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第251回:初のUSBオーディオ対応「E-MU 0404 USB」
~ 設計は全面変更。価格以上の音質と付属ソフト ~




パッケージ

 Creative Professionalブランドから9月6日に、新製品群が発表された。従来Creative Professionalブランド製品はPCI接続の高性能オーディオインターフェイスが中心だったが、今回はUSB 2.0接続のオーディオインターフェイスが目玉となっている。

 製品名は「E-MU 0404 USB」と、従来の「E-MU 0404」にUSBが付いただけだが、接続インターフェイスだけでなく、その設計は全面的に変更されているようだ。どのような製品に仕上がっているのか、また実際の性能や使用感はどんなものなのか、さっそくチェックした。


■ 従来とは別の設計。PCレスADC、DACとしての利用も

 2年前、Creative Professionalブランドとして再スタートを切ったE-MUブランド製品。その中心となるオーディオインターフェイスは、E-MUオリジナルのDSPを搭載したことで、非常に高機能なミキサーやエフェクトをハード的に実現しながら、従来では考えられないほど低価格で国内でも人気の製品になった。

 しかし、そうした製品群も最近は生産完了が大半となり、一部を除いて入手しづらい状況になっていた。一方で、3月にドイツで開催された楽器関連の展示会、Musikmesseでは新製品の「E-MU 0404 USB」が発表され、それがようやく国内でも発売されることになった。

 CreativeのUSB 2.0製品は、「USB Sound Blasterシリーズ」として「USB Sound Blaster Audigy 2 NX」などの製品が存在していたが、E-MUのシリーズとしては今回が初。製品としてはE-MU 0404 USBとE-MU 0202 USBの2製品で、直販価格はそれぞれ24,800円と15,800円という手ごろな価格に設定されている。発売は9月下旬ということだが、一足先にE-MU 0404 USBを入手したので、チェックしていこう。


上面に操作ボタンやボリュームノブ類が

 従来のPCI接続のE-MU 0404が内蔵型だったので、当然ながら形状は大きく変わるが、単に接続インターフェイスや形状が変わったというわけではなく、まったく別の設計になっているようだ。

 まず、そのボディは184×177.8×51mm(幅×奥行き×高さ)という大きさだが、多くのオーディオインターフェイスとは異なりラックマウント型のサイズになっていない。一目見ればわかるとおり、上面に操作ボタンやボリュームノブ類がある、オーディオインターフェイスとしてはちょっと珍しい形だ。見かけ上はオーディオインターフェイスというよりもDJ機器のようである。

 一方、PCIのE-MU 0404が24bit/96kHzであったのに対し、新しいE-MU 0404 USBは24bit/192kHz対応の4IN/4OUのオーディオインターフェイスとなっている。この4IN/4OUTはアナログが2IN/2OUT、デジタルが2IN/2OUTという構成で、MIDIの入出力も1系統用意されている。

アナログが2IN/2OUT、デジタルが2IN/2OUTという構成で、MIDIの入出力も1系統


上面パネルにある「48V On」ボタンでファンタム電源供給が可能に

 アナログ部の入力はいわゆるコンボジャックが2つあり、フォンジャックで接続する際にはバランス端子として機能する。ギターなどと直接接続可能なハイインピーダンス入力に対応しているほか、コンデンサマイクと接続する際は上面パネルにある48V Onというボタンを押すことでファンタム電源供給が可能となる。

 アナログ出力のほうはバランス対応のフォンジャックが2つ用意されているほか、ステレオミニジャックの出力も並行して設置されている。このフォンジャックとステレオミニジャックの出力には同じ信号が出る仕様のため、パラで出すことはできない。またこのレベル調整はMain Outputというボリュームで調整する形となる。

 なお、これとは別に標準のフォンジャックでのヘッドホン端子も用意されている。こちらはこのアナログ信号と、デジタル信号の信号がミックスされた形で出力されるもので、Main Outputのレベル調整とはまったく独立して、Headphoneというボリュームで調整する。


給電にはACアダプタを利用

 デジタル入出力はS/PDIFのオプティカル(光)、コアキシャル(同軸)がそれぞれ用意されている。従来製品では切り替えスイッチはなく、両方がそのまま使える仕様になっていたが、E-MU 0404 USBではCoaxial/Opticalスイッチが用意され、いずれかを選択して使用する形になった。なお、S/PDIF出力については、パネル上での調整パラメータは用意されていない。

 ここでひとつ気になるのが5VDCという電源端子。従来のE-MUシリーズはブレイクアウトボックスを使うタイプのE-MU 1820mなどもすべて電源はPC側から供給されており、ACアダプタなどは不要だったが、E-MU 0404 USBはACアダプタの利用が必須となる。

 FireWireと異なり、USBの場合、最大の電源供給が500mAに制限されるため、それだけでは動作しないというのが原因のようだ。しかし、このACアダプタを利用するということから、ひとつユニークなメリットが生まれている。


出力先をアナログ(Main)/デジタル(S/PDIF)/OFFから選択でき、レベル調整も可能

 それは、このE-MU 0404 USBをPCなしでADコンバータ、DAコンバータとして利用することができるということだ。実は、このE-MU 0404 USBにはASIO 2.0と同様のダイレクト・モニター機能がハード的に用意されており、入力した信号をゼロレイテンシーでそのまま出力することができる。この際、上面パネルのDirect Monitorというセクションで操作するが、ここではまず、出力先をアナログ=Mainにするかデジタル=S/PDIFにするか、もしくはOFFにするかを選択し、そのレベルの調整もできるようになっている。

 このダイレクト・モニターを利用することで、アナログをデジタルへ、またデジタルをアナログへリアルタイムに変換することができ、PCがオフになっている状態もしくはUSB接続されていない状態でも、ACアダプタさえ繋がっていれば利用できるというわけだ。

 もちろん、アナログの入力はマイクでもラインでもギターでもOKだ。またAD変換に限らず、アナログ/アナログ変換ということも可能。この場合は、マイクのプリアンプなどとして使うことができる。

 パネル上でもうひとつ用意されているスイッチとしては、Mono Onというものがある。これはステレオの信号をモノラル化するというもの。たとえば、片チャンネルにギターの入力をしているときにこのボタンを押せば、両チャンネルから入力されているのと同様の形になる。


■ 高機能ミキサーは省かれたが、使いやすい仕様に

 ここまで見てきたのは、E-MU 0404 USBのハードウェア上の各入出力端子やスイッチ、ツマミ類についてだが、PCと接続する場合は、WDM/DirectSoundとASIO 2.0のドライバに対応しているので、一般のアプリケーションでもDTM系のアプリケーションでも利用することができる。

Cubase LEでASIOドライバを選択 SONAR LEでWDMドライバを選択能

 コントロールパネルも比較的単純で、基本的に小さな1画面で構成されているのみだ。ここでは、サンプリングレートの変更ができるほか、デジタル入出力のフォーマットの変更ができる。ここまでデジタル=S/PDIFと述べてきたが、実はここでAES PROという設定に切り替えることでAES/EBUでの入出力も可能となっている。

コントロールパネル S/PDIF以外にAES/EBUでの入出力も可能

 そのほかにもハードウェア側で設定できない項目としてソフトウェア・リミッターとクロックの外部供給がある。ソフトウェア・リミッターをオンにすると、アナログ入力時リミッターが効き、過大入力時にも音が割れにくくすることができる。また、クロックは通常Internalになっているが、ExternalにすればS/PDIFもしくはAES/EBUで入っている信号をクロックにして動作させることが可能になる。


ASIOドライバでのレイテンシー調整は別画面で、従来とほぼ同様

 なお、ASIOドライバでのレイテンシーの調整は、別画面で行なうことになり、これについては量子化ビット数に関するパラメータが用意されている以外は従来のものとほぼ同様となっている。

 従来のPCIの製品群をご存知の方ならもうお分かりの通り、ここにはPatchMixDSPという、ルーティングが自由自在のミキサー機能は装備されていない。同様に、このPatchMixDSPに装備されていた各種エフェクト機能もないのだ。個人的には、このPatchMixDSPの凄さ/面白さが非常に気に入っていたのだが、このUSB製品にはなくなってしまった。

 もっとも、この高機能ミキサーが従来製品のネックであったことも事実ではある。あまりにもいろいろなことができすぎて、初心者にはまったくといっていいほど、どう使っていいか分からない代物であった。また、従来製品を使う上で、PatchMixDSPは避けては通れないものであっただけに、価格的には安いにも関わらず、難しすぎて使いにくい製品であった。実際、音の出し方が分からなくなることがしばしばだった。しかし、今回の製品はシンプルな構成だけに、そうした戸惑いはないはず。誰にでも簡単に使える製品になっている。


■ 音質は価格以上。ソフトも強力

 では、ここで恒例の性能チェックをしてみよう。方法は例によって、アナログの入出力を直結させて音のループテストを行なう。入出力間を接続する際でのノイズをできるだけ避けるため、ケーブルには「Vital Audio Professional Cable Series」という業務用の50cmのバランス対応フォンジャックケーブルを利用しているのはこれまでと同様。ソフトウェアにはRMAAを使用している。

 サンプリングレートごとの性能を見るため、44.1kHz、48kHz、96kHz、192kHzのそれぞれで測定した結果を見ていただきたい。192kHzにまで上げるとやや限界が出てくる感じではあるが、基本的には価格からは信じられないほどの高音質を実現しているといえそうだ。

44.1kHz 48kHz 96kHz 192kHz


ソフト選択画面

 なお、この製品のもうひとつの魅力はバンドルソフトの豊富さだ。具体的にあげると、以下のソフトが用意されている。

  • Steinberg Cubase LE
  • Cakewalk SONAR LE
  • Ableton Live Lie 4.0 for E-MU
  • Steinberg WaveLab Lite
  • IK Multimedia AmpliTube LE
  • SFX Machine LT
  • Proteus VX

 DTM系のユーザーなら、このバンドルソフトがあるだけでも、十分価格的に元が取れると認識できるのではないだろうか? Cubase LEやSONAR LE、LiveといったDAWはもちろんだが、目玉はなんといってもサンプリング音源であるProteus VX。E-MUのProteusシリーズのエントリーモデルとの位置づけではあるが内容的にはProteus X2のLite版と最新バージョンになっており、非常に強力なソフトウェア音源として活用できる。いろいろ活用してみるといいだろう。

ソフトの目玉はサンプリング音源のProteus VX

 最後に、ちょっと気になる表記を1点発見した。それは、ソフトウェアのライセンスキーが書かれている1枚の用紙だが、ここにBIAS Peak Express 5とあるのだ。「ついにPeakのWindows版が出たのか?」と思ったが、よく見てみるとシリアルキー表記ではなく「Not available until Macintosh drivers are released」とある。

 つまり、E-MUのMac版ドライバが今後登場する、ということなのだろうか……。これについて、正式なアナウンスはないが、ぜひ登場してくれることを期待したい。


□クリエイティブのホームページ
http://jp.creative.com/
□ニュースリリース
http://jp.creative.com/corporate/pressroom/releases/welcome.asp?pid=12602
□関連記事
【9月6日】クリエイティブ、「E-MU」初のUSBオーディオ
-DD/DTSパススルー出力対応など2製品
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060906/creat2.htm
【2005年11月16日】クリエイティブ、E-MUのPCカード型オーディオプロセッサ
-24bit/192kHz対応。「0404」のリニューアル版も
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20051116/creat2.htm
【2004年7月12日】【DAL】E-MUの低価格オーディオカード「0404」
~クリエイティブ取り扱いの新モデルをチェック~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040712/dal153.htm
【2004年6月11日】クリエイティブ、プロ用ブランド「Creative Professional」
-E-MU製品の取り扱いを開始。低価格新モデルも発売
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040611/creat.htm

(2006年9月25日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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