気になるグッズを衝動買い


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第38回:ソフトDVDプレーヤーにもDTSの福音を!
ソフトDVDプレーヤー「PowerDVD XP Pro」


 AV製品はピンからキリまでいろいろありますが、いわゆるメインストリーム以外にはいろんなおもしろいアイテムがたくさんあります。ここでは思わず衝動買いしたくなるけど、冷静に考えるとどうかな~? と、気になる「モノ」に積極的なアタックを繰り広げていきます。

ソフトDVDプレーヤーはDTSデコードできない?

 PCのDVD再生環境といえば、ドルビーデジタルが当たり前。いやまあ、光デジタル出力でAVアンプなどに繋げばDTSにも対応している製品だってあるのですが、「ホームシアターPC」(HTPC)用途以外では、AVアンプに繋ぐこと自体がマレでありましょう。

 自分の現在の環境は、5.1ch対応サウンドカードに、デコーダなど積んでいないアクティブ5.1chスピーカーシステム「Insrire 5.1 5300」を繋いで楽しんでおります。それなりに。

 まあ、「所詮PC」という思いもあり、どうにも環境を整える気力が起こらないわけですね。というわけで、現在はオンボードサウンドと、デコーダ無しの5.1chスピーカーを使ったソフトDVDプレーヤーの再生で満足しております。が、ここで問題になるのがDTSの音声。けれども、これまでのソフトDVDプレーヤーの音声デコードはドルビーデジタルオンリーで、DTSには対応しておりませんでした。けどさぁ、例えサウンドチップやスピーカーで音質がオミットされるとわかっていても、ソフトDVDプレーヤーもDTSに対応しているほうがいいとは思いませんか? 自分はそう思います。

 しかし、そういった状況の中で、5月にカノープスから世界初となるソフトDTSデコーダ搭載の「WinDVD 3.0」が登場。さらに、ソフトDVDプレーヤー市場でWinDVDと双璧を成すサイバーリンクの「PowerDVD」も、DTSデコードに対応した「PowerDVD XP Pro」が9月に発表された。


機能満載のDVD再生ソフト新製品

同梱品一覧。パッケージの大きさに比べてシンプル
 PowerDVD XP Proの最大の特徴は、なんといっても音声機能が充実していること。そう、DTSがソフト上でデコードされるのであります。その他にも、ドルビープロロジック II、TruSurround XT、ドルビーヘッドフォンといった機能も搭載。おお、なんと豪華なことか。

 これまでは「WinDVD DH」をメインに使っていたけれども、操作感だってそれほど違うものではないでしょう。これは買うしかないっすよ。ということで、発売日の11月9日、やってきました池袋。いつもの量販店のソフトコーナーに行くと、ありましたよ「PowerDVD XP」。けど、ノーマル版のリモコン同梱セットとPro版のアップグレード/乗り換えパッケージしかないやね。ラインナップとしては、ノーマル版、Pro版の通常パッケージもあったはず。

 ふむ、一応自分は「WinDVD」のユーザーであるわけだから、乗り換え版で問題ございません。こちらのお値段は標準価格で5,800円、販売価格は4,780円。機能制限があるわけでないから、こちらを選択したほうがお得です。ということで、乗り換え版をゲットしてきました。

 パッケージには、マニュアル、案内の冊子、ビニールに入ったディスクを同梱。ディスクには「PowerDVD XP」だけでなく、ドルビーデジタルのトレーラーや、サンプル映像を収録。ほうほう、映画「メトロポリス」のクリップも入っているデスか。アレ、まだ見てないんだよねぇ。ちょっと得した気分。その他にもTV視聴/録画ソフト「PowerVCR TV Edition」と、映像編集ソフト「PowerDirector」の体験版も収録。まあ、こちらはプロモーションの一環、といったところでしょう。

 しかし、同梱品に比して箱のデカイこと。A4サイズの箱には、A5サイズのマニュアルと、ディスク(しかもプラケース無し)、案内の冊子しか入ってなかったから少し拍子抜けいたしました。まあ、店頭でのアピール度を考えると箱の大きさは有効だと思いますが。ともあれ、インストールするべぇな。


インストールは簡単。でもコマ落ちが……

表示ウィンドウ。デフォルトはビスタサイズで、ソースに合わせて変化する
 ディスクを挿入すると、自動的にブラウザが立ち上がり、内容やその他をご案内してくれます。インストールは、案内の手順に沿って「Setup.exe」を起動。するとインストーラーが立ち上がり、後はボタンをクリックして、シリアルを入力するだけでインストール完了。インストール後には再生環境のテストも行なえ、DVDドライブのDMA設定にチェックを入れることでDMAの設定もしてくれます。そうそう、DMAってデフォルトでは切られてるから設定するの忘れやすいんだよねぇ。案の定、DMAの設定を忘れていたのでチェックっと。テストも特に問題ないみたい。

 とりあえずインストールが終了し、再起動後にDMAが設定されていることをコントロールパネルで確認。よし、完璧。

 と思いながら再生してみたんですが、マイ自作マッシーンではガックンガックンコマ落ちします。う~ん、ビデオカードに付属していたATIのDVDプレーヤーや、「WinDVD」でもコマ落ちはあったけど、それよりもちょっとひどいかも。

 ちなみに、環境はビデオカードにATI「RADEON LE 32MB」、メモリは384MB、CPUはCeleron 800MHzを搭載しております。OSはWindows Meで、DVD-ROMドライブはサムスン製8倍速(型番は忘れた)。

 原因はなんだろ~? と、マニュアルのFAQを読んでみると、「ドライブのDMAを設定せよ」という旨の記述が。けど、DMAはインストール時にチェック入れたんだってば。再起動時にコンパネ開いて「DMA」にチェック入ってるのも確認したんだってばさ。

 う~ん、同期が合ってないのかなぁ? ちなみに、編集部のPentium 4マシンで試してみたところ(もちろん、試した後アンインストールしました)、フレーム落ちは全く起こりませんでした。むむ、CPUパワーの問題? いや、けれどもマニュアルにある動作環境は満たしているはず。それともメモリ同期がマズイのかなぁ。PC133とPC100混在させてるし。けど、ほかのアプリで問題になったこともないんだよなぁ。

 結局、思いつく原因を確認しようにも、大掛かりな作業(とカネ)が必要となるのでとりあえず断念。マザーのチップセットはTuarain対応なので、今度Celeron 1.2GHzにでもアップグレードしてみようと思います。ふう、まだまだチューニングが必要なようですな、このマッシーンは……。

 マイ自作マシンで画質についてうんぬんするのはアレなので、とりあえず、編集部で再生した時の印象をば。SXGAの解像度に引き上げると、輪郭もシャープで、コマ落ちもなし。映画ソース、ビデオソース共にシャープな映像が楽しめました。が、やはりPC用ディスプレイでは輝度が不足気味で、「U-571」などの暗いシーンが多いソースでは細部の確認が少々難しいです。ま、仕方ないことだけどね。


DTSデコードはどーよ?

 さて、ここからがキモの部分であります。そう、音声関連の機能。え~、まずは気になるDTSとドルビーデジタルの音声の違いでありますが……、はっきり言うと、あまり感じられませんでした。

 その原因の大部分を占めると想像できるのは、やはりサウンドチップとスピーカー。う~ん、どうにも力不足なんでしょうなぁ、特にサウンドチップが。ハムノイズは昔使っていたブツよりは少ないものの、それでも無視できるほど低減しておりません。ハムノイズが高域に差し掛かるくらいのイイ帯域で鳴ってるものだから、DTSの効果も薄れる薄れる。

 けれども、全く効果がないわけでもなく、同じシーンを聴き比べてみると確かに鮮鋭感が上がっている感じ。けれども、違いはわずか。ただ、ドルビーデジタルとDTSの違いはほとんど感じられなかったものの、DTSがデコードできることは確か。DVDメニューからの音声選択でDTSを選ぶと無音になっていた環境からは解放されました。ありがとう、「PowerDVD XP Pro」。

 ちなみに、DTSなどドルビーデジタル以外の「Pro」に搭載の音声機能を使用した再生時は、CPUスペックが多少上がります。98 SE/Me時での動作環境は、通常版がCeleron 433MHzなのに対し、Pro版がCeleron 500MHzから。推奨CPUはPentium 4で、パッケージには「ペンティアム4対応ソフト」のシールが貼られております。ムム、もしかしてあのコマ落ちは……。でも、DVD再生にそんなパワーはいらねぇべや、と想像してみますがどうか?


そのほかの音声機能も満載

 それはそれとして、5.1ch用のデコーダは、まだドルビープロロジック IIがございます。といっても、手持ちのDVDソフトにはドルビーサラウンド収録のものがないからなぁ。とりあえず、ステレオ収録のソフト「天空のエスカフローネ」で試してみました。

 サラウンドチャンネルから音が聞こえてきますが、サラウンド感は少々薄め。剣戟の音は結構印象的ながら、「包み困れる」感覚はほどんどありませんでした。う~ん、そうさねぇ、AVアンプで言えば「5chステレオ」モードの音、というところでしょうか。さすがに5.1ch収録されたソフトとは異なります。う~ん、ドルプロIIはやはりレンタルビデオやLDなどのドルサラ収録でこそ真価を発揮するものなのでしょうなぁ。

 さて、このソフトには2ch用バーチャルサラウンドシステムも搭載されております。通常版にはドルビーヘッドフォンを搭載し、Pro版はそれに加えて「TruSurround XT」を装備。それぞれの感覚はというと、う~ん、やはりそれなり、といった所でしょうか。

 ドルビーヘッドフォンは、「WinDVD DH」の感覚となんら変わるとことはありません。ステレオソースの頭内定位は解消されますが、サラウンドソースのサラウンド感はバイノーラル録音ソースに比べればイマイチ。設定を「大きな部屋」にすると、エコーが多くなり聞き取りづらくなるのは相変わらず。とはいえ、定位感が薄いというだけで、後ろからも音が聞こえてくる感覚もあります。昼間はDTS、ドルビーデジタルで聞いて、深夜の視聴にはドルビーヘッドフォン、という使い方がよろしいかと。

 もう1つの「TruSurround XT」は、2スピーカーでのバーチャルサラウンド機能。うん、これはなかなか頑張ってますよ。もちろん、バックチャンネルから音圧を感じることはなく、感覚としてはエコー量が少々多すぎるようにも思えるけど、ヘッドフォンで聞く音とはまた印象が違い、部屋に抜けていくため、「広がった」印象を受けます。サラウンドチャンネルも耳の横で鳴っている感覚で、2chオンリーのユーザーであればなかなかオススメの機能。けど、自分は5.1ch環境を持ってるから必要ないです。

 音声関連の機能は概ね満足なのだけれども、1点だけ不満といえば不満な点がございます。それはDVD再生中に機能の変更が出来ないこと。いろいろな効果を試してみたい、と思っても、一度停止しないことには設定をいじれないのであります。興をそがれるでありますよ。なんとか改善できないもんですかね? アップデートとかで。

ドルビーヘッドフォン設定画面 TruSurround XT設定画面


操作関連の機能も多彩。リモコンがあればもっと便利?

 ソフトDVDプレーヤーといえば、操作関連の機能も重要。インターフェイスは、これまで使っていた「WinDVD」と似ていて、それほど違和感を感じることもありませんでした。

 操作の基本は、多くのソフトDVDプレーヤーと同じく、画面に表示されるコントローラーを使用。コントロール部は、中央に再生ボタンを置き、その回りに停止/一時停止/スキップ/早送り/巻戻しなどの操作ボタンを配したオーソドックスな構成。アイコンもわかりやすく、特に操作に戸惑うこともありませんでした。

 フルスクリーンモードへの移行も、ウィンドウをダブルクリックするだけ。非常に簡単。フルスクリーンに移行するとコントローラが自動的に隠されるけれども、シングルクリックすることで表示され、また隠したいときも同じくシングルクリック。視聴の際に邪魔にならず、操作したいときもすぐに現われてくれてコントローラでの操作性は良好。スキップのスピードもデッキ型のDVDプレーヤーと同等で、ストレスはありません(マイ自作マッシーンでのコマ落ちは除くとして)。

 常にコントローラを表示させたい、けれども大きなコントローラは邪魔。という場合でも、基本操作だけに特化したミニコントローラ「シンプルモード」に切り替えることも可能。うん、基本操作に関しては満足でございます。が、やはりアスペクト比4:3ソースの再生時にはコントローラは見苦しいですな。リモコンならコントローラ表示なしでも操作できるだろうから、ゲットしてみたいと思いました。こちらはサイバーリンクの直販サイトで購入することが可能。お値段も2,300円と、なかなかお買い得であります。

 意外に便利だったのが、強制パンスキャン機能。上下に黒幕の出るシネスコ、ビスタソースを、4:3比率に強制的にパンスキャンする機能なのですが、やはり画面全体で見ると迫力が違います。我が家の場合、PC用17インチCRTが最も大きなディスプレイとなっているので、大きな画面一杯に広がる迫力も堪能できました。まあ、拡大画像の上にドットピッチの狭いPC用ディスプレイ故、多少荒れた印象を感じてしまうのではありますが。

 そのほかにもブックマーク機能、ファイル再生機能などもありますが、自分はあまり使いませんでした。そのなかでも目玉となるのはVR(ビデオレコーディング)フォーマットでも再生できることでしょう。これでDVD-RAM/RWユーザーも安心。でも、自分はDVD-RAMもDVD-RWも持ってないから関係ないやぁね。けっ。

フルスクリーン表示時のコントローラ ウィンドウ時の「シンプルモード」コントローラ パンスキャンの設定はマウスの右クリックメニューから


音声機能も画質も満足。コマ落ちさえなければ……

 え~、少々疎外感を感じたものの、自分が利用できないものがあるほど機能は多彩で、ソフトDVDプレーヤーとしての操作性もなかなか良好。なんといっても「DTSがデコードできる」という安心感が得られるのが大きいです。

 「WinDVD」からの移行だったので、多少の違和感を感じるかと思ったけれども、インターフェイスも似ていて、違和感はほとんどなし。フルスクリーン時にはコントローラが邪魔に思えるので、リモコンはゲットしておいても損はないと思います。「Pro」と同等の機能になる「SoundPack」も用意されているので、環境が整っていない場合は、とりあえず「リモコン付き通常版」を手に入れて、サウンドカードなどを追加してから「Pro」にアップグレードするのも選択肢のひとつかと。

 うん、選択肢の幅もあるし、(編集部のPentium 4マシンでは)画質も良好。なによりも音声関連の機能がAVアンプ並みに揃っているのがうれしいです。ドルビーヘッドフォン搭載のAVアンプは少ないから、機能としてはAVアンプよりも上と言える部分もあります。

 「PCで見るDVD」環境としては、これ以上のものは現時点ではないと思います。DTSがサポートされたことで、ある意味DVD再生環境は完成されたと言ってもよろしいのでは。まあ、DTS-ESなど、まだサポートしていないフォーマットもございますが、そういう環境を求める方は素直に対応AVアンプをお求めになるのがよろしいかと。うん、自分としては満足デスよ、このソフト。

 さて、残る問題はだた1つ。マイ自作マッシーンの「コマ落ち問題」さえ解決できれば完璧なのだけれども……。原因なんなの? 泣き入りますよ、ホント。

□サイバーリンクのホームページ
http://www.cli.co.jp/
□製品情報
http://www2.cli.co.jp/products/powerdvd/xp/
□関連記事
【9月11日】サイバーリンク、DVDプレーヤーソフト「PowerDVD XP Pro」
―ドルビープロロジック II、TrueSurround XTにも対応
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010911/cyber.htm
【9月11日】カノープス、世界初のソフトdtsデコーダを搭載した「WinDVD 3.0」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010418/canopus.htm

(2001年11月13日)

[fujiwa-y@impress.co.jp]


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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