気になるグッズを衝動買い


【バックナンバーインデックス】


第18回:デジタル送信でノイズなしの高音質!?
デジタルワイヤレスヘッドフォン「xdream」


 AV製品はピンからキリまでいろいろありますが、いわゆるメインストリーム以外にはいろんなおもしろいアイテムがたくさんあります。ここでは思わず衝動買いしたくなるけど、冷静に考えるとどうかな~? と、気になる「モノ」に積極的なアタックを繰り広げていきます。

コードが邪魔なヘッドフォン

 静粛さが要求される環境でのリスニングといえばヘッドフォン。深夜や職場でのリスニングには欠かせないアイテムと言っていいでしょう。だけど、コードがわずらわしいんだよね。そんな悩みを解決してくれるのが「ワイヤレスヘッドフォン」。つまり、コードがないヘッドフォンですな。バリエーションはかなり豊富なのだけれども、店頭で試聴したワイヤレスヘッドフォンは、どれも結構なレベルでノイズ乗っているし、高音域の再現性がイマイチ。パッケージの仕様を見てみると23,000Hzまで出る製品があるのだが、ちょっと信じがたい。

 現状のワイヤレスヘッドフォンは法律のからみもあるらしく、赤外線伝送のものが中心。それもアナログ伝送のものばかりで、それがノイズ発生の原因となっている、ということらしい。

 「う~ん、ワイヤレスの利便性を考えても、静かな環境で使うことを思うとこのノイズは気になるな」と今までは手を出せなかった種類の製品でありましたが、ちょっと気になる製品を見つけてしまったのでありますよ。


日本語は怪しいが機能は魅力的

 それは、ふらふらっと新宿の量販店を徘徊していた時でした。「マルチメディア館」のオーディオコーナーなんぞをのぞいてみると、そこに見慣れないヘッドフォンがあったのであります。それがプリンストンテクノロジーの「xdream」

 「マルチメディア」な店舗なだけに、扱っている商品はPC関連製品が中心。「ヘッドフォンなんてめずらしいな」と思って手にとって見ると、どうもワイヤレスヘッドフォンらしきことはわかった。が、日本語がちょっとヘン。

 英語の解説文の下に日本語の対訳があり、「最大幅のダイナミックレンジでピュアな高品質のサウンドがPC、ゲーム機、AVシステム上で最適に再生」というコピーがまず目に付いた。は? なんでダイナミックレンジが出てくるの? しかも接続詞の使い方がちょっとヘンだよ。

 ヘンな日本語に苦心しながらよくよく読んでみると、「xdream」は赤外線を使ったワイヤレスヘッドフォン。しかし、これまでの製品とは違い、デジタル伝送されるためノイズの発生がなく、高音域までフラットに再生可能なんだとか。しかもUSB端子がついていて、USBオーディオデバイスとしても使えるそうな。だから「マルチメディア館」にあったのね。

 解説を見て「ヘッドフォンにダイナミックレンジは関係ないだろ?」と思っていたが、アナログ伝送製品では高音域の音は音量を上げないと出なかったが、この製品ならば音量を上げることなく聞き取れる、ということで「最大幅のダイナミックレンジ」をコピーに押し出したらしい。う~ん、わかりにくい。「高音域までフラットに再生」の方がいいと思うよ、自分は。

 パッケージの解説は一事が万事こんな感じで、音の例として「金属がコンクリートに当たる音」を出したりしている(多分、金属の高音域の部分と、コンクリートの低音域の音を再現し、広域にわたって再生できると言いたいのだと思うが、それにしたってわかりにくい例えだ)。

 なんというか、「あまり考えずにそのまま訳してみました」感が漂っているが、まあ、対訳の形になっているので「わかんなかったら英語を参照してね」ということかもしれない。解説の怪しさ加減はトップクラスだけれども、ここでふと考える。「これ、実は魅力的な製品なんじゃなかろうか?」

 これまでのワイヤレスヘッドフォンで気になっていたノイズと高音域の再現性の問題は解消されているようだし、USBオーディオデバイスとしても使えるのもポイントが高い。自宅用のヘッドフォンはAKG「K501」で満足しているけれども、職場では電話のそばにヘッドフォンを置いていて、コードが邪魔だと思っていたんだよね。マザーボードのオンボード音源を使っていたから干渉ノイズも気になっていたし。

 で、お値段は、25,800円ですか……。フツーのワイヤレスヘッドフォンとして考えるとかなりお高いけれども、音質を犠牲にすることなくワイヤレスを実現して、その上USBオーディオデバイスとして使える製品と考えると妥当かな。よし、買ってしまいましょう!

パッケージ前面。製品写真とヘンな日本語のコピー パッケージ裏面。やはり日本語が。イラストもちょっと……


超目立つ「赤色回転灯」ライクなレシーバ

 ゲット後、開梱しようと箱を見ると、日本語解説文はスリーブになっていることに気づいた。スリーブを外すとそこには完全な英語のパッケージが。輸入品に日本語解説のスリーブをつけていたわけね。う~ん、それならあの怪しげな日本語もちょっと納得かな。

 内容物は、トランスミッタ、ヘッドフォン、ACアダプタ、USBケーブル、RCA/ステレオミニケーブル、標準/ミニ変換プラグ、充電用ケーブル、単4型ニッケル水素電池×2本、説明書、という構成。

 あら、パッケージには「単4型電池」としかなかったので想像していなかったけれども、充電式なのね。ふむふむ、ヘッドフォン本体での充電も可能で、トランスミッタと充電ケーブルでつなぐのか。ワイヤレスヘッドフォンとしても、USBオーディオデバイスとしても同梱品だけで使用可能なフルパッケージといっていいでしょう。けど、保証書がないっすよ?

 店頭では「商品に入っています」と説明されたので、購入した店舗に問い合わせたところ「販売員の勘違いで、もともと保証書のない商品です。保証は領収書で1年間受け付けます」と説明を受けました。とりあえずは安心。しかし、保証書くらいつけてくれてもいいのに。

 ヘッドフォン本体で、まず目に付くのが赤外線レシーバ部。なんと頭頂部についていて、その姿はまるで「赤色回転灯」。これを装着すると頭に回転灯を乗せているようで、某ゲームのキャラクター(サルをゲッチュするアレです、アレ)そっくりになってしまうのであります。う~ん、室内で使うからいいのだけれども、ポータブルでは絶対使用できそうもないデザインだ。いや、デザイン自体は悪くないけど、レシーバが、ね……。

 レシーバを無視すれば、デザイン自体はいたってフツーのヘッドフォン。アジャストはフリーアジャストで、使い勝手もよさそう。フツーのヘッドフォンとの違いは、コードがないことと、電源ボタン、ボリュームの有無、電池の収納スペース、充電用のコネクタ、そして、あのレシーバ。

 電源ボタンはL側、ボリュームはR側にひっそりとあり、装着時もらくらくと手探りでアクセスできる快適な操作性。電池はL側に収納。カバーはR側のハウジングとほぼ同じデザインで、見た目のバランスよい。電池の収納でウェイトバランスが気になるところだが、ほぼイコールといってよく、装着感も良好だ。重量自体は310g(電池含まず)と重めだが、ウェイトバランスもよく、アームのテンションもちょうどよいのでさほど重さを感じない。

 イヤパッドは耳全体を覆うタイプ。ドライバとのスペースはあまり取られておらず、耳たぶが当たってしまうが、ドライバ側のクッションが少し厚めなので圧迫を感じることはない。イヤパッドは布製で、さわり心地もフェイクファーっぽくていい感じ。2時間ほど装着して、「少し耳たぶが疲れたかな?」というレベルで装着できた。いや、なかなかよろしいですよ。ナイスですよ。レシーバが「回転灯」なことを除けば……(もちろん回転はしません)。

  
同梱品一覧。同梱品のみで一通りの接続が可能 ヘッドフォン本体。アジャストはフリーアジャスト 電源はL側、ボリュームはR側の背面に配置。手探りで操作可能

イヤパッド部。ドライバまでの距離は浅いが装着感は良好 電池部。カバーは脱着式だが本体充電可能なので外すこともないだろう 装着したところ。「赤色回転灯」を乗せている姿に……


偽りなしの音質。ノイズもほぼ問題なし

 さて、装着感は満足なのだけれども、肝心なのは音質。なにせほかのワイヤレスヘッドフォンの2~3倍のお値段したんだからなぁ。試聴できなかったけど、ヘボだったら目も当てられませんぜ。

 トランスミッタの入力端子は、RCAステレオとUSBの2つのみ。とりあえずアナログ端子に普段使っているポータブルCDプレーヤー、ソニー「D-E700」をつないでリスニング開始。ソフトは、アイリッシュトラッドの女性ボーカリスト、メアリー・ブラック「by the time it gets dark」を聞いてみる。

 おお、なるほど。「最大幅のダイナミックレンジ(≒高音域までフラットな再生)」というコピーに偽りはないですな。ノイズもぜんぜん聞き取れない。いや、さすが。

 メアリー・ブラックのボーカルは、サビで気持ちよい高音を聞かせてくれるのが特徴で、あまり高音域の出ない機器で聞いても「心地よさ」を感じることはないのだけれども、このヘッドフォンは、まさに「心地よく」聞くことができる。

 しかも、伴奏はギター、バイオリン、ピアノと小編成なので、レンジが狭いと紛れがちになるのだけれども、このヘッドフォンではそれぞれの音をしっかりと聴き取ることができた。

 カタログスペックでの再生周波数帯は20~20,000Hz。パッケージには、この周波数がフラットに出ていることを示す図があったが、聞いた感じでは「まさにフラットに出ている」という印象。帯域のバランスも、この図のように「それぞれの帯域がフラットに出ている」という感じで、特に強調されている領域は無いように思えた。

 「K501」と比較すると、多少音の伸びが足りず、濁り気味な(鮮鋭感が低い)印象も受けるが、特に集中してリスニングした時の印象なので、BGM的な使用ならば全く問題ないといっていいでしょう。っていうか、そういうユースを想定して買ったものだし、ワイヤレスにそこまで求めるのも酷かと。

 心配していたノイズだが、こちらもリスニング時は全く気にならない。実は、無音時にMAXまで音量を上げると、うっすらとホワイトノイズが乗る。大体70%で聞こえ始める、といったところであろうか。

 完全にノイズレスとは言えないが、50%程度までなら音を鳴らすとまぎれて聞こえなくなるし、かなり大音量(MAXボリュームで、120Ωの「K501」をオンキヨー「CR-185」でリスニングしたときの13時程度)になるので、まあ、そこまで音量を上げる事態もそんなにないかと。「実用に耐えうるレベル」といっていいでしょう。

パッケージの帯域(上)とS/N比(下)の比較図。左がアナログ、右が「xdream」


受光範囲もワイドレンジだが近すぎるとプチノイズが

 音質の次に気になるのが、受信範囲でしょう。トランスミッタは、大体CDジャケット+α、といったサイズ。背面には入力端子はRCAステレオ、USB×各1で、電源はACアダプタ。そのほかにもヘッドフォン本体充電用のコネクタもある、という構成。

 発光部は円周の1/4といったところで、角度に換算するなら100°程度。受光範囲もそれに順ずるかと思っていたけれども、意外や意外、もっと広いのです。

 装着しながら歩き回ってみたところ、発光部が視認できる所であれば大抵OK。角度で言えば160°くらいはいってるんじゃないかな? 「正面7m」がカタログスペックだけれども、横側は大体3mくらい。まあ、「トイレに立つ」以外であれば、大抵の場面でコードレスの恩恵を受けられるんじゃないかと思います。

 デジタルなだけに、受光範囲外になると突然音が途切れます。範囲ギリギリでリスニングしているとき、音が聞こえたり聞こえなかったりで少々不快。けれども、受信範囲は広く、距離も7mまでOK。見通しの利く場所であれば受信できると言っていいでしょう。とっても実用的。

 逆に、近すぎるのはNG。一応、出力調節スイッチが「LOW」/「HIGH」の2段階あり、マニュアルには「近くで使用する場合はLOWに合わせてください」とあるけれども、30cm以内で受信すると、「プチプチ」というプチノイズがどうしても乗ってしまうのであります。これは「LOW」にしても「HIGH」にしても約30cmで発生。出力は切り替えられているのだろうけど、意味ないんじゃないかな? 「HIGH」の方が受光範囲が広いようなので、「HIGH」固定でもよろしいかと。50cmほど離せばプチノイズも乗らなくなるので、まあ、これも我慢できるかな。

 しかし、この発光部、かなりあったかくなりますね。冬場はこれでかじかんだ手を温められそう。それだけ高出力で発光しているということなんでしょうか?

  
トランスミッタ。CDジャケット程度のサイズ 裏面の入力部。右からAC、充電用ケーブル接続プラグ、RCA、USB これくらいの距離から受光可能。広範囲で十分実用レベル


USBもノイズ無し。しかし、イコライザソフトは……

 次はUSBオーディオデバイスとして使ってみよう。こちらの対応OSは、パッケージによればWindows 98/2000。記述は無いものの、Meでも使用を確認できました。

 接続は、USBケーブルを接続し、トランスミッタのスイッチを「USB」側にスライドして電源をONにする。終了。これで大抵の環境で自動的に「USBオーディオデバイス」としてOSが自動認識してくれる。ま、いたってフツーのUSBオーディオデバイスですな。

 USBデバイスとして動作中に切り替えスイッチを「ANALOG」側に切り替えてもOK。「ANALOG」の音はちゃんと再生されるし、再度「USB」に切り替えても問題なく動作します。

 それでは、「Windows Media Player 7」を起動して、とりあえずプレーイ。WMAで取り込んだASWAD「rise and shine」をリスニングしてみる。

 オンボード音源ではオミットされていた音楽再生中のメール着信音も、こちらではちゃんと再生。試しに「RealJukebox」を立ち上げて再生してみると、おお、同時再生してますよ。デバイスを調べてみると「Burr-Brown Japan PCM2702」だそうです。Burr-Brownということは、テキサスインスツルメンツのチップを使ってるらしいですね。「へえ、PCMって同時再生できたんだ」と、ちょっとビビリました。これなら音楽聴きながらでもメール着信が確認できますな。

 内部干渉ノイズは当然無く、聞こえるノイズはプチノイズとホワイトノイズのみ。ま、これは解決できるので問題にはなりませんな。音質は、WMA圧縮でやせた印象を多少受けるものの、BGM的なリスニングであれば問題なし。逆に、やせた印象を感じられるくらいの再生能力を持っていると言えるでしょう。

 で、マニュアルを見てみると、「http://www.xdreamfones.com/」というサイトからイコライザソフトがダウンロードできるそうな。あるものは試さねばなるまいと、サイトを訪れてみたところ、こちらは完全な英語。ぐは、やられた。

 まあ、なんとなく「download」から落とすんだろな、とあたりをつけて、ソフトをダウンするところでトラブル発生。名前とメールアドレスを入力する画面から前に進めなくなってしまったのであります。

 3~4回手入力してNGだったので、販売元のプリンストンに電話を入れてみたところ「輸入元に確認をとってみます」と対応していただいた。ううむ、パッケージの日本語はヘンだけど、ユーザーサポートは好印象ですよ。

 で、何度かメールのやり取りをした結果、実はメールアドレスのカンマとピリオドを間違えて入力していたことが判明。ぐは、かなり恥ずかしい初歩的なミスだ。大馬鹿者だ。そりゃハネられるわな……。

 無事トラブルを解決し、ダウンロードしたのはよいのだけれども、肝心のソフト「EQUALIZER 1.0」はどうもしょぼい。イコライズの効果はあまりないようだし、項目はあるが選択すると「次のバージョン用の機能です」みたいな項目もあるのです。う~ん、このソフト、何のためにあるのかよくわからないなぁ。添付されているわけでもないし、英語版だし。

イコライズソフト「EQUALIZER 1.0」。特許出願中らしい


充電時間は14時間!? ちょっと気になる点もある

 ハードウェア的には、ほぼ満足なのですが、不満点がないというわけではありません。「赤色回転灯」なレシーバ部が大きな不満ではありますが、コレはまあ、見逃してもいいでしょう。

 それ以外では、まず充電がケーブル接続な点。最近のワイヤレスヘッドフォンって「スタンドに置くだけで充電可能」を売りにしてるじゃないですか。やはりケーブルはわずらわしい。

 それに、充電時間がかかりすぎ。マニュアルによると「最初の2、3回は充電に14時間を必要とします」だそうな。で、電池持続時間は15時間。それに、充電中は「CHARGE」ランプが付くものの、満充電を知らせる機能は無く、どれだけ時間がたっても付きっぱなし。ただ、フツーの単4型ニッケル水素充電池だから、急速充電器での充電もできますが。

 もう1ついきましょか。コレ、CDプレーヤーのLINE接続時、本体ボリューム30%程度の音量でも音漏れします。外見上は密閉型だけれども、音漏れレベルはオープンエア並み。その代わり、抜けのよさもオープンエア並みで、それが良好な音質に寄与していると思われるけど、パッケージには「密閉型」とも「オープンエア」とも記述がないのですわ。ん~、職場ではあまり大音量は出せませんな。

 そして、なによりもマニュアルがわかりにくい。パッケージの「ヘンな日本語」に比べればかなりマシではあるけれども、直訳ライクな日本語で文法が少々おかしいし、説明が簡素すぎ。ハードウェア的なことはひと通り押さえてあるが、ソフトに関してはなんもないのよね。

 専用ソフトに関する記述は「ここでダウンロードできます」だけだし、USBのデバイスドライバインストール方法も書かれていないのはどうかと思いますよ。いや、まあ、わかるけどさ、普段あまり使わないから思い出すまで大変じゃありませんか。

 う~ん、製品の欠点は目をつぶってもいいのだけれど。……そんな代理店のプリンストンテクノロジーさんにご要望。カンマとピリオドを間違える大馬鹿者にご対応いただいてナニですが、マニュアルもう少しわかりやすくしてください。そんでもってソフトも日本語にしてください。自分、大馬鹿者なので。

□プリンストンのホームページ
http://www.princeton.co.jp/
□製品情報
http://www.princeton.co.jp/new_site/product/dream_fl.html

(2001年6月19日)

[fujiwa-y@impress.co.jp]


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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