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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第42回:あのMPIOに新モデル登場
~スタイルで選べる2タイプ~


■ 買いやすい新モデル

 「明けまして~」の声を聞くのもそろそろ飽きてきたと思われる昨今、読者諸氏はいかがお過ごしであろうか。今年もElectric Zooma!をどうぞよろしく。

 さて、新年の挨拶も早々にお送りする2002年第1弾は、お年玉で買えそうなもの、ということで、MP3プレーヤー2種である。以前Zooma!でも取り上げて好評だったADTECの「MPIO」の新モデルが、昨年の末ギリギリにリリースされた。スティック型の「AD-DMK64」と、スマートメディアスロット装備の「AD-DME64」である。どちらもリリース直後から店頭価格で2万円を切っており、昨年末の段階ではヨドバシカメラにてAD-DMK64が19,800円、AD-DME64が18,800円という価格であった。初代MPIOが2万円超であったのに比べ、比較的買いやすいプライスゾーンに降りてきている。

 初代MPIOは筆者もZooma!で取り上げたあと個人的にも購入し、現在も愛用している。デバイスとして作りが良く、動作も安定しているところが気に入ったからである。

 はたして新MPIOは初代モデルからどう変わったのか。さっそくチェックしてみよう。


■ スタイル重視のスティック型MPIO

 なんせ新MPIOの型番が「AD-DMK64」と「AD-DME64」ときた。KとEんとこしか違わないのである。これではどっちがどっちだかわからないので、まずスティック型のAD-DMK64から順番に見ていこう。

 AD-DMK64は、拡張スロットを持たず本体メモリ64MBのみの小型MP3プレーヤーである。拡張メモリをあきらめた代わりにスリムなスティック型を実現したというわけだろう。パッケージや写真では、本体はリモコンぐらいの大きさにしか見えないが、それは正面からの見た目が非常にスマートにできているからである。箱を開けてみてびっくり、実は厚みが相当にある。

正面から見ると、ちょっと大きめのリモコンぐらいだが…… 横から見ると厚みが相当ある

 間違いなくスティック状だろどうだ、えっ、と言われればウンと言わざるを得ないが、若干ヤラレタ感がしないでもない。充電池を使えばもっと薄くできたのであろうが、汎用の単4電池駆動ということでこの厚みも致し方ないところだろう。いやそういえばよくよく考えてみると、今時のデバイス小型化具合に比較して、乾電池ってなんかデカくないですか? 円柱って形がやたら場所とりませんか? いつまでもそこだけ昭和時代って感じしませんか? こうなってくると、汎用乾電池でも新たに薄型・小型の規格が欲しくなってくる。

本体上部に付けられたジョグボタンでほとんどの操作ができる

 ボディは全体的にメタリックな感じだが、実際の金属部分はブルーの部分だけで、そのほかはプラスチックである。このあたりの質感は、シリーズとしてのMPIOのイメージを継承している。また本体にあるボタン類といえば、正面にプレイ/ポーズボタン(電源ボタン兼用)、側面にジョグボタンとボリューム、ホールドスイッチがあるだけと、すっきりしている。

 操作も非常にシンプルで、ほとんどの機能をジョグボタンだけで操作できる。左右に倒すと曲のスキップ、倒し続けると早送り、また押し込むたびにディスプレイ表示を3種類に切り替えられる。また長押しすることで設定メニューに入る。

表示1は、EQモードとトラックナンバー、再生時間 表示2は、IDタグのスクロール表示。漢字の表示にも対応している 表示3は、ビットレートと曲の長さ

 設定項目は、EQ、リピート、バックライトの3つと、シンプルだ。このうちEQは、[FLAT]、[POP]、[ROCK]、[CLASS]、[X-BAS]の5つが選択できる。初代MPIOにあった[ユーザー]と[3Dサウンド]が省略され、X-BASが追加された形だ。

 もう1つの特徴は、ネックストラップ型のヘッドホンだ。この形状と重量なら首から提げてもOKということだろう、首にかけるストラップからインナーイヤー型ヘッドホンが直接生えているような構造になっている。本体との取り付けは、ストラップの固定部分とヘッドホンジャックが別になっており、強度の点でも工夫されている。なかなか手の込んだ作りだ。

ネックストラップはかなり丈夫な作り 本体取り付け部とジャックは分岐している

 ただ誰でも思いつく弱点として、このネックストラップ型ヘッドホンの音が気に入らなかった場合や壊れた場合は、この製品自体の魅力が半減してしまうことにもなりかねないため、ある意味諸刃の剣と言えよう。

ドライブユニットも、若干容積の大きなものを採用している

 当然そのあたりはメーカー側もわかっており、よくMP3プレーヤーに付属しているダメダメなドライバユニットではなく、まずまずの品質のものを採用したようだ。少なくとも初代MPIOに付属のものよりも若干いいものになっている。

 基本的にヘッドホンは他のものに代えないという前提の製品だけに、音質はEQ設定が重要になってくる。まず[FLAT]で聴いてみたところ、中音域から高音域に関してはまずまずだが、低音域はやはり物足りない。ドラムのキック音が「ポソ、ポソ」という感じである。[POP]に切り替えると、若干高音域が強調される。順に[ROCK]では低音域強調、[CLASS]では中低音域強調、[X-BAS]では高域が若干カットされ、低域が極端に増幅される。

 個人的な好みでは、あまり高音域がうるさいのは好きではないので、[CLASS]あたりが一番好きな音だ。なお上記の表現はあくまでも筆者の聴感上の印象であり、実際の特性とは異なっているかもしれないことをお断わりしておく。また初代MPIOの回でもお伝えしたように、市販のイヤーパッドを付けると若干特性が低域よりに変化するので、組み合わせでいろいろ試してみると面白いだろう。

ベルトクリップを装着した状態。固定はできるが、厚みもすごい

 なおこのMPIOには、本体を固定するベルトクリップも付属する。首から提げただけだと手作業中に本体が前に垂れてきてじゃまになるわけだが、それを防止するためのものだ。

 しかしこれを装着すると余計厚みが増す。いっそ本体をシャツの中にでも落とし込んじゃった方が早いような気もする。


■ コストパフォーマンス重視の四角型MPIO

 一方箱型の「AD-DME64」は、初代MPIOをコストダウンした代わりにリモコンを付属したようなモデルと言える。本体サイズは初代とほとんど変わらないが、印象として小型はんぺんのような感じだ。

丸みを帯びたデザインが特徴のAD-DME64 初代MPIOとの比較。サイズはほとんど同じ

 初代MPIOに比較すると、ボディは金属部品を極力排除し、ジョグボタンも省略されている。また機能面では、カメラ接続端子やボイスレコーディング機能もない。もっともこの2つはほとんどの人が使っていなかったと思われるので、あまり影響ないだろう。なんせオプションのカメラユニットなんて、未だに発売されていないのである。

ディスプレイは大幅に表示内容が簡略化された

 この程度の変更であれば、MPIOの高級感はほぼそのままと言ってもいいだろう。しかしもっともコストダウンの影響を感じさせるのが、液晶表示部分である。

 ほとんどトラックナンバーと再生時間のみで、曲名表示などの機能がない。リモコンが付属したことであんまり本体表示を見ることがなくなるから、という判断であろうか。またバックライトも省略されている。

ジョグがない代わりに本体のボタン類が増えている

 またジョグボタンを省略したため、従来これでコントロールしていたファンクションがすべてボタンとなり、本体のボタン類はやや多くなった。もっともこのモデルは「リモコン付属」がポイントなので、操作性に関してはあまり関係ないように思われる。

 あんまり省略されたされたと書き続けるとどんどんイマイチ感が増幅されてくるようだが、逆に良くなった部分もある。機能を減らしたぶん消費電力が大幅に減って、カタログスペックで約30時間の連続再生が可能になった。初代MPIOが連続18時間だったので、約1.7倍になったわけである。初代MPIOをより実用的に振ったモデルとも考えられる。

 リモコンは液晶表示もなくボタンのみという作りで、正直安っぽい感じはする。曲の再生/ポーズ、停止、スキップ、音量、EQの切り替えといったボタン類が並ぶ。

本体操作のほとんどが可能なリモコン背面のクリップは、洗濯バサミ方式

ヘッドホンは、初代MPIOに付属のものと同じ

 AD-DME64に付属のヘッドホンは、初代MPIOに付属のものと同じである。相違点といえば初代に付属のものはLRの長さが均等なY字コードだったのだが、今回からRの方が長いネックチェーン式コードになった。

 ではこれで出音を聴いてみよう。EQの種類は、表記が若干異なるものの基本的にはスティック型と同じプリセットである。付属ヘッドホンの特性が違うせいか、筆者の耳でもっとも聴きやすかったのは[BASS]であった。もっともリモコン先端にあるヘッドホンジャックはステレオミニなので、別途好きなヘッドホンを使用することができる。そういう意味では潰しのきくモデルと言えよう。

 やや気になったのが、ボタンを操作するたびにピッと鳴る電子音。すべての操作に対していちいち鳴るのである。おそらく普通に使っていて一番頻繁に使用するのはボリュームボタンだと思うが、ボリュームを操作しただけでいちいちピッピッ鳴るのはなんともやかましい。そういえば他のMPIOではこのような電子音は鳴らない。なにかこのモデル特有の事情があるのだろうか。


■ パソコン環境をチェック

 続いて付属CD-ROMに収録されているソフトウェアを見てみよう。双方ともソフトウェア類は共通である。

ファイル転送ソフトのMPIO Manager MP3エンコーダ搭載のジュークボックスソフト「Match Jukebox 6.0」

 MP3ファイルを転送するためのソフトウェアとして、MPIO Managerがある。バージョンは3.0.0となっており、MPIOのオフィシャルサイトで初代MPIOユーザーに対して配布されている最新版(バージョン2.1.1.9)よりも新しくなっている。

 更新内容を示すテキスト類が付属していないため更新点は不明であるが、新モデルに対応したぐらいで機能的にはほとんど変わりないようだ。

 また以前は製品にMP3エンコーダが付属していなかったが、このシリーズではMusic Match Jukebox 6.0の日本語製品版がバンドルされている。ちなみにこのソフト、日本語版の最新バージョンは6.0だが、すでに英語版では7.0がリリースされている

三者三様のUSBコネクタ。左からAD-DME64用、AD-DMK64用、初代MPIO用

 パソコンとの接続は、付属のUSBケーブルで行なう。新旧の製品を3つ並べて気がついたのだが、なんと本体側のコネクタの形状が3つとも違っている。まさかコネクタの形状で個体判別しているわけではないだろうが、こんなにいろいろな形があったのかと妙なところで感心した。

 普通はMP3プレーヤーをそう何個も同時に繋ぐことはないと思うが、あんまりコネクタの規格が多様化し過ぎると代えのケーブルが見つからなくなって困ることになるので、あまり歓迎できる方向ではない。

 MPIOをパソコンに接続する上での問題として、CASIO製ラベルプリンタのドライバと相性が悪いことはあまり知られていない。Windows 98やMeではハードウェア管理が甘いためこのような問題は起こらないが、Windows 2000やXPといったNT系OSでは、CASIOのスマートエッグなどのラベルプリンタのドライバが先にインストールされていると、MPIOを接続してもドライバがインストールできないという問題である。実は筆者もこの問題で困っている1人である。

 おそらくこのような問題は、解決されるまで相当の時間がかかるか、もしくは永遠に解決しないものと思われる。というのも、お互いが「あっちのドライバが悪いんでうちではなんともねぇ、ええ、じゃっ、まそゆことで」という話になりがちだからだ。これから購入を考えている方は消極的な解決法ながら、双方を同じマシンに接続しないよう注意していただきたい。


■ 総論

 新MPIO二種は、性格がきっぱり分かれたデバイスだ。

 スティック型のMPIOは、ネックストラップ型のヘッドホンとベルトクリップのおかげで、身に着けやすい。これのおかげで年末のお風呂掃除が楽しく完了できた。外出時だけでなく、このように生活の中で使っても楽しいだろう。全体的に遊び心がある。

 一方“はんぺん”型MPIOは、リモコンと外部メモリによる拡張、そして電池の持ちが魅力の、実用本位モデルだ。電車で長時間通勤する人にはいいだろう。というのも、身動きできない状態での電池切れほどサビシイものはないだからだ。またお気に入りのヘッドホンが使えるのもいい。

 お正月休みの間もいろいろと使ってみたが、そこで気が付いた点といえば、両モデルとも深夜などの静かな環境で聴くと、曲間で「コー」というピンクノイズが薄く乗っているのがわかることだ。特にはんぺん型のほうが顕著である。しかしプレーヤーが活躍するのは主に外出時であろうことから、あまり神経質になることもないだろう。

 それにしてもこうして新型が出てみると、やはり初代MPIOは凝りに凝った製品だったなぁと実感した。マニュアルで設定できるEQ、電源を入れるとすぐに再生が始まるオートプレイ、さらに文字スクロールスピードまで調整できるといった、徹底したカスタマイズが可能なのだ。

 このあたりは一度設定してしまうとそれっきりあまりいじらないところだが、デバイスを自分に合わせていくか、自分をデバイスに合わせていくかでストレスの度合いが違う。そこらへんに価値を見いだせる人は、敢えて初代MPIOという選択もいいだろう。最近はカラーバリエーションや内部メモリー拡張モデルも出ており、まだまだ現役である。

 3種類のラインナップとなったMPIO、あなたに一番ぴったりなのはどれだろうか。

□アドテックのホームページ
http://www.adtec.co.jp/
□「AD-DMK64」の製品情報
http://www.adtec.co.jp/parts/AD-DMK64.html
□「AD-DME64」の製品情報
http://www.adtec.co.jp/parts/AD-DME64.html
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【11月29日】アドテック、29gのスティック型などMP3プレーヤー2機種
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20011129/adtec.htm

(2002年1月9日)


= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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