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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第396回:199.9ドルのお気楽ハイビジョン、SONY「MHS-CM1」
〜 ビデオカメラとは別の価値観を産むもの 〜



■ 米国限定のHDカメラ?

 CESプレスカンファレンスのレポートでもお伝えした通り、今年もソニーは米国で大量のカムコーダラインナップをリリースする。これは米国量販店に合わせたカスタムモデルという位置づけのために、価格バリエーションが必要という戦略から生まれたものだ。日本ではその一部が発売されることになるわけだが、日本では発売を予定していないモデルが、「Webbie HD」というラインナップである。

 これはいわゆるハンディカムシリーズではなく、ネットデバイスのような位置づけのカムコーダだ。日本で発売されないことを奇異に感じるかもしれないが、以前からソニーは海外では「ネットシェアリングカメラ」として「NSC-GC1」、「NSC-GC3」という製品をリリースしてきた。ただしハイビジョンではなく、スタンダードディフィニションであったことから、日本では発売されなかった。

 今回のWebbie HD「MHS-CM1」、同じく春発売の「MHS-PM1」も同様ということだろうが、ハイビジョンが撮れるとなると日本でも事情が変わってくる。日本では自分で撮ったビデオをネットに上げるというのはそれほど一般的ではないが、ネットにアップしないからこそハイビジョンで撮るというニーズもまたあるだろう。

 一方で動画共有サイトのほうも、ソニー提供の動画サイト「eyeVio」は08年6月からハイビジョン対応、最近はYouTubeもハイビジョンに対応した。AVの世界ではハイビジョンと言えばデフォルトでフルHDだが、ネットの世界では720pのほうが現実的だ。

 CESのレポートで「SonyStyleでもう売ってる」などと書いたものだから、レビューが他メディアに先を越されてしまったりもしているが、カムコーダテストレポートの総本山Electric Zooma!のレビューをお送りしよう。



■ コンパクトで軽いボディ

見た目が極小のビデオカメラ

 MHS-CM1(以下CM1)にはシルバー、オレンジ、パープルのカラーバリエーションがあるが、今回は紫のカメラは珍しいということでパープルを購入した。しかしパッケージの写真はシルバーのもので、これは3色共通のようである。価格は米国SonyStyleで199.9ドル。ただし、これに税金が上乗せされる。

 形状としては、一般的な横型カメラを手乗りサイズにまで小さくしたような格好である。液晶モニタもフリップするし、ズームレバーもある。外装は樹脂製で、重量は210g。金属外装の一般的なコンパクトデジカメと大差なく、常時鞄に入れておいても苦にならない重さだ。

意外に広角なレンズ。脇にはLEDビデオライトがある

 レンズは光学5倍ズームレンズで、F3.3。画角は35mm判換算で、16:9が41〜203mm、4:3が38〜190mm。この手のMPEG-4カメラにしては広角側に振っており、使いやすい画角だ。スペックシートには記載されていないが、1080、VGAモードは720よりも画角が若干狭くなるようである。

 撮像素子は1/2.5型のCMOSで、画素数は2,592×1,994ドットの500万画素。手ブレ補正機能は搭載しない。撮影モードは、動画が1,440×1,080ドット/30p、1,280×720ドット/30p、640×480ドット/30pの3モード、静止画が500万画素、3:2、300万画素、200万画素、VGAの5モードから選択できる。

動画
撮影モードと画角サンプル(35mm判換算)
撮影モード 解像度 ワイド端 テレ端 動画サンプル
1080 1,440×1,080
-

-

ezh0170.mp4 (10.1MB)
720 1,280×720
41mm

203mm

ezh0169.mp4 (6.3MB)
VGA 640×480


ezq0171.mp4 (2.8MB)
編集部注:再生環境はビデオカードや、ドライバ、OS、再生ソフトによって異なるため、掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。

静止画
撮影モードと画角サンプル(35mm判換算)
撮影モード 解像度 ワイド端 テレ端
5M 2,592×1,944
38mm

190mm

液晶は2.5インチ。視野角は結構狭い

 動画コーデックはMPEG-4 AVC/H.264 Main Profileで、ビットレートは資料にないが、実際に撮影した動画で計測すると1,080/30pで5.5Mbps前後、720/30pで4Mbps前後、VGAで2.2Mbps前後で推移するようだ。音声はMPEG-4 AAC LC 2chで、48kHz/16bit/1,536kbpsとなっている。

 液晶モニタは2.5インチの4:3で、画素数は640×240ドット。16:9撮影時はレターボックスでモニター表示される。液晶は視野角が狭く、さすがにこのあたりは値段なりのようだ。

 液晶内側にはボタンが4つある。ボタンはそれほど出っ張っていないので、押しづらい。一番上はON/OFFボタンだが、基本的には液晶の開閉と連動して電源が入るので、実際には使う必要がない。MENUボタンでは、日付など基本的な設定と、逆光補正など5つのシーンモードの切り替えができる。アイコンで示されているのはShareボタンで、動画共有サイトにアップしたい動画にマーキングするためのボタンだ。一番下は撮影画像の削除ボタンだが、撮影時には解像度の切り替えボタンとなる。

後ろにボタン類が集中している 5つのシーンモード。本体のメニューは英語とスペイン語のみ

 底部にメモリースティックPRO Duoカードスロットがある。一応内蔵メモリも12MBある。撮影の目安としては、16GBスティック利用時で、5Mの静止画が6,200枚、1,080/30pの動画が6時間40分、720/30pが8時間30分、VGA/30pが16時間30分記録できる。ただし、1つの動画の連続撮影時間には約25分という制限がある。

底部にMS PRO Duoカードスロット ズームレバーはビデオカメラでもよくあるサイズ

 背面には十字キーとセンターボタン、RECボタン、再生モード切替ボタンがある。グリップ側にはスピーカーと、AV出力、USB、AC端子がある。端子類はスライドするカバーで隠れるようになっており、フタの始末に困るようなことはない。底部には樹脂製だが三脚穴もあり、意外にしっかり作られている。

本体グリップ側。端子カバーはスライドする ストラップとレンズキャップが付属

USBとコンポーネント、コンポジットケーブルも付属 フル版のPicture Motion Browser(PMB)も付いてくる



■ 若干色味が気になる動画

 では実際に撮影してみよう。本機は画角の面からも、動画サイトでの利用面からも、720/30pで撮るのが一番妥当性が高いと思われる。また目的用途からも三脚でガッチリ撮ってもしょうがないということで、今回はほとんどハンディで撮影してみた。買ってすぐラスベガスでも撮影してみた。実際に日常で使う感じのリファレンスとして見ていただければいいだろう。

 まず色味だが、全体的に暖色というか、少しマゼンタっぽくなるクセがあるようだ。思い出したように普通に撮れる時もあるのだが、本機にはホワイトバランスを設定するような箇所もなく、フルオートしかないので、補正のしようがない。細かく補正されるのではなく、もっとも近いものをいくつかのプリセットの中からを呼び出しているだけなのかもしれない。

色味はマゼンタ系に転びやすい傾向がある 発色は強めで、嘘のような青空が撮れる 意外に(?)ちゃんと撮れるマクロモード

 フォーカスの追従性は、多少合うのに時間はかかるが、それほど悪くはない。マクロモードも備えており、確かにそのままだと近距離のフォーカスは苦手のようだ。マクロモードにするればちゃんと合う。ただ液晶モニタの解像度が低いので、フォーカスの確認はかなり難しい。だいたい1mを割るぐらいの距離ならば、マクロモードにしておいたほうが無難のようだ。

 解像感としては、ビットレートがそれほど高くないこともあって、全体的に甘めである。この傾向は1,080/30pにしても変わらず、高画素だから解像感が上がるというものでもない。ただ動画サンプルをご覧いただければおわかりのように、普通に撮って見る分には十分な画質だ。


sample.mpg (313.3MB)

room.mpg (63.9MB)
720/30p撮影の動画サンプル。 室内サンプル。無理にゲインアップしようとせず、そつなく撮れる
編集部注:Edius Pro 5でネイティブ編集後、MPEG-2 25Mbpsで出力。再生環境はビデオカードや、ドライバ、OS、再生ソフトによって異なるため、掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。

順光ではかなり白飛びしやすい

 ラティチュードは狭めで、顔検出などもないので、晴天の順光では白飛びしやすい。これは元々のCMOSの特性がこうなっているのだろう。特性ということでは、CMOSの読み出し速度が遅く、目の前を横切るものは盛大に斜めになってしまう。もちろん値段相応のCMOSだろうから、そのあたりはいかにソニー製品とは言っても値段なりである。

 ただCMOSの特徴であるスミアレスは、この手のカメラではメリットが大きいだろう。そこそこ広角のガラスレンズを採用していることから、絵が破綻することは少ない。

 このクラスのカメラでは、手ブレ補正などないのは普通である。したがってハンディでは、なるばくワイド端で撮った方がいいだろう。歩きながらの撮影は、まあ何が撮れているかぐらいはわかるが、ちゃんと見られる絵と言えるかどうかは厳しい。ただ、面白いものを探して撮影するような気楽な用途であれば、十分実用に耐えるだろう。

 通常のビデオカメラと違う点も少なくない。光学5倍ズームが付いているが、ズームの速度はレバーを倒す角度に関わらず、一定である。また、物理的な絞りが付いていないようで、露出はシャッタースピードとISO感度で調整するようである。例の菱形絞り問題には該当しないので、ボケもそれなりに綺麗だが、白飛びが抑えきれない原因もこのあたりにあるのかもしれない。

 液晶の開閉による電源投入は結構早く、約4秒で撮影可能になる。バッテリは内蔵型で取り外しはできないため、本体充電のみとなるが、フル充電すればかなりいける。スペックでは連続撮影85分、実用撮影40分とあるが、使用した感じでは相当保つように思う。



■ 意外に使える静止画撮影

 本機には静止画撮影機能も付いている。昨今のビデオカメラのように、動画撮影中の同時撮影はできないが、モード切替なしでシャッターボタンを押せば撮影できる。デフォルトは動画画角だが、シャッター半押しで静止画画角に変わり、AFが働く。AFは中央測距のみだが、半押しのままでAFロックできるので、凝った構図も作れる。

 実際の絵を見るとマゼンタががったものも多いが、それを見越しても結構使える印象だ。ラティチュードの狭さ故に高コントラストになり、青空のような平坦な部分は多少ノイジーで、周辺部には色収差も見られるが、実際には5Mで撮って縮小したりするわけだから、その分で相殺されることだろう。

解像感や雰囲気は悪くない 同じ条件なのに普通の色味で撮れることもある 液晶画面では奥が白飛びに見えたが、ちゃんと撮れていた

 ただシャッター半押しのAFがそれほど早くないので、チャンスを活かした撮影は難しい。また手ぶれ補正もないので、暗いところでの撮影は結構弱い。ビデオライトなどを併用しながら近距離を撮るのであれば、まあなんとかなるだろう。むしろレストランで料理など撮る場合は、フラッシュのように平坦にならず周りにも迷惑をかけないので、ブログに上げるような用途ならかえって使いやすいかもしれない。

スミアレスで思い切った構図が可能 絞りが開放しかないので、ボケ足は結構綺麗だ 難しい光ではかなりハイコントラストな絵になる



■ 組み込み型PMB Portableの意義

 CM1の特徴は、撮ってすぐネットに上げられるというところである。そうは言っても、従来はPCに繋いで手動でYouTubeにアップロードする必要があった。さらに綺麗にアップしようと思ったら、サイト側で自動エンコードさせずに、こちら側でそのまま公開可能なコーデックやビットレートに変換するなどの作業が必要だった。

 もちろん、そういう専用ソフトを使えばある程度は省力化できるわけだが、例えば誰かが持ってきたPCを借りてアップするといった状況を考えると、もうその辺は絶望的な展開となる。しかし本機の内部には、PMB PortableというPicture Motion Browser(PMB)の簡易バージョンが組み込まれている。これを使えば、例え借り物のPCであっても、カメラ内からソフトウェアが起動できるので、相手のPC環境に勝手にソフトウェアをインストールすることもないわけである。もちろん、PMBのような重たいソフトを自分のPCに入れたくないという人にも役にたつだろう。

 CM1をPCに接続すると、ドライブが3つマウントされる。1つはメモリースティック、もう一つは内蔵メモリ、そしてもう一つがPMB Portableが格納された内蔵メモリ領域である。それぞれ自動再生画面が表示されるので、そこからPMB Portableを起動することもできる。

 最初に起動するのは英語版だが、言語設定で日本語を選ぶとネットから日本語版のパッチをダウンロードして、それ以降は日本語版で起動するようになる。パッチはCM1本体の内蔵メモリに記録されるようで、どのマシンに繋いでも問題なく日本語で起動できる。

マウントされるドライブの一つからPMB Portableを起動 日本語で起動可能

HD動画の簡易再生機能付きで軽快に動く

 PMB Portableは本家のPMBよりも機能が少ないが、ビューワーとしての機能はまずまずだ。通常H.264をフルで再生するのは結構ノートPCなどではキツいものだが、PMB Portableでは小さめの画面で簡易再生してくれるので、内容の確認が手軽に行なえる。

 PCへの保存はもちろん、事前に動画サイトのアカウントを作っておけば、アップロードも簡単だ。今回はYouTubeとeyeVioで試してみた。

 双方のサービスとも、手順としてはほぼ同じだ。アップローダに上げたい動画をドラッグ&ドロップしたあと、アップロードボタンを押すだけである。ただしYouTubeのほうは、各クリップに対してコメントを入力しないとアップロードできないので、その分多少面倒ではある。

YouTube用のアップローダ。バッチ処理で複数ファイルがアップできる コメントを付けたり範囲指定も可能

 アップローダ上のファイルをダブルクリックすると、コメント入力のほか、アップする動画の範囲指定が可能だ。アップ時に一般公開するかどうかを選択できるので、簡単に済ませるならばこれだけでサイト上での作業は不要。アップロードボタンを押すと、順次バッチ処理でそれぞれのサービスに合うようファイルが変換され、アップロードされていく。変換時にPCのパワーを拝借することになるが、サイト上での変換を待たなくていいので、効率はいい。

 双方とも「画質優先」でアップロードしてみた。eyeVioにアップした動画はここ、YouTubeの動画はここから参照できる。

 YouTubeは720pの動画に対応しているはずだが、アップローダのほうがHDに対応していないようだ。eyeVioのほうは、HDでもかなり再圧縮の影響が強く、オリジナルサイズではボケボケだが、縮小して表示させると結構綺麗だ。



■ 総論

 約2万円でハイビジョン、ということで期待した人も多かったと思うが、動画の品質はやはり値段なりという部分はある。特に光量が多すぎたりや暗い場所といった厳しい条件の時には、あまり上手く撮れないカメラだと思った方がいいだろう。

 しかし安定した画角の映像を撮ってローカルで再生するぶんには、これぐらいの画質でもあまり不満はない。子供との外食を撮影したり、友人と遊んでるときにちょっと撮ったりといった用途では、おそらく本気のビデオカメラはなかなか持っていかないだろう。これぐらいの価格帯でちょっとムービーが撮れるというものがあると、気軽に使えて便利である。

 携帯電話の中であまり使われていない機能の一つが、動画撮影機能だそうである。それはそのはずで、一度や二度試したことがある人ならおわかりのように、画質はかなりひどいし、サイズも小さい。また連続撮影が数十秒といった制限があったり、その割にメール添付するとデカいなど、動画を撮るものとしても便利ではなく、動画を利用する環境も整っていないから、使わないわけである。

 しかし舞台をPCに変えると、解像度もそこそこあるパソコンでプログレッシブ再生可能、動画サイトは無料でかなりの容量が使えるし、数カットを編集するまでもないがコメントがちょっと入れられるといった機能のほうが重要だったりする。それこそ米国でのYouTubeの利用スキームそのままである。

 米国の場合は、サービスやソリューションから入るようなところがあるが、日本はデバイスから入るようなところがある。日本ではそのデバイスがほとんど手に入らないが、CM1のようなMP4カメラはいろんなメーカーから出てきている。もしかしたらCM1を並行輸入で売る店もあるかもしれない。

 自分の生活を全世界に公開するようなメンタリティは日本人にはないが、自分の記録や記念としてコンテンツをこっそり保有するという文化は昔からある。こういうものが隠れたヒットになると、日本の動画コンテンツスキルもアップしていくと思うのだが、どうだろうか。


□米Sonyのホームページ(英文)
http://www.sony.com/
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(2009年1月28日)


= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]



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