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第231回:「Boot Camp」のMac miniでDTM製品を動作検証
~ Intel HD Audioに準拠。32bit/192kHzに対応~



Boot Camp パブリックβ版のダウンロードページ

 先週、Appleから突然のように発表されたBoot Camp。個人的にはPC上でMac OS Xを動かすならともかく、Mac上でWindowsを動かすことにはあまり興味はなかったが、MacでWindowsを動かしてみたいという人は結構いるらしい。

 確かに、これまでMacでは動かなかったSONARやSoundForgeなどのソフトを動かせるようになるという意義はある。また、これまでWindowsしか使ったことがなかったユーザーがMacをトライしてみる上で、Windowsが使えるという保険がありつつ、Mac OS Xもブートできる環境というのは、安心材料のひとつにはなりそうだ。

 Boot CampをつかったWindowsのインストール方法などは、PC Watchなどで詳細な記事が上がっているが、今回は、内蔵サウンド機能や、DTMに使える環境なのか、実際いくつかの機器を接続するとともに、DTM関連のソフトをインストールしてチェックしてみた。



■ インストール開始までにトラブルが

Mac mini

 今回、検証することにしたのは、Boot Campを利用してWindows XPをインストールしたMacはDTM環境としてどうなのかということ。以前、IntelベースのiMacでPowerPC用のDTMアプリケーションがどの程度動くのかを検証したが、今回はWindows用のDTMアプリケーションやオーディオインターフェイスなどのドライバがどの程度動くのか見てみた。

 実は、前回のRosettaのテストの際はAppleからiMacを借りてテストしたが、今回は今後のことも考えて、Mac miniを1台購入して試してみようと、さっそく金曜日に某量販店で、CoreDuoを搭載したMac miniを購入した。しかし、これが失敗のはじまり。購入したマシンが、たまたま初期不良品だったのだ。

 もちろん、そんなことは知らずに、さっそくMac OS Xの動作環境を整えた上で、Boot Campをダウンロードすると、途中で急にMacの電源が落ちてしまう。もしかしてOSがおかしいのかなと思って、OSを再インストールをしようとしたが、その途中でまたダウン。Mac miniを触ってみたら、メチャメチャ熱くて火傷をしそうなほど。気づいてみると、何やら異臭もする。今回は、メモリ増設もなにもしていない、買ってきたままの状態でこうなったので明らかな初期不良だ。

 翌日、購入した店で交換してもらおうと電話をしたが、Apple製品は即交換とはいかない、とのこと。Appleのサポートセンターに問い合わせをし、確認番号をもらわないと交換できないというのだ。さっそくサポートに電話をし、事情を話すと非常に丁寧に対応してくれたが、基本的にはAppleが引き取りにくるので、最低2週間を要するという。

 結局、なんとか手配することができたが、量販店の店員によると、Mac miniは膨大な数を売ったけれど、そんなトラブルは初めてとのこと。どうやら、よっぽど運が悪いらしい。

 気を取り直して再スタート。Boot Campをダウンロードして、Windowsインストール作業に入った。インストール要件としては、WindowsのインストールディスクはSP2適用済みで、アップグレード版ではない標準版が必要。しかし、SP1もSP2も適用されていない、アップグレード版のXP Professionalしか持っていないため、SP2を適用したインストールディスクを別のPCで作ってみた。アップグレード版ではあるけれど、なんとかなるだろうと思ったのだが……。

 結果は失敗。予想はしていたが、アップグレード版はインストール途中で、Windows 2000やWindows 98など、前バージョンのディスクが求められる。Mac miniの場合、ハードウェアのイジェクトボタンがないため、これがうまくいかない。結局、Windows XP Home Editionを追加購入した。



■ インストール自体は問題なく完了

SigmaTelのドライバにより、最大32bit/192kHzというサウンド機能が利用できるようになった

 色々あったが、トラブルはここまで。ここから先は、拍子抜けするほどスムーズに進んだ。Windowsは簡単にインストールされ、普通に起動した。ただ標準のWindowsドライバだけでは音は出ないので、Boot Campが作り出してくれたドライバディスクをインストールすると、各ドライバがインストールされる、Windowsで音が鳴るようになった。Mac miniに搭載されているサウンド機能は、Intel HD Audio準拠であり、SigmaTelのドライバにより、最大32bit/192kHzというサウンド機能が利用できる。

 試しにMac miniのリアにあるステレオミニの入出力を直結させた上で、いつものRMAAを使って24bit/48kHzおよび24bit/96kHzでのアナログ特性の実験をしてみた。結果としては、普通のオンボード音源レベルのものであった。スペック上は、凄いHD Audioだが、音にこだわりのあるApple製品であってもたいした性能は出せていないようだ。


24bit/48kHz 24bit/96kHz

 一方、コントロールパネルからSigmaTelのドライバをチェックしてみたが、できることは少ない。単にミキサーでレベル調整ができるほかは、光デジタルの出力のオン/オフと、そのS/PDIFの周波数設定ができるくらい。そもそもMac miniの出力はステレオだけでサラウンド対応ではないから、たいした設定ができるはずもないが、HD Audioのウリのひとつである「オーディオデバイスの自動検知と端子の割り当て変更機能」というものもないようだった。

レベル調整 光デジタルの周波数設定まで行なえる



■ メモリ/HDDを増設すればDTM環境として使える

FA-101と接続

 結局、まともなオーディオの入出力を行なうためには外部にオーディオインターフェイスを接続する必要がありそうだ。Mac miniの場合、PCIスロットこそないが、USB 2.0を4つ、FireWireを1つ標準で搭載しているので、これらを利用できる。さっそくEDIROLのFireWireオーディオインターフェイス「FA-101」を接続してみたところあっさり成功。

 特に問題なくオーディオの入出力ができた。また、同じくEDIROLのUSB 2.0対応オーディオインターフェイス「UA-101」でも問題なく使うことができた。USB 2.0のインターフェイスとしてもキッチリ機能しているようだ。


USB接続のUA-101でも問題なく利用可能

 ここで、Windows専用のDAWの代表、SONAR 5 Producer Editionをインストールして使ってみたところ、まったく違和感なく使うことができる。SONARの場合、ASIO、WDM、DirectX、MMEと各ドライバに対応しているので、こうしたチェックの際はとても便利。FA-101、UA-101のそれぞれで各ドライバを試してみたが、すべてOKだった。ただしSONARでは、標準のサウンド機能であるIntel HD Audioは利用できない。これは一般のPCでもMac miniでも同様の結果である。

SONAR 5 Producer Editionも使えた FA-101/UA-101で各ドライバが利用可能 Intel HD Audioは使えなかった

 実際にデータを演奏させると標準のメモリサイズである512MBではもの足りないというのは事実。このMac miniでSONARを利用するなら最低でも1GB、できれば2GB程度へ変更しておいたほうがよさそうだ。

 一方、手元にはM-Audioのフィジカルコントローラ兼FireWireオーディオインターフェイスのProjectMix I/Oもある。これはSONARでも簡単に使えるはずなので、試してみた。Mac miniのFireWire端子は一つなので先ほどのFA-101を抜いてProjectMix I/Oに差し替えた結果、フィジカルコントローラとしてもオーディオインターフェイスとしても問題なく動いた。ProjectMix I/Oは面積的にはMac miniの6倍くらいあるので、多少アンバランスな感じもするが、しっかりと動いてくれる。

ProjectMix I/Oは、フィジカルコントローラとしても、オーディオインターフェイスとしても動作

 続いてReason 3.0もインストールして試してみた。こちらも、各オーディオドライバで問題なく動いた。ASIOドライバを選択しておけばオーディオのレイテンシーも通常のPCと同様に小さく設定できる。また、手元にあるUSB-MIDIキーボードであるEDIROLのPCR-30を接続してみたところ、これもReasonから自動認識でき、普通に使うことができた。もちろんReWireなどは問題なく動作するので、Mac mini特有というような事情はなにもなさそうだ。

Reason 3.0も各ドライバで使えた ASIOドライバを使えば、オーディオのレイテンシーを小さく設定することも可能 USB-MIDIキーボードのPCR-30も問題なく利用できた

 Windowsをインストールするまでに時間がかかってしまったが、個別の問題だろう。普通に行なえば簡単にインストールでき、インストールできたらあとは一般のPCとまったく同様に利用することができる。ただ、標準のHDDだと80GBしかないので、Windows用のパーティションを大き目に切るか外付けのHDDを用意しないと本格的な活用は難しいかもしれない。また、メモリ容量を増やしておく必要性は前述のとおり。Macユーザーがあえて、Boot Campを利用してWindowsを使う必要性があるかどうかは分からないが、WindowsユーザーがMacを試してみるキッカケとして、Mac miniは面白いマシンといえそうだ。

□アップルのホームページ
http://www.apple.com/jp/
□bootcampダウンロードページ
http://www.apple.com/macosx/bootcamp/
□関連記事
【4月6日】アップル、Intel MacでWindows XPを起動できるツールを公開(PC)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0406/apple.htm
【4月10日】Intel MacでWindowsが動く「Boot Camp」レポート(PC)
【インストール編】
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0406/apple2.htm
【3月1日】Apple、リモコン操作に対応した「Mac mini」
-iTunesプレイリストやビデオ共有に対応
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060301/apple3.htm
【1月30日】【DAL】“Intel Mac”は音楽制作に使えるか?
~ PowerPC用DTMソフトで動作検証 ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060130/dal221.htm

(2006年4月10日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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