気になるグッズを衝動買い |
第19回:このお値段でプロロジック II対応! 話題のプロロジック IIを試してみた「オンキヨー GXW5.1」 |
AV製品はピンからキリまでいろいろありますが、いわゆるメインストリーム以外にはいろんなおもしろいアイテムがたくさんあります。ここでは思わず衝動買いしたくなるけど、冷静に考えるとどうかな~? と、気になる「モノ」に積極的なアタックを繰り広げていきます。 |
■「プロロジック II」とはなんぞや?
DVDプレーヤー普及の決め手となった(と思われる)「プレイステーション2」発売以来、サラウンドを指す単語と言えば「ドルビーデジタル」と「dts」だけになった感があります。が、最近になってちょっと事情が進展した模様。
「ドルビーデジタル」、「dts」は相変わらずメインストリームではあるけれど、エントリーレンジのAVアンプに「AAC」や「プロロジック II」などの規格に対応する製品がでてきた(ほかにも「dts ES」などの規格がありますが、自分には手が出せそうにないレンジなのでパス。そこまでお金出せません)。
「AAC」はBSデジタル放送で使われるMPEGの音声フォーマットで、5.1chにも対応するもの。衛星電波が入らないアパートに住んでるため、BSデジタルに縁がない自分には、まあ、引っ越さない限り関係ない規格(書いていて寂しいものを感じますが……)。
で、「プロロジック II」は、アナログ時代から慣れ親しんだ「プロロジック」の拡張規格。ソースは、フロント2ch、バック1ch、センター1chと4chの「プロロジック」そのままを使用し、バックを2chに、サブウーファの0.1chを追加して、5.1chにするというモノ。もちろん、入力はアナログでもOK。
オンキヨーの「GXW-5.1」は、この「プロロジック II」にいち早く対応した5.1chスピーカー/アンプパッケージ。「1パッケージでサラウンド」というコンセプトの製品ですな。もちろん、メインストリームの「ドルビーデジタル」、「dts」のデコードに対応していて、標準価格は39,800円。で、PC系の量販店では29,800円と3万円を切る価格で売られている。うん、お買い得じゃないですか?
■気の抜ける愛称だけど、製品はナイス
というわけで、買ってしまいました。実は発売当初から注目してたのだけれども、同じような製品のヤマハ「TSS-1」があったので二の足を踏んでいたのであります。
しかし、「TSS-1」は「プロロジック II」には非対応だし、リモコンもなし。対して「GXW-5.1」は両方とも装備。その上、自分はオンキヨー製ミニコンポ「INTEC185」を7年ばかり使っていてオンキヨーびいきなのであります。「TSS-1」も「お片付け」してしまったし、ま、発売されて結構時間がたったけど、ここが我慢の限界だったのです。
で、買ってきたパッケージを見てみると、デカデカと「Hollywood Station」という文字が。開梱して製品を出してみると、サブウーファ部にも「Hollywood Station」のシール。これが「GXW-5.1」の愛称なのであります。……え~、なんというか、気の抜ける愛称ですな。「映画の都」を意識してるんでしょうが、わかりやすいのか、わかりにくいのか微妙なところ。ロゴデザインもどうもな……。
愛称はちょっと外し気味ではありますが、重要なのは製品。サブウーファ/アンプ一体型のターミナル部と、5chスピーカー、というシンプルな構成。
スピーカーはフルレンジウーファ×1と、これまたシンプルだけど、キャビネットは全面MDFで安っぽさを感じることもない。バネ式ではあるものの、スピーカーターミナルもちゃんと備えている。「TSS-1」はケーブル直出しだったから、とりまわしが面倒だったのよ。
サブウーファ/アンプ部は、それなりに大きいけど、205×288×300mm(幅×奥行き×高さ)と、形状が細長い長方体なので「TSS-1」のサブウーファと比較すると設置面積は少なくてすむ。
そして、なによりもありがたいのがリモコン。「TSS-1」はリモコンがなかったため、コントロール部の設置が大変だったのだけれども、リモコンがあるなら視聴位置の前ならどこでもOK。うん、「TSS-1」と似た価格レンジ、コンセプトの製品だけれども、「GXW-5.1」のアプローチの方がTVでの視聴には便利そう。「TSS-1」は、「モニタとの位置が近い」PCでの使用には便利そうなんだけどね。
サブウーファ/アンプ部正面。ディスプレイは大きめで視認性も高い | サブウーファ/アンプ部背面。スピーカーターミナルはバネ式。入力は光/同軸デジタル、RCAそれぞれ1系統と最小限 |
スピーカー正面。ほぼ立方体のMDFボディに8cmフルレンジウーファを収納 | スピーカー背面。ケーブルは直出しではなく、バネ式ターミナルに接続 | リモコン。ボタンは小さいが、特に押しにくいということもない |
■音質はそこそこ、設置位置には注意
それでは、結線して音を鳴らしてみましょう。付属ケーブルは、サテライト用は8m、センター、L/R用が2.5mと長さも充分。皮膜の黒いビニールに、+-確認用の白線が引いてあるタイプの、いたってフツーのもの。これをミニコンポと同じバネ式ターミナルに接続。スピーカーが小型なので、設置位置も自由に選べる。同じく付属する1.5mの光デジタルケーブルをDVDプレーヤーに接続して、とりあえずプレーイ!
第一印象は、「やっぱちょっと物足りない音質かな?」というのが正直なところ。同じオンキヨーのミニコンポ「INTEC185」程度の音質を期待していたけれども、そこまでではない。比較すると、高音の伸びが物足りず、解像度もイマイチ。とはいえ、フルレンジスピーカーにしては良好な音質。サブウーファも低音を「主張」するのではなく、「補強」する感じに控えめに鳴っていて好印象。「スペースカウボーイ」をしばらく視聴したが、セリフも効果音もはっきり聞き取れて、映像と一緒にリスニングするなら気にならない。
それよりも気になったのが、サラウンド感。一応、サラウンドスピーカーが鳴っているのは感じるのだけれども、音量がちょっと低めな印象。実は、当初設置した場所が視聴位置の直上1mと少々聞き取りづらい位置にベタ置きだったので、音が通らなくなっていたのです。
「TSS-1」ではスピーカーにスタンドが付属して、深い角度を設定できたのに対して、「GXW-5.1」はコルクスペーサーが付属するだけなので深い角度までは調節できないのであります。一応、アンプ側で距離調節してサテライトの音量を上げてみたけれども、音が頭の上を通り抜けるだけで、効果はイマイチ。
とりあえず、耳の近くに置こうと考え、サテライトL側をPCデスクに置いたが、問題はサテライトR側。L側の高さに合う設置スペースがないのです。ちょっと考えた後、マガジンスタンドの雑誌類に、電気ポットを乗せ、その上にスピーカーを設置することで解決。バランスは微妙だけれども、MDFキャビネットのスピーカーは結構重量があって何とか乗りました。で、改めてリスニングすると、うん、よきかなよきかな。ナイスですよ。
しかし、微妙なバランスに頼った、アクロバティックな設置を行なった報いを受けてしまいました。一見、どっしり構えていたスピーカーが、立つときにうっかり引っ掛けてしまい落下、ちゃぶ台に置いていたしょうゆ差しを直撃してしまったのであります。うぐぅ、しょうゆが、しょうゆがこぼれた!
……別売のサテライト用スタンドを使用すればこの事故は回避できたのだけれども、専用スタンドは安くても8,000円程度と、ちょっと考えるお値段。スピーカーには底面に2つ、背面に1つのネジ穴が付いているので取り付け金具を自作するのも手かと。面倒だけど。
当初のサラウンドスピーカー設置位置。サラウンド効果は薄かった | サラウンドスピーカーを頭部近くに持ってきた設置。サラウンド効果はかなり高い | マガジンラック、ポットのさらに上に置いたスピーカー。意外と安定度は高かった |
アンプ/サブウーファはTVを置いたラックの最下段に配置 | フロント/センターはこの位置。センターは視聴位置にあわせて少し中心からずらした |
■で、プロロジック IIはどうよ?
実はこの「GXW-5.1」、連載コラム「小寺信良の週刊 Electric Zooma!」の第3回で1度扱っている。ので、今回はこちらで触れられなかった「プロロジック II」についてツッこんで行きましょう。
効果が一番期待できそうなので、「ドルビーサラウンドステレオ」収録の映画ビデオ。自分は映画はレンタルで見ることが多いし、DVDでレンタルされていない作品もあるので、手軽な値段で映画を見るたい時の選択肢はプロロジックオンリー、という事が多いです。それに手持ちのLDソフトは「ドルビーサラウンドステレオ」のものもあります。
「プロロジック II」用に用意されたモードは、「MOVIE」と「MUSIC」の2つ。「プロロジック」をそのままを再現するモードはない。けど、まあ、「プロロジック II」が再生できるので無視してもいいかと。まずは「MOVIE」で視聴。手持ちの映画LD「クリムゾン・タイド」は「AC-3」収録のの潜水艦モノ。ただし、ウチのLDプレーヤーは「RFデモジュレータ非対応」の安モノなのでアナログ出力で視聴。艦内を走るシーン、魚雷の迫るシーンなどの音場は、結構定位感が高かった。爆発シーンはサブウーファの低音が加味されて、やはり迫力を感じる。いやぁ、DVD買いなおそうかと考えてましたが、14インチと小さな画面だし、この音響が楽しめるのならLDでも結構イケますよ。
「王立宇宙軍 オネアミスの翼」のロケット打ち上げ直前の戦闘シーンは、小銃発射音など、音が少ないシーンのサラウンド感が良好。ただ、乱戦シーンではちょっと定位感が紛れがち。ただ音が広がっている印象だけが感じられた。クライマックスの打ち上げシーンは、ロケットエンジンの轟音が、サブウーファの低音で補強されて迫力を増している。ただ、サブウーファは控えめなので、このシーンだけは少し低音を足す設定にしてもいいかと思う。
「マクロスプラス movie edition」の戦闘シーンでは、飛行機のマニューバにあわせて音ががぐるぐるとイイ感じで動く。あまり動かない「ドルビーデジタル」、「dts」ソフトよりも面白い。サラウンドもL/Rで鳴り分けていて、どうもフロントの音からサラウンドのL/Rへ一定量の音を流しているような印象を受ける。単純だけど、「包み込まれる」印象は増すので効果は大きいと思う。サラウンドスピーカーが近いので、2chでは紛れていたバルカン発射シーンの薬莢が落ちる音もクリアに聞き取れる。
■「ステレオ」でもそこそこの効果
HiFiステレオ収録の「イベント・ホライゾン」を視聴したとき、最初に感じたのがサブウーファの効果。この映画は「SFの形を借りたゴシックホラー」という内容で、低音が増すだけで迫力も倍増なのです。おどろおどろしいBGMが低音の迫力でさらに雰囲気をまして、とてもよいです。
サラウンド効果を特に感じたのは、艦長が宇宙船の通路を駆け抜けるシーン。画面の左から右に移動し、フロントのL/Rの音を追従するように、サラウンド側のL/Rの音も動いていた。ドルビーステレオと同じく、フロントから持ってきた音を一定量再生することで臨場感を増しているようだ。ただ、サラウンド感はやはり低め。
ざっとデジタルソースと聞き比べたところ、小音量時にセリフが聞き取りにくく、多少減衰による(と思われる)ノイズ感がある。が、まあ、我慢できる範囲。レンタルのマイナー作品が楽しめるのだから、些細なことには目をつぶれます。 「プロロジック II」は、「ドルビーデジタル」、「dts」と比較して、定位感にちょっと劣る、という印象。サラウンドL/Rはしっかり鳴り分けてくれるものの、フロントのL/Rの音に引きづられる感じがするのです。しかし、これまで「後ろで鳴っていた」だけの音が左右にも聞こえることで臨場感も増し、低音の追加で迫力も増している。いやいや、レンタルビデオ派にはなかなかよろしいんじゃないかと。
ちなみに、もう1つのプロロジック II用モード「MUSIC」は、「MOVIE」モードにエコーをかけたような感触。ホール風の音場感になり、セリフのクリアさが少々劣ってしまうものの、「広がり」は増して感じられる。ただ、自分はあまり好みでありません。やはりクリアに聞こえないとなぁ。
■ヘッドフォン端子はナシ。割り切ったユースを
音やサラウンド効果に関しては、人気もうなずける実力、と言っていいでしょう。プロロジック IIは「ドルビーデジタル」や「dts」と比較すると定位感こそ劣るものの、動きの激しいソースは同等に楽しめる。スピーカー、サブウーファ、アンプ、ついでに接続ケーブル類まで全部パッケージして、プロロジック IIにも対応。で、このお値段。うん、文句ナシ。でも、ヘッドフォン端子がないんだよね。壁の薄い我が家では、やはりヘッドフォンが必須。
別のアンプに同時接続して、そちらにヘッドフォンをつなげば解決するのだけれども、自分の場合、出力はTVのモニターアウト1系統に統一しているので、アンプ2台への同時出力は現状では不可能。仮に分配器を使うとしても、TVから分配すると減衰が激しそうだしなぁ……。
「TSS-1」はヘッドフォンでも効果のある「サイレントシアター」を搭載している。けどプロロジック IIには非対応、対して、「GXW-5.1」はプロロジック IIを搭載して、DVDのみならず映画ビデオも楽しめる。けどヘッドフォン端子ナシ。しょうゆもブチまけたしな(これは自分が悪いです。ハイ)。しかし、「休日にじっくりと映画を見る」というユースなら、まあ、ヘッドフォンはいらないかと思う。割り切った使い方すればナイスな製品なんですけどね。
両方置くことは、スペース、端子の都合で無理。う~ん、ヘッドフォンか、プロロジック IIか。そこが問題だ。
□オンキヨーのホームページ
http://www.onkyo.co.jp/
□製品情報
http://www.hollywood-station.net/
(2001年6月26日)
[fujiwa-y@impress.co.jp]
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