第23回:ついにDVD化された法廷劇の金字塔 |
怒涛のように発売されつづけるDVDタイトル。本当に購入価値のあるDVDはどれなのか? 「週刊 買っとけDVD!!」では、編集スタッフ各自が実際に購入したDVDタイトルを、思い入れたっぷりに紹介します。ご購入の参考にされるも良し、無駄遣いの反面教師とするも良し。「DVD発売日一覧」とともに、皆様のAVライフの一助となれば幸いです。 |
十二人の怒れる男 | |
価格:3,980円 発売日:2001年12月21日 品番:GXBA-16232 仕様:片面1層 収録時間:約96分(本編) 画面サイズ:ヨーロピアンビスタ・サイズ 字幕:日本語字幕、英語字幕 音声:1.英語(オリジナル)ドルビーデジタルモノラル 2.日本語ドルビーデジタルモノラル 発・販売元:20世紀フォックスホームエンター テイメントジャパン株式会社 |
昨年11月に紹介した「12人の優しい日本人」のことを、覚えている読者の方はいるだろうか? その中でも書いたとおり、今回紹介する「十二人の怒れる男」が、「12人の優しい日本人」の元ネタになっている。
ニューヨークの裁判所の一室に、タイトルからもわかるように12人の男達が集まる。陪審員として召喚された12人の男達は、殺人事件の裁判を担当し、検事と弁護士の陳述や弁論、証人たちの言葉を何度も何度も聞く。
17歳の不良少年は、父親をナイフで刺し殺したという殺人罪に問われている。少年のアリバイはあまり信用できず、証人たちの証言からも、彼の有罪は誰が見ても決定的。しかし、1人の陪審員は無罪を主張する。
冒頭に被告の少年と、裁判長が出てくる以外は、96分のストーリーのほとんどが、この12人の陪審員だけで展開する。
こうしてストーリーだけを抜き出すと、あたりまえだが「十二人の怒れる男」と「12人の優しい日本人」は似ている。とはいえ、そこは三谷幸喜。12人の優しい日本人には、十二人の怒れる男を見ている人にはわかる仕掛けをいくつも用意している。是非とも、十二人の怒れる男を見てから、12人の優しい日本人をもう一度見直してほしい。
■ 陪審制の意味
'57年に制作されたこの映画は、後に社会派の名匠といわれるようになるシドニー・ルメットの監督デビュー作。アカデミー賞の最優秀作品賞のほか4部門にノミネートされ、ベルリン映画祭金熊賞を受賞した、法廷サスペンスの傑作。ちなみに、シドニー・ルメットは、'98年にグロリア(Gloria)を監督している。まだまだ現役というのは(その映画自体の評価は別にして)、すごいの一言。
また、資料には、レジナルド・ローズのTVドラマを映画化したものと書かれているが、残念ながらTVドラマの方は見たことがない。映像が残っているのなら、是非とも見てみたいところだ。
無罪を主張する主役の陪審員は、ヘンリー・フォンダが演じている。ヘンリー・フォンダは主演の他にも、プロデューサーとしても名を連ねており、この作品にかけた彼の思いが伺える。
陪審評決は多数決ではなく、全員一致が原則。どうしても一致しない場合は不成立になり、違う陪審員が選出されて、もう一度審議されることになる。今回の事件では有罪という結論が出れば、少年が死刑になることは確実。
無罪を主張したヘンリー・フォンダは、その主張の理由を「無罪と信じているわけではない。しかし、人間の命がかかっているのだから、もう少し議論をしよう」と語る。これこそが、陪審制度と、民衆主義の本質を突いているのではないだろうか。 陪審員が絶対に正しい判断を下せるという保証はどこにもない。法律の素人が多数集まれば、「疑わしきは罰せず」という原則を忘れて、大勢の意見に流されてしまいがちだろう。だからこそ、大勢の意見に反対する意見を語れる人間が必要であり、反対の意見を述べられる状況が作られていることが重要なのではないか。
この映画の中でヘンリー・フォンダが語る意見を、ただの屁理屈に感じるかもしれない。もし、少年が有罪だったら、どうするのだと思うかもしれない。しかし、人が人を裁き有罪にすること、ましてや死刑にすることは、屁理屈すら入る隙間のないほどの、真実の証明が必要である。
ただ、時代的な問題だと思うのだが、12人の陪審員全員が中流以上と思われる白人男性というのが、現在の目で見ると気になった。現在だったら、もし黒人の少年を、全員白人の陪審員が有罪にしたら、大問題になることは間違いないだろう。
■ DVDとしてどうか
今回が初のDVD化。最近のDVDでありがちな謳い文句「デジタルリマスター」などの表記はないが、40年以上前のモノクロの画面は十分高画質。アスペクト比はオリジナルどおりのヨーロピアンビスタ1:1.66(4:2.4)で収録されており、4:3モニタで見た場合僅かに上下に黒帯が出る。
音声はオリジナルの英語、吹き替えの日本語ともモノラル。吹き替えの収録では定評のある20世紀フォックスなので、吹き替え音声は現存するTV放映当時のものをそのまま収録している。ただし、吹き替え音声がない部分は、字幕になっている。字幕と、吹き替えではセリフの量がまったく違い、言葉を重ねていくことで構成されているこの作品では、特にニュアンスがかなり異なっている。是非とも字幕と、吹き替え両方で見て欲しい。こういった見かたができるのも、DVDだからこそである。
チャプタは16個。映像特典はオリジナル劇場予告編のみ、封入されているのはチャプタリストだけと、今時の3,980円のDVDとしては、かなり寂しい。まあ、40年以上前の作品なので、DVD化されただけでも喜ぶべきことなのかもしれないが……。
■ 中身には満足したが……
名作なので、名画座やTVで一度でも見たことのある人も多いと思う。ストーリーも単純でありながら、スリリングであるので、一度でも見ていたら大まかな筋は覚えているだろう。とはいえ、それぞれの陪審員の揺れ動く心までは、記憶していないと思う。それを確認する意味でも、DVD化されたことは喜ぶべきことだ。
しかし、3,980円という価格は高すぎるとまではいわないが、もう少し購入を決断する後押しになるような特典などが入っていれば、文句なくお勧めできるのだが……。
前述のように「十二人の怒れる男」を見た後に、「12人の優しい日本人」も見ると楽しみは倍増する。ただ、「12人の優しい日本人」も4,700円と少々高めなのが難点だが……。
●このDVDについて |
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□20世紀フォックスのホームページ
http://www.foxjapan.com/
□「十二人の怒れる男」の製品情報
http://www.foxjapan.com/dvd-video/cgibin/UserSearch/index_dvd.cgi?id=892
□関連記事
【買っとけ! DVD】日本に陪審制度があったら?「12人の優しい日本人」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20011109/buydvd14.htm
(2002年2月14日)
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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp