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第232回:「RealMusic」が目指す配信サービスとは?
~ オンデマンド/ダウンロードにも展開。ビデオも年内予定 ~



RealMusic

 4月4日、RealNetworksが5月上旬からSMEなどと提携して、日本で音楽配信事業を定額制でスタートさせると発表された。最初はネットラジオから開始し、好きな曲を選んでストリーミング再生できるオンデマンドサービスも年内にスタートさせるという。

 最近、日本で影が薄くなっていたRealNetworksだが、ストリーミングでは老舗の同社がなぜこの時期に音楽配信に参入したのか?、どのようにして既存のサービスに対抗し、コーデックやDRMをどうするつもりなのか? など、RealNetworksの日本法人に疑問をぶつけた。

 話を伺ったのはリアルネットワークス株式会社のコンスーマ事業部セールス&マーケティング部マーケティング・マネージャーの荻原知佐子氏、同メディア・パブリッシング部リアルエンターテインメント・ミュージック・プロデューサーの山口宗氏、同メディア・パブリッシング部メディア・システム・マネージャーの友野晶夫氏の3名だ(以下敬称略)。



■ ラジオ型からオンデマンド型にも展開

藤本:先日、新聞などでも大きく報道されていましたが、音楽配信ビジネスを改めてスタートするとのことですが、実際どんなサービスをするのか、まずはその概要を教えてください。

左から友野晶夫氏、山口宗氏、荻原知佐子氏

荻原:4月4日に、「RealMusic」をプレスリリースで発表しました。弊社としましては、RealEntertainmentということで、ゲームやビデオなども含めた総合的なデジタルエンターテインメントプラットフォームの提供を開始します。その中のひとつとしてRealMusicを位置づけています。

藤本:つまり、RealMusicはRealEntertainmentの第1弾ということですね。

荻原:はい。なぜ総合デジタルエンターテメンメントプラットフォームと呼んでいるかというと、我々が目指しているのは、人が単に何かを買いに来る場ではなくて、そこに来てゲームを楽しんだり、音楽を楽しんだり、ビデオを楽しんだり……、つまり遊んでもらう場所という意味です。

 今後はコミュニティというのものも含め、そんな場を提供したいと考えています。そして音楽、ビデオ、ゲーム、コミュニティ、この4本柱をコアとしてRealEntertainmentを構想しています。

藤本:では、RealMusicが日本でスタートするのは、具体的にはいつになりますか?

荻原:まだ正式なスタート日を申し上げることはできませんが、5月上旬を想定しております。最初はインターネットラジオから始め、続いてオンデマンド型にも展開していきます。また、パッケージ販売やダウンロード販売は外部サイトとの連携による実現を考えています。ですから、弊社がiTunesMusic Storeの競合としてサービスをスタートするということではありません。あくまでもオプションとして追加する形になります。

藤本:なるほど、そういうことだったんですね。てっきり、RealNetworksが新たなコーデックにDRMでダウンロードサービスを開始するのかと思っていました。

荻原:外部との連携については、後ほどお話したいと思いますが、音楽の次にビデオオンデマンドも計画しており、音楽とビデオはRealPlayerを使って提供していきまます。またゲームについてはすでにRealArcadeというダウンロードゲームサービスをスタートさせています。さらにコミュニティなども順次始めていきます。

 これらサービスコンセプトを「ハイエンド・デジタルエンターテインメント・ライフ」と位置づけており、大きく3つの特色を持っています。まずはストリーミングのパイオニアとしてのRealPlayerで、高音質・高画質が楽しめること。2つ目は豊富なコンテンツを持っていること、そしてサブスクリプション型であるということです。つまり、定額制であって、いくら聴いても月額固定で安心、と訴求していきます。

 現在のところ、こうしたサブスクリプション型のサービスを日本で行なっているところがないので、われわれが国内で先駆けてサービスをスタートさせることになります。まずはインターネットラジオとしてスタートさせ、それが5月上旬開始となります。

藤本:海外ではこのサブスクリプション型のサービスをすでに始めているんですか?

荻原:米国で以前からRhapsodyというサービスを行なっており、この中にインターネットラジオもオンデマンドストリーミングも統合された形になっています。

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【2005年10月12日】MicrosoftとRealNetworksが独禁法訴訟で和解
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■ 常に曲の先頭から再生。ビデオも年内開始予定

藤本:具体的な利用イメージはどんなものでしょうか?

荻原:好きな音楽を聴きながら、仕事をしたり、家で音楽を聴いてくつろいだり、聴き放題ですね。

藤本:でも、ここでの利用イメージはすべてネットワークにつながった環境で使う、ということですよね?

荻原:はい、そうです。今後、ネットカフェなどネット環境が広がれば、いろいろと利用できる場所は広がり、IDがあればどこでも利用可能になってきます。

藤本:音楽もビデオもすべて年内にスタートされるんですか?

荻原:すべて今年中と確約はできないですが、目標としたいと思っています。

藤本:やはり一番気になるのは、その音楽配信がどんなサービスなのかということですね。ここまでのお話の中で、音楽について、サブスクリプション型、RealMusic、インターネットラジオ、オンデマンドストリーミング、そしてダウンロードサービスと、いろいろな言葉が出てきていて、全体像の整理がつかないのですが……。

山口:まず、インターネットラジオから説明しましょう。これは「RealPlayer with RealMusic」というサービス名称で行なうもので、非インタラクティブの音楽配信です。サービス開始時期において約150ステーションで始めますので、曲数はそこから類推してみてください。このインターネットラジオではシャッフル再生を前提としていますので、同じチャンネルを隣で聴いても、別のものが流れることになります。

藤本:インターネットラジオなのに、別の曲が流れる? タイミングがズレるということではなくて、違う曲ですか?

山口:はい、そこが普通のラジオと違うところです。アクセスした時に、曲の途中から始まるということはなくて、必ず最初から始まるんです。そして、次の曲目はシャッフルで選曲されるわけです。

藤本:それは、ラジオという言葉だとちょっと誤解が生じるかもしれませんね。従来のインターネットラジオとはずいぶんイメージが違いますね。でも、ダウンロードするわけではないから、ラジオだ、と。

山口:その通りです。ラジオよりも、有線放送に近いものといったほうが分かりやすいかもしれません。また有線放送のようにこだわりを持って、音楽だけが楽しめます。お金を払っていただくのですから、払うだけの価値があるコンテンツとクオリティで編成を組みたいと思っています。幅広いジャンルを網羅するとともに、それぞれのジャンルに専門のエディターをかかえます。そうしたエディターにプレイリストの選曲をしてもらい、1ステーションあたり、最低でも40曲は揃えたいと思っており、1曲4分半と考えれば3時間半くらいでローテーションしていきます。

藤本:ローテーションとはいえ、同じ曲順にはならないわけですよね。

山口:そうです。毎回シャッフルされて、演奏する曲順は変わります。またステーションによっては100曲以上をそろえるところもありますが、曲目の更新についてもステーションごとに行なっていきます。デイリーで更新するものもあれば、ウィークリーのものもあります。

藤本:1年中同じ曲だけを流しているというわけではないんですね。

山口:最低でもウィークリーでは更新したいと思っています。

藤本:それで、価格はいくらになるんですか?

荻原:月額945円です。初期費用などはありません。

藤本:対応するブラウザの種類を教えてください。

友野:対応しているのはIEのほかに、Firefox、そしてMac版のSafariです。

山口:画面を見ていただくと分かるとおり、ブラウザの上部にプレーヤー画面が表示され、ここで操作ができるようになっています。また現在演奏中の曲名やアーティスト情報なども表示されます。アーティスト情報も専門のライターに頼んでいて、最低でも300~400文字という充実した情報が得られます。また、検索機能が用意されており、ここでアーティスト名を入れると、そのアーティストの楽曲が含まれるステーションが検索結果としてリストアップされるようになっています。

友野:また気に入ったステーションをお気に入りとして登録することも可能になっています。再生しながらでも検索などの操作がいろいろできるようになっています。またダウンロードへのリンクもされていて、それは提携サイトへ飛ぶようになっています。もっとも別にブラウザが開くのではなく、この画面内に表示されるようになっています。UKはMusicChoiceというサイトと提携しています。

藤本:Webブラウザのプラグイン型のプレーヤーということは、ミニプレーヤーにはならないんですか?

友野:そうなんです。ぜひミニプレーヤーは実現させたいところなんですが、現状は最小化する以外に方法はありません。


■ メインターゲットは「本物志向の大人」

藤本:さて、ここからが一番お伺いしたいところなのですが、今回のサービスで使われるデータフォーマットは何になり、ビットレートはどれぐらいになっているんでしょうか?

友野:フォーマットはRealAudio8で、ビットレートは64kbpsです。またナローバンド用に32kbpsも用意しています。

藤本:RealAudio8というのは完全にRealNetworksの独自フォーマットですか?

友野:そうです、完全な独自フォーマットです。
Yahoo! ミュージック サウンドステーション

藤本:そういえば、Yahoo! ミュージック・サウンドステーションがWMAの64kbpsでしたよね。

友野:ぜひ、音質を聴き比べてみてください。一聴瞭然だと思います。

藤本:なるほど、サービスがスタートしたら、テストしてみたいですね。ところで、サブスクリプション型のサービスというと、タワーレコードが発表しているものがありますが、同じサブスクリプション型とはいえ、RealNetworksのものはまったく違うものだという理解でいいんですか。

友野:そうです。タワーレコードが、サブスクリプションでダウンロードという形だったと思いますから、大きく異なります。

藤本:確か4月スタートと発表していたと思いますが、今のところ正式スタートのアナウンスはありませんね。どうなるかとても楽しみではあるのですが……。ちなみに、このRealMusicに一番近い競合サービスというと何になりますか?

荻原:現在、このようなサブスクリプション型の音楽配信サービスがないので、直接の競合はないと思いますが、しいて言えばやはり大手ポータルの無料インターネットラジオサービスでしょうか。ただ、先方は広告型でこちらは有料とビジネスモデルも違うし、狙っているユーザー層も異なります。

山口:また、先方のサービスは若年層が中心だと思いますが、RealMusicの場合、大人向けのホンモノ志向。メインターゲットは30~50代の男性で、もちろん男性に絞るつもりではなく、30~50代の女性や、若い20代の男女も狙っていきます。

藤本:なるほど、しかしやはり気になるのは、ポータブルプレーヤーとの連携ができないのか、ということです。最近はiPodなどを持ち歩いている人がかなり高く、PCで聴くという行為とも、切っても切り離せないように思います。

友野:ポータブルプレーヤーとの連携は、将来的には実現していきたいと考えております。オンデマンドストリーミングは予定しているものの、ダウンロードサービス自体を独自に行なう考えはありません。

藤本:ちなみに、ストリーミングで流れるデータにはDRMなどはかかっているのですか?

友野:いわゆるコピー制限についてですか? ストリーミングに関してはダウンロードと混同されがちですが、まずコピー制限はかけていません。厳密なユーザー認証システムで保護しています。

藤本:ありがとうございました。5月上旬のスタートを楽しみにしています。



□リアルネットワークスのホームページ
http://www.jp.real.com/
□ニュースリリース
http://www.jp.realnetworks.com/company/press/releases/2006/realmusic.html
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(2006年4月17日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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