65分、LV1で約78分、LV2で98分となる。
電源は単3乾電池×6本で駆動するほか、別売のACアダプタも利用できる。またステレオのオンボード・マイクが内蔵されているので、これ単体でのレコーディングも可能だ。もちろん、COSMによる強力なエフェクトが数多く用意されており、コーラス、ディレイ、ギターアンプ・シミュレーターといった単純エフェクトはもちろんCOSM GTR AMP、BASS MULTI、VOCAL MULTIなど複数のエフェクトを組み合わせたマルチエフェクトも用意されているので、これ単体で一通りのことはできそう。
さらに、BR-600はリズムマシンとしても利用できるので、使い道は豊富だ。なおUSB端子も搭載されており、PCと接続すると、コンパクトフラッシュが外部ドライブとして見えるようになっていて、データのバックアップや、WAVファイル、AIFFファイルでのインポート、エクスポートも可能となっている。BR-600は4月発売、オープンプライスで店頭予想価格38,000円前後の予定だ。
□製品情報(BR-600)
http://www.roland.co.jp/products/boss/BR-600.html
SH-201 |
Rolandからはレトロシンセの復刻版的なイメージの製品がいくつか登場した。中でも多くの人が楽しめそうなのがアナログ・モデリング・シンセサイザの「SH-201」だ。SHシリーズといえば、Rolandのアナログ時代のシンセの代表格。SH-1、SH-7、SH-09、SH-101、SH-2000……といった製品があったが、それらを彷彿させるのが今回新たに登場したSH-201だ。
もっとも、これはアナログではなくアナログ・モデリング。つまり、アナログのよさを実現しつつ、デジタルで安定した音作り、運用が可能なシンセとなっている。音作りも分かりやすく、シンセの基本に則り、オシレータ、ミキサー/モジュレータ、フィルタ、アンプの順に並んでおり、初心者でも扱いやすい。オシレータは2つ搭載されており、JP-8000やV-Synthで人気のSuperSAWやFEEDBACK OSCも搭載されているので、分厚い音作りが可能だ。
SH-201のエディタ、ライブラリアン |
ユニークなのは外部入力端子が用意されており、そこに専用のフィルタをかけて、音を変化させられるほか、オシレータとしても利用できるため、さまざまな活用ができる。さらに、SH-201のエディタ、ライブラリアンがVSTiおよびスタンドアロンとしてWindows版、Mac版それぞれで用意されている。
ここで面白いのは、USBでSH-201が出す音をPCへインポートできてしまうこと。つまりDAWでMIDIを使ってSH-201を鳴らし、それによって出た音をそのまま別のオーディオトラックに取り込めば、ちょうどソフトシンセをフリーズさせる感覚でSH-201を利用できる。SH-201は5月の発売予定で、オープンプライス(店頭予想価格82,000円前後)となっている。
JUNO-G |
同じくRolandのレトロシンセの復刻版がJUNO-G。一昨年に登場したJUNO-Dに続くシリーズだが、JUNO-Dと違いパネルの配色がまさに、JUNO-60、JUNO-106を思い浮かべるデザインとなっているのが特徴。もっとも、これはSH-201と異なり、JUNOをアナログ・モデリングでシミュレーションしようというシンセではなく、最大同時発音数128音でSRXシリーズ用拡張スロットを搭載したFantom-Xシリーズの系統を引くPCMのデジタルシンセ。
ピアノ音からギター、ベース……とさまざまな音色を装備するとともに、もちろんJUNO-106などの音色も搭載している。また、新開発のソング・レコーダを搭載しており、4トラックのステレオ・オーディオトラックとパートとトラックが直結した簡単操作の16パートMIDIシーケンサを搭載しているのが特徴。これによりシーケンサでバッキングトラックを鳴らしながら、ボーカルやギター、コーラスなどをオーディオトラックに録音することができる。
さらにすごいのは、オーディオで録音した音もテンポを変更させると、自動的にタイムストレッチさせテンポに追従するということ。難しいことを考えずに操作できるので、便利に使えるレコーダとしてだけみても優秀な製品だ。もちろん、USB端子も搭載されており、レコーダで録音したオーディオファイルのやりとりのほかUSB-MIDIによるコントロールも可能。SONAR LEも同梱されているので、いろいろな使い方ができそうだ。JUNO-Gは4月の発売で、オープンプライス(店頭予想価格110,000円前後)の予定となっている。
VP-550 |
もうひとつRolandのレトロシンセの復刻版といえるのがボーカル&アンサンブル・キーボード、VP-550だ。そう、これは'79年登場のボコーダー、VP-330を大きく発展させ現代に登場させたというもので、声の演奏ができるシンセサイザだ。
このVP-550はいわゆるボコーダーとして使えるのはもちろんだが、こうしたロボット・ボイス的な歌声ではなく、最新のヒューマン・ボーカル・モデリング技術を利用したことで、高品位なボーカル音源として使えるのが特徴。
たとえば、マイクからの男性の声を入力しながら、キーボードを弾くことで、女性のバックコーラスを作り出したり、いかにもゴスペル調の歌を表現したり……ということが可能なのだ。しかも、これをエクスプレッション・ペダルでコントロールすることも可能なため、これまでできなかったボーカルサウンド作りができそうだ。V-550は3月末の発売でオープンプライス(店頭予想価格152,000円前後)となっている。
□製品情報(SH-201)
http://www.roland.co.jp/products/mi/SH-201.html
□製品情報(JUNO-G)
http://www.roland.co.jp/products/mi/JUNO-G.html
□製品情報(VP-550)
http://www.roland.co.jp/products/mi/VP-550.html
MC-808 |
最後に紹介するのはRolandの人気のGROOVEBOXシリーズの最新作「MC-808」。ついにMCシリーズにタッチセンス付きのムービングフェーダを8本も搭載してしまったというのが最大の特徴。また200種類以上の新規パターンを搭載し、896パッチ、128リズムセットを備え、最大同時発音数も128音へと拡大された。またレコーダ感覚で録音できるサンプラーセクションも持ち、メモリ最大拡張時には約102分もの長時間サンプリングが可能だ。
ここでレコーディングしたオーディオは、先ほどのJUNO-Gと同様、テンポを変化させた際、自動的にタイムストレッチして、テンポ追従するようになっている。さらに、MC-808にはMC-909譲りの強力なエフェクト群を搭載。2系統のマルチエフェクトをはじめリバーブ、コンプ、外部入力用エフェクト、マスタリング・エフェクトの計6系統のエフェクトを同時利用可能となっている。
サンプル・エディタでは、大画面で波形編集が行なえる |
さらにMC-808ではPCとの連携機能も強化されている。本体にはUSB端子が搭載されており、PCと接続することで、マスストレージとして見えるため、WAVファイル、AIFFファイルのやりとりができるほか、USB-MIDIによるコントロールも可能。そして、本体のパッチのフルエディットが可能なパッチ・エディタ、パート・エディタに加え、サンプリングしたウェーブをパソコン画面上でダイレクトに編集できるサンプル・エディタが付属しているのも特徴。
MC-808のセッティングや音作りをPC側で集中制御できるだけでなく、サンプル・エディタでは、大画面での波形編集が行なえるため、より快適な制作環境が実現できるようになっている。MC-808は3月の発売で、オープンプライス(店頭予想価格121,000円前後)となっている。
□製品情報(MC-808)
http://www.roland.co.jp/products/mi/MC-808.html
FR-3s | SA-300 |
HandSonic 10 | AC-3 |
□製品情報(FR-3)
http://www.roland.co.jp/products/mi/FR-3.html
□製品情報(SA-300)
http://www.roland.co.jp/products/mi/SA-300.html
□製品情報(HandSonic 10)
http://www.roland.co.jp/products/mi/HPD-10.html
□製品情報(AC-3)
http://www.roland.co.jp/products/boss/AC-3.html
□ローランドのホームページ
http://www.roland.co.jp/
□NAMM 2006発表新製品
http://www.roland.co.jp/NAMM/index.html
(2006年2月13日)
= 藤本健 = | リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。 最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。 |
[Text by 藤本健]
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