気になるグッズを衝動買い


【バックナンバーインデックス】


第21回:振動で低音を感じるステレオイヤフォン
“脳天まで揺るがす”ってホント?「パナソニック RP-HS900」


 AV製品はピンからキリまでいろいろありますが、いわゆるメインストリーム以外にはいろんなおもしろいアイテムがたくさんあります。ここでは思わず衝動買いしたくなるけど、冷静に考えるとどうかな~? と、気になる「モノ」に積極的なアタックを繰り広げていきます。

"低音"を体感できるヘッドフォン

 とある日に、山積みにしていたCDからとある1枚を発見しました。その名も「ROTTERDAM TECHNO IS HARD HARD HARD」。ドラムの連打、連打、連打! 短フレーズのループ、ループ、ループ! をめちゃくちゃ早いBPMで演奏して、いい感じでトリップできるナイスなアルバムなのです。いや~、バカだ。バカすぎる! 久しぶりに聞くと新鮮に響きますなぁ。

 ほかにもプロディジーの「NO GOOD(START THE DANCE)」や、フォーテックの「Ni ten ichi ryu(二天一流)」なんて昔にずいぶん聞き込んだテクノ系CDも出てきて、テクノ熱が再燃してしまいましたよ。しかし、クラブなんかだと体に響く大音量なのに、自宅ではどうにも迫力ナッシング。まさかクラブ並みの大音量は出せないしなぁ……。

 何とか「小音量でも迫力を感じられる」ブツはないものか? と思いをめぐらせていると、よさげなブツを発見したのであります。それが松下のステレオイヤホン、「RP-HS900」なのであります。


お好みに合わせて選べる2タイプ

 「RP-HS900」は、ネックバンド型のアームを持つステレオイヤホン(インナーイヤ型ヘッドフォン)で、「VMSS(Virtual Motion Sound System)」という、低音を振動ユニットを使って振動させることで表現する松下独自のシステムを採用している。低音は多分に体で感じる音域であるから、この方式はなかなか興味深いし、「体で感じる低音」も再現してくれそうだ。

 インナーイヤ型のほかにも、オープンエアヘッドフォン型の「RP-HT940」という製品もあり。松下のサイトで「VMSS」を検索してみると、ポータブルMDヘッドホンステレオに付属のクリップ(耳掛け)型もあるみたい。だけれども、クリップ型の単体販売はされていない。ま、耳掛けタイプはあまり興味ないからいいか。

 単体販売されているのはインナーイヤタイプとヘッドフォンタイプの2つのみなので、選択肢は2つ。インナーイヤタイプは、振動ユニットがドライバとは別に配され、首の後ろにつく。で、ヘッドフォンタイプは振動ユニットがドライバと一体化している、という作り。どっちにすっかなぁ?

 ヘッドフォンタイプは、通常のヘッドフォンと同じ作りで安心感があるけれどもドライバが振動するとなると低音以外の音が濁りそう。それにデザインもイマイチ好みに合わないかな。コードも両出しっすからねぇ。

 コード長は1.2mで、3mの延長コードが付属。プラグもストレートなので、「ポータブルユースにも使える、ホームユース志向のヘッドフォン」と言えそうだ。

 インナーイヤタイプで最初に目を引くのは、そのオリジナリティあふれる外観。ネックバンド型のアーム中央部に振動ユニットを配し、なんというか未来的なデザイン(良くも悪くも……)。

 デザインは賛否両論あると思う(自分は結構いい感じ)けど、振動ユニットがドライバと離されたことで音への影響はさほどなさそう。。コード長は1.2m。L側から片出しされていて、プラグはL型と、こちらはポータブルを志向したタイプと言えるでしょう。

 ん~、ポータブルでも聞きたいから、ここはインナーイヤでしょう。決断を下したところで買い物へ出撃。マイナーな製品らしく、扱っている店を探すのに少々手間取りましたがなんとか発見しましたよ。で、お値段は3,680円。ほう、なかなかお買い得ではありませんか。


個性的な外観とギミック

 パッケージは、直接製品を確認できるブリスター。「脳天まで揺るがすヘビーなサウンド!」のコピーが確認できる。ホントかいな?

 とりあえず、取り出して本体を確認してみる。同梱品は、単3型マンガン電池×1、イヤパッド×2、という構成。マニュアルはパッケージの裏面に直接印刷されている。

 ほかのヘッドフォンにはないものとして、まず目に付くのが「VMSS」コントローラ。コードの途中に配されている。「VMSS」は、OFF/MID/MAXの3段階で調節可能。電池はこのコントローラに内蔵する。まあ、少々大きめだが、リモコンが1つ増えたと考えればさほど気にすることでもないでしょ。

 本体サイズは、普通のアーム付きステレオイヤフォンよりひと回り大きめ。なによりもアーム中央に配された振動ユニットが目立つ。振動ユニットは、大型腕時計の時計部分と同サイズ、といったところ。裏面が腕時計のように段差構造なっていて、着面の圧着度を増すような工夫がされている。

 ドライバ部のアームは二分割されており、ドライバ部はバネで自動的に折りたたまれる機構となっている。つまり、装着するにはドライバ部のバネを伸ばし、振動ユニットを首に圧着させるためのギミック。そうか、振動を伝えるために圧着させるというわけね。

 装着してみたところ、アームをたたむバネのテンションは耳に圧迫を感じるほどは強くなく、それでいて振動ユニットを圧着させるには充分なレベルだった。これまでに体験したことのない装着方式のため、当初は違和感を感じたものの、2~3分もするとすんなり適応。思っていたよりも装着感は悪くないですよ。

パッケージ。「脳天まで揺るがす~」のコピーが 同梱品一覧。電池と「VMSS」コントローラ以外は普通のステレオイヤホン マニュアルはパッケージの厚紙裏面に直接印刷。エコロジー?

振動ユニット前面。「VMSS」の文字が誇らしげ 振動ユニット背面。腕時計のような段差がある

ドライバ部のアーム。これが折りたたみ状態 アームを伸ばしたところ。テンションは低め 装着したところ。歩いても落ちることはなかった


振動効果はなかなかだが、長時間リスニングはちょっと……

 とにかく聴いてみるべ。手始めに、ザ・プロディジー「NO GOOD(START THE DANCE)」を、ソニーのポータブルCDプレーヤー「D-E700」でリスニング。こちらはドラム、ベースギターなどの低音要素の短フレーズのリフレインが繰り返される、ちょっとロック要素の入ったテクノ。低音が心地よいのです。んじゃ、とりあえずプレーイ!

 おお、来ましたね。イントロのベースパートで、首筋が「もぞもぞ」とするような振動を感じる。このときの音量は目盛りの「4」程度で、「VMSS」はMID。さらに低いドラムには大きく反応し、こちらは「ズズン」と形容できる大きな振動。特にバスドラムの音はビリビリと振動して、アームを伝って耳まで振動が響いてくる。ドラム連打などの時は耳のまわりがくすぐったい。

 逆に、メインのエレキギター風シンセやボーカルなど、高めの音には反応していない。つまり、音域に合わせてきっちりと鳴り分けてくれる、ということ。その後、「ROTTERDAM TECHNO IS HARD HARD HARD」や「二天一流」などをリスニングしてみたが、感覚では音量「4」では80Hz程度から下で振動しているよう。当然のことながら音量に応じて振動レベルも上下するのだけど、テクノを聴いていると4以上では振動しすぎてまともなリスニングができない。耳の周りがくすぐったいんですわ。それに、音の再現性も少々ブレ気味。

 でも、くすぐったさはすぐに慣れました。それよりも低音が体感できるメリットの方が大きいデス。あまり振動が強くなると音のブレが大きくなるので、「VMSS」はMID程度がよろしいかと。MAXは、小音量でも低音を体感したい場合が適当だと思います。

 とはいえ、「脳天まで揺るがす」のコピーは言い過ぎだなぁ。「振動で首筋をマッサージ」くらいが適当。「脳天まで揺るがす」振動だと、逆に翻弄されると思われるので、振動の効果はこれでほぼ満足。ただし、長時間のリスニングは疲れます。例のアームを伝わる振動は、連続30分程度が限界。2~3分外して休まないとやってられません。

「VMSS」コントローラ。スイッチはスライド式 電池挿入部。単3型電池と比較してもさほど大きくはない


ソースの系統で異なる体感

 ん~、ちょっと系統を変えて聴いてみるべぇな。続いては同時に発掘したユッスー・ン・ドゥールのアルバム「The Guide(Womad)」をリスニング。アフリカ/セネガルの男性ボーカリストで、最近ではホンダ、ステップワゴンのCMでオブラディ・オブラダを歌ってました。

 発売が'94年とさすがに古いので眠っていたのだけれども、これはアフリカのドラム楽器がアクセントになっている曲が多く、低めのボーカルとあいまって「ほどよい低音」が出ているのです。

 アルバム中の1曲、女性ボーカル、ネナ・チェリーとのデュエット「7 Seconds」は、ドラム要素は前面に出ていない、バラード調のゆったりした曲調。

 バラードに合わせて、音量を少し絞った3に、「VMSS」をMIDでリスニングしていると、所々でアクセント的に入るドラムに振動ユニットが反応するものの、曲中のほとんどで振動することはなかった。これはこれでボーカルに集中できていいんだけど……、と思いつつ「VMSS」をMAXに。すると、リズムを取るドラムに反応してユニットが振動しはじめた。ふうん、テンポを体で感じながらリスニングするのもなかなか良いものです。でも、バラードには合わんなぁ……。

 次いでリスニングした「How Are You」は、「1959年8月ギニア、1960年7月ソマリア」とアフリカの独立年を列記するなど、「アフリカの自由」というテーマの曲。アフリカ独特のリズムを組み合わせたポップ調で、テンポのよいドラムに合わせて歌い上げている。

 こちらは「7 Seconds」とは違い、MIDでもそれなりに振動している。ほほう、これはなかなか心地よいですよ。テンポが良いのでバラードで感じた「違和感」もなく、アフリカのドラムのパーソナリティが補強された感触。ボーカルともマッチして気持ちよく聴くことができました。

 ふむふむ、つまりは音楽の系統によっては「振動が心地よくない」場合もあるわけね。低音がほとんどないソースでは、そもそも振動しないこともあるし、振動したとしてもそれが効果的とは限らない。テクノ、ロックなど、リズムが重要な音楽ならば振動が心地よいんじゃないかと思います。


映画視聴時のサブウーファ代わりにも

 などとリスニングを続ける内に、ふと気づきました。そういえば今日は「パール・ハーバー」の先行オールナイトをやってるじゃないですか。どうも評判はよろしくないが、やはり観ておかねばなるまいて。

 で、観てきました。……ふ~、やれやれだぜ……。口直しに「トラ! トラ! トラ!」のDVDでも観るか。オールナイトの第1回から帰ってきたので、時間は深夜の2時近く。スピーカーでのリスニングはちょっとはばかられるわなぁ。ということで、DVD視聴にも試してみました。

 まず接続する段階で、1.2mというコード長がネックに。とりあえず手持ちの延長コードをつなぐことで対応。ま、これは当初からわかっていたことだけれどもね。

 冒頭では、キンメルの乗るカタリナ飛行艇のプロペラ音などで少々の振動を感じた。それでも「ちょっと震えているかな」、という程度の振動。冒頭からの1時間近くは、真珠湾攻撃に至るまでの室内劇が中心となるので特に低音/大音量のシーンはなく、振動はほとんどなし。

 いよいよ攻撃、という場面になると、とたんに元気よく振動しはじめる。空母からの発艦シーンや、編隊飛行シーンでのプロペラ音で振動。「体に響く音」を体感できます。なによりも圧巻なのは爆発シーン。首筋にビリビリと響き、臨場感は大幅アップ。ううむ、なかなかよろしいですよ。

 サブウーファの迫力とはまた感覚が違い、「振動だけ」が追加されていて音からの迫力はほとんどない。が、ステレオイヤホンでこの迫力が感じられるのは大きな魅力。結構な臨場感で、映画の雰囲気にすんなりと入っていけました。「深夜でもサブウーファのような臨場感を楽しみたい」、というニーズにも使えると思います。

 ただ、振動が激しくなると、やはりセリフなどがブレて聞き取りづらくなるんだよな。「トラ! トラ! トラ!」は日本語の会話もあるので少々気になるところ。洋画ならば字幕でわかるからいいんだけどね~。


音質は普通。お好みに合えばどうぞ

ドライバ部のアップ。背面は密閉型なので音が少々こもり気味

 この製品のキモは振動なのです。振動。しかし、ドライバ部の音質も気になるところ。で、「VMSS」をOFFにして「The Guide」などをリスニング。

 音域は、中音域をベースにした普通の音。高音域は多少の伸びを感じるものの、かなり控えめ。低音も、振動ユニットでの表現にすべてを託しているのか、どうもイマイチ。その代わりに中音域は安心して聴けるが、逆にいうと面白みがなにもない。それに、少々こもり気味で、集中してのリスニングだと鮮鋭感にちょっと不満を感じる。

 ん~、振動ユニットが全てという感じだな~。ただ、「首で音を感じる」のは、他の機器では体験できない「面白い感覚」なのは確か。ポータブル環境で不足しがちな低音を、振動という形で体感できる機器、と理解すれば良いでしょう。深夜の映画でも、ステレオイヤホンでも迫力はかなりのもの。当初の「テクノをクラブ並みの迫力で聴く」という目的は、「70%程度は達成できるかな?」といったところ。うん、4,000円もしないのに、なかなか遊べる製品だと思いますよ。

 普段使っているヘッドフォンKOSS「PORTA PRO」は低音過多ではあるものの「低音を体感」とまではいかない。けれども、音質、解像感などはこちらが上。できることならば、「PORTA PRO」のドライバと「RP-HS900」の振動ユニットを組み合わせた製品、なんてのが欲しいんだけど。……無理だよねぇ。

□松下のホームページ
http://www.panasonic.co.jp/
□製品情報
http://prodb.matsushita.co.jp/products/fr/RP/RP-HS900.html

(2001年7月10日)

[fujiwa-y@impress.co.jp]


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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