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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第43回:「VAIO SRX7」+「ジョグリモートコントローラー」
~史上最強のMP3プレーヤーを目指す~


■ VAIO SRX7に込めた密かな決意

 2001年10月にSONY「VAIO C1MXR」をお借りしてそのスタイルにすっかりノックアウトされ、久々に鼻の穴全開になった筆者だが、予定の11月17日発売から2002年1月に延期されると聞いてシオシオ。

昨年末に購入した「VAIO SRX7」

 しかし一度暴走を始めた物欲は沈められず、ついに12月15日、第2希望の「VAIO SRX7」を大購入することに。SRX7はかなり売れ筋モデルと見えて、その頃どこへ行っても品切れで困ったのだが、すでに発売している限り地球上のどこかには必ずあるもので、なんとか買うことができた。

 ところがそんな騒動から1週間もしないうちになんとあの「C1MXR」が、やっぱ年内(2001年)に発売しちゃいますとのお達しが……。あの、もし違ったら申し訳ございませんが、もしかして筆者のことをお舐めになっていらっしゃいますでしょうか。>SONY様。などと思うほどのタイミングの悪さ加減。

 この頃から筆者のテンションは一気に急降下したのであったが、普段からさわやかさが売りの筆者は、いやぁ最初からSR狙いだったのさはっはっは、と懸命にさわやかなフリをしていたのであった。くそう、こうなったらSRX7を骨までしゃぶってやる! と内心密かな決意を固めたのは言うまでもない。


■ 史上最強のMP3プレーヤー計画

 なぜ筆者はC1が欲しかったかというと、実はこれを使えば史上最強のMP3プレーヤーが完成するのではないか、というもくろみがあったからである。

 単なるMP3プレーヤーとしてノートパソコンを持ち歩くというのはどうかと思うが、出先で原稿を書く(書かされる)ためには、どっちみちノートパソコンは必ず持ち歩くのである。それをそのままMP3プレーヤーとして使ったからといって、荷物が増えるわけでもなんでもない。

 C1がSRになったことでサイズの面では不利になったが、基本的な部分では計画に支障はないと自分に言い聞かせ、迅速に行動に移す。

 SRX7は30GB(実質27.8GB)のHDDを搭載しているが、初期状態ではCとDドライブでだいたい半分ずつになっている。Cドライブには現在約8GBの空きがあるが、これからまたいくつかのアプリケーションをインストールするにしても、残り8GBまでは必要ないと判断。MP3データ格納用としてDドライブを有効利用するため、リカバリディスクを利用してパーティションを変更し、Cドライブに約7GB、Dドライブに約20GBという割合に変更した。

 MP3に20GBも必要か、と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれない。しかし筆者宅には、音楽CDが約850枚ある。そのうちの約500枚分程度はすでにMP3化して、デスクトップ機に保存してある。分量にして現在約23GB。この中からさらに選択したとしても、15GBぐらいは必要になる。

 いやそれだけの量を常に持ち歩く必要があるのか、ということもまた疑問だろう。しかしこれだけの量になると、今日持ち出すCDをどれにするか決断するのもなかなか骨の折れる作業なのだ。誰しも移動途中で「ああっ今すぐAREAの1978が聴きたい是が非でも!」などと思い立つことも少なくないことと思う。いやそれがAREAかどうかは別としてだ。それなら悩まないように、大半を持ち出す、という具合に考えたのである。

VAIOで音楽再生の中心となる「SonicStage」

 パーティション変更が終わったところで、早速セレクトしたMP3データをデスクトップ機からファイルコピー。VAIOで音楽を聴く中心となるのは、「SonicStage」というアプリケーションである。これは本来OpenMGのエンコーダ兼プレーヤーなのだが、MP3の再生にも対応する。SonicStageからMP3の一括インポートを行なうと、勝手にアーティスト名、アルバム名、曲名などのMP3のIDタグを読みとって、管理できるようにしてくれる。

 また再生のギミックとしては、アクセストップ10やランダムに50曲といった検索機能があり、数あるジュークボックスソフトの中でも個性の強いアプリケーションである。


■ これはイイ! VAIOジョグリモコン

VAIOジョグリモコン
「PCGA-JRH1」のコントローラ部

 これで一通り下準備が終わったものの、まだこの段階ではバッグにSRを入れてヘッドホンで聴けるぐらいで、移動中に聴くのには若干使い勝手が悪い。手元でなにもコントロールできないからだ。筆者は移動中の環境ノイズに合わせて、結構こまめにボリューム調整を行なうのが常である。そこでかねてから目を付けていたVAIOジョグリモコン「PCGA-JRH1」(実売1万円弱)を購入。

 VAIOジョグリモコンの本体部分には、メニューや曲名を表示する小型液晶があるが、残念ながらバックライトはない。本体右上にジョグダイアルとBACKボタン、左上にはSHIFTボタンがあるだけという、シンプルなデバイスである。

デバイスマネージャではUSB Digital Speaker Systemとして認識

 しかしジョグリモコンは、単にUSB接続の音楽再生コントローラであるばかりでなく、この先端にヘッドホンを接続することができる。これは単にヘッドホンの延長コードとしての役割ではなく、VAIO本体から離れたところでDAコンバートすることで、パソコン内で発生するノイズがヘッドホンに混入するのを防ぐ役割もある。

 オーディオにうるさいユーザーの間で人気のあるUSBオーディオ機器の超小型版という感じだ。デバイスマネージャを覗いてみると、実際にUSB Digital Speaker Systemとしても動作していることがわかる。

 なお、このVAIOジョグリモコンには、ヘッドホンが付属しない「PCGA-JR1」というモデルもある。ヘッドホンがいらないという人はうっかりこれを買いそうだが、見た目まったく同じながらもこちらはVAIO対応機種が若干古く、Windows XPでの動作はサポートされないので、購入される際には注意していただきたい。

 実際に購入してみるまで、このジョグリモコンはSonicStage専用コントローラなのかとばかり思っていたのだが、実際にはさらに使い出のあるデバイスであった。ノート型VAIO本体にはすべてジョグダイアルが付いているが、VAIOジョグリモコンは基本的にこのダイアルのリモコンなのである。つまりこのリモコンでアプリケーションの起動や終了、他のアプリケーションへの切り替えや各種本体設定、そしてブラウザなどの一般アプリケーションが手前にでている際には、スクロールがこのリモコンから行なえる。

 しかし筆者の用途としては、SonicStageがコントロールできればいい。このような用途には、「アプリケーション固定」という機能があって、これを設定することで手前に別アプリケーションが起動していても、常にSonicStageのコントロールが可能だ。ただしVAIO本体のジョグとこのリモコンは一蓮托生なので、「アプリケーション固定」の時は本体のジョグのほうもSonicStageコントローラになる。

 SonicStageとジョグリモコンとの組み合わせは、HDDベースのMP3プレーヤーとして考えると、なかなか良くできている。ダイアルの回転でプレイリスト内の曲のスキップ、押し込んで再生とポーズの切り替えとなる。またSHIFTボタンを押しながらダイアル回転で音量のアップダウン、押し込んでミュートができる。しかし個人的な使い勝手から考えれば、曲のスキップと音量調整は逆のファンクションのほうが良かったと思う。不可抗力でダイアルが回ってしまった際に、せっかくノリノリで聴いていた曲がどこかへ吹っ飛んでしまうよりも、音量が1ステップ変化するほうが不快感が少ないからだ。

ダイアル回転で曲のスキップ SHIFT押しと回転でボリューム調整

 BACKしてメニューに戻れば、SonicStageのかなり細かい部分までダイアル1つでアクセスできる。さまざまなプレイリストの選択も可能で、あらかじめプレイリストを作っておかなくても、メニューを掘っていくことでアーティスト一覧からアルバムごとの選択もできるのは便利だ。

アーティスト名を選択することで、その作品がプレイできる 待機状態ではアニメーションが表示される

 とまあ、ちょっとした不満はあるもののおおむねヨシヨシと使っていたのだが、本格的に使っていくうちにかなりイマイチなことに気が付いた。SonicStageをバックグラウンドに回しておくと、たとえ「アプリケーション固定」に設定してあっても、SHIFT押しのボリューム調整が利かなくなるのである。この状態で音量調整するには、BACKでメニューに戻って、[クルクル]-[音量調整]-[クリック]-[クルクル]-[リモコン音量設定]-[クリック]-[クルクル(音量調整)]という膨大な手順が必要になる。急に大音量の曲データが出てきたときなんか、こんな段取りでは耳がおかしくなるではないか。これは実に中途半端な「アプリケーション固定」であり、どうせならもっと徹底的に固定してもらいたかった。


■ で、ヘッドホンはどうする?

ジョグリモコン付属のヘッドホン。「MDR-Q33」という刻印がある

 VAIOジョグリモコン「PCGA-JRH1」には、ヘッドホンが付属する。VAIOロゴが入っているところはマニアなら喜ぶところであろうが、これは耳かけ型ヘッドホン「MDR-Q33SL」と同等品である。

 よく街でも使っている人を見かけるのでリファレンス的な要素はあるものの、この中高音域が妙に強調された特性はそれほどイイと思っていない。また耳に引っかけるタイプ特有の難点として、筆者のように眼鏡を常時使用している人には使いにくい、30分で耳たぶが痛くなる、左右のフィット感が均一にならない、取り出す際に耳かけ部分にコードが絡みやすいと、実に散々なのであった。ヘッドホンいらないから3,000円分マケてくれ、と言う感じである。

 では代わりに何がいいのか、と考えたところ、同じSONY製品でまとめるならば、ノイズキャンセリングヘッドホン「MDR-NC10」は悪くない。「藤原流アイテム道」でも詳しく取り上げているので、使い勝手はそちらを参照していただくといいだろう。発売されたのは4~5年も前になるが、筆者は発売当初から愛用しており、使い潰して現在3つめである。

 しかしこれ、性能はいいのだが、見た目はかなりイマイチ。電池収納部もリモコンぐらいの大きさがあるので、ジョグリモコンと併用すると、まるでリモコンを2つ付けているようなスタイルになるのだ。「何をそんなにコントロールしたいんでしょうかこのヒトは」という好奇の視線にさらされる可能性もある。まあノートパソコンをそのままMP3プレーヤーにするという計画自体かなり酔狂なのだが、傍目にはそれがわからないようにしたいんである。

筆者愛用のノイズキャンセリングヘッドホン「MDR-NC10」 リモコンとの併用は、ちょっとスマートさに欠ける

KOSSのSportaPro。MP3向きの派手な音がする

 ではどうするか、ということで選んだがこれ、KOSSの「SportaPro」というヘッドホン。KOSSはスタジオモニタ用からヘリコプターのインカムまで、幅広くヘッドホンを製造する米国のメーカーである。

 SportaProは、実売4,500円~7,000円弱で売られている小型ヘッドホンで、低域がバケモンみたいに良く出るという特性を持っている。その反面繊細さにはちょっと欠けるのだが、まさにMP3のようなハイファイとは言えない音を、派手にドカンドカン鳴らすにはぴったりだと言えよう。

VAIOノートに装備されているMEGA BASS設定

 また最近のVAIOノートにはヘッドホンサウンドを向上させるために、MEGA BASSという機能が付いている。これはポータブルCDプレーヤーなどによく付いている低音補強モードと同じようなものだ。これとSportaProの組み合わせで、ポータブルプレーヤーにはあるまじきものすごい低音が体験できた。

 ただ低域に引きずられて中低音域にもたつきが出てきたので、最終的にSonicStageの10バンドEQで補正して若干キレを良くした。


■ 総論

 C1MRX購入空振りで一瞬暗礁に乗り上げたかに見えた「史上最強のMP3プレーヤー計画」であるが、結果的にはかなりいいものになった。ポイントは、バッテリ駆動時間である。

 本体付属の標準バッテリで比較すると、SRX7は通常の2倍の6セルバッテリが標準なので、省電力モードで約4.0~6.0時間の連続使用が可能なのに対し、C1MRXの場合はいくらCPUにTransmeta Crusoe採用とはいえ、約2~4時間なのである。シリコンオーディオプレーヤーでは電池1本で10数時間保つのが普通なのでそれには及ばないが、SRX7なら結構遠出しても1日分の移動では十分だ。ちなみに東京駅から新大阪駅まで約3時間の連続リスニングを行なったが、到着した時点でまだ20%ほどの残量があった。到着してしばらくの間は、仕事で使えるだけのパワーが残ることになる。

 かくして自称「最強のMP3プレーヤー」が完成したわけだが、念を入れるとするならば、さらにバッテリ駆動プロファイルにも手を入れてさらなる静音化と、バッテリ持続時間の長時間化を図るなど行なっていけば、完璧であろう。

 この計画に何らかの問題があるとすれば、筆者は基本的にあまり外出しない、ということだけである。

□SONYのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□「PCG-SRX7」の製品情報
http://www.sony.co.jp/sd/products/Consumer/PCOM/PCG-SRX7/
□「PCGA-JRH1」の製品情報
http://www.sony.co.jp/sd/products/Consumer/PCOM/PCGA-JRH1/

(2002年1月16日)


= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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