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第224回:ヤマハが久々のDTMパッケージ「MW12」
~ 低価格でミキサー類充実。ASIOドライバも用意 ~



久々のDTMパッケージ製品が登場

 YAMAHAから本当に久しぶりのDTMのパッケージ製品が発売される。最近はmLAN製品や、StudioConnection関連のソフトがリリースされたことはあったが、初心者向けのパッケージという意味では、MIDI音源であるMU2000とSOL2を組み合わせた「Hello!Music! 2000 Audio」以来となるので、約5年ぶりのDTM戦線復帰といってもいいだろう。

 その久々に登場した製品である、USBミキシングスタジオ「MW12」を借りることができたので、どんな製品なのか検証した。



■ 低価格ながら、ハード/ソフトともに充実

 ヤマハ久々のDTMパッケージ製品として登場したUSBミキシングスタジオは、「MW10」と「MW12」という2製品のラインナップ。いずれもミキサータイプのUSBオーディオインターフェイスと、レコーディングソフトウェアをパッケージとした製品で、オープンプライスだが実売は前者が22,000円前後、後者が33,000円前後と非常に安価な価格設定となっている。

MW10 MW12

 先に価格を見てしまうと、おもちゃのような製品なのかと思ってしまうが、実物をみるとその立派さにちょっと驚いてしまう。今回使ったMW12のハードウェアは12IN/4OUTというスペックのミキサータイプのUSBオーディオインターフェイス。

 322×416.6×108mm(幅×奥行き×高さ)のサイズで5.0kgというものだから、かなりしっかりとしている。リアパネルを見るとTRSフォン、XLR、RCAのアナログ端子がズラリとならび、本当の初心者だとちょっと敬遠してしまうかもしれないほどだ。

Windows版、Mac版のCubase LEがバンドル

 一方、ソフトウェアのほうはSOL2ではなく、SteinbergのCubaseシリーズのもっともエントリーレベルの製品、「Cubase LE」であり、Windows版、Mac版のハイブリッドのCD-ROMがバンドルされている。現在はYAMAHA傘下となったSteinbergだが、その製品がようやくYAMAHA製品としてリリースされたことになる。

 もっとも、このCubase LE自体は今回が初お披露目といったものではなく、E-MUのProteusXやEMU0404 SecondEdition、またCreativeのSound Blaster X-Fi Elite ProやALESISのMULTIMIXシリーズなどなど数多くの製品にバンドルされてきた。スペック的には48トラックまで利用できるMIDI&オーディオのDAWで、Cubase SX 1.0から機能を削減したものだ。

 1トラックあたりで利用可能なプラグインエフェクトの数が少なかったり、バンドルされているソフトシンセの数が少ないなど制限はあるものの、かなり本格的なレコーディング、ミキシングが可能なソフトウェアである。

 これだけのものが33,000円で買えるとは、うれしい時代になったものだが、実は、このMW10およびMW12とそっくりなハードウェアがすでに世の中に出ているのだ。それは2003年の春にリリースされているアナログのミキシングコンソール、MG10/2とMG12/4だ。色こそ違うが、大きさ、形、ノブ、フェーダーの位置もまったく同じで、違いはUSBがついているかどうかという点だけだ。

MG10/2 MG12/4

 MG10/2やMG12/4は、ちょうどBEHRINGERのアナログミキサーにぶつける形で登場させた製品で、ともにミキサーの入門製品としては現在でも定番の人気製品になっている。標準価格で、それぞれ14,800円、24,800円だが、実売ではこの2割引程度なので、MW10、MW12の価格もうなづける。



■ ドライバ不要で簡単だが、やや戸惑う面も

 ちょっと大きめなACアダプタを接続して電源を入れてみると、MW12はアナログのミキサーとして機能する。つまり、USBで接続しないとMG12/4そのものとして利用できる。

 改めてリアパネルを見るとわかるが、入力端子としてはXLRのマイク端子が6つ、ライン入力はモノラル×4、ステレオ×4が用意されているほか、チャンネルインサーション×4、AUXリターンがステレオで1つ、そして2TR INというRCAの入力がステレオで1つある。一方、出力はメインがステレオ×2、AUXセンドが2つ、チャンネルインサーション×4、RECがステレオ×1、C/Rがステレオ×1、GROUPというのが2つある。AUXなどを除けば、基本的に12チャンネルの入力と4chの出力がある。

ACアダプタは大きめ MW12の背面

 最近デジタル機材ばかり触っていたので、なんとなく懐かしく、また新鮮にも感じてしまうのが、これが完全にアナログのミキサーであるということ。当然デジタルの入出力は持たないし、このミキサー内にはDSPなども搭載しておらず、エフェクトなどもこれ単体では使えない。エフェクトはあくまでもAUXのセンド・リターンなどを利用して外部機器で行うのだ。ただし、3バンドのEQが各チャンネルに搭載されているから、これを利用して簡単に音質補正を行うことができる。

 なお、マイク端子はすべてファンタム電源対応となっているので、そのままコンデンサマイクと接続して使うこともできる。ただし、ライン入力の中にはハイインピーダンス対応の端子が存在していないため、ギターやベースとは直接接続することができず、DIやエフェクトを経由させてつなぐ必要がある。

標準USBオーディオインターフェイスとして認識される

 早速、MW12をPCと接続してみた。マニュアルなどにも書いてあったが、ドライバ不要で、WindowsやMacの標準USBオーディオインターフェイスとして認識される。ただ、そのためサンプリングレートは44.1kHzもしくは48kHz、量子化ビット数は16bitとなってしまう。最近のオーディオインターフェイスは24bit/96kHz、さらには24bit/192kHz対応というのが一般的だが、MW12では最高でも16bit/48kHzとなっている。

 また、触っていて気づいたのだが、MW12本体の電源が入っていなくてもUSBで接続すれば、それだけで入出力先として認識される。もっとも、この場合、どの端子も利用できそうにないので、結果的には無意味ではあるが……。

 電源を入れると無事、入出力ができる。しかし、最近の機材に慣れていると、やはりちょっと戸惑う面も多い。MW12はあくまでもアナログのミキサーに、USBオーディオインターフェイス機能を追加したものであり、PC側から見ると単純に2IN/2OUTのオーディオインターフェイスにすぎないのだ。つまり、いくら12chの入力があろうとも、それぞれを別途に扱うことはできない。

 各チャンネルに入力したものを、同時には、別々のトラックに録音することができず、もちろん、各チャンネルのレベルやEQ、センド量などのセッティングもPC側からはできない。あくまでもミキサーコンソール上でつまみをいじって設定するのみである。しかし、別の見方をすれば、すべてアナログのコンソール上で作業をするだけだから、わかりやすいというのも確かだ。

ASIO Multimedia Driverでデモ曲を再生できた

 ここで実際にCubase LEを起動して、操作をしてみた。まず最初に問題になるのがオーディオの入出力ドライバをどうするかである。ドライバなしで接続できたということは、当然ASIOドライバではない。Windowsの場合、デフォルトでは、MMEドライバをASIO化して利用する「ASIO Multimedia Driver」が設定され、マニュアルでもそれが推奨されている。とりあえず、これでデモ曲を読み込んで再生させると、問題なく音が出る。

 ただし、前述したとおり、あくまでも2chで再生しているだけであり、Cubase LE側とMW12本体の各パラメータに関連性はない。したがって、このハードウェア側で調整できるのは単純に音量だけということになる。とはいえ、このミキサーに入力されている各音源とミックスさせることは可能。そのため、PCからの再生音に合わせってギターを弾いて楽しむといった使い方は手軽にできる。



■ 昔MIDIでDTMをしていた人にもオススメ

【追記・訂正】(2006/2/22)
 記事初出時、ASIOドライバが用意されていないと表記されていましたが、ヤマハのサイトで、製品発売時にMW10/MW12用の「YAMAHA ASIO DirectKS Driver」が公開されておりました。Cubase LEなどのASIO対応DAWアプリケーションで使用でき、Windows標準のオーディオドライバより、レイテンシーが低減し、入出力とも2チャンネル、44.1/48kHz、16ビットに対応しています。

 しかし、問題になってくるのがレイテンシーだ。たとえば、PCにMIDIキーボードを接続し、それで弾いたキーでソフトシンセを鳴らしてリアルタイムに発音させるとしよう。この場合、ASIO Multimedia Driverではどうしても500msec程度の遅れが生じてしまい、まともな演奏ができない。

 また、マイクなどで入力した音を、いったんCubase LEに信号を渡し、エフェクトをかけた上でミキサーから出力させることも可能だが、そうなるとさらに遅れが出てしまい、やはり使用に耐えない。

 Macの場合は、標準のドライバでもレイテンシーが非常に小さく抑えられているため大きな問題にはならないが、Windowsの場合、致命傷ともいえる。このASIO Multimedia Driverとは別にDirectSound経由でASIOに渡すASIO DrectX Full Duplex Driverに切り替えることで多少改善する。

 さらに、このASIO DrectX Full Duplex Driverにおけるバッファサイズを小さく設定すると、ある程度レイテンシーを追い込むことができるが、それでも50msec程度のレイテンシーは残るため、厳しいことは確かだ。

ASIO DrectX Full Duplex Driverに切り替えることでレイテンシーは多少改善される バッファサイズを小さく設定しても、50msec程度のレイテンシーは残る

 MIDIは使わない、レコーディングする音のモニタはあくまでもアナログ上で聞き、エフェクト結果は気にしないというのであれば、普通のレコーディングすることはできる。しかし、Cubase LEのせっかくの機能を十分に利用しようとすると、ちょっと力不足という感は否めない。

 そこで、ちょっと試してみたのは標準のUSBオーディオデバイスをASIO化してしまうというドイツのPloytec GmbHが開発したUSB Audioというドライバだ。国内ではランドポートが扱っており、ベクター経由で8,190円という価格でオンライン販売されている。さっそく試してみると、あっさりインストールすることができ、Cubase LE上でドライバ名が表示された。これを選択すると、先ほどのレイテンシーが嘘のようにすべての問題が解決してしまう。

USB Audio Cubase LE上でドライバ名が表示され、レイテンシーの問題も解決

レイテンシーの設定は6段階

 レイテンシーの設定は6段階あり、最高のHighspeedに設定すると、Pentium D 820のマシンでは音が途切れてしまったが、次のRapidという設定ではうまくいった。表示上では、44.1kHzの設定で出力レイテンシーが9msec、入力レイテンシーが4msecとのことで、なかなか快適であった。これならMIDIでの利用にも問題はなく、エフェクトをかけた音をモニタしても違和感なく聞こえる。

 以上、このMW12を一通り使ってみたが、ミキサー単体としての使い勝手は非常にいいし、音質的にも悪くない。最近のデジタルミキサーのような音とは異なり、ソースやレベルの設定によっては若干のヒスノイズが混入したり、USB入出力においてもUSB音が出だした瞬間にヒスノイズが聞こえるなど、アナログミキサーという感じではあるが、この価格帯を考えれば十分満足のいくものだと思う。

 では、この製品、誰が何のために使うといいのだろうか? ひとつは、数多くのオーディオ機器や楽器を持っていて、一つミキサーが欲しいと感じていた人だ。これなら手軽に多くの機材をつなぐことができ、しかもその音をミックスさせてPCに取り込むことが可能。Cubase LEでの使用に限らず、結構便利に使えるはずだ。この際、PCもオーディオ機器のひとつとして捕らえることが可能で、PCのHDD内に入っているMP3ファイル等の再生用にも便利に使えるだろう。

 また、昔MIDIでDTMをしていたが、久しぶりに最近のDTMで遊んでみたいという人にもいいだろう。アナログミキサーで古い機材と接続するとともに、Cubase LEでMIDI機器もそのまま活用できる。こうした外部のMIDI機器を利用するのであれば、レイテンシーも問題にならないはずだ。

 最近のFireWireのオーディオインターフェイスなどと比較すると見劣りする面もあるが、これだけのミキサーが統合された製品でこの価格というのは魅力的ではある。

 今後気になるのは、これがYAMAHAのDTM戦線復帰の第1弾ということになるのかだ。最近mLANはややトーンダウンしているような気がするが、さまざまなハードウェア、音源を持つとともに、Steinbergを手に入れたYAMAHAがどのように動いてくるのか非常に楽しみなところだ。

□ヤマハのホームページ
http://www.yamaha.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.yamaha.co.jp/news/2006/06020301.html
□製品情報
http://www.yamaha.co.jp/product/syndtm/p/usbaudio/mw/index.html
□関連記事
【2月3日】ヤマハ、ミキサー内蔵のUSBオーディオ
-Cubase LE付属で実売22,000円
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060203/yamaha.htm

(2006年2月20日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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