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第27回:スピールバーグとキューブリックがタッグを組んだ
特典満載2枚組みで2,980円!!「A.I. 特別版」

 怒涛のように発売されつづけるDVDタイトル。本当に購入価値のあるDVDはどれなのか? 「週刊 買っとけDVD!!」では、編集スタッフ各自が実際に購入したDVDタイトルを、思い入れたっぷりに紹介します。ご購入の参考にされるも良し、無駄遣いの反面教師とするも良し。「DVD発売日一覧」とともに、皆様のAVライフの一助となれば幸いです。


■ 期待の新作が早くも登場

A.I. 特別版
ARTIFICIAL INTELLIGENCE

(C)2001 WANER BROS. & DREAMWORKS, LCC.
価格:2,980円
発売日:2002年3月8日
品番:DL-21330
仕様:片面2層(本編ディスク)+片面1層(特典ディスク)
収録時間:約143分(本編)、約103分(映像特典)
画面サイズ:ビスタサイズ(スクイーズ)
字幕:日本語字幕、英語字幕
音声:1.英語(オリジナル)ドルビーデジタルEX
   2.日本語 ドルビーデジタルEX
発・販売元:ワーナー・ホーム・ビデオ

 スティーブン・スピルバーグといえば、知らない人はいないぐらいの映画界のビッグネーム。「未知との遭遇」、「E.T.」、「インディ・ジョーンズ」、「ジュラシック・パーク」などなど、彼の作品を見たことがない人を探す方が難しいだろう。

 そんなスピールバーグが、日米同時の2001年6月30日に劇場公開したのが「A.I.」だ。A.I.は、ブライアン・オールディスのSF短編小説「スーパー・トイ」を元に、スタンリー・キューブリックが'80年代から映画化を考えていた作品。'99年3月にキューブリックが急逝したが、生前からスピルバーグに監督を依頼していたという。スピルバーグは依頼を受けてから構想を暖めていたが、個人の遺志をついでついに2001年に映画を完成させた。

 スピールバーグと、キューブリックという巨匠2人の作品とあって、公開前の事前の注目度もかなり高かった。プロモーション戦略として、2000年12月から少年のシルエットを使った予告編や、CM、ポスターなどを露出。しかし、内容については、完全な極秘主義を貫いていた。そういったプロモーション戦略もあいまって、公開前からいろいろな噂が飛び交い、弥が上にも期待が高まった。

 そんな、注目度の高い作品ということもあり、公開から1年も経たない2002年3月8日に、2枚組みの特別版としてDVDが発売された。価格も、ワーナーの「ハリウッドプライス」で2,980円である。この値段だと、カップルで映画館に見に行くより、家で2人で見た方が安くつくのである。そこだけ考えても、買わないわけにはいかないだろう。

 実際に、弊誌に毎週掲載している売り上げランキングでも、初登場でトップを飾っており、ワーナーのマーケティングの正しが証明している。


■ ストーリー

 ストーリーは、現在版ピノキオと紹介されることが多い。実際、映像特典として入っているメイキングの中でも何度となく、「ピノキオ」という単語がでてくる。

 舞台は未来。その世界では、出産は許可制となっており、雑用や労働を人間に代わってロボットが行なっていた。しかし、そのロボット達に決定的な欠けているものがあった。“愛”……。

 人間を愛することのできるロボット。それが、人間が追い求める究極のロボットであり、この映画の主人公、“愛する”という感情をインプットされた最初の少年型次世代ロボット「デイビッド(ハーレイ・ジョエル・オスメント)」である。

 デイビッドは、彼を開発したサイバートロニクス・マニュファクチャリングの従業員夫婦に引き取られる。従業員夫婦は、実の子供を病気のために低温保存していた。デイビッドは、その代わりとして、母親を永遠に愛し続けるプログラムを起動されてしまう。

 しかし、その後まもなくして、実の息子が医学の進歩で生き返ることになる。結局、デイビッドは、家族の中で1人浮いた存在となり、捨てられてしまう。デイビッドは、再び母親に愛されるためには、人間になればいいと思い森をさ迷い歩く。そこで、ジゴロ・ロボットのジョー(ジュード・ロウ)と出会う。そして、母親に読んでもらった「ピノキオ」に登場した、ピノキオを人間にしてくれた、妖精を探し始める……。

 人間との違いに悩み、人間になりたいと願うロボット。そして、それを人間が受け入れることができるのか。このストーリーの主軸自体は、それほど目新しいものではない。というより、鉄腕アトムの方が、その主題に対してのジレンマをうまく描いているし、ストーリーも優れていると思う。

 とはいえ、主人公デイビッドを演じるハーレイ・ジョエル・オスメントや、ジゴロ・ロボットを演じるジュード・ロウの力演により、一定水準の娯楽作に仕上げている。また、名脇役もといえるのがCGなどの特殊効果。これみよがしではなく、さらりと全体になじむように仕込まれている。CGと背景、役者との見事なマッチングは、これまでにないものだと思う。メイキングの中にも出てくるが、これだけでも、どれだけの日数と予算が投じられたのか気が遠くなる。



■ 映像特典満載

 映像特典として、2時間に及ぶメイキングや、未公開映像、予告編などが収録されている。やはり必見はメイキングで特に特撮については、天井にバーコードを貼って、手持ちカメラを自由に動かせる、リアルタイムブルーバック合成システムなどという、大掛かりなことをやっていることがわかる。また、水中シーンでは水を使わずスーモークを使っていたり、テディを46人がかりで動かしているなど、舞台裏が垣間見えて面白い。

 そのほかにも、壊れたロボット役に障害者の役者を起用しているというのも目から鱗が落ちた。米国映画では障害者が出演することは珍しくないが、日本映画で障害が主題である場合以外で、障害者が出演していることはほとんどない。

 また、嬉しいのは映像特典の画質がかなりいいこと。映像特典というと、オマケのように作られたものも多いが、かなりしっかりしている。もちろん、当初からDVD化を見越して、撮影されているのだろうが、好感がもてた。

 ただ、キャストリストとスタッフリストがあるのに、両方とも解説があるのがメインの2人ずつで、それもあまり詳しくないのは、ちょっと悲しい。


■ DVDとしてどうか

 パッケージは、通常のトールケースのサイズで、ディスクを2枚収納できるAmaray Doubleケースを採用。初回生産分のみ、特製スリープ・ケース+特製ミニロビーカードが付いた特別仕様となっている。正直に言うと、ワーナーのパッケージデザインは好きになれないものが多いのだが、A.I.特別版のパッケージはシンプルで、かなりの好印象。しかし、映像特典が充実しているからか、封入されているのはチャプタリストのみとあっさりしている。

DVD Bit Rate Viewerで見た本編のビットレート

 本編の平均ビットレートは、約143分の作品なので約6.10Mbpsと少し低め。音声は英語、日本語ともドルビーデジタルEXで、ビットレートは384kbps。日本語字幕の翻訳は戸田奈津子。劇場公開版では、お馴染みの名前ではあるが、DVDなど2次媒体で戸田奈津子翻訳が使用されることは結構珍しい。

 チャプタ数は32で、かなり細かくつけられている。ちなみに、層切り替えはチャプタ17で、場面的には、わかりやすい所になってしまっているのが残念。また、ディスクを入れると、最初にメニューが起動するタイプになっているが、一定時間が経過すると自動的に本編がスタートする。

 映像の方はというと……。これが評価が難しい。最近の作品だし、SFXバリバリなだけに、メリハリくっきり、彩度の高い、抜けるような映像になっているかと想像していた。しかし、実際に見てみると、フィルムを思い起こさせる粒状感のある映像。しかし、別に画質が悪いといういうわけではなく、狙ってこの質感を出しているようなのだ。

 そのためか、パッと見の画質では、メイキングにインサートされている本編映像の方が鮮やかに見えてしまう。やはり、彩度の高い画を見慣れてしまったからだろうか、本編の画は物足りなく感じてしまう。もちろん、じっくり見ていると、これはこれで味は出てくるが。

 音質については、十分水準以上。ただ、元々派手な音響が使われているわけでないので、サラウンド効果は控えめな印象。


■ 最後に

 もちろん、2,980円という価格で購入すれば、十分値段分は楽しめると思う。ただ、メイキングの中でストーリーは三部構成になっていると語るのだが、個人的には最後は余計だと思った。おそらく、結末をつけて後味のよさを出したかったのだろうが、「皆までいうな」という気になった。

 また、一点気になったのだが、子供ロボットなのに「成長する」という概念が全くでてこない。限られた時間の中で語ることが難しいということで省かれたのだと思うのだが、何千年たっても子供のままのロボットを人間が愛せるとは、絶対に思えない。成長し、老いて、朽ちていく、というのも、ロボット工学でも重要なテーマだと考えていたので、是非、スピルバーグ自身の考えを入れて欲しかった。

 なお、東京都港区台場フジテレビ1F「シアター・モール」で、21日までDVD&ビデオ発売記念として「『A.I.』展」が開催されている。作品に興味を持たれた方は、こちらも見に行くと面白いと思う。

 あと、どうでもいい話しだが、チャプタ25で「iSub」が登場している。それほど未来的なデザインということだろうか……。


●このDVDについて
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 買いたくなった
 買う気はない

     

前回の「テルミン コレクターズBOX」のアンケート結果
総投票数272票
[購入済み]
23票
8%
[買いたくなった]
187票
69%
[買う気はない]
62票
23%

□ワーナー・ホーム・ビデオのホームページ
http://www.warnervideo.co.jp/
□「A.I. 特別編」の製品情報
http://www.ai-jp.net/dvd.html
□井筒監督の「こちトラ自腹じゃ」のA.I.評
http://www.tv-asahi.co.jp/tiger/html/22_jibara/2001/010706.html
□関連記事
【2月13日】ワーナー、DVD発売を記念し「A.I.」展を3月16日から開催
 ―DVD「A.I. 特別編」は3月8日発売
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020213/warner.htm
【2001年12月1日】ワーナー、DVD「A.I.」を2枚組み2,980円で3月8日に発売
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20011121/waner.htm

(2002年3月18日)

[furukawa@impress.co.jp]


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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