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【バックナンバーインデックス】

第13回：MP3CDプレーヤー冥府魔道 8cm専用でホントにコンパクト?「MIB　mpzip」

■今度はポータビリティを求めて

　ハマりましたよ、ええ。いわゆる「冥府魔道」というやつですな。似たような製品を繰り返し、繰り返し、買っては試し、買っては試し、それでも満足できずにまた次の製品に手を出す、というあの「冥府魔道」です。

　前回は別種の製品に手を出したりしてみましたが、やはりダメだったようです。最近続いた新製品ラッシュが過ぎ去った後、ちょっと前に弊誌でも扱ったあの製品が気になり始めたのでございますよ。

　それが3月29日掲載の記事「MIB、8cm CD専用のMP3対応ポータブルCDプレーヤー」で紹介している「mpzip」でございます。

　この製品のウリは「8cm専用でコンパクト」。これまでのブ厚く、どデカいMP3CDプレーヤーには満足してしいないので、「コンパクト」という言葉に魅力を感じてしまうのですよ。読者さんからも「気になる」という内容のメールなんぞいただいていたし。で、販売元のMIBのサイトを見てみると、なんと標準価格29,800円だったものが、23,800円で通販されているじゃないですか。ああ、ここで後先を考えてはいけません。速攻で注文しなくては……。

■あれ?　思ったよりもデカい?

　お手元に届いた荷物を解体してみると、本体、ACアダプタ、ステレオイヤフォン、単4型ニッケル水素充電池、マニュアルなどが同梱。オマケでキャリングポーチ、外付用電池ボックス、ブランク8cm CD-Rメディアがついてきた。

　第一印象は、「意外とデカい」。確かに、普通の12cm CD使用の製品よりはコンパクトではあるけれど、角形の形状であるため、角の部分が面積を取ってしまっている。手元にあったTDK「MOJO」の上に載せてみると、角の部分が「MOJO」の円の外周部分にほぼ等しくなっている。厚みも「MOJO」と同等。角形で小さくなっている分、「mpzip」の方が分厚く感じてしまう。まあ、小さくなってるのは確かなんだけれどね。重量に関しては軽くて、ウェイトバランスもほぼ均一で、どこを持っても偏りを感じることもない。

　本体のボタン/端子類は、上面に再生/停止ボタンと、最上部にボリューム、早送り/巻き戻し、各種操作ボタン×4、左側面にヘッドフォン端子とホールド/レジューム切り替えスイッチ、右側面にAC電源端子、そして前面にオープンスイッチ、という配置。ボリューム、早送り/巻き戻しなど操作ボタンが最上部に配されているのが特徴的だ。ん～、ちょっと操作しにくいかな?

　オマケでついてきた電池ボックスは、外付用で、本体のAC電源端子に接続するタイプ。単3型乾電池3本を使用する。結構でかくて、ケーブル付きなので取り回しには苦労するかも。

　キャリングポーチは専用品らしく、ユーザビリティを高める工夫がされている。まず、電池ボックス、電池を収納できるポケットがあること。右側のポケットは電池ケースにぴったりのサイズで、本体と同時に収納するとしっくりくる。ヘッドフォン、ACアダプタの端子に合う穴が空いていて、プラグもケースに収納したまま挿せるし、本体上部の操作ボタンが押せるスペースが確保されているので、ケースに入れたまま操作も可能。ただ、液晶と再生/停止ボタンは隠れてしまうけれど。お約束なのか、ベルトへ通すループもついている。

　キャリングポーチは、使い勝手を増してくれそうなうれしいオマケ。あとはオジサンくさいデザインを気に入るかどうかですな。

　　

同梱品とオマケ全部。右側3点は購入時のオマケ	8cmメディアを入れたところ。本体はメディアより大きめ	メカ部。液晶につながる白いフラットケーブルの耐久性が気になる

TDK「MOJO」に重ねたところ。確かに小さいが、角型のため大きく見える	「MOJO」との厚みの比較。ほぼ同等といったところ

同梱されていた充電池。「Ni-MH」とプリントされていたので、多分ニッケル水素	外付の電池ボックス。単3型電池3本使用。本体のAC電源端子に接続	オマケのキャリングポーチ。電池ボックスがぴったり入って便利

■音質はかなりナイスです

　とりあえず、付属のステレオイヤフォンで聞いてみる。ん～、かなりこもり気味な感じ。それにノイズものってるかな?　おまけに音域がかなりまとまっている印象。ダメかも……。で、普段使っているヘッドフォン、KOSSの「PORTA PRO」に変えてリスニング。お、かなりナイスな音がしますよ。

　ダメダメなのは付属のステレオイヤフォンみたい。本体の音質自体は悪くない、というよりも、Rio、ケンウッド、TDKのプレーヤーと比較しても一番好みに合っている。

　第一印象は、中音域をベースに高音域の伸びもプラスした、という感じ。思ったよりも高音域が伸びていて、RioVoltで感じられたような「ヒス」っぽさはほとんどない。音域が結構広がっているのでソースによっては迫力を感じないこともあるけど、「ほんわか」とした音は好みなのでOKです。

　低音部は、「PORTA PRO」で聞いたところ、結構な迫力を感じるのだけれども、これは「PORTA PRO」自身が低音過多（それでいて高音域も結構伸びる）パーソナリティを持つヘッドフォンなので、あくまで参考、ということで。しかし、他の機器の「BASS機能」などで低音を強調している場合はしっかりとブーミィな音を再現するヘッドフォンなので、本体の低音性能もナイスな音だと思います。

　音質変更機能は「asc」、「xbs」、「normal」、「live」の4種類からの選択式。マニュアルには何の記述もないので詳細は不明だけれども、聞いた印象では「asc」は高音域の補強、「xbs」は低音域の補強、「live」は音に広がりを持たせて、「normal」は当然標準の音。ちなみに、上記の評価は「normal」のものです。全体的に効果はわずかだけれども、「asc」、「xbs」は単にバランスが悪くなった感じで、「live」はせっかくの解像度を崩しているような印象。「normal」が一番よいです。

　2時間ほど聞き込んでみたけれども、聞きやすく、細部もかなりしっかりと表現できているので疲れない音。音場感も豊かで、輪郭もクリア。ホント、音質に関してはMP3CDプレーヤーの中では一番好みですわ。まあ、差はわずかなんですが。

■再生までの時間は最短!

　リスニングしていて気づいたのは、これまで使用してきたMP3CDプレーヤーに比べて再生までの時間が短いこと。これまでのプレーヤーでは、電源OFFの完全停止状態から再生までの時間は30秒、というところだったけれども、「mpzip」では約10秒。曲間のブランクも1秒ない程度。ただ、曲間では「プチ」という、いわゆる「プチノイズ」がのります。ちょっと超音波ぽい高域のノイズなので多少耳障りではあるけれど、まあ、一瞬なので我慢できるレベル。キュー/レビューもバッチリできます。これがでないプレーヤーもあるので、基本機能的としては完璧でしょう。

　タイムラグの少なさは、「おそらくディスクの回転を止めないからできる芸当だな」、と推測して、再生中の本体に耳をつけて回転音を聞いてみたところ、やはり回ってました。となると、再生時間はそれなりになってしまうかな。ん～、ブランク時間が短いのはいいけれど、再生時間が短いのは痛し痒しであることだなぁ。

　据え置いての使用では音飛びは確認できず。ただ、「音飛びが発生する」とされている、可変ビットレートのファイルを再生してみると、やはり音飛びが確認できた。頻度としては5分に1回というところか。まあ、自分は128kbps固定でエンコードしたファイルがほとんどだから、これはマイナスではないかな。

■う、操作は慣れるまで大変かも……

　音は大満足。再生までの時間も素速い。あとはユーザビリティがどれだけ優秀かによりますな。

　まず、リモコンが付いてないのはマイナス。8cm専用ということでコンパクトさを想像して「MDのようにズボンのポケットに」と考えていたけれど、実際は「コートのポケットならばなんとか」というレベルだし、ズボンのポケットに入れるにしてもリモコンはあった方が便利。

　ボタンは、……はっきり言って押しにくいです。ボリュームはボタンオンリーでの操作で、スキップボタンの隣あわせで配置。この±のボリューム/スキップボタンが小さくて、しかも双方ともに上下の配列なので、「スキップボタン横並び配列」に慣れた身には違和感がある。ボリュームのつもりでスキップ押しちゃうんだな、これが。

　最上部右側にある4つのボタンはディレクトリの切り替えや、音質改変、再生モードの変更、エンターなどのボタン。こちらもちょっと難あり。なぜかというと、一部のボタンに2つの機能が重複してるんだな。「DIS/SOU」ボタンは表示モードと音質モードの切り替えが重複しているからややこしい。ちなみに、クリックで表示モードを、長押しで音質モードを切り替えるという操作になる。ん～、わかりにくい……。でも、まぁ、ボタンの違和感は「慣れ」で解決できるでしょう。時間はかかりそうだけど。

　液晶の表示は、上段にバッテリの残りや「Repeat」、「all」などの再生モードの切り替え、中段にトラック数、再生時間などの数字情報、下段がID3タグ、ファイルネームの表示領域、と分かれている。ちなみに、文字表示領域は1行のみで、漢字も未対応。

　ディレクトリ指定やプログラムの機能もあり、機能に関しては至って普通。ディレクトリの再生順を指定する機能は他製品にはない新機能かも。ただ、全体の使い勝手は「慣れるまで大変」としておこう。

液晶の表示はこんな感じ。文字情報の表示は下段の1行のみ	上部の操作ボタン類。ポーチに入れた時はこの配置が便利

■ポータブルでの使い勝手はいかが?

　ポータブルでのユーザビリティはどうか?　本体に単4アルカリ電池2本装備の状態で、カバンに詰めて歩き回る。本体はカバンの中なので、操作は一切行なっていない。

　音飛びは、128Kbpsで焼いたCDでは30分程度で2回確認。ちょっと多いかもしれないけれど、まあ、我慢できる範囲でしょう。で、40分ほど経つとバッテリの低下をお知らせする「ピー」というビープ音が。ありゃ、もうですか?

　しかし、その後も順調に再生を続け、結局約2時間で再生停止状態になった。なるほど、一応カタログスペック通りではありますな。本体のバッテリが干上がったところで、外付の電池ボックスを接続。そのまま再生しつづけていると、7時間ほどでバッテリ切れと相成った。ん～、これなら納得できるかな。電池ボックスがウザくて、せっかくのコンパクト性が台無しではあるけど。

　さて、気になる充電池の持ちは?　一応、満充電した（多分）ニッケル水素電池で連続再生してみると……、約40分でアウト。ううむ、これはちょっと実用的とは言えないですな。

　ポータブル時は、「プログラム機能を使って好きな曲だけを聴く」というユースならば満足できると思う。ただし、外付電池ボックス使用が前提。ん～、これだったら12cmの製品でもいいかな?　なんて考えてしまう。

■なんと、安い競合製品が出やがりました

　コンパクト性は期待した通りではなかったけれども、まあ、8cmメディアの採用で小さくなったことは確か。ただし、電池ボックスを使うとそのメリットもなくなってしまう、というのがどうにもこうにも……。オマケでついてきたポーチならば使い勝手良さそうなんだけど、アレを肩から下げて街を歩くのはちょっと勇気がいるしなぁ。「PORTA PRO」レベルが勇気の限界ですわ。まあ、音は好みで、再生までの待ち時間もスピーディーだけれども、普段使用するかどうかはかなり微妙。8cmCD-Rって12cmに比べて高いしねぇ。

　しかも、購入後にネットサーフィンなんぞをしてみたら、製品名こそ違うものの、おそらく同製品と思われる「mp3Hunter/2.0」という製品が14,900円で売ってるし。改めて書くと、「mpzip」は23,800円でした。差額は約9,000円ですな。

　そこに追い打ちをかけるように、「AKIBA PC Hotline」に気になる記事が。……なんと、8cm専用MP3CDプレーヤーの新製品が出てるじゃないですか。しかも価格が13,800円～14,800円程度。液晶はついていないようなので、使い勝手は劣るかと思わけど、単3型電池使用なので、本体オンリーでの再生時間は延びているはず。ううむ、考えるなぁ。……来週はこれやらないとダメですか?

使うのに勇気のいる「PORTA PRO」。音はお気に入りだけど、ちょっとデザインが……	「AKIBA PC Hotline」に掲載された新製品の写真。手との比較を見るとホントにコンパクトかも

□MIBのホームページ（mpzip販売元）
http://www.mib.co.jp/
□製品情報
http://www.mib.co.jp/products/mpzip.html
□メディアエンポリアムのホームページ（mp3Hunter/2.0販売元）
http://www.me-i.co.jp/
□製品情報
http://www.me-i.co.jp/hunter/hunter_top.html
□関連記事
【3月29日】MIB、8cm CD専用のMP3対応ポータブルCDプレーヤー
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010329/mib.htm
【5月12日】シングルCDサイズ専用のMP3対応CDプレイヤー「MA510」登場（AKIBA PC Hotline）
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/20010512/etc_ma510.html

(2001年5月15日)

[fujiwa-y@impress.co.jp]