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第22回:パワフルオヤジ、宇宙に行く

クリント・イーストウッド監督作「スペースカウボーイ」

 怒涛のように発売されつづけるDVDタイトル。本当に購入価値のあるDVDはどれなのか? 「週刊 買っとけDVD!!」では、編集スタッフ各自が実際に購入したDVDタイトルを、思い入れたっぷりに紹介します。ご購入の参考にされるも良し、無駄遣いの反面教師とするも良し。「DVD発売日一覧」とともに、皆様のAVライフの一助となれば幸いです。


■ クリント・イーストウッドが「オヤジ」を描く

スペースカウボーイ

(C)2000 Vilage Roadshow Films (BVI) Limited. All Rights Reserved
価格:2,500円
発売日:2001年5月25日
品番:DL-18722
仕様:片面2層
収録時間:約130分(本編)
画面サイズ:シネマスコープ(スクイーズ)
字幕:日本語字幕、英語字幕
音声:英語(ドルビーデジタル5.1ch)
    日本語(ドルビーデジタル5.1ch)
発売元:タイムワーナーエンターテイメントジャパン株式会社

 私の場合、年配の俳優が登場する映画に弱かったりする。例えば、ショーン・コネリーは「007」シリーズの「ジェームス・ボンド」ではなくて、「レッドオクトーバを追え!」の「ラミウス艦長」のイメージが強いという具合。そして、「ダーティーハリー」だったクリント・イーストウッドのイメージを変えてくれたのが「スペースカウボーイ」だ。

 物語の概要は、古い衛星が故障して、スペースシャトルで修理に行くことになったが、衛星が古すぎて誰も直せない。が、その衛星の開発者は往年の宇宙飛行士候補。当初は修理方法を教えるだけの予定が、自ら宇宙に乗り出して修理することに、という感じ。クリント・イーストウッド演じるフランクは、宇宙飛行士候補のテストパイロットチーム「チーム・ダイダロス」のメンバーだったのだが、紆余曲折あって候補から外され、その後は開発畑に転向したという設定だ。

 劇中では、その第一線を退いたオヤジ達が、宇宙に向けて情熱を燃やし続ける姿を描き、あえて言わせてもらえば「オヤジ版ライトスタッフ」という内容になっている。クリント・イーストウッドは監督、主演を務め、劇中で「オヤジパワー」を振りまき、「チーム・ダイダロス」にいたほかのオヤジ陣もトミー・リー・ジョーンズ、ドナルド・サザーランド、ジェームス・ガーナーという豪華キャスト陣。もちろん、全員がいい感じに「オヤジ」を演じている。

 当初は普通の生活をしていたオヤジ達が、フランクに乗せられ、再び宇宙への道を目指す描写は、多少のコメディタッチを交えながら、オヤジ達の宇宙へ掛ける思いが表現されていた。私が「オヤジ」に魅力を感じるのは、その人生経験による「渋さ」からなのだが、老獪でありながら、情熱を忘れないオヤジを描いた本作は、また違った魅力を提供してくれていると思う。


■ 不自然さを感じさせない宇宙

 さて、後半はいよいよ宇宙へ、となるのだが、宇宙の描写は不自然さを感じさせない。特に無重量の表現は「アポロ13」のように浮遊感を表現していたと思う。このあたりは特典映像に収録されている「視覚効果について」で解説されているので、詳しくはDVDをご参照のこと。

 音声は、英語、日本語ともにドルビーデジタル5.1chで収録。コメンタリなどは収録されていない。宇宙のシーンは無音の描写が多いので、5.1chのサラウンド効果を満喫、というわけには行かないが、機内の様子はアラート音などが飛び交い、結構リアリティを感じさせてくれる。

 宇宙でのシーンはちょうどクライマックスのため、詳しい描写は省くとして、後半の展開はなかなか面白かった。どうして衛星を修理しなくてはいけなかったのか、という謎も解け、衛星を処理するスリルも満点。そして、ラストではちょっとホロリときたりもした。


■ マニアックな飛行機も魅力

 この映画、宇宙に興味がなくても、飛行機好きな方にもちょっとオススメである。まず、冒頭に登場するのがX-2という実験機。とんでもなくマニアックだ。実際、普通の人よりは飛行機に詳しい私もこの実験機の存在は知らず、映画鑑賞後に調べてようやく存在を知ったというマイナーぶり。劇中では若き日の主人公たちがコレに搭乗する飛行シーンも拝めてしまう。実機が残っていても飛べる状態ではないと思われるが、特撮技術で違和感なく飛行を再現してくれた。このオープニングではチェイサーのB-29も2~3カット拝める。

 そして、SR-71ブラックバードも登場。これは、昼間でもほの暗い(つまり宇宙に近い)超高空をマッハ3以上でブッ飛ぶ偵察機。燃料はこの機種専用で、マッハ3の空気との摩擦熱による熱膨張を見越して飛行前の外装は隙間だらけ、というトンデモナイ飛行機だ。

 こちらはマッハ3という世界最高速度を誇るので、結構有名な機体。ただ、現在では引退してしまい、劇中でも飛行する姿を見ることはできない。昔は沖縄の嘉手納基地にも配備され、そのエンジンの爆音で近隣住民に多大な迷惑をかけていたそうだが、止まっている姿を見る分には興味をそそられる。雑誌に掲載される写真は全体を確認できるロングショットが多いが、劇中では着陸脚など細部も見ることができた。

 そして、オヤジの飛行技能も見逃せない。現代の最新鋭機では、「椅子にジェットエンジンをつけても飛ばせる」と言われるほど高度化されたコンピュータ制御が使われており、実際、ステルス戦闘機F-117のように「どうして飛べるんだ?」という形状の物体も飛ばしてしまえる。

 が、それは十分な揚力(浮く力)と推力(パワー)があってのこと。スペースシャトルは強力なロケットエンジンを搭載しているものの、燃料は打ち上げのときに使い切ってしまい、地球帰還時は滑空しているだけ。しかも、あの小さな翼では十分な揚力は得られない。劇中では「空飛ぶレンガ」と表現しているが、スペースシャトルの着陸は「ゆっくりと墜落している」と表現するのが良いくらいのアクロバット。コンピュータ制御の助けがないと着陸させるのはとても無理だ。

 そのコンピュータがもし故障してしまったら? 経験がモノをいうわけである。航空力学的に正しい描写かどうかはわからなかったが、やはり「ライトスタッフ」を彷彿とさせ、映画としては純粋に楽しめた。


■ DVDとしては

 DVDメニューは、スペースシャトルの打ち上げシーンをフィーチャーした映像メニュー仕様。約30秒ほどの時間があり、慣れてくると立ち上げの時間が少々おっくうになる。

 本編は約130分で、特典映像は約54分を収録。合計で約3時間の大ボリュームを1枚のディスクに収め、さらにDVD-ROMパートまで収録している。そのため、圧縮は少々きつく、ときに圧縮ノイズを感じる場面もあったが、本編を通して見る分には問題ない画質。特典映像は本編に比べてビットレートを落としているように感じた。

 特典映像は、先に紹介した「視覚効果について」のほか、「編集ジョエル・コックスによる製作裏話」、メイキング、そして、劇中のTV番組だった「トゥナイト・オン・レノ」を収録。「トゥナイト・オン・レノ」は、アメリカで実際に放映されているTV番組のようで、劇中ではその番組にオヤジ達が登場。特典映像では司会のレノが映画について語っていた。

 特典映像は基本を押さえた内容で、特にメイキングと「視覚効果について」が面白い。ここ最近は宇宙モノ映画が少なく、2000年公開作品ながら、最新の特撮について知ることができたのは大きな収穫だ。

 ともあれ、物語としては十分に楽しめると思う。エンディング曲の「Fry Me To The Moon」は、ラストシーンにぴったりとハマり、余韻を残して鑑賞を終えることができた。なによりも驚きなのが、本編、特典合わせて3時間以上を収録しながら、2,500円という廉価で販売されていること。ワーナー恐るべし。


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□ワーナーホームビデオのホームページ
http://www.warnervideo.co.jp/
□「スペースカウボーイ」の製品情報
http://www.warnervideo.co.jp/newdvd/0106/DL-18722.html

(2002年1月18日)

[fujiwa-y@impress.co.jp]


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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