ソニー、“アクセサリーが主役”のイベントを開催

-「実験室」。“知らないなんて、もったいない!”


アクセサリー実験室(1階スペース)

イベント期間:6月9日~7月17日


 ソニーは、東京・銀座のソニーショールームにおいて、アクセサリーを主役とした異例のイベントを7月17日まで開催中だ。その名も、「ソニーのアクセサリー実験室 ~ 知らないなんて、もったいない! ソニーのアクセサリー、その実力を徹底検証 ~」。

 やや長いタイトルは、テレビのサスペンス劇場を彷彿とさせるが、それだけ、ソニーの力の入れ具合が伝わってくるともいえよう。ソニーにとっても、アクセサリーを主役としたイベントは過去に例がないという。なぜ、こうしたイベントを開催することになったのか。

ソニーマーケティング広告宣伝部門イベントコム企画部ショールーム課プランニングマネジャーの下村智文氏

 ソニーマーケティング広告宣伝部門イベントコム企画部ショールーム課プランニングマネジャーの下村智文氏は、「ソニーには、1,500種類以上の製品がある。それに加えて、アクセサリーと呼ばれる製品も、同じく1,500種類以上ある。販売店に提供する商品カタログと、アクセサリーカタログのページ数は同じぐらいになる」と前置きし、「アクセサリーを活用していただくことで、いま持っているソニー製品を、もっと活用していただきたい。そんなきっかけから企画したもの」とする。

 2009年6月9日から7月17日までの期間、1階および2階という、いわば、銀座ソニーショールームのゴールデンフロアを活用。同ショールームを訪れた人は必ずといっていいほど通る場所だ。

 イベントでは、11のコーナーを用意し、ウォークマンやサイバーショット、BRAVIAなどにオプションを接続して、アクセサリーならではの使い方を実際に体験できるようにした。

 

会場の銀座ソニービル
 「これまでにも、各製品の展示コーナーにアクセサリーを置くといったことはあった。だが、来場する多くの人の興味は本体に集中し、ほんのひと握りの人にだけ注目されるという状況だった。アクセサリーを利用することで、もっと大きな感動を与えることができ、ソニーの製品に愛着を持っていただけるにも関わらず、それを伝える場がなかったという我々の反省もある。ソニー製品を購入していただいた方々に、もっと満足度をあげていただくためのイベントだと考えている」と語る。

 確かにアクセサリーはカタログをみても後ろの方に小さく紹介されており、具体的な機能が紹介されていることは稀だ。当然、アクセサリーだけ広告展開されることはない。また、量販店店頭においても、アクセサリーが豊富に展示されていることは少なく、それを試用するための商品も用意されていない。アクセサリーを体験する場は、皆無に等しかったといえる。

 「ソニーショールームでも、質問をいただければ、それに応じて試用していただけるように奥からアクセサリーを持ってくることはできるが、あくまでも受け身でしかなかった。ましてや、量販店店頭では、アクセサリーを試してみたいという要望に応えることは出来ない状況だった。能動的にアクセサリーを提案していく必要があった」(下村プランニングマネジャー)。

 そうした反省をもとに、今回のイベントでは、ウォークマンのヘッドフォンを交換するだけで音楽の楽しみ方が広がったり、サイバーショットに望遠レンズ(テレコン)を装着したり、マリンパックを一緒に使うことで撮影シーンが広がることなどを提案しているのだ。

 「例えば、もっといい写真をデジカメで撮影したいという用途を考えたときに、デジタル一眼レフカメラのαシリーズに買い換えるという選択肢だけではなく、いま所有しているサイバーショットにアクセサリーをつけることでも、目的の使い方ができるといった提案を行なっていきたい。個人消費が低迷するなか、高級機種に買い換えるのは難しい。また、そこまでの機能はいらないという人もいる。ユーザーの選択肢を広げる提案として、また、購入後価値を高める手段のひとつとしてアクセサリーをクローズアップした」(下村プランニングマネジャー)というわけだ。

 


 

■ 小学校の理科室のような展示

 展示のコンセプトは、「実験室」である。

 演出については、いくつかのアイデアが出たが、来場者が、興味を持って触ってもらうことを目的とし、そのための小学校の理科室のような雰囲気を演出したという。ソニー製品を所有し、さらにその上で提供される付加価値に強い関心を持つと見られる30代、40代のビジネスマンなどが、この展示を見て懐かしい想いを抱く演出ともいえる。

 スタッフが白衣を着たこと、黒板や理科の実験材料などを演出用のグッズとして活用したのも、雰囲気づくりからのもの。黒板にも、あえてチョークの消し後を残したり、手書きによるメッセージを多用するといったこだわりをみせた。

ショールームのスタッフも白衣を着て雰囲気をかもし出すアクセサリー実験室の2階スペース実験室をイメージして随所に実験用の道具を配置している

 サイバーショットのアクセサリーレンズ体験コーナーでは、テレコンバージョンレンズをつけたカメラで、視力測定表を撮影。数メートル離れた位置からどう見えるかを体験できる。これも小学校のイメージでの演出だといえる。

 一方で、キャッチフレーズに使った「もったいない」というメッセージは、ソニーのBlu-rayのテレビCMで矢沢永吉さんが使用しているメッセージを意識しながら、数千円プラスするだけで、機能を強化できるアクセサリーを使わないと「もったいない」という意味を込めた。

 「アクセサリーによってもたらされるお得感に気がついていただいたり、新たな使い方、発想につながれば幸いだ」(下村プランニングマネジャー)という。

 

アンケートをとって、お気に入りのアクセサリーをランキングとして集計発表する
 11に分かれたコーナーでは、それぞれにアクセサリーを活用した提案が行なわれている。

 選択されたアクセサリーの基本的な考え方は、あまり知られていなかったようなアクセサリー、本体にプラスαすることで明確な価値が提案できるものに絞り込んだ。そのため、「シアターラック」のように、BRAVIAのアクセサリーとして一般的に知られており、量販店でも訴求されている製品は除いた。

 また、「日常生活でのちょっとした使い方だけでなく、これからの季節はアウトドアでの利用も増えてくることも視野に入れて、外でも使いやすいアクセサリーも選択対象にした」ともいう。

 実際、展示されているアクセサリーはあまり知られていない小物が多い。

 例えば、ウォークマン用に用意されている「ボイス録音用ステレオマイク」は、ウォークマンユーザーのほとんどが知らないアクセサリーのひとつだろう。

 だが、これをつけるだけでウォークマンがICレコーダーとしても活用できるようになるのだ。朝は通勤で音楽を聞いて、会社帰りに英会話教室に行って、講座の内容を録音。帰りは、英会話を復習しながら電車に乗るということもできるようになる。

ウォークマンにボイス録音用マイクをつけてICレコーダーとして利用

 また、ポータブルナビゲーションシステムであるnav-u用に用意された自転車クレードルキットを使えば、単に自転車に乗せてナビを表示するというだけでなく、車にnav-uと自転車を乗せて、出先で自転車に乗り換えてアウトドアを楽しむという連動型提案も可能になる。

自転車クレードルキットを用いて、nav-uを自転車で利用

 さらに、Bluetoothレシーバでは、電車の棚に鞄を乗せても、鞄の中に入ったウォークマンから音楽を聞くことができるという使い方を提案。ここでは、トランスミッタを活用すれば、ウォークマン以外の他社の携帯オーディオプレーヤーでも同様の利用が可能という提案も行なっている。

 また、ハンディカムとガンマイクの組み合わせ提案では、ズームをすれば、その方向の音声を効果的に拾うことができるデモストレーションを行なっている。ハンディカムの購入者は、カメラ用三脚、予備バッテリーなどは同時購入するが、ガンマイクまでは購入しないのが普通。だが、運動会などのシーンでもまわりの観客の声よりも、カメラの先にいる自分の子供の声を拾いやすくするという意味では、極めて効果的なアクセサリーだ。これもアクセサリーによって、機能を高めることができる提案のひとつだ。

Bluetoothレシーバ/トランスミッタで電車のなかでもらくらく音楽体験
ハンディカムとガンマイクの組み合わせで効果的に音声を拾う

 一方、展示の工夫としては、マリンパックを利用し、水の中でもサイバーショットで画像を撮影できるデモを用意。実際に水の中にカメラを沈めるという操作を来場者に行なってもらうことで、印象強いものにしている。GPSユニットでは、貸し出し用に3台の製品を用意。サイバーショットとGPSユニットを持って、銀座の街を自由に写真を撮影してもらい、VAIOと連動させて、自分ならではのマップを作るといったことも行なっている。

マリンパックを利用して水の中でも撮影ができる

 今回のイベントは、ソニーのアクセサリー認知拡大という意味では、第1弾の取り組みとなる。

 「まずはアクセサリーの良さを体験していただき、同時にソニーにはたくさんのアクセサリーがあることも知っていただきたい」としており、今回のイベントを通じてアクセサリーに対する声を集め、今後の製品開発やアクセサリー開発に反映する場としての活用も期待しているという。そうした点からみても、今後も継続的に認知を高めるための仕掛けが必要であり、さらにこれを営業活動につなげていく必要もあるだろう。

 AV機器メーカーのなかで、純正のアクセサリー製品をこれだけ多くラインナップしているメーカーは意外と少ない。ソニー製品をより楽しむために、アクセサリーの活用提案を加速させることは、ソニーの価値を高めるという意味でも重要な戦略となってくるといえそうだ。

そのほかの展示。ワイヤレスステレオヘッドセットでスポーツシーンでの活用を提案
BRAVIAを観ながらデジタルサラウンドヘッドフォンで、7.1chを体験
ノイズキャンセリングヘッドフォンを使って、電車内でも臨場感ある音楽を楽しむ
サイバーショット用レンズで望遠、広角を活用した撮影方法を提案
GPSユニットで自分ならではのマップを作る。貸し出しサービスも実施中
学習リモコンで、複数のリモコンをひとつで管理。照明やブラインドにも使える


(2009年 6月 12日)

[ Reported by 大河原克行 ]