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第238回:「Sonic Stage CP」のAACエンコード性能をチェック
〜 iTunesのAACエンコーダと音質比較 〜



Sonic Stage CP

 前回、「SonicStage」の新バージョン「SonicStage CP」について、その機能や操作性などをチェックした。結論からいうと、「Connect Player」の欠陥を克服し、使えるソフトへと進化していた。

 ここで追加された新機能に「iTunes」でリッピングしたAACファイルを読み込ませ、iPodからウォークマンAへの移行がしやすいというものがあったが、AACに関しては単に読み込めるだけでなく、CDからATRACではなく直接AACへのエンコードも可能となっている。

 そこで、今回はSonicStage CPのAACエンコーダの性能がどの程度のものなのか、また現行のiTunesを使ったAACエンコードと比較して検証した。



■ AACエンコーダとしてのSonicStage CPの実力は?

 iPodを使っている人のほとんどは、iTunesを使ってCDをAACにエンコードして転送していると思う。もちろん、より汎用性を高めるためにAACではなくMP3を使っている人も多いとは思うが、SonicStage CPの登場などにもより、AACの汎用性が高まっているのも事実である。これまでも何度か取り上げてきたとおり、128kbpsや192kbps程度のビットレートで比較した場合、MP3よりもAACのほうが音質が良いため、あえてMP3を選択する理由は徐々になくなってきているようにも思う。

 ただし、AACのエンコーダ自体はまだあまり数は多くなく、フリーウェアで探すとなるとiTunesしかほんとど選択肢がない状況だった。少しでもいい音でAACエンコードしておきたいという人にとって、同じく無償で公開されているSonicStage CPの登場に興味を持った人もいるのではないだろうか?

 AACには特許があり、その特許を有する企業はAT&T、Dolby、Fraunhofer IIS-A、SONY、NOKIAの5社。現在Dolbyが一括してライセンスするようになっているが、こうして考えればSONYはAACにおける本家本元なのだ。SonicStageというと当然、ATRACのイメージが強いが、そこに加わったAACのエンコーダはちょっと気になる存在だ。

 Digital Audio Labratoryでは、これまでいろいろなエンコーダの性能を見てきたが、このSonicStage CPのAACエンコーダについても、これまでと同じ方法でチェックした。とくに気になるのはiTunesのエンコード結果との違いなので、これについても横並びで検証した。



■ WAVファイルからのダイレクトAACエンコードは不可

 改めてテストの方法について紹介しよう。16bit/44.1kHzのステレオのWAVフォーマットで、1kHzのサイン波、音楽データ、20Hz〜20kHzのスウィープ信号を用意し、それぞれをいったんAACへエンコードする。AACは不可逆圧縮なので、この時点で音が劣化するわけだが、そのままの状態でWAVファイルへ変換して、スペクトラム分析をかけるという手法である。

 SonicStage CPには「フォーマット変換」という機能があるので、これを使ってWAVのAACへの変換を試みた。が、残念ながらこのフォーマット変換でできるのはATRACへの変換のみのようで、AACへの変換はできなかった。そこで、3つのWAVファイルでオーディオCDを作成し、それをリッピングしてAACへ変換することにした。ここの設定において、AACの128kbpsと192kbpsの2種類を生成。また音質モードの設定に「録音速度優先」と「音質優先」という2種類があったので、ここでは「音質優先」を選んでみた。

SonicStage CPのフォーマット変換機能では、WAVファイルから直接AACエンコードは行なえない

一度WAVファイルからオーディオCDを作成、リッピングしてAACエンコードを行なった。ビットレートは128kbps/192kbpsの2種類、音質モード設定は音質優先を選択

AACファイルからWAVファイルへの変換にはTotal Recorderを使用

 このようにして、2種類のAACファイルを生成し、これをSonicStage CPでWAV変換しようと思ったが、やはりWAV変換もATRACからしかできないようだったので、例によってオーディオキャプチャツールの「Total Recoder」を利用して取り込み、WAVファイルへ保存した。

 一方、iTunesでも同様に128kbpsと192kbpsのAACファイルを生成し、Total RecorderでWAVファイル化しておいた。これによって計12種類のWAVファイルが生成されたわけだ。



■ 高音域の再現性の高さが際立つSonicStage CPのAAC 192kbps

 さっそくサイン波の分析結果から見てみよう。これを見ると128kbpsか192kbpsかの差はほとんどないが、iTunesでの結果とSonicStage CPでの結果は明らかに異なる。見た感じでは、iTunesのほうがより歪の少ない1kHzのサイン波となっているようだ。極端な差はないが、これを見るだけでも異なるエンコーダを使っていることが分かる。

【サイン波/iTunes】
128kbps 192kbps
【サイン波/SonicStage CP】
128kbps 192kbps

 続いて、20Hz〜20kHzのスウィープ信号の結果を見てみよう。

 実際の音楽を圧縮する際に、こうしたデータを扱うことはまずないが、この結果からは面白いことが見えてくる。まずiTunesではサイン波のときと同様に128kbpsも192kbpsもあまり大きな違いはなく、ともに18〜20kHzで落ち込んでいるのが分かる。それに対し、Sonic Stage CPのほうは128kbpsでは、16kHzあたりで、ストンと落ちており、MP3以下という傾向であるが、192kbpsでは128kbpsとはまったく異なり、20kHz以上までキッチリ音が出ているのだ。

 もちろん、スウィープ信号は特殊な信号なので、この結果だけで結論はでないが、それぞれのエンコーダでかなり違いがあることだけは分かる。

【スウィープ信号/iTunes】
128kbps 192kbps

【スウィープ信号/SonicStage CP】
128kbps 192kbps

 次に、音楽データについても同じ条件でエンコードした結果を見てみよう。

 いまのスウィープ信号での差ほどハッキリはしていないが、ここでもSonicStage CPの192kHzだけが際立って高域まで音を再現できていることが分かる。実際に音を聴いてみると、確かに違うのだ。オーディオ圧縮によって変化を受けやすい楽器音についてだけ注意して聞いてみると、iTunesでの128kbps、192kbps、そしてSonicStage CPの128kbpsの音はどれもMP3的な音色劣化をしてしまっているが、SonicStage CPの192kbpsの結果だけはかなり原音に近い雰囲気をとどめている。その意味では、やはりSonicStage CPの192kbpsエンコードはかなり魅力的なものと思える。

 これがATRAC3やATRAC3plusとどう違うかはここでは議論しないが、SonicStage CPはiPodユーザーにとっても注目すべきソフトといえるだろう。

【音楽データ波形/iTunes】
128kbps 192kbps
【音楽データ波形/SonicStage CP】
128kbps 192kbps


■ 拡張子変更で、iTunes/iPodでも利用可能に

 ここで、本来のSonicStage CPの使い方からは外れるが、SonicStage CPでAAC 192kbpsエンコードしたファイルをiPodに転送できるかを試してみた。

SonicStage CPで作成するAACファイルは拡張子「.3gp」で出力、iTunes上ではムービーファイルとして認識されてしまい、そのままでは利用できない

 デフォルトの設定ではSonicStage CPでエンコードした結果はCドライブの「Documents and Setting」フォルダ内の「All Users」の「Sonicstage」フォルダの中に収録されている。これをiTunesへインポートしたところ、iTunes上では問題なく再生できる。そこでiPodと接続しデータを転送しようとするとうまくいかない。

 インポートしたファイルのプロパティを見ると、AACではなくQuickTimeムービーファイルとして認識されている。そういえば、前回エンコードした結果をみたとき、ファイルのアイコンがQuickTimeムービーのものとなっていた。これは拡張子が.3gpとなっているためのようだが、通常iTunesでエンコードすると.m4aという拡張子になる。そこで試しに.3gpを.m4aにリネームし、改めてiTunesでインポートすると、AACファイルとして認識され、問題なくiPodへ転送することができた。もちろん、iPod側でも不具合なく再生することができる。

 多少面倒な方法ではあるが、iPodをいい音で聴くための手段として、無償でダウンロードできるSonicStage CPを試してみるのも面白いだろう。

□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□SonicStage CP製品情報
http://www.walkman.sony.co.jp/sscp/index.html
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(2006年6月5日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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