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第12回:やっぱり肉は食べられません
ビン・ラディンも出演? 「ハンニバル」

 怒涛のように発売されつづけるDVDタイトル。本当に購入価値のあるDVDはどれなのか? 「週刊 買っとけDVD!!」では、編集スタッフ各自が実際に購入したDVDタイトルを、思い入れたっぷりに紹介します。ご購入の参考にされるも良し、無駄遣いの反面教師とするも良し。「DVD発売日一覧」とともに、皆様のAVライフの一助となれば幸いです。


■ 時流にそぐわない? 2枚組9,800円の豪華版

ハンニバル

(c)2000 UNIVERSAL STUDIOS
価格:9,800円
発売日:2001年10月25日
品番:TDV2-626D
仕様:片面2層2枚組
収録時間:約131分(本編)
画面サイズ:ビスタサイズ(スクイーズ)
字幕:英語、日本語
音声:1.英語(ドルビーデジタル5.1ch)
   2.英語(DTS)
   2.日本語(ドルビーデジタル5.1ch)
発売/販売:東宝

 今回のテーマは「ハンニバル」。いわずとしれた2000年公開ののヒット作で、原作単行本も日本で200万部発行のベストセラーになっている。前作で主演したジョディ・フォスターや監督のジョナサン・デミが降板するなど、公開前から何かと話題になった作品だ。公開後の評価は様々だが、10月25日の日本語版DVDの発売を待ち望んでいた方も多かったのでは。

 ところで、DVD「ハンニバル」は片面2層2枚組の9,800円で販売されている。日本映像ソフト協会によると、2000年上半期における洋画のセルDVDの平均販売単価は2,855円となり、ついに3,000円を切るまでになった。'99年上半期からの減少率は、15%と2ケタ台だ。

 下落の要因はご存知の通り、洋画系販社の販売する2,000円~4,000円の低価格シリーズ。2枚組においても3,800円、または3,980円で良作が販売されている。さらに、上記の集計にはまだないが、今年は20世紀FOXの2,500円シリーズをはじめ、モーニング娘。、浜崎あゆみといった音楽DVDビデオのシングルも好調なセールスを見せている。このため、2001年全体での販売単価は、さらに下落することが予想される。

 そんな中、2枚組とはいえ9,800円という強気の価格設定で登場した「ハンニバル」。確かにネームバリューもあり、どちらかといえば購買意欲の強いマニア層がターゲットとなるのは素人目にも想像が付く。果たして、DVD「ハンニバル」に、9,800円を払う価値があるのか?

 当然、私は買った。原作(もちろん日本語訳)もすばらしかったし、劇場にも2回足を運んだほど本作のツボにはまった1人。もともとリドリー・スコット監督の大ファンだし、彼と良く組むハンス・ジマーの音楽も好きだ。しかし、さすがに今時9,800円は痛い。発売前日の10月24日には一部店頭に並んでいたのだが、ここは慎重を期して、給料の出た10月25日に購入した。

 ついでに、金欠で買えずにいた数本も一緒に購入し、給与支給日に早くも計3万円強を消費してしまった。「ハンニバル」以外はすべて4,000円以下。もろもろの支払いを考えると、今月のソフト購入代はもうない。いやがおうにもハンニバル様に期待がかかる。

 実は東宝に確認したところ、初回に62,000セットを出荷したという。同社のDVD作品としては「エンド・オブ・デイズ」(6,000円)の7万セットに次ぐ数字となり、9,800円のハンニバルは、売り上げ金額で同社の歴代1位にほぼ確定。やっぱり「ハンニバル」はすごいのだ。



■ Disc1とDisc2、総計5時間54分

 販売パッケージはトールサイズの紙箱。本編ディスクと特典ディスクの2枚組で、ディスクは1枚ずつジュエルケースに入っていた。また、ディスク2枚を収める箱はビロード調の布張り仕上げ。さらに、タイトルは金文字。一見、さすが9,800円の豪華な装丁だが、背表紙は別のビロードを接着剤で貼り付けただけだし、中をあけると普通の厚紙で製作されていることがわかる。

 なお、このビロード張りの箱には、レクター博士のサインが入っている。これは、「このDVDは、レクター博士からあなたへのプレゼントです!!」という演出を狙ったものだろう。それにしてはちょっと貧相な仕上げだ。同じく東宝の「セブン」(こちらも2枚組9,800円)に比べると、さみしいものがある。また、レクター博士のサインが入ったテレカも封入されていた。度数は50。レクター博士もオリジナルテレカを配るとは、なかなか俗物である。

 本編は131分。リドリー・スコット監督のコメンタリートラックもある。「グラディエーター」のコメンタリーで寡黙だった彼だが、この作品では劇中の説明不足を補うためか、ひっきりなしにしゃべっていて楽しい。

 メニューはかなり洗練されていて使いやすい。最近、この手の大作はやたら複雑なものを用意することが多いのだが、本作はシンプルかつ多機能。本編のオープニングを意識した演出もスタイリッシュで見とれてしまう。ただし、メニューが始まるまでの「前振り映像」は、最近のソフトの例に漏れず1分ほど待たされてしまう。

 Disc2には映像特典を収録。75分のメイキングはプロモーション的なものではなく、かなり本格的なドキュメンタリー調のもので、個人的には大変勉強になった。また、特典のひとつ「マルチアングルで見る銃撃シーン」は、4台のカメラで撮ったシーケンスを切り替えながら楽しめるというもの。4台分をサムネイルで1画面に表示することもできる。ストーリーボードも収録されており、リドリー・スコット監督のコメントを聞けるほか、実際のシーンとの同時比較も可能。

 特典映像の目玉は「未公開シーン」だろう。原作にはあって劇場版では省かれたシーンを中心に、計14本が収められている。特に、別バージョンのエンディングは興味深い。撮影されなかった「第3のエンディング」についても触れられており、レクター博士とクラリスが結ばれてしまうという非現実な原作を、どうやってまとめようかと悩んだ監督の意中がしのばれる。ただし別盤だというのに、画質はひどい。

 そのほか、計560点の静止画、23タイプのTVスポット、64ページのブックレット(表紙含む)と、実に豪華。個人的には監督のコメンタリーと未公開映像がうれしいおまけとなった。


■ 画質・音質もグッド でも「セヴン」の方が……

 劇場で本作を見たときの感想は「暗いシーンが多いので、DVDではきついだろうな」というものだった。しかし、暗部ノイズは一部のシーンを除いてあまり気にならない。気になるのはジュリアン・ムーアがメインのシーンで、かなりの量子化ノイズがざわつく。逆に、アンソニー・ホプキンスのシーンではほとんど荒れを確認できない。おそらくオーサリング時に圧縮率を変えているのだろう。この作品があくまでもレクター博士を中心に描かれていることを感じさせる。

 輪郭描写も良好。「グラディエーター並みのピント」とはいかないものの、シャープで自然だ。しかし、髪の毛やヒゲにリンギングが出ることもあった。また、彩度、コントラストともに思ったより重めのようだが、プレーヤー側で対処できる範囲。むしろ、シーンごとに明暗の差が結構あるソースなので、機器の性能を見るのに好都合かと思う。

 音声はドルビーデジタル5.1chとDTS。日本語吹き替えもドルビーデジタル5.1chで収録されている。ドルビーデジタルは全体の収まりが良く、しっとりした感じ。DTSではクリアで荒々しく、豚の鳴き声が生々しかった。劇中のオペラはドルビーデジタルの方が聞きやすい。ただし、今回は深夜に視聴したため、Dレンジ圧縮は最大にかけているし、ボリュームも控え目。しっかり音の出せる環境なら、DTSも生きてくるだろう。

 全体的に画質・音質ともに上質で、さすが9,800円だけのことはあると感じた。とはいえ、同じ9,800円の「セヴン」では、もっとノイズが少なく滑らかで、音声もドルビーデジタルサラウンドEXとDTS-ESを収録している。その両フォーマットとPCMを聞き比べるというおまけコンテンツも面白かった。収録時間も違えばオーサリングにかけた時間と費用も違うのだろうが、個人的にはもう少し「ハンニバル」にも頑張って欲しかった。

 「セヴン」といえば、12月21日に本編のみ1枚組の「普及版」が発売される。価格は4,800円で品番はTDV-2603D。さらに、東宝では「ハンニバル」の普及版も考えており、同価格帯で発売する予定だという。発売時期はいまのところ未定となっている。


■ 大作なのにR-15指定 人食シーンはやっぱりキツかった

 一度劇場で見た作品をパッケージソフトで見直すと、また発見があって面白い。特にこの作品のように特典が充実していると、色々な角度から作品を検証できる。今回はハンニバルだけに、残虐シーンで感心することが多かった。

 もともと「エイリアン」でも「グラディエーター」でもあまりストレートに残虐シーンを映さないリドリー・スコットだが、本作ではあからさまではないものの、しっかり時間をとって描写している。例えば、メイスンとカルロたちが豚に食われるシーンでは、ゼラチンで作った人形を本当に食わせているという。メイキング中で解説されていたのだが、改めて見ると確かに「食ってる」。私はといえば、コンビニのねぎカルビ弁当を食べながらこの特典を見ていた。スプラッタものはまったく平気なのだが、不覚にも今回はトイレに駆け込んでしまった。

 また、原作中では色々な品種を掛け合わせて作ったという人食い豚も、カナダの牧場に実在する豚を使用したそうだ。ちゃんと調教師がついて「演技中のアンソニー・ホプキンスを襲わないよう、ほどほどに凶暴にした」という。また、例の「最後の晩餐」は、食われるレイ・リオッタのロボットとCG合成を組み合わせて実現。自分のロボットを見て複雑に笑うレイの映像がおかしい。

 そういえば、暗くて彩度の低いシーンでも血の赤だけは鮮明だった。ニョッコの下腹部からあふれる血。パッツイの腸とともに地面にしたたる血。まな板の上に置かれる血まみれの赤ん坊と、やけに血がはっきり印象に残っている。しかも、どの血も微妙に粘度や質感が異なっているように感じるほど生々しい。

 「ドラキュラ」や「スリーピーホロー」など、全体的に彩度が低い中で赤だけ鮮やかな作品は結構多い。DVDの「ハンニバル」を見て、「ディスプレイを買い換えるなら、赤の偏り具合をしっかりチェックした方がいいのかも」と感じた。

 ところで、パッツィがインターネットで、FBIの10大凶悪犯のページを見るシーンがある。今見ると、そこには「Usama Bin Laden」の名前と、このところテレビで良く見るターバン&ヒゲづらの写真が……。レクター博士もその中にいるのだが、さすがに位負けしてるかも。実際、ビン・ラディンにも賞金がついていたそうだが、レクター博士の300万ドルと、どっちが上だったのだろうか。

□東宝ビデオのホームページ
http://www.toho.co.jp/
□製品紹介
http://www.toho-a-park.com/video/new/hannibal/index.html
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http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010727/toho.htm

(2001年10月26日)

[orimoto@impress.co.jp]


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