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第280回:フレーズベースの音楽制作ソフト「FL STUDIO 7」
〜 豊富なエフェクトやソフトシンセを搭載。DAW連携も魅力 〜



Image Line Softwareの「FL STUDIO 7」

 だいぶ以前に本連載でも取り上げた、ベルギーのImage Line Softwareが開発する音楽制作ソフト「FL STUDIO」。毎年のようにバージョンアップを重ね、4月27日には「FL STUDIO 7」の日本語版が発売された。

 「Cubase」や「SONAR」などのDAWとはかなり異なる進化をしてきたソフトだが、どんなソフトに仕上がっているのか久しぶりに使ってみた。



■ DAWと異なる使い勝手の音楽制作ソフト

 「Cubase」や「SONAR」、「Logic」、「DigitalPerformer」といったソフトがDAW(Digital Audio Workstation)といっているのに対し、国内の販売元である株式会社フックアップでは、FL STUDIOを「オーディオワークステーション」と呼んでいる。別にDigitalが取れたからアナログのソフトというのではなく、いわゆるDAWとはちょっと異なるコンセプトの音楽制作ソフトなので、そう呼んでいるようだ。

 簡単にいうと、DAWがオーディオとMIDIのレコーディング、編集、ミキシングという流れで音楽を制作していくのに対し、FL STUDIOはドラムフレーズやベースフレーズなどのパターンを作り、それを並べることで曲制作していくソフトなのだ。多少乱暴ないい方をすれば、Roland「MCシリーズ」のソフトウェア版といったところだろうか。

 もちろん使い勝手や操作方法などはまったく異なるが、アコースティックな楽器やボーカルをレコーディングして音楽を作っていくというよりも、テクノ/ダンス/トランス系の曲を作っていくツールという点で共通している。もちろん、レコーディング機能も備えているから、完全生音の曲もできなくはないが、あまり向いていないのは事実だ。

 今回使ったのは、最上位バージョンの「FL STUDIO 7 XXL EDITION」。標準価格は42,000円だが、さまざまな音楽ソフトからの乗り換えができるクロスグレード版が25,200円で販売されているので、多くの人は結構安く入手できる。また、波形エディタ「Edison」などが省略された下位バージョン「FL STUDIO 7 FRUITYLOOPS EDITION」も16,800円で用意されている。

 基本的な使い方やコンセプトは、以前紹介したFL STUDIO 4の当時、さらにいえばシェアウェア時代の「Fruity Looops」のころと変わらない。いわゆるDAWに慣れていると、最初かなり戸惑うユーザーインターフェイスだが、パターンとソングという2つの組み合わせで曲を作っていく考え方さえ理解すれば、誰でも簡単に曲を作っていくことができる。

 また、ほかのソフトと異なり、PCとFL STUDIOさえあればすべてOKというのもFL STUDIOの大きな特徴といえる。もちろんオーディオインターフェイスやMIDI機材、フィジカルコントローラなどがあれば、それらを利用してより便利に使うことができるが、本当に何もなくても十分使える。また、かなりいろいろな機能が搭載されているが、ひとつひとつがモジュール化されていることもあり、本体として非常に軽いのも特徴。つまり、ノートPCひとつで使えてしまうソフトなのだ。



■ 曲ファイルやリズムパターンを配置して曲を制作

 実際の曲作りは、従来どおり、まずステップシーケンサを使って1小節もしくは数小節分をパターンとして作成する。デフォルトでは16分音符に相当するボタンが16個並んでいるので、ドラムならマウスを使ってボタンをクリックしていけば、簡単にパターンが作れる。シンセサイザやサンプラーなど音程が出せるものなら、ここに音階を表す鍵盤を表示させて入力できるし、音量の設定もグラフィカルに行なえる。

ドラムなら、マウスのみでも簡単にパターン作成できる シンセやサンプラーなどで、音程がある場合は、鍵盤を表示させて入力 音量設定もグラフィカルに調整可能

 また、縦方向に並ぶ音色を増やすためには、基本的に画面左側に位置するブラウザから好きな音色をドラッグ & ドロップで持ってくる。この際、ソフトシンセの音色を持ってくれば、それが使えるし、WAVファイルやAIFFファイルを持ってくれば、それがそのまま音源となる。キックやスネア、ハイハットなどはこうしたサンプリング音を使うのが簡単だ。もちろん、Windowsのエクスプローラから持ってくることもできる。また、単なる16ステップの入力だけでなく、ピアノロールも使えるから、より細かなニュアンスでの打ち込みだってできる。

 このようにパターンを作ったら、「PLAYLIST」画面でそのパターンを並べていく。これはACIDやGarageBandのような感じであり、これによって曲全体を作っていく。縦方向に並ぶのがパターンなのだが、ここにステップシーケンサで作ったパターンだけでなく、オーディオループを並べることもできる。そしてACIDファイルにも対応しているので、自動的に設定してあるテンポに合う形で展開できる。また、新機能としてApple Loopsにも対応した。試しにGarageBandのライブラリを読み込んでみたところ、ACIDファイルとまったく同じように使うことができた。

ピアノロールを備え、より細かなニュアンスの打ち込みにも対応 パターン作成後は、PLAYLIST上に並べて曲全体を作る

 さらに、画面下側では、このパターンとは別に、よりACIDっぽい感じで波形表示させて並べていくことができる。そして、ここはオーディオループだけでなく、MP3などの曲そのものを置くことができるのも大きなポイント。既存の曲をFL STUDIOにマッチさせるためのテンポの検出機能を備えているので、既存の曲に自分で音を重ねていくといったことも簡単にできてしまう。

波形表示させて並べたり、曲ファイルを直接配置することも可能 テンポ検出機能を備え、簡単に音を重ねられる



■ 豊富なエフェクトやソフトシンセが既存のDAWからも利用可能

 もうひとつの大きな要素がミキサー。64トラックに4本のセンドトラックがある立派なミキサーだが、この考え方が一般のDAWと大きく異なる。先ほどのPLAYLISTはあくまでもパターンを並べているだけで縦に並んでいるパターンがトラックになっているのではないのだ。

 トラックというよりチャンネルと呼んだほうがわかりやすいかもしれないが、パターンシーケンサで使っている各音源において、どのトラックに出力するかを決めておくのだ。これによって、音量調整やエフェクト設定ができるようになっている。各トラックでそれぞれ8つのインサーションエフェクトが使え、その数は40種類以上。特に、新たに8つのフィルタバンクを搭載し、どう使えばいいかわからないほどパワフルなフィルタ「Love Philter」やParametric EQをよりグラフィカルに操作できるにようにした「Parametric EQ2」など、強力なエフェクトが満載されている。

強力なエフェクトを備えるミキサー 8つのフィルタバンクを搭載する「Love Philter」 グラフィカルに操作できる「Parametric EQ2」

 さらに、DirectXやVSTのプラグインも利用できるという自由度の高さだ。またちょっと不思議な感じだが、そのプラグインエフェクトの新機能としてEdisonという波形エディタが追加されている。一通りの機能を備えた波形エディタなので、これでサンプルやループ素材などの手軽な編集が可能となっている。

 FL STUDIOでは、このような流れで曲を作っていくのだが、やはりこのソフトの面白さは、さまざまな音源=ソフトシンセを備えたソフトであるということ。前述のとおり、パターンシーケンサにおいて、WAVやAIFFなどの素材が利用できるが、これも簡単なプレイバックサンプラーを利用して鳴らしている。かなり強力なサンプラーとしてはレイヤーを組んでの音色作りが可能なDirectWaveといったものもある。

新たに波形エディタ「Edison」が追加された WAVやAIFFファイルなどはプレイバックサンプラーを利用 レイヤーを組んで音色が作れる「DirectWave」

 また6つのオペレータを自由に組み合わせて、非常に複雑な音作りができる「Sytrus」、80年代のクラシックアナログシンセサイザーをモデリングする「SimSynth」、マルチレイヤー/ベロシティのドラムマシン「FPC」、妙なものとしては音階をつけて歌える「Speech Synthsizer」などいろいろな音源が用意されているのだ。

複雑な音作りが可能な「Sytrus」 クラシックアナログシンセをモデリングする「SimSynth」

マルチレイヤー/ベロシティのドラムマシン「FPC」 テキストを入力し、音階をつけて歌える「Speech Synthsizer」

 こうした豊富なエフェクト、ソフトシンセはFL STUDIO内で使えるオリジナル仕様となっている一方、その多くがDirectX/DXi、VST/VSTiのプラグインとしても機能させることが可能なので、既存のDAWのプラグインとしても利用できる。そうしたプラグインライブラリとして考えても十分元が取れるソフトともいえるだろう。しかし、さらにユニークなのはFL STUDIO自体がReWireのホスト/スレーブとして機能するだけでなく、VSTiおよびDXiのプラグインとして機能してしまうのだ。そうした点を見ても、何でもできてしまう非常に自由度が高いマニアックなソフトであることがわかるはずだ。

DJソフト「Deckadance」をバンドル

 なお、FL STUDIO 7 XXL EDITIONにはTRAKTOR DJともよく似たDJソフト「Deckadance」のデモ版もバンドルされている。

 近いうちに別途発売される予定とのことだが、これはMP3データなどを左右に並べて使うだけでなく、VSTiとMIDIファイルを呼び出してリアルタイムに演奏させることができるなど、マニアックなソフトのようだ。Deckadanceについても、機会を見て取り上げたい。


□Image Line Softwareのホームページ
http://www.image-line.com/
□フックアップのホームページ
http://www.hookup.co.jp/
□製品情報
http://www.hookup.co.jp/software/fl7/index.html
□関連記事
【2003年8月4日】【DAL】統合型スタジオソフトウェアへと進化した
「FL STUDIO 4 PRODUCER EDITION」を検証する
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030804/dal110.htm

(2007年5月7日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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