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西田宗千佳の
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Windows 7でデジタルAVはどう変わるのか
〜 DLNA 1.5完全サポート。AVCHDも正式対応 〜


Windows 7

 年初にベータ版が公開されたことから、すでに「Windows 7」に触れた方も多いと思う。多くの人は、Vistaと比較された場合の動作の軽さや、タスクバー周りを中心とした操作性の改善について、好ましく感じているようだ。

 だが、新しいOSの登場は、「操作性の改善」だけをもたらすものではない。特に現在は、新たな周辺機器に対応するための改良、という側面も大きくなっている。そこで今回は、CESなどで得られた情報も加味し、「Windows 7でデジタルAVがどう変わるか」をまとめてみたい。



■ 7の正体は「スリムなVista」。デバイス利用の効率化が狙い?

 ネットブックなどでそこそこ軽く動作することから、Windows 7は「軽量化したOS」と思っている人も少なくない。

 だが、その見方は必ずしも正しくない。Windows 7は、コアを見るとVistaとさほど変化はない。事実、米マイクロソフト・Windows製品部の担当者は「Windows 7では、Windows Vista向けのドライバが存在するデバイスが、ディスプレイアダプタやセキュリティデバイスなどの一部の例外を除き、ほぼ問題なく動作する。むしろ(XP以前の)レガシーなドライバや、システム管理系アプリケーションで問題が起きやすい」と語っている。すなわち、基本的な構造において、Windows 7は「Vistaにごく近い」ものなのである。

 しかし、Windows 7は、Vistaをブラッシュアップした上で、以下の点などを見直し、「Vistaに比べ、スリムに使うこともできるOS」になったのは間違いないようだ。

  • 標準で組み込まれるアプリケーション
  • 標準でハードディスクへコピーされるドライバの種類
  • 標準で起動されるサービスの種類
 例えば、Vistaまでは標準で組み込まれていた「Windows ムービーメーカー」は姿を消した。また、「Windows フォトギャラリー」もない。これらのソフトは、どうやら「Windows Live Essential」としてネットで公開されるソフトで代替することとなり、利用したい場合には、各自がダウンロードして使うことになる。またドライバについても、最新のものはともかく、利用率が低い、比較的古いデバイスのドライバをインストール対象から外し、必要な場合には、ネット経由でマイクロソフトからダウンロードするという形に変更されている。

 これは、ネットブックなどの、ローカルストレージ容量に不安があるPCで、インストール容量を少しでも少なくすることが狙いと思われる。その効果は、現状のベータ版の場合でも容量は数GB分と見られ、ネットブックにとってはそれなりに価値のある変化だろう。

 だが、Windows 7の機能をチェックしてみると、これらの要素が「Windows 7の価値」というわけではないことが見えてくる。少なくともマイクロソフトは、Windows 7のコア機能として、Vistaのブラッシュアップに加え、「各種デバイス利用の簡便化・高度化」を考えているようだ。



■ AVCやAACも標準サポートに。AVCHDなど「ビデオカメラ」サポートが強化

 いうまでもなく、パソコンはすでにデジタルAVの中核的存在である。だが、WindowsというOSがAVに関与する率は意外と低い。iPodやウォークマンなどと連携するには専用のジュークボックスソフトを使う場合が多いし、DVDビデオを再生したり、作成したりするにも、別途アプリケーションを使うのが基本である。

 その点は、Windows 7になっても大きく変わることはない。Windows 7の狙いに「コンパクト化」がある以上、オマケ的なAVアプリケーションを搭載するのは本末転倒といえる。

 デジタルAVを利用する上で、Windowsの価値を高めるために、Windows 7が採った方法は、それら「サードパーティ」が作るアプリケーションや機器を、より利用しやすくなるよう、基盤を整理することであるようだ。

Windows7で強化される、Bluetooth系機能。ようやくA2DPを標準サポートし、簡単に音楽再生ができるようになる。なお、以下のプレゼン画像は、WinHEC 09で公開されたドキュメントより抜粋したもの

 その一つが、「サポートするコーデック・プロファイルの拡張」だ。例えば、VistaにはBluetoohを利用するための機能が備わっているものの、ごく基本的なプロファイルしかサポートしていなかった。そのため、オーディオ機器向けのA2DPやAVRCPを利用するには、サードパーティー製Bluetoothスタックの利用が必要だった。しかし、Windows 7ではこれらのサポートが追加されるため、よりシンプルかつ簡単にBluetooth機器が使えるようになる。

 また、映像・音声のコーデックについても、サポートが大幅に強化される。下表は、今回マイクロソフトより入手した、Windows 7でサポートされる主なコーデックの一覧である。コメントからの抜粋であるため、Windows Vistaまでで標準サポートされていたコーデックなどの中には、記載漏れがあるかもしれない点をご了承いただきたい。DivX/Xvidのサポートについては、MEPG-4の対応を拡張した結果、再生が正式にサポートされたと考えるのが良いようだ。

Windows 7で再生がサポートされる
主なコーデック
WMV
WMA
MPEG-4
MPEG-4 AVC/H.264
DivX
Xvid
AVCHD
AAC(プロテクトされていないもの)
MP3


Windows 7ではAVCHDの再生を標準でサポートする。閲覧にアプリケーションが不要になるため、扱いはかなり手軽になりそうだ

 また同様に、MPEG-4/AVCのサポートにより、AVCHDの再生も可能になった。正式に「AVCHD」としてサポートされている。Windows 7では、AVCHDで録画されたデバイス(メディアはもちろん、カムコーダなど)を直接認識し、Windows Media Playerで再生できるだけでなく、エクスプローラでサムネイルなどを表示することもできるようになる。これで、AVCHDのデータは、名実ともに「ハイビジョンカムコーダの標準フォーマット」になったといっていいだろう。

 今回特にMPEG-4系のコーデックが強化された理由は、ビデオカメラ系のサポートを強化する、という狙いによるもののようだ。AVCHDはもちろんなのだが、マイクロソフト側から寄せられた、コーデックサポートに関するコメントの中には、次のような文言があった。「これらのサポートにより、Flipvideoなどでキャプチャされたビデオの再生が容易になるでしょう」(米MS・Windows製品部担当者コメントより)。

 FlipVideoとは、2007年秋に米国で登場し、特にブロガーにヒットした、コンパクトなMPEG-4ビデオカメラのことだ。この辺りの背景は、小寺氏がCESレポートにて詳細に説明しているため、そちらを読んでいただくのがいいだろう。要は、Vista登場以降、パソコンでの動画サポートに求められるものが、「DVDを中心とした、コンテンツ作成者をソースとするもの」から、「簡易なビデオカメラを中心としたパーソナルコンテンツ」へと移り変わり、結果、MPEG-4系コーデックのサポート拡張を促したということだ。



■ DLNA 1.5を「OSが標準でサポート」。独自技術ではなく業界標準を生かす

 もう一つの大きな特徴は、「DLNA 1.5」を完全にサポートするということである。DLNAにはマイクロソフトも参加しており、Windows XPの時代より、少しずつサポートが行なわれていた。だがこれまでは、どちらかといえば、DLNAの構成技術の一つである「Universal Plug & Play」を中心としたもので、これらの技術を、Windowsにではなく、「Windows Media Playerのコンテンツ共有技術」としてサポートしていたというのが正しい。

 そのため現在は、PCでDLNAを利用する場合には、サードパーティー製のDLNAサーバーやクライアントを利用する事が多かった。

 だがWindows 7からは変わる。Windows 7は、基本機能として「DLNA 1.5」に対応する。マイクロソフト側も、「Media Playerの機能としてではなく、OSネイティブの機能としてサポートする」(米MS・Windows製品部担当者)とはっきりコメントしている。

Windows7では、PC内のデータをDLNA機器で閲覧可能な形で「共有」できる。OSが標準で機能を持っているため、従来に比べ設定なども簡単になると見られる

 具体的に、Windows 7でサポートされる機能は3つになる。まずは「Digital Media Server(DMS)」としての機能。俗に「DLNAサーバー」と言われるものだ。DLNA 1.5対応DMSの特徴は、コンテンツプロテクション・ガイドラインが存在することだ。例えば、地デジの録画番組や商用映像配信の映像を流す場合には、ネットワーク上で映像を「プロテクト」して流す。具体的には、DCTP-IPの対応が必須となり、オプションとして、Windows Media DRM for Networkのサポートが用意される。Windows 7の場合には、この両方がサポートされることになる。

 また、再生側が対応しないコーデックの映像を再生するときのために、トランスコード機能を持つ。DLNA 1.5対応のDMSということは、Windows7は、これらの機能をすべてもつ、ということになる。この他、音楽ファイルのジャケット画像や、レーティングなどのメタデータを配信する機能も備える。

 これらの機能をすべて備えた、手軽に手に入るDLNAサーバーは意外と少ない。Windows 7がこれらの機能を「標準サポート」するならば、DLNAサーバー環境は、大幅に改善されることになる。

Windows 7のDMSとしての機能一覧。サムネイルやメタデータの配信にも対応 トランスコード機能の概念図。要は、基本的なMPEG-2の再生機能しかもたないDLNAクライアントでも、DMS内の様々な映像を再生可能になる、ということだ

 2つめが「Digital Media Player(DMP)」もしくは「Digital Media Renderer(DMR)」としての機能。俗に言う「DLNAクライアント」としての能力である。

 これまで、Windowsには、DMPもしくはDMRとして動作する機能はなかった。Windows Media Playerが、一部そのような機能を代替することができたが、DLNA準拠というわけではない。

 だがWindows 7は、DMP・DMRとしての機能を標準で持っている。Windows Media Playerがクライアントとして働くのはもちろんだが、Windows Media Centerも、DLNAのサーバーを認識、表示することが可能になっている。

Windows 7のDMPとしての機能一覧。クライアントとしては、標準的な機能を備えているといえそうだ 現在のベータ版に含まれるMediaCenterの画像。フリーのDLNAサーバーである「TVersity」が検出され、閲覧可能な状態になっているのが確認できる

 そして、最後の機能が「Digital Media Controller(DMC)」だ。DMCとは、他のDLNA機器をコントロールする「リモコン」の役割を果たすもの。例えば、DLNA 1.5対応携帯電話をDMCとして使い、DMRとして動作するテレビを操作し、DMSとして動作するホームサーバー内にある映像を見る、といったことが可能になる。

 Windows 7では、これらの機能をうまく使い、ホームネットワークの価値をさらに高めようとしている。最も特徴的な機能が「Play to」だ。

 例えば、Windows 7が搭載されたPCの中に音楽データがあるとしよう。MediaPlayerで表示中、曲を右クリックすると、「Play to」(現在の日本語版の表記では「再生」)というメニューが現れる。その中には、ホームネットワーク内にあるDLNA対応機器がリストアップされるので、そこから再生させたい機器を選び、「送って」、再生させるわけである。

Window7のでの「Play to(再生)」機能の動作。DMRとして動作している他のPCがピックアップされ、再生対象として表示されている マイクロソフトのデモより。Xbox 360を「Play to」の対象にし、再生を行なうことも可能になっている

マイクロソフトが「Network Media Device」として、Windows 7 Compatibility ロゴを発行するための条件をまとめたもの。あくまでDLNAをベースにしている、ということがよくわかる

 これはちょうど、現在のWindowsにもある「送る」機能を、ファイルコピーでなく、DLNAの制御に使った、というイメージだ。能力的にいえば、DMSとして働くPC内のデータを、DMCとしての機能が呼びだし、再生機器(DMR、DMP)へと転送して再生させている、ということになる。

 重要なのは、これらの機能がほぼすべて「DLNA」という業界標準に則って実装されているということだ。

 マイクロソフトは、Windows 7の持つこれらの機能を確実に使える機器に、「Windows 7 Compatibleロゴ」を発行する予定としている。だがそこで、「独自技術」を使うのではなく、あくまで業界標準を生かすというところが、マイクロソフトの「変化」を表している。



■ 機能は「エディション」によって異なる? MediaCenterの機能には不明な点も

 ただし注意が必要な点がある。現在提供されているベータ版は、最上位パッケージにあたる「Windows 7 Ultimate」と見られるもののうち、「機能が公開できるパート」をまとめたものだ。米マイクロソフト・Windows製品部担当者の話によれば、「基本的な機能は固定しているが、UIなどにはまだ変更がある」というバージョンである。

 現在のVistaがそうであるように、OSの「エディション」によって、組み込まれる機能は大きく異なる可能性が高い。特に、ネットブック向けに用意されるである「低価格PC版」とそれ以外とでは、付加機能の部分で差が生まれると考えた方が良い。

Windows Media Center機能のリスト。いまのところ、これ以上の情報は公開されていない。そのままだとすると、テレビ機能としてはやはり「シンプル」すぎて、物足りないものになる可能性もある

 テレビ機能であるWindows Media Centerなどの機能には、まだまだよくわからない部分が多い。昨年秋に開かれたWinHECで公開された情報では、日本のデジタル放送とデータ放送に対応する、との表記があるが、それ以上のことはわからない。現在は行われていない、CPRMなどの暗号化規格への対応や、日本独自機能についても情報を求めたのだが、現時点では公開できる情報はないようだ。

 ただし、Blu-rayのサポートについては、いくつか追加情報が得られた。Windowsは、すでにVistaにおいても、追加モジュールを利用する形で、Blu-rayへのデータ書き込みに対応しているが、Windows 7では、これが標準で組み込まれる。

 ただし、BDビデオの再生は別だ。「従来同様、OSには搭載されない。サードパーティのソフトウエアを使う必要がある。MediaCenterでの書き込みもサポートしない」(米MS・Windows製品部担当者)ということなので、「Vistaから変化なし」と考えていいだろう。

 また少々気になるのは、DLNA関連の動作について、想定通りの動作をしていないのではないか、と思われる点があったことだ。まだまだベータ版であるし、正式なヘルプドキュメントがある状況ではないため、「製品版がどうなるか」はまだよくわからない。耳にしている限りでは、Windows 7でのDLNAサポートについては、まだいくつか追加情報がありそうな気配である。

 製品化に向け、追加情報が得られ次第、また紹介しようと思う。


□マイクロソフトのホームページ
http://www.microsoft.com/japan/
□Windows 7 日本語ベータ版ダウンロードページ
http://www.microsoft.com/japan/windows/windows-7/beta-download.mspx

(2009年1月30日)


= 西田宗千佳 =  1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、月刊宝島、週刊朝日、週刊東洋経済、PCfan(毎日コミュニケーションズ)、家電情報サイト「教えて!家電」(ALBELT社)などに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。

[Reported by 西田宗千佳]



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AV Watch編集部

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