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第13回:映画史に名を残す名作で見るアラビア |
怒涛のように発売されつづけるDVDタイトル。本当に購入価値のあるDVDはどれなのか? 「週刊 買っとけDVD!!」では、編集スタッフ各自が実際に購入したDVDタイトルを、思い入れたっぷりに紹介します。ご購入の参考にされるも良し、無駄遣いの反面教師とするも良し。「DVD発売日一覧」とともに、皆様のAVライフの一助となれば幸いです。 |
アラビアのロレンス【完全版】 デラックス・コレクターズ・エディション |
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(c) 1962,1989 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES, INC. ALL RIGHTS RESERVED. |
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価格:3,980円 発売日:2001年9月14日 品番:SDD-12058 仕様:片面2層 2枚組 収録時間:約227分(DISC1:約139分/DISC2:約88分) 画面サイズ:本編 シネスコサイズ(スクイーズ) 音声:本編 1.英語(ドルビーデジタル5.1ch) 2.英語(ドルビーデジタル2.0ch) 3.日本語(ドルビーデジタル5.1ch) 販売元:株式会社ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント |
■ とにかく長い長編映画
長い。とにかく長い。劇場で見たとしたら、途中で腰が痛くなること請け合いの長編大作である。公開時の上映時間はなんと3時間27分。厳密にマーケティングされる最近のハリウッド映画ではまず考えられない上映時間だ。そんな映画に慣らされた私は、こんなに長い映画を劇場で見る自信がない。DVD化に際しても、139分と88分に分けた2枚組み。なんと長い作品であることか。
しかし、「アラビアのロレンス」は映画史に名を残す「名作」。これまではカットにカットを繰り返されたTV放映しか見たことがなかったため、「一度は完全なものを見てみたい」という思いがあった。しかし、劇場で公開される機会に出会うこともなく、公開される機会に出会っても全編を見る根性はない(来年2月には3時間23分の「地獄の黙示録 特別完全版」が上映されるが、もちろん見に行くつもりはない)。
しかし、家で見るとなれば話は別。長い映画も「TVドラマ感覚でチャプターごとに区切って見ればいいかな?」という考えがある(邪道ではあるが)。ストーリーも、第1次大戦中にシリアなどで起こった「アラビア反乱」を題材にしたもので興味深いし、原作はなんと劇中の主人公ロレンス本人が書いたもの。
TV放映時はカットされていたこともあり、テンポよく見ることができたが、DVDでは【完全版】と銘打たれ、未公開シーンまで追加されたロングバージョン。とはいえ、最近はTVで放映されることもなく、ストーリーの記憶もかなり薄れていたため、思い切って購入してみることにした。「途中で挫折するのでは?」という一抹の不安を感じつつも。
■ デジタルマスターでクラシック映像も美しく
ソフトを見初めて、最初に感じたのが「クラシック」。制作が'62年とかなり昔のこともあり、当時のオリジナルフィルムの「独特の味」がある画質だと感じた。ありていに言えば彩度が低いのだ。とはいえ、TV放映された映像ともまた違う印象。特典映像の公開時の予告編を見てみたが、こちらとも明らかに違う。
少々調べてみると、DVD化されたソースには、デジタルリマスターが施されているのだとか。予告編の映像は、妙にコントラストが強くて不自然な上に、随所にフィルムの傷を感じてしまうのだが、本編の映像は自然なコントラストで、傷もなく、輪郭も非常にシャープ。圧縮によるノイズも、夜のシーンの一部でしか感じられない。'62年制作だから、ソースは39年前のもの。とてもそんなに古いものとは信じられない。
それでも彩度が低いのは気になるのだが、逆にここを調整してしまうとオリジナルの雰囲気を損ねかねないだけに、可能だとしてもあえて行なわなかったのだろう。その後、視聴を進めるうちに、この彩度でも気にならなくなってきたし、クラシックな雰囲気を十分に堪能することができた。
音声のほうも、現代ならではの「味付け」がされており。英語/日本後のドルビーデジタル5.1chの音声パートが追加されている。もちろん、オリジナルの2.0chもドルビーデジタルで収録。DISC1の本編は186分。よくもこれだけの音声パートを詰め込めたものだと感心する。自分の耳には圧縮によるロスを感じることもなかった。
5.1ch音声は、飛行機の飛行や砂嵐のシーンなど、随所で音が回っていた。しかし、セリフがセンターから聞こえるので、キャラの感情はよりわかりやすくなっているように感じた。吹き替えの音声は、TV放映時のキャストかどうか記憶が定かではないが、オリジナルの音声を聞いた後で聞くと、どうも違和感を感じてしまった。
■ 未公開シーンも満載。特典にはDVD-ROMパートも
このDVDは【完全版】。当然、未公開シーンも追加されている。別ディスクに「未公開映像集」と言う形で収録するソフトもあるが、「ロレンス」では完成後にカットされたものを追加しているため、本編に一体化している。中には音声パートが失われ、後日キャストを集めてアフレコを行なったシーンもあるというのだが、追加シーンと本編は一体化していてわからなかった。
パッケージに同梱されている冊子に示された未公開シーンで初めてわかるくらい。中には政治的理由からカットされたと思われるシーンもあり、相手が手を挙げて降伏の意思を表わしているにもかかわらず、射殺するシーンは確かにショッキング。
そして、DVD-ROMパートもあり。対応OSはWindows 95以降でMacintoshには対応していないところが残念。内容は、史実にもとづく写真と撮影風景を収録した「アラビアのロレンスアーカイブ」と、ロレンスの足跡などを中東のマップでたどる「ロレンスとの旅」を収録。ボリュームはそれほど多くはないが、本編のストーリーに登場する民族の分布や、当時の状況などの解説や写真なども収められ、アラブの歴史をほとんど知らない私の役に立った。
そのほかにもメイキングや、スピルバーグ監督の語る「ロレンス」、初公開時のドキュメント映像など、「歴史に残る名作」ならではの映像も収録。当時の雰囲気を多少なりとも感じることができた。
■ やはり長い本編
本編の視聴を続けて感じたことは、やはり「長い」。チャプターはDISC1/2の総数で、なんと56。最初の視聴では、DISC1の最後までたどり着くことは出来ず、チャプター25あたりで挫折となった。ストーリーは変化に富んで素直に面白い。が、「気軽に視聴」を続けるのはやはり2時間程度が限度。多くの映画が2時間程度にまとめられている理由が納得できる。
しかし、続きを再生するのにそれほどインターバルを取ることもなく、翌日には復帰。やはり、ストーリーの面白さに惹かれてしまう。そして、なにより目を奪われるのが砂漠の美しさ。黄色の砂漠と青い空との対比は、日本で目に出来る光景ではないため、純粋に見入ってしまう。砂丘、風紋、そして地平線。地平線から蜃気楼をともなって現われるラクダのシーンには幻想的な雰囲気がある。
ここで重要なのが彩度の低い映像。砂漠と空、砂と岩山の対比は、彩度が低いため一体感がある。水もなく、緑もなく、そして黄色と青の2色の色彩に染められた砂漠。その乾いた空気を十分に表わしていたと思う。
個人的に気になったのが、敵対するトルコが単なる「やられ役」に成り下がっていること。当時のトルコといえば、衰えたとはいえ飛行機、機関銃、野砲など近代兵器を備えたそれなりの軍事大国。独立のために戦うアラブを際立たせようという演出なのだろうが、当時トルコがドイツと同盟を結んでいたためにイギリスと交戦し、アラビアにロレンスが派遣されることになったことも描かれておらず、唐突感が強い。トルコ、頑張れ。
ともあれ、メインとなるアラビアの描写とロレンスの生き様には思わず入り込んでしまう。なかでも砂漠の美しさ、ストーリーの展開は秀逸。アラブ人が見るとおかしな点が満載という話も聞いたが(私が「パールハーバー」で感じた違和感に似ているのだろうか?)、「オリエンタリズム」を感じさせる映像になっていたと思う。
長い映画も、所々で休止を入れながら見れば楽だと実感した。映画全編も美しく、ストーリーも波乱に富んでいるので、休日には一時停止を交えながらも全編を通して見ることもあった。一時停止でトイレに立てるのもDVDならではの楽しみ方だろう。
しかし、上には上があるもので、合計7時間48分の「ヨーロッパの解放」なんてとんでもない映画(ソビエトの国策モノ。日本では3部構成で公開されたのだとか)もある。長い映画にはある程度の免疫ができた。機会があればこのような「超ロレンス級」にもチャレンジしてみたい。もちろん、視聴は家でだけれども。
□SPEのホームページ
http://www.spe.co.jp/
□製品紹介
http://www.spe.co.jp/video/dvd/200108/sdd-12058.html
(2001年11月2日)
[fujiwa-y@impress.co.jp]
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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp