気になるグッズを衝動買い


【バックナンバーインデックス】


第28回:スピーカーの設置に困ったら?
サブウーファ付き平面スピーカー「FPS-212ASW」


 AV製品はピンからキリまでいろいろありますが、いわゆるメインストリーム以外にはいろんなおもしろいアイテムがたくさんあります。ここでは思わず衝動買いしたくなるけど、冷静に考えるとどうかな~? と、気になる「モノ」に積極的なアタックを繰り広げていきます。

平面スピーカーってどうよ?

 前回のスピーカー付きバックパック「K2 GENEK-P5」に付いてきたスピーカーは、「小型・軽量・生活防水。バックパックのベルト部に付けられて、指向性が高い」というニーズにだけターゲットを絞ったユニットのように感じました。つまり、音質はイマイチ、ということね。

 しかし、アンプ部に確認できた「FPS」のロゴが気になった。アンプをつけるということは、おそらくスピーカーも同社製なのでしょう。FPSといえば、同社Webサイトの会社案内に「会社名はFlat Panel Speakerの頭文字をとったもの」と明記しているメーカー。つまり、平面スピーカーには自信があると推測できるわけで。

 平面スピーカーの製品情報を見てみても、どうも「音質がいい」ということをアピールしているみたい。「K2 GENEK-P5」で感じた音質への不満とは反対のこと言っている。そこで、「平面スピーカーってこんなものなんでしょうか?」という疑問が湧いてきたのです。続けてサイト上の技術情報を見てみると、「平面を採用することで音波が直線的波形になり、クリアに聞こえる」という解説をしているし。ううむ、疑問は深まるばかり。解決するにはブツを試してみなくてはなるまいて。

 音質さえ満足なレベルであれば、平面なだけに設置スペースの確保も簡単だろうし、最近5chサテライトスピーカーセット「FPS-213AC(オープンプライス。直販サイト上では19,800円)」なんて気になる製品も出している。自分のPC設置環境はロフトベッドの下のくそ狭いスペースなので、コレならば5chのスピーカーを置いても気にならないハズ。けど、今のところWeb直販のみで店頭では見かけないんだよね。

 とりあえずはこないだ新宿の量販店で見つけた、アンプ内蔵サブウーファ付きの2.1chセット「FPS-212ASW」で試してみるべ。店頭の価格も14,800円と、5chセットより5,000円ほど安く手に入るしね。


コンパクトな割には重いユニット

 というわけで、新宿にてお買い物。量販店で無事にブツを見つける。なぜかポータブルMDコーナーにデモ機がディスプレイされていて、どうも「MD用のオプション」という理解をしているみたい。確かにコンパクトなのでMD用スピーカーにもなりそうだけど、以外とサブウーファがデカイから微妙だな~。とにかくデモ機の音を聞いてみる。

 ん~、意外と普通の音かも? しかし、店内は雑音が多いからなんとも言えないところ。やはり買うしかないか。すみません、コレお願いします!

 と店員さんに注文したところ、想像していたよりも大き目の箱を持ってきてくれました。見た目は300×200×300mm(幅×奥行き×高さ)程度の大きさ。う、デカイ……。しかも、このサイズの大きさなら普通は紙袋に入れてくれるのだけれども、ビニールワイヤでくくって取っ手をつける梱包で渡してくれました。手に持ってみると納得。これは重いわ。確かに紙袋だと破れる可能性があります。

 持ち帰って真っ先に確認したのが仕様書。重量はパネルスピーカーが約560g×2、サブウーファが約3.8kg。これを単純に足しただけで4.9kg。ぐは、重いっすよ。ちなみにスピーカーの板の材質はアクリル。外形寸法127×12×251mm(幅×奥行き×高さ。金具含まず)と意外と背が高く、薄い。けれども持った感覚はずっしり、という印象。そういやアクリルって重いもんな~。NECがもっと薄いフラットパネルスピーカーを出しているけれども、あちらは「シート」に近い感覚かも。12mmならば「パネル」でしっくりきます。

 ちなみに、ユニットは「2×12FPSマルチセル平面スピーカー」だそうで。アクリル板の中央は空洞で、そこにユニットを配した構造です。なので板の材質は音質にさほど影響を与えないかと。「マルチ」が何個かは記述はないけれども、サランネット上からは3つを縦に配置しているように見えました。

 サブウーファの外形寸法は、108×232×270mm。感覚としてはプレイステーション 2の背を低くして、幅と奥行きを少し足した感じ。が、これを持ってみるとずっしり重い3.8kg。キャビネットやパネルの作りもしっかりしていて、なかなか好印象。ユニットは10.5cmコーンウーファ×1だけれども、アンプを内蔵しているのでこの重さになるのでしょう。

 ほかの仕様も確認してみましょう。出力は、スピーカーが5W×2、サブウーファ15W。ま、このサイズのスピーカーシステムなら妥当といった線。サブウーファのサイズを考えると少々控えめかも。

 再生周波数帯は、サブウーファ/スピーカー合わせての表記しかなく、70Hz~20kHz。ま、これもフツーのスピーカーシステムとして考えれば妥当な線。問題はサブウーファでどこまで低音を補っているか? という所でしょう。再生するときが楽しみ。

 入力端子は、ステレオミニジャック×1系統のみ。スピーカーへの出力端子はなぜかRCA端子で、スピーカー側の入力はケーブル2本挿しのネジ式ターミナル。ついでにバナナプラグ対応。パッケージにはRCA→2又のスピーカーケーブルが付属しているので接続には何の問題もないのだけれども、ちょっと不可解な構成。想像するに、「スピーカーユニットを別アンプにも接続できるように」という配慮かと。スピーカーの入力インピーダンスは6Ωなので、一般的なアンプにも接続可能です。

 ふむ、ざっと見てみると、どうも「PC用アンプ内蔵スピーカー」か、「ポータブル機器での再生に使用するアンプ内蔵スピーカー」というコンセプトのように思える製品。入力はステレオミニプラグ×1オンリーだし、ヘッドフォン端子もなし。割り切った構成ですね。コントロールスイッチ類もシンプルで、前面の上部に配されて、マスターボリューム、サブウーファボリューム、電源スイッチのみ。リモコンは無いけれども、座った状態で手を伸ばすことを考えれば操作性に不満を感じることもないかと思われます。それじゃ、接続して音を聞いてみるとしますか。


今まで聞いたことの無い音

 スピーカーは、付属の金具を取り付けることで自立可能。金具が前後に突き出すいわゆる「ペンギンスタイル」で、平らな面に置けば倒れる心配は全くありません。上部にも金具を取り付けられますが、こちらは「飾り」という認識のよう。けど、棚などに引っ掛けて設置する用途も考えられますな。安定感が心配だけれども。

 とりあえずは、座椅子の前に座ってリスニングしようと、TVの回りに設置してみる。L側は足場の悪いところに置いたけれども転倒の心配はナシ。金具を入れた奥行きでも62mm。「平面」という言葉の印象からすると少々厚く思えるけど、特に置き場所に困ることもないかと。

 スピーカーのターミナルにケーブルを差し込み、ネジで固定、RCAプラグをアンプに差し込みスピーカーの接続完了。接続自体は簡単です。あとはサブウーファをどこに置くかだけれども、座椅子正面にあるラック最下段の、プレイステーション 2の隣りで決定。とりあえずはTVのモニターアウト端子と接続して、レンタルしてきた映画ビデオ「ユリョン」を試聴。

 潜水艦モノの映画なので、探信音やスクリュー音など、音は結構重要なファクターになるはず。ボリュームはマスターを10時程度、サブウーファを12時程度に設定しております。では、電源ボタンをぽちっとな。

 電源をONにしてからの音が鳴るまでは一瞬で、体感的には0.1秒といったところ。タイムラグによるストレスは全くありません。出てきた音の第一印象は「想像していたよりはイイじゃん?」。特に高音域の表現力は印象的。でも、ちょっと違和感を感じます。

 しばらく聴いてみてその「違和感」を探ってみたところ、どうも背後にも音が抜けて、スピーカー背後で音が反響しているのが原因と感じました。試しにスピーカーを手にとって、前面/背面の音圧を聴き比べてみたら聴感上はほとんど同じ。どちらかといえば背面のほうが大きいくらい。

 ここでWebサイトの技術情報を再度見てみる。解説によると、「スピーカーの両面から音を発生」することによって、「どの場所でも明瞭な音声として聞こえます」ということらしい。ふむ、その効果の程は現われているけれども、微妙に反響音も耳に入っている、という印象の音なのよね。

 「微妙に遅れて同じ音が反響している」といった感触でしょうか。でも、低音域はそこそこマトモに響いてくる。試しにサブウーファボリュームを0まで絞ってみると、とたんに迫力の無い音に……。ということは、低音はサブウーファに頼りきりってことですな。この再生音域も違和感の一端をなしていたようです。むむ、やはり平面を実現する際にオミットしている部分もある訳ね。

 ま、とりあえず「ユリョン」の試聴を続けるべぇな。少々鼻につく部分があるものの、細部まで作りこんであって結構面白い映画だし。劇中での鳴りは、探信音など、単音系のシーンはかなりクリア。印象的な音を鳴らします。が、アラーム響く中でのパニックシーンなど、音が大きく重なるシーンでは音がごちゃついて分離感はイマイチ。爆発シーンなどでの低音の迫力は、サブウーファしか鳴ってないからやはり迫力がない。再生周波数帯の下限が70Hzからっすからねぇ。

パッケージ。想像していたより大きめのダンボール スピーカー、サブウーファ以外の同梱物。両端ステレオミニとRCA→ステレオミニケーブルが同梱している スピーカーケーブルの両端。RCAから2又へ出力される

スピーカー側面。パネル本体は1cm。金具は取り外し可能 スピーカー前面。サランネット部にユニットが配置されている スピーカー背面。バナナプラグ対応のターミナルを装備

ウーファ部前面。スイッチは電源、マスター/サブウーファボリュームのみ ウーファ部側面。10.5cmコーンウーファで低音域を補っている ウーファ部側面。端子は少ないが、ネジを多用したしっかりした作り

TV周辺への設置。スペースはVHSテープ程度で充分


再生ソースによっては印象的な音

 映画の試聴は素直に5.1chシステムを使ったほうがいいでしょう。次いで、ポータブルCDプレーヤーでの試聴をば。ソニー「D-E700」のライン端子にステレオミニで接続して聴いてみました。

 まずは最近よく聴くソースということで、DAFT PANKの「DISCOVERY」をリスニング。このグループの作品は全般的にエフェクトをかけたソースが多いので、機器の評価には少々適していないのだけれども、それでもキャビネット型スピーカーの音とは違った印象を受けます。

 「ONE MORE TIME」では、いつもより音が浮き上がった感覚。どうもサブウーファとスピーカー間で再生されない周波数帯が存在するような印象を受けました。しかし、高音域の再現性は印象的。「浮き上がった」感覚はこの高音域の鳴りが特に強調されているからかと思われます。が、それも小編成の音ならば、といったところ。6重奏程度で音がごちゃついてきます。むむ~、やはりソースを選ぶかも。

 続いて聴いたた「AERODYNAMIC」の冒頭。鐘の単音が10秒ほど続くのだけれど、この鐘の音色が印象的に響きます。キャビネット型スピーカーでは、キャビネットで反響していた音が、この平面スピーカーではほとんど感じられず、空に抜けていく鐘の音色が再現されているように感じました。おお、この音は今まで聴いたことないッス。

 しかし、メインの演奏に入ると濁り気味。ううむ、どうも10kHz以上の高音域の鳴りはそこそこよいが、ほかはどうにも、といった感触。分離感もイマイチなので、大編成のソースはダメそうっすね。テクノ系はは高低両方出てないと迫力がなくなるソースが多いので、このスピーカーには合わないッス。

 じゃあ、別のを聴いてみるか、と取り出したのがオムニバスのクラシックCD「The Best Classical Album in the World ...Ever!」。クラシックの名曲集ってヤツですな。

 え~、ピアノソロの「ジムノペティ」など、高音域楽器の小編成ならば、それなりに聴けます。けどそれなり。「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」辺りの重奏になってくると音色が濁ってきて、オーケストラは……という感じ。ぐは。でもテクノよりは聴きやすいな。

 印象ではバイオリンなどの弦楽器よりも、フルート辺りの管楽器の方がよく響いてました。オーケストラになると紛れちゃうけどね。


設置性はどんな感じ?

 ……音楽再生の音はこんなもんか。あとはPC使用時の設置性を試してみるべぇな。あわよくば5chスピーカーセット「FPS-213AC」でPC用の5.1ch環境を構築してみようと思っていたので(もういいや、という気分になってきましたが)、やはり設置性は気になるのですよ。

 ウチの場合は棚にPC本体、モニタなどを、その棚の前にデスクを置いてキーボード類などを設置。デスクは完璧に作業スペースになっているので、スピーカーなんぞを置くと邪魔になって仕方ないのです。

 これまでは出力端子に分配器をいれて、普段はヘッドフォン、気が向いたときにミニコンポ、という環境で使ってましたが、ミニコンポはリモコンをPCまで持ってくるのが面倒で、ほとんど使っていないという状況。なので「専用スピーカーを置くのもいいかな」と考えていたのであります。

 モニタ回りには多少スペースの余裕があるものの、モニタの位置はキーボード正面でないと使いにくいため、左側のスペースをほとんど確保できないのが悩みのタネ。が、このスピーカーならばモニタの前にも置ける薄型設計。6cm程度の奥行きなら、モニタを多少ずらすだけで確保できてしまいます。が、いざ置いてみると背が高いのでアクリル板の一部がモニタに干渉してますな……。

 「平面」という言葉にのみ注意が行っていたので気づきませんでしたが、このスピーカー、251mmと意外と背が高いです。この高さでモニタに干渉しちゃったのね。まあ、無理して使えないこともないけれど……。ここでスピーカー上部の「飾り金具」にご注目。これ使えば棚に引っ掛けられないだろうか?

 試してみたところ。結果はOK。ちょうど中心部に金具を通しているため重心もバッチリで、見た目もそれほど悪くないかと。ただ、金具が円柱型なので何か衝撃があるとすぐに落下しそう。ガムテープでテーピングしてみたけど、どうも固定性はイマイチ。ううむ、接着剤や強力な両面テープで完璧に固定しないと危ないですね。しかし、設置のバリエーションの1つにはなるとは思います。

 サブウーファはモニタの横に素直に設置。ボリューム類が正面についているのでアクセス性も高いです。で、肝心の音はというと、MP3の音も一応聴いてみましたが……やはり高音域がカットしてあるソース故、どうにも……。逆にいえば、MP3とCD-DAの音の音が明らかに違って聞こえるの珍しいスピーカー、ってことかと。それはそれでスゴイわ、コレ。

棚にスタンド。L側が若干モニタに干渉している 棚に引っ掛けて設置。接着しないと落ちてきそう


使える場面、使いにくい場面

 え~、当初想像していたよりはいい音です。少なくとも「K2 GENEK-P5」と比較になりません。が、キャビネット型スピーカーと比較して音がいいか? と問われればちょっと首をひねります。価格も14,800円と結構微妙なライン。オンキヨー、ヤマハあたりのPC用スピーカーで、このお値段を出せばそれなりの音が出る製品が買えそうな気がするしな~。

 しかし、背面にもほぼ同じ音圧で鳴る特性により、普通のスピーカーでは体験できない抜けの良さが味わえます。「抜けの良い響きを求めるソース」、例えば野外ライブとかならば結構気持ちよく聴けるかも。ただし、「高音域の小編成ソース」というくくりが付きますが……。そんなソースは手持ちにないなぁ。う~ん、「ハンドベルの野外演奏録音」なんてのはどうか? 存在するかどうかは知りません……。

 ただ、ラジカセやパッシブ型スピーカーよりは音色そのものを楽しめる音だと感じたので、あとは設置性の高さをどこまで評価できるかですな。スタンド状態でも奥行きは約6cm、棚に引っ掛けておくことも無理ではない。ウチのくそ狭いPC環境でも無理なく設置できたし、スイートスポットもなかなか広め。特に上下はどこで聞いてもほぼ同じ響きが味わえる。奥行きのあるスピーカーは置けないけれども、それなりの音を再生したい、というニーズには合っているように思います。14,800円。この価格が納得できるならばどうぞ。

□FPSのホームページ
http://www.fps.sonicwindow.co.jp/
□製品情報
http://www.fps.sonicwindow.co.jp/products/fps212asw.html

(2001年9月4日)

[fujiwa-y@impress.co.jp]


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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