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第212回:ムカつく夫をショットガンでズドン
夫婦喧嘩で家が壊滅「Mr. & Mrs.スミス」

怒涛のように発売されつづけるDVDタイトル。本当に購入価値のあるDVDはどれなのか? 「週刊 買っとけDVD!!」では、編集スタッフ各自が実際に購入したDVDタイトルを、思い入れたっぷりに紹介します。ご購入の参考にされるも良し、無駄遣いの反面教師とするも良し。「DVD発売日一覧」とともに、皆様のAVライフの一助となれば幸いです。


■ 偏ったハリウッド知識

Mr. & Mrs.スミス
プレミアム・エディション
価格:3,990円
発売日:2006年4月5日
品番:GNBF-7271
仕様:2枚組み
収録時間:本編約120分
画面サイズ:シネマスコープサイズ(スクイーズ)
音声:1.英語(ドルビーデジタル5.1ch)
   2.英語(DTS)
   3.日本語(ドルビーデジタル5.1ch)
   4.オーディオコメンタリー
発売元:東宝東和株式会社
販売元:ジェネオンエンタテインメント株式会社

 極めて個人的な話だが、朝食を食べながら見る情報番組はフジテレビ系の「とくダネ!」と決めている。ニュースを見ていて感じる小さな疑問までしっかりフォローした丁寧な番組作りが好印象。個人的にメインキャスターの小倉智昭が好きだというのも理由の1つだ。

 「とくダネ!」は幅広いニュースをカバーしている番組だが、その中でも異彩を放つコーナーがある。デーブ・スペクターによる「スター☆ まるみえチャンネル」だ。主にハリウッド・スターに関する情報を扱っているコーナーなのだが、内容はどちらかというとゴシップ寄り。「あの女優が泥酔して暴れていた」とか「あの大物歌手が荒い運転で新車のフェラーリを傷だらけにした」など、日本人の小市民にとってはどうてもいいような内容が多いのだが、デーブの凍りつくようなギャグとの組み合わせが、朝のゆるいトーンにマッチしている。

 私にとってハリウッド芸能ネタの唯一の情報源とも言うべきコーナー。非常に偏っているような気もするが。そんなコーナーで、最近良くキャッチされるのがブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーの大物カップル。アンジェリーナは2人の養子を迎えているほか、ブラピの赤ちゃんを身篭っている状況。結婚はまだしていないようだが、ブラピは既に主夫と化しており、ベビーカーを押してウロウロする姿もキャッチされている。

 そんなブラピは以前ジェニファー・アニストンと結婚していたが、破局。その原因はアンジェリーナ・ジョリーとの不倫だったという噂だ。そして、そのキッカケとなった(?)と言われるのが、今回取り上げる2人の共演作「Mr. & Mrs.スミス」というわけだ。映画では夫婦役だが、実生活でも結婚間近と言われている。美男美女の超セレブ夫婦の誕生というわけだ。

 DVDは2人が向かい合って左右に立っている、シンプルながら印象的なジャケットが特徴。本編ディスクと特典ディスクの2枚組のみで、価格は3,990円。洋画の2枚組み新作としては高価な部類に入るだろう。購入時に悩まなくて済むのは良いが、できれば本編ディスクのみで2,000円台の低価格版も用意して欲しかったところだ。

 4月7日に秋葉原の家電量販店に向かったところ、売り場には大きな専用コーナーが設けられており、在庫も豊富に用意されていた。


■ 史上最恐(?)の夫婦喧嘩

 南米で運命的な出会いをしたジョン(ブラッド・ピット)とジェーン(アンジェリーナ・ジョリー)。お互いを“ミステリアスな所がある素敵な人”と感じた2人はすぐさまゴールイン。「Mr. & Mrs.スミス」として結婚生活をスタートさせる。だが、お互いに明かしていない重大な秘密があった。

 Mr.スミスは表向き建築業を営んでいるが、正体はズバ抜けた身体能力と直感で数々の修羅場を潜り抜けてきた殺し屋。そして、Mrs.スミスはコンピュータのエンジニアを装っているが、正体は最新技術を駆使して依頼を遂行する一流の暗殺者だった。さらに最悪なのは、2人は対立する組織に身を置くライバル同士だったのだ。

 お互いの正体を知らないまま結婚し、それぞれ嘘をついて任務に出かける毎日。だが、倦怠期に陥りかけた頃、あるミッションの現場で2人は出くわしてしまう。しかも、狙っている獲物は同じ。「正体を知られた以上、愛する人でも抹殺すること」が掟の世界。かくして銃弾とナイフが乱れ飛ぶ、史上最悪の夫婦喧嘩が勃発した。

 良い意味でハリウッドらしい、おバカな物語だ。前半を見ただけで「最終的に任務より愛を選んでハッピーエンドだろ?」と先が見えてしまうが、そこはすべてがゴージャスなハリウッド。憎らしいほどカッコいいブラピと、こんな体型の人間が存在するのかと疑いたくなるほどのプロポーションを持つアンジェリーナ。2人が演じるキャラクターの魅力で引き付け、派手なアクションシーンの連続で観客を飽きさせない。序盤はまったりとしたムードだが、中盤からの怒濤の展開は見事の一言だ。

 2人とも殺しのスペシャリストというだけあって、格闘術や銃器の扱いは慣れたものガン・アクションシーンは総じて派手で、H&K MP5K(クルツ)や、ロングマガジンを付けたCLOCK 18Cのフルオート乱射など、バラ捲き系のガンアクションがたっぷりと楽しめる。特にラストのバトルシーンはスローモーションを多様し、奇抜な体勢で構えるシーンが多く、新鮮味は少ないが迫力は満点。

 女優なので顔を見せないと意味がないからか、アンジェリーナのライフルの構え方は脇が甘く、イマイチ。ハンドガンを構えても手首がグラグラ。「絶対当たってないんだけど」と笑いながら鑑賞していたが、敵が気持ちよく吹っ飛んでくれるので良しとしておこう。それにしても今だかつて、妻に向かって対戦車ミサイルをぶっ放す夫と、夫に向かってショットガンをぶっ放す嫁がいただろうか?。

 大規模なバトルだけでなく、日常生活の中の戦いも楽しめる。2人はすぐにお互いの正体に気が付くわけではなく、「もしかしたら妻/夫が……!?」という疑いを抱えたまま暮らす時間が長い。アンジェリーナが笑顔で差し出した料理を「毒でも入っているんじゃ……」と、さぐりさぐり食べるブラピや、パン切りナイフを取り出しただけでも身構える両者など、思わず笑ってしまうシーンが連続だ。

 また、家庭内でのバトルシーンも新鮮。キッチンや階段など、ありふれた家が戦場と化すのだが、そのどれもが実に“痛そう”だ。洋画では銃で撃たれたり、大爆発に巻き込まれたりするシーンが多いが、普通の人間にとってはどれも無縁の体験なので、イマイチ“痛み”が伝わらない。だが、この映画ではコーヒーカップなどを入れるガラスの戸棚に背中から叩きつけられたり、包丁を投げあったりと、観ているだけで足の指がゾワゾワするような痛いバトルがテンコ盛り。果敢にチャレンジする2人の役者根性も立派なものだ。

 また、ストーリーにもヒネリが効いている。先ほど「最終的に任務より愛を選んでハッピーエンドだろ」と予想したが、そう簡単にはハッピーエンドにならない。あくまで夫婦の関係に的を絞って展開する物語の行く末は、ぜひ自分の目で確認して欲しい。


■ 音質は合格。画質は……

 本編ディスクは片面2層で、本編は120分と若干長め。DVD Bit Rate Viewerで見た本編の平均ビットレートは6.78Mbpsと昨今のソフトとしては低いが、収録時間を考えると無理もない数値だろう。音声は英語をドルビーデジタル5.1chとDTSの2種類で収録。日本語はドルビーデジタル5.1chで収めている。ビットレートはドルビーデジタル5.1chが日本語、英語ともに384kbps、DTSは768kbpsで収録。ドルビーデジタルとDTSの音質の差はそれほど大きくはないが、DTSの方が音場の見通しが良い。低音の質感も高いようだ。

 サウンドデザインは自由奔放。楽しんで音作りをしているなと感じる。お祭りで射的をするシーンで、画面いっぱいに射的の的が写され、リアチャンネルから“パシュ!”という銃の発射音がして、フロントチャンネルから“パカーン!!”と的が倒れる音。まるで自分の頭を弾丸が通り抜けたようであまり気持ちの良いものではないが、遊び心のあるサラウンドだ。

 大規模な銃撃戦のシーンでは全チャンネルから弾丸が飛び交い、ひっちゃかめっちゃか状態。ヘリのエンジン音や爆発シーンの低音は分厚く、サービス満点だ。なお、日本語吹き替えはブラピをキング・オブ・声優こと山寺宏一氏が演じている。茶目っ気がありながら安定感のある素晴らしい演技なので、あえて日本語で鑑賞するのもオツなものだ。

 画質は今ひとつで、クリアさに乏しく、かなり粒状感がある。顔の輪郭や髪の毛に注目すると解像感も今ひとつ。街の遠景もディティールはつぶれ気味だ。暗部の快調性ももう少しねばりが欲しい。音響面は楽しいソフトだけに、もう少し画質面もがんばって欲しかった。色調は暖色系が強く、コントラストも強め。人物が写っている時間が長い映画なので肌色が美しいのが救いだろう。

DVD Bit Rate Viewerでみた平均ビットレート

 オーディオコメンタリーでは監督のダグ・リーマンと脚本のサイモン・キンバーグが登場。注目はブラピとアンジェリーナについて。2人については「地球上で最も魅力的なカップル」とベタ褒めだが、その後に続く「彼らの偉大な存在感のおかげで、倦怠期の夫婦の退屈な会話も飽きずに見られるよ」という感想が面白い。

 また、予算に関する話も思わず笑ってしまう。映画はメキシコやカナダなど、様々な場所を舞台としているのだが、「2大スターをロスから連れ出すのは予算的に無理だったから、セットでそれらしく見せた」という苦労話をチラリ。また、「撮影用の弾薬は1発1ドルだが、それを25万発以上使ってしまった」、「ここは雪山で撮りたかったけど、予算の都合で砂漠になってしまった」などなど、お金にまつわる愚痴が多い。だが、必ず話の後に「いや、決して予算が少なかったわけじゃないんだ。順当な予算でも不可能なシーンだったんだ」とフォロー(?)を入れる。誰に聞かれることを恐れているのか、奥歯に物が挟まったようなトーク。だが、それが逆に現場の苦労を浮き彫りにしているようで面白かった。

 特典ディスクにはメイキング映像と、未公開シーン、スタッフのインタビューなどを収録。時間にして30分程度のものだ。メイキングで細かく解説されているシーンは1つのみで、個人的に撮影方法が知りたかったカーチェイスシーンの舞台裏が無いのが残念。未公開シーンは散漫なトークシーンが多くて、削除して正解と感じた。インタビューはブラピとアンジェリーナをスタッフが褒めるのみで、こちらも内容は薄め。全体的にもう一歩踏み込みの足りない特典ディスクと感じた。


■ 夫婦円満の秘訣

 壮絶なバトルシーンばかりが印象に残る映画だが、冷静に考えてみると“結婚するとはどういう事か”、“夫婦といっても他人同士の2人が、どうすれば円満に一緒にいられるか”という、スケールとしては非常に小さい事柄をテーマにしていることに気がつく。手榴弾や機関銃は登場しないが、ある意味ではどこ夫婦も抱えている問題を描いていると言えなくもない。

 やはり大切なのはお互いをより理解しようという気持ちなのだろう。ただ、ネットの感想ページを見ていたら「時にはこのくらい派手な夫婦ゲンカをして、スッキリしたほうが良い」と書いている人もいて楽しかった。個人的には互いに全てをさらけ出してしまうより、少しくらいミステリアスで、相手に対して秘密の部分を持つことが円満な関係を長続きさせる秘訣のようにも思えるのだが……。

 ブラピとアンジェリーナがこのまま順調に結婚まで辿り着けば、Mr. & Mrs.スミス夫婦は現実のものとなる。「スター☆ まるみえチャンネル」を見ながら末永い幸せを祈りたいところだが、富も名声もある2人が万が一夫婦喧嘩をしたら、映画ほどではなくても、周囲がさぞ大騒ぎになるだろうなぁと、余計な心配をしてしまった。

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□東宝東和のホームページ
http://www.eigafan.com/
□ジェネオン エンタテインメントのホームページ
http://www.geneon-ent.co.jp/top_fl.html
□DVD情報のページ
http://www.geneon-ent.co.jp/movie/topics/smith_c.html
□関連記事
【2月13日】東宝東和、映画「Mr. & Mrs.スミス」を4月5日にDVD化
-ブラピとアンジェリーナ・ジョリーが共演
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060213/tohot.htm

(2006年4月11日)

[AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]


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