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第41回:管理機能充実のハイブリッドレコーダ
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■ やっぱり便利なHDD録画
一度贅沢を知ってしまうともう戻れないというのは本当で、我が家でもテレビ録画予約システムをパソコンベースに変えたところ、もう誰もテープデッキには見向きもしなくなった。やはりビデオレコーダーは、巻き戻しなどの手間が必要なテープベースよりも、ランダムアクセス可能なディスクベースのほうが圧倒的に便利。
先日のPanasonicのHDDとDVD-RAM/Rのハイブリッドレコーダ「DMR-HS1」のレビューをお送りしたばかりだが、今回は同じくHDDとDVD-RAM/R搭載の東芝「RD-X1」をお借りすることができたので、試してみたい。
「RD-X1」は、今年発売になった「RD-2000」の後継機と見ることができる。RD-2000は30GB HDDとDVD-RAMドライブを搭載したレコーダで、MPEG-2のビットレートがマニュアルで細かく設定できるなど、マニアに人気のあった製品だ。ただこのRD-2000は問題の多い製品で、本来ならば2000年発売の予定が4ヶ月遅れたばかりか、二度にわたる無償交換・点検・修理を行なうといった事態になっている。
そのあたりの事情を知っている人なら、今回のRD-X1の発売が12月1日から延期になったときに「またか」と思ったことだろう。この間すでにライバル機であるPanasonic DMR-HS1が順調にセールスを伸ばしていることもあり、ここで大幅な遅れを取るようであればまずいことになったかもしれない。しかし今回は結果的に20日程度の遅れで済んだようだ。
RD-X1の特徴としては、以下の点が挙げられる。
製品クオリティの面で既存ユーザーからも厳しい目で見られるであろうこの新製品、さっそく触ってみよう。なお今回お借りしたモデルは製品版一歩手前の試作機であるので、仕様その他は変更されている可能性もあることだけお断わりしておく。
■ 高級感あふれる外観
まずいつものように外観からチェック。基本的にデザイン面では、本体、リモコンともに前モデルのRD-2000とほとんど変わっていない。シャンパンゴールドの筐体に、ボタンを押せば自動開閉するプロントパネルドアといったギミックが高級感を演出している。ビデオデッキというよりも、オーディオ機器のような感じだ。
また正面のディスプレイは、レベルメーターやメディア表示部の上に画質や時間表示がオーバーレイのような形で二層表示されるのがユニークだ。これなら表示エリアをうまく節約できる。
写真よりも現物はもう少し色の濃いゴールド仕上げ | 表示に立体感を持たせたユニークなディスプレイ |
入出力端子は結構多く、UHF/VHFとBSアンテナ入力の他に、ライン入力4系統、出力4系統ある。ただこのうち全面パネルにある入出力端子は、入力にするか出力にするかを切り替えて使用するため、実質的には入出力3.5系統という感じである。
背面の入出力系統はかなり多い | 正面コネクタは入出力を切り替えで使用する |
電源を入れると、若干ファン音が発生する。またDVD-RAMを入れておくと、メディアから発する回転音がしばらく聞こえる。そのうち回転が止まるのだが、Panasonic DMR-HS1が動いているのに気がつかないほど無音であったのに比較すると、ちょっと動作音の大きさは気になった。
リモコンは機能の数に比較するとボタン数が少なく、効率的にまとめられている。基本動作を「録るナビ」、「編集ナビ」、「見るナビ」の3モードに集約させ、GUIコントロールはジョイスティックとその周りのホイールコントローラで行なう。何かの作業中に「クイック」ボタンを押せば、その時々に応じた必要な機能がポップアップする。この操作感さえ掴めば、あまりマニュアルを見なくてもだいたいの操作はできるようになる。
リモコンの裏を返せばGコード予約機能がある。なかなか考えた作りだが、裏面の電池蓋をスライドさせて操作するというのはちょっと使いにくい。何しろリモコンを裏向きに握って蓋を開ける際に、表のボタンを押してしまわないよう気を遣わなくてはならないのだ。また所詮電池蓋なだけに、そう簡単に開かないように固く作られており、余計開けにくいのである。ここは背面もフリップ式の蓋にして欲しかった。
多機能の割にはボタンが整理されているリモコン | リモコン背面にはGコード予約用のボタンがある |
■ 録画機能を試す
RD-X1の場合はHDDが80GBもあるということで、基本的には数週間分をHDDに録り貯めておき、ある程度まとまったら編集してDVD-RAMやRに保存するといった使い方になるだろう。
映像のビットレートは、プリセットとしてSPモード、LPモード、Justモードの他にマニュアルモードがある。SPモードが4.4Mbps、LPモードが2.0MbpsのVBR。前モデルのRD-2000がSPモードで4.6Mbps、LPモードで2.2Mbpsであったのに比べると、若干低めに設定されているようだ。JustモードとはDVD系記録メディアの残量にフィットするよう、ビットレートを調整するモードである。さらに、マニュアル設定では2.0Mbps~9.2Mbpsまで0.2Mbpsステップでビットレートを設定することができる。
またオーディオには3つの記録モードがある。DD1がドルビーデジタル2chの192kbps、DD2が同384kbps、それに加えてリニアPCMだ。ただしオーディオでリニアPCMが使えるのは、映像のビットレートが8.0Mbpsまで。それ以上に設定しようとすると自動的にオーディオはドルビーデジタルに設定変更される。
画質を見ていこう。LPモードの2.2Mbpsぐらいだと一般的にはもうボロボロのような印象があるが、解像度が352×480ピクセルというHalfD1サイズで記録されるせいか、思ったほど悪くない。輪郭の甘さや画面のざらつきなどがあるものの、見てすぐ消すような番組の録画には使えるだろう。
SPモードは、おそらく多くの人が使うことだろう。4.7GBメディアで約2時間ぐらいと、DVD系に納めるのであれば容量と画質のバランスがいいところだ。画質もまずまずで、細かいざらつきノイズは少ない。エンコード性能はかなりいいようだ。
それに比較すると、最高画質である9.2Mbpsさすがにすばらしいものがある。テレビ録画してみると、ほとんどオリジナルの放送画質と遜色ない画質が得られている。
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MPEG-2の再生環境はビデオカードや、ドライバ、OS、再生ソフトによって異なるため、掲載したMPEG-2画像の再生の保証はいたしかねます。また、編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。 |
次に録画に関するもう1つの機能、オーディオのリニアPCM記録を試して見よう。ここではドルビーデジタルによる384kbpsとリニアPCMの音質を比較してみた。通常のテレビに繋いでみたところ、テレビ付属のスピーカー程度では、その差はほとんどわからない。そこでヘッドホンを繋いで聞いてみると、ドルビーデジタルの方には明らかにヒスノイズのようなシャー音が確認できた。同じ番組中をリニアPCMで録画したものを聴くと、このノイズは全く聞こえない。おそらく圧縮によるノイズと思われる。
多くの人がご存じのように、ドルビーといえばオーディオのノイズリダクションシステムで一躍有名になったところから、「ドルビー」と聞けば何となく「音がいい」みたいな刷り込みがあるのではないだろうか。今回のサンプルソースはただのトーク番組だが、それでもこれだけ差が出るということは、クラシック音楽などの放送録画では耐えられないだろう。これはリニアPCMがいいというよりも、思ったよりドルビーデジタルって良くないというのが体感できた。いままでは気楽に映像が録れるというところを主目的にしてきた感があるビデオレコーダーだが、確かに音にこだわるならリニアPCM記録は必須機能のように思える。
■ 編集・保存機能を試す
次に録った映像を保存する行程を見てみよう。編集を行なうには、「編集ナビ」モードを使用する。どうでもいいことかもしれないが、なぜかこの「編集ナビ」画面出力には、マクロビジョンコピーガードが一緒に出力されている……えー、ま、試作機ですから。
マクロビジョンの具体的な形を見たことがない方もいらっしゃると思うので、ついでといってはナンだが波形モニタに現われるコピーガード信号をお見せしよう(以下の右の写真)。
これは映像信号のVブランキングのユーザーズビット部分に、0IREから120IREまでの連続的に変化する信号を加えることで、意図的にAGC(Auto Gain Control)を誤動作させて記録できないようにするという仕組みだ。
いやまぁ、原理的なことはともかく、問題はだ、なんで編集作業画面そのものにマクロビジョンを乗せなければならなかったのかが、よくわからない。コンテンツそのものに乗せるのならまだわかるのだが、ただのGUI画面である。これをコピーしたい人はいないと思うのだが。まあ一応意向を尊重して、プロテクトかけている画像は東芝提供のサンプル画像とさせていただく。
編集ナビサンプル画面。出力にはなぜかマクロビジョンが…… | 図中の赤い丸の部分がマクロビジョン信号 |
CMカットの段取りとしては、まず録画映像の中でCM部分と番組部分を分けるために、チャプターを付ける。映像の操作は、リモコン横のレバーを使って早送りし、カット替わりを探す際にはジョグダイアルでコマ単位を操作する。コントローラの位置に慣れてしまえば、この2つの操作で効率的に作業できるだろう。
切り分けた不要部分は、チャプター画面でその都度削除するか、後でまとめて一括削除を行なってもいい。1つずつ削除を実行すると約30秒程度、2時間番組のCM一括削除(10カ所)では、実行完了までに6分程度かかる。SPモードで録画した1時間15分ほどの番組をDVD-RAMに高速ダビングしてみたところ、約25分で終了した。同じソースをDVD-Rに焼いてみたところ、約47分であった。まあほぼ2倍の違いがでているものと考えていいだろう。
できあがったDVD-RをDVDプレーヤーで再生してみたところ、いわゆるメニュー画面なしで最初のコンテンツが再生されるディスクができあがる。複数のコンテンツを登録し、映像のビットレートやオーディオフォーマットが混在している状態でも、そのまま焼けてしまうところはなかなか面白い。
録画履歴は3,000件保存できるという |
録画した番組の詳細は、ライブラリに保存される。HDDに記録したものはもちろん、DVD-RAMではフォーマットする際にディスク番号を入力することで、ディスクごとのデータも管理することができる。メディアを入れなくてもディスクの残量がわかるので便利だ。
また東芝では、パソコンを使ってタイトルを入力したり、ライブラリ情報を印刷したりできる「東芝RDシリーズ・ライブラリアン」の配布を予定している。ただデータのやりとりには、パソコン側にDVD-RAMが読める環境が必要になる。
■ 総論
このRD-X1は、録って貯めて保存して管理する、といった一連の流れを面倒を見てくれる設計になっているため、番組ごとにまとめて保存したいという人にはたまらないだろう。機能が多いので、製品の全体像を把握するまでに時間がかかるが、家電としてのわかりやすさを追求するよりも、こだわりに対してどう応えていくかといったところを、製品化の中心に置いたような作りとなっているように感じた。なるほど、これはマニアに受けるはずだ。
全体的な動作レスポンスとして、電源投入後やディスク挿入後は、1分間ほどなんの操作もできずにただひたすら待たされるというのはちょっといただけない。一応放送中の番組が出力されるのだが、その間チャンネル変更すらできないのだ。また何かの作業後も必ずなんらかの「待ち」が入る。システムが安定するまではユーザーに何もさせたくないという気持ちはわからないでもないが、きびきび動くという感じがなくなってしまっているのは残念だ。
HDDが認識できなくなった。フォーマットも試みたが、できなかった |
ユーザーの立場としてもっとも気になるのが、動作の安定性であろう。今回のRD-X1を3日ばかり普通に使ってみたが、最終的には電源投入時に「ディスクが認識できません。何度か電源をいれなおしてみてください。(HDD)」というエラーが出るようになり、それ以降復旧できなくなってしまった……し、試作機ですから!(涙) 製品版ではきっと直っているはず……。もちろん、東芝の方も「製品版ではそんなことはないです」といっておられました。
東芝にはちょっと方向性の違った製品として、VHSとHDDのハイブリッド機「A-F40G1」もある。こちらの方は電車の車内広告などでも広く展開しており、一般ユーザーはこれで押さえ、マニア向けにはRD-X1という作戦なのかもしれない。
□東芝のホームページ
http://www.toshiba.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.toshiba.co.jp/about/press/2001_11/pr_j1502.htm
□製品情報
http://www3.toshiba.co.jp/dvd/j/recorder/rdx1/rdx1.htm
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【10月30日】ピクセラ、ハードウェアエンコーダ/TVチューナ搭載カード
―iEPG対応、DVD-RAMへのVR書き出しも可能
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20011030/pixela.htm
【11月15日】「RD-X1」の主要GUI画面
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http://av.watch.impress.co.jp/docs/20011130/toshiba.htm
【11月30日】東芝、HDD&DVD-RAM/Rレコーダ「RD-X1」の新発売日は20日
-予約待ちは、もう少し早く手元に届く予定
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20011210/toshiba.htm
(2001年12月26日)
= 小寺信良 = | 無類のハードウエア好きにしてスイッチ・ボタン・キーボードの類を見たら必ず押してみないと気が済まない男。こいつを軍の自動報復システムの前に座らせると世界中がかなりマズいことに。普段はAVソースを制作する側のビデオクリエーター。今日もまた究極のタッチレスポンスを求めて西へ東へ。 |
[Reported by 小寺信良]
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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp