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第21回:“目で演技する”猿たちにびっくり

鬼才の新解釈はいかに?「PLANET OF THE APES 猿の惑星」

 怒涛のように発売されつづけるDVDタイトル。本当に購入価値のあるDVDはどれなのか? 「週刊 買っとけDVD!!」では、編集スタッフ各自が実際に購入したDVDタイトルを、思い入れたっぷりに紹介します。ご購入の参考にされるも良し、無駄遣いの反面教師とするも良し。「DVD発売日一覧」とともに、皆様のAVライフの一助となれば幸いです。


■ いわくつきの話題作、早くもDVD化

PLANET OF THE APES 猿の惑星
初回出荷限定版
価格:3,980円
発売日:2001年12月14日
品番:FXBF-22080
仕様:片面2層(本編) + 片面2層(特典)
収録時間:約120分(本編)
画面サイズ:シネマスコープ(スクイーズ)
字幕:日本語字幕
音声:1.英語(DTS)
   2.英語(ドルビーデジタル5.1ch)
   3.日本語(ドルビーデジタル5.1ch)
発・販売元:20世紀フォックスホームエンター
      テイメントジャパン株式会社

 今回取り上げるのは、2001年夏公開の「PLANET OF THE APES 猿の惑星」。SF映画の名作「猿の惑星」('68年)を、「バットマン」、「シザーハンズ」、「スリーピー・ホロウズ」などの個性的な作風で知られるティム・バートン監督が「リ・イマジネーション」(再創造)したという作品だ。

 オリジナルの「猿の惑星」は、4本の続編が製作されたほどのSF映画の金字塔。一方、ティム・バートンは、マニア好みの設定や映像を見事に具現化してきた鬼才。そのほか、マルチ俳優のティム・ロスが猿の将軍を演じ、特殊効果にILMが名を連ねるなど、映画ファンにとっては期待するなという方が難しいという作品。

 当然、公開当初の話題は、オリジナルとの比較やバートンらしい作中の仕掛けに集中した。なかでも、見る人によって受け取り方が複数派生しそうなラストシーンについては、バートンマニアの意見が紛糾。ネタばらしになるのでここでは詳しく触れないが、私も居酒屋で友人と夜遅くまで語り合った覚えがある。

 というのも、ラストシーンにどうも腑に落ちない箇所があるのだ(既に見た方ならおわかりかと思う)。公開作をもとにしたノベライズも読んで見たが、こちらは異なる結末になっていた。ここに具体的な内容を書けないのが何とももどかしいが、とにかく私にとって、ティム・バートン版猿の惑星こそ、「もう一度見たい」、「早くDVD化してくれ」と願った1本なのは確かだ。

 公開3カ月後という早さでDVD化された本作は、特典ディスク付きの2枚組み、価格は3,800円とかなり廉価な部類に入る。ただし、特典ディスクが付くのは初回出荷分のみ。私の場合、特典中にラストシーンに触れたコンテンツがあるかもしれないと考え、さっそく発売日(12月14日)に入手した。とりあえずはラストシーンだけをじっくりと鑑賞し、その後、帰省中にぼちぼちと本編および特典ディスクを視聴した。



■ ティム・ロスの見事な猿ぶりに1票

 2029年、航行中の宇宙船オベロン号は、磁気嵐と遭遇する。調査のため、訓練を施したチンパンジーをスペースポッドで送り出すも、磁気嵐のためか追尾不可能に。宇宙飛行士のレオが単身後を追うが、レオのスペースポッドも電磁嵐の作り出す謎の空間にとらわれ異常をきたす。近くの惑星に不時着したレオの前に現われたのは、人間狩りを行なう武装した猿軍団だった――。

 「猿に支配された異世界に主人公が放り込まれる」というストーリーの骨子は、オリジナルとほぼ同じだ。しかしその後の展開はかなり異なる。最大の違いは、哲学的ともいえたオリジナルに比べ、本作が娯楽SFアクションに徹していること。オリジナルを見た方でも新鮮な気分で視聴できるだろう。加えて、本作独自の魅力として3つの要素が挙げられる。それは、1に衣装や街の凝ったデザインに見られる「いかにも」なバートンワールド、2に非常にリアルな猿のメイク、そして3、猿に扮した俳優陣の見事な演技にある。

 特に、ティム・ロス演じるチンパンジーの将軍は一見の価値ありだ。「海の上のピアニスト」、「パルプ・フィクション」、「フォー・ルームス」など、善悪含めて実に多彩な役柄を演じてきたティム・ロス。しかし、猿をやらしてもここまですごいとは。猿役としては当代随一といっていいだろう。どれくらいすごいかというと、変な話、人が演じてるということを忘れてしまうほどの熱演なのだ。腕の動かし方から歩き方、さらにはちょっとした細かい仕草まで、どこをとっても人間とは思えない。もちろん、そのリアルさを支えているのが最先端のメイキャップ技術にあることは間違いない。

 そう、本作のメイキャップ技術は、まったくもって驚嘆に値する。この部分は間違いなくオリジナルを超えているだろう。特殊メイクを担当したリック・ベイカーは、「“猿の惑星”のメイクを手がけるのは、メイキャップアーティストの長年の夢だ」という。彼はこの作品のため、表情で演技できるほど柔軟なメイクを考案し、ティム・バートンとともに新たなコンセプトの猿人を作り出した。複雑で精巧なメイクを顔に施すため、俳優は朝4時ごろから作業に入り、毎日3時間ほどのメイクを行なったという。



■ 画質はおおむね良好、DTS音声もあり

 本編ディスクの画質は上の中といったところ。バートンらしく暗いシーンが展開されるが、特にノイズが激しく乗ることもなく、解像感も高い部類だと感じた。ビットレートをリアルタイム表示するパイオニアのポータブルDVDプレーヤー「PDV-LC10」で確認したところ、平均ビットレートは8Mbps後半から9Mbps前半といったところ。9.8Mbpsへも頻繁に達した。7Mbps以下に落ちることはまずない。

 もっとも、ストーリー前半はかなり暗いシーンが続き、場合によっては、表示・再生機器の画質調節をこの作品のためにやり直す羽目になるかも知れない。

 私の場合、日立の32V型プラズマテレビ「W32-PD2100」で視聴した。その際、白ピークの低さと黒浮きをごまかすため、明るさと黒レベルをかなり大きく初期設定から動かしている。具体的には、明るさは+26、黒レベルは-19とした。オートコントラストはON。このままでは異様にローコントラストなので、部屋のカーテンをぴっちりと閉めることに。これで、黒浮き、白つぶれを気にすることなく、適度なコントラストで視聴できた。プレーヤーとはRCAのコンポーネントで接続し、解像感の高さを活かすため、LTI(輝度信号の鮮鋭感)は弱に設定した(途中でOFFに変更)。

 音声は、英語がDTSとドルビーデジタル5.1ch、日本語吹き替えがドルビーデジタル5.1chと豪華。実はこの作品、猿を演じる俳優全員が大きな入れ歯をしているため、セリフのかなりがこもっている。「猿がしゃべるとこんな風になるのだろう」と、納得して見るしかない。また、日本語吹き替えでの猿のセリフも、オリジナル同様にこもっている。

 効果音としては、強化ガラスをたたく音がリアルでびっくりした。2chではそれほどでもないが、5.1chだと本当にすぐ側でガラスをたたいているような音がする。どちらかというとDTSの方がよりそれっぽいが、ドルビーデジタルでも十分リアルだった。5.1ch収録による日本語吹き替えも違和感ない。



■ 特典は2時間30分以上

 初回出荷のみ付属するという特典ディスクの内容は、「メイキング・オブ・猿の惑星」が中心となる。これは、ゴリラ役のマイケル・クラーク・ダンカンがホストを務める作品で、彼のメイクと同時進行で製作風景をつづったもの。同じく特典ディスクに収められている「猿人類アカデミー」、「猿への変身」、「猿の衣装」などで使われている映像も多く、これらのダイジェストと思われる。こうしたメイキング映像は計6本が収録されているが、注目すべきはやはり「猿への変身」だろう。最先端のメイク技術が、存分に披露される。

 「ILMによるSFXの舞台裏」は、ミニチュアやCGを駆使した特殊効果の裏側を体験できるもので、この手のSFものDVDの特典としては欠かせない。個人的にも毎回期待しているコンテンツだが、本作ではいかんせん強烈な猿のメイクの前にかすみがち。収録時間も短か目だ。

 そのほか、未公開シーン(5編)、予告編(2編)、TVスポット(6編)、サウンドトラック、ミュージックビデオなどが収録されている。また、スクリーンテストも収められている。なぜか画面を4分割し、一度に4つのテストが同時に始まるというもので、テストごとに音声トラックの切り替えが可能だ。しかし、できればテスト1つづつをじっくり見たいのだが……。

 特典ディスク全体の収録時間は2時間30分を超える。さすが、2枚に分けただけあって画質も良好。圧縮がきつくて見るに耐えない低画質のメイキングも見受けられる中、本作については十分なクオリティが確保されている。



■ 全体的に満足、しかし結局ラストは謎のまま?

 ティム・ロスの演技、リアルなメイキャップ、なかなかの高画質と、全体的に満足なパッケージだった。特典も見ごたえがあり、3,800円は十分に廉価だと感じる。何よりも問題のラストシーンをもう一度見られたということで、個人的には「買って良かった」というのが感想。また、本編中にティム・バートンの音声解説はなく、彼が登場するのは特典ディスクのみ。重度のバートンファンは通常版ではなく、初回出荷版を買うべきだろう。また、メイキャップ技術に興味のある方にもすすめたい。

 最後に、問題のラストシーンについて。夏以来「DVDを買ってじっくり見れば、この謎が解けるかも」と期待していたのだが、少し考えが甘かったようだ。何度見てもやっぱり辻褄が合わないような気がする。特典中にもラストシーンを解説した箇所は特にない。まあ、あまり大げさに考えず、原作小説へのオマージュ、あるいは冗談だと思ってあきらめることにした。後はより熱心なバートンファンの方々におまかせしよう。

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前回の「海と毒薬 デラックス版」のアンケート結果
総投票数300票
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□20世紀フォックスのホームページ
http://www.foxjapan.com/
□「PLANET OF THE APES 猿の惑星」の製品情報
http://www.foxjapan.com/dvd-video/cgibin/UserSearch/index_dvd.cgi?jan=4988142091321

(2002年1月11日)

[orimoto@impress.co.jp]


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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