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単体で録画もできるポータブルMPEG-4プレーヤー
シャープ「MT-AV1」
発売時期/3月15日 価格/オープンプライス(実売価格4万円前後)

■ 主な機能と特徴

 MT-AV1は、3型のバックライト付き透過型TFT液晶ディスプレイやSDメモリーカードスロットを装備したポータブルMPEG-4プレーヤー。付属のクレードル経由で映像と音声を取り込み、MPEG-4形式で録画できる。SDメモリーカードのほか、本体の内蔵メモリ(64MB)への記録も可能だ。付属のリチウムイオンバッテリで約1時間の再生ができ、テレビ番組などを録画した後、外に持ち出して視聴できる。

 機能は「ビデオプレーヤー」と「ミュージックプレーヤー」に分かれており、音声信号だけを記録すれば、ポータブルMP3プレーヤーとしても使える。外形寸法は約85×82.5×18mm(幅×奥行き×高さ、フロントパーツなし)、重量は約126g。携帯するにもそれほど苦にならない。

 MPEG-4で記録するモバイルツールといえば、同社の「インターネットビューカム」や松下電器産業株式会社の「D-snap」、NTTドコモの「eggy」などが思い浮かぶだろう。しかし、AV1はレンズや撮像素子を内蔵しておらず、「テレビ番組を録画して持ち歩く」というコンセプトに特化。「ケータイビデオ」という愛称にも、製品コンセプトが良く反映されている。また、3型という比較的大きな液晶ディスプレイにも、再生機器としての主張が感じられる。

液晶ディスプレイは3型。タッチパネル式ではない。右は付属のスタンドスティックを使用したところ
操作スイッチ類は本体上面に集められている 左側面にはSDメモリーカードスロットとステレオヘッドフォン端子、ACアダプタ端子を装備 右側面は、重低音を強調する「X-BASS」スイッチや、HOLDスイッチが並ぶ
録画・録音・充電で必要になるクレードル。フロントパーツを付けたままでも脱着可能。ただし、SDメモリーカードスロットはふさがってしまう。クレードルの別売予定はなし

 録画および録音には付属のクレードルを使用する。クレードルの背面には、ミニジャックタイプのコンポジット入力端子とアナログ音声入力端子がついており、テレビやビデオデッキ、CDプレーヤーなどとつなぐことで録画・録音を行なう。クレードルがなければ録画・録音は不可能で、クレードルの別売は予定されていない。

 録画モードは「Sファイン」、「ファイン」、「ノーマル」の3種類。さらに、音声を「ファイン」と「ノーマル」から選択できる。本体メモリでの記録時間は、それぞれ約15分、約30分、約55分。解像度は全モード336×220ドットで、MPEG-4記録時の音声フォーマットはMP3となっている。

ビデオプレーヤーの記録モード
録画モード本体メモリSDメモリーカード
(128MB)
ビットレート解像度フレームレート
Sファイン約15分約33分約1.2Mbps336×220ドット約15fps
ファイン約30分約66分約600Kbps約10fps
ノーマル約55分約120分約280Kbps約7.5fps

 録画方法は、RECボタンを押して録画する通常の方法のほか、ビデオデッキの予約録画と連動する「シンクロ録画」が行なえる。信号を受けると録画を開始するという単純な仕掛けだが、「テレビ番組の録画予約ができる」というだけで、使い方が広がるだろう。

 シンクロ録画を行なうには、予約をセットしたビデオデッキと接続後、本体上部のRECボタンを押すだけ。ビデオからの信号が入力され次第、録画を開始する。場合によっては最初の数フレームが録画できないようだが、大きな問題はないだろう。ビデオ側の信号が途絶えると、AV1の電源も自動的にOFFになる。

 なお、CMをカットしたり、映像をつないだりという編集作業は一切行なえない。せっかくのデジタル録画なので、本体でCMカットくらいはできれば便利だと思う。

ビデオプレーヤーではサムネイル画像も表示される(静止画)。また、再生中にMENUを押すと一時停止のまま各種設定が行なえる。液晶でディスプレイの画質設定も可能だ

 記録映像の保存場所として「本体」または「自動」の2種類を指定できる。「自動」は、SDメモリーカードが装着してあるならカードへ、装着してないなら本体へと記録するようだ。本体に記録した映像を、SDメモリーカードに移動することもできる。また、記録した映像はリスト形式でビデオプレーヤーに表示され、映像にタイトルを付けることも可能。ただし、使用できる文字種は、ひらがな・カタカナ・英数・記号のみで、漢字は使用できない。フォントは同社の他製品でおなじみのLCフォントだ。

 BS放送やCS放送の1回だけ録画できる番組は、本体メモリに記録可能。SDメモリーカードへの記録は行なえない。そのデータをSDメモリーカードに移動することも不可能だ。録画中に本体メモリがなくなると、その時点で録画は終了する。なお、DVDビデオなどのコピーガードのかかっているソフトは、当然ながらまったく録画できない。

 一方、「ミュージックプレーヤー」での録音操作は、通常のMDレコーダなどとほぼ同じ形式だ。AV1と再生機器を接続後、RECボタンを押すと待機状態に入り、再生すると自動的にシンクロ録音が開始される。CD一枚を録音するときなどは曲間を感知し、自動的に曲を分けて記録してくれる。

ミュージックプレーヤーの記録モード
音質本体メモリSDメモリーカード
(128MB)
ビットレート
ノーマル約61分約125分128Kbps
エコノミー約81分約167分96Kbps

 記録ビットレートは128kbpsの「ノーマル」と96kbpsの「エコノミー」を選択可能。ミュージックプレーヤーでは、ランダム、ランダムリピート、全曲リピート、1曲リピートといった再生モードが用意されている。なお、MPEG-4同様、MP3にもタイトル名が入力できるが、この場合も漢字は使用できない。

ミュージックプレーヤーのトップ画面(左)。長いタイトルはスクロールする。タイトル名やアーティスト名は、ひらがな・カタナカ・英数・記号のみ

 専用オプションも充実している。単4ニッケル水素電池×4本を使用する拡張バッテリケース「CE-EB1」(4,000円)は、再生時間をビデオプレーヤーで約1時間、ミュージックプレーヤーで約3.5時間延長できる。また、リモコン付きヘッドフォン「CE-RH1」(4,000円)を付属のインナーイヤフォンの変わりに接続すれば、再生/一時停止などの基本動作を手元で行なえるようになる。ただし、録画・録音操作はできない。そのほか、専用リチウムイオン充電池「EA-BL06」(5,500円)、10種類のオプションフロントパーツ(各800円)なども用意されている。

本体のカラーバリエーションは3色。さらに、色違いのフロントパーツをオプションで選べるなど、カジュアルなイメージを重要視している


■ 使用感とオプション

 この手のツールとしては大き目の3型ディスプレイが効を奏し、MPEG-4の再生は結構実用的だ。ディスプレイの輝度設定を「明るい」にすれば、外光下でも思ったより普通に視聴できる。視野角はそれほど広い方ではないが、電車の中で隣りの人に盗み見られる心配が少ないので、用途を考えるとむしろ歓迎すべきかも知れない。

 ただ、さすがに最大で15fpsなので、動きは少々ぎこちない。また、「ファイン」、「ノーマル」と画質を下げるにしたがって輪郭がぼけはじめ、ブロックノイズが数えられるほどの大きさになっていく。とはいえ、番組内容を確認するだけなら十分な画質だろう。特に、静止状態の多いバラエティ番組などならそれほど気にならなかった。テロップもしっかり読める。

 ほとんどの操作は、本体上面の5つのボタンで行なう。手に持ったとき、ちょうど人差し指にかかる位置に主要な操作を行なうスイッチが付いており、操作そのものに支障はないだろう。

 ただし、十字ボタンや決定ボタンといった良くあるスイッチがないため、操作体系が一風変わっている。項目移動は早送り/早戻しボタンで、決定はMENUで、キャンセルは停止ボタンで、といった具合に、いろいろな機能を少ないボタンで兼用している。覚えるまで少し戸惑うかもしれない。

 取り外しが可能なフロントバーツは、装着すると液晶ディスプレイとの段差がつく。視聴中、液晶ディスプレイに指がかかるのを防いでくれる。また、四隅が少し出っ張るため、本体を握りやすくする効果もある。最初はデザイン的なアクセサリと思っていたが、予想以上に実用的だった。

クレードルとビデオ機器をつなぐ二股のAVケーブル コンセントプラグを収納できる小型のACアダプタ 付属のインナーイヤフォンはトランスルーセントだ


■ PCとのデータ連携

 本誌の読者なら「AV1とPC間でデータのやり取りは可能なのか?」という点が気になることだろう。もしPCで作成したMPEG-4がAV1で再生可能なら、PCでキャプチャしたテレビ映像などをSDメモリーカード経由でAV1に持っていき、移動中やすきま時間に視聴できるのではないだろうか。

 結論からいえば、Windows Media Encoder Ver.7.01で作成したMPEG-4ファイルを、AV1で再生することは不可能だった。しかし、AV1で記録したMPEG-4をPCで再生することは可能だ。Winodws Media Player 7.1で試したところ、何の問題もなく再生できた。拡張子は.asf。AV1で付けたタイトル名もしっかり引き継がれ、WMPのリストに表示される。MPEG-4でテレビ番組をキャプチャしたいPCユーザーにとって、AV1は一つの選択肢となるだろう。

 一方、MP3データのやりとりは一切できなかった。PC→AV1も、AV1→PCも不可能で、SD-Jukebox 2.4を使ってのチェックイン/チェックアウトも行なえなかった。あくまでも単体での使用を想定しているのだろう。

【MT-AV1で録画したサンプル動画】

 素材にはカノープス株式会社の「CREATIVECAST Professional」を使用した。編集した約20秒分をDVテープに記録し、それをソニーのDVデッキ「WV-DR5」で再生。WV-DR5の出力端子とMT-AV1のクレードルを接続し、各モードを録画した。

 なお、音声設定はSファインとファインが「ファイン」、ノーマルが「ノーマル」を選択している。

(c)CREATIVECAST Professional

Sファイン
ファイン
ノーマル
【MPEG-4形式】
336×226ドット

平均1.13Mbps
sfine.asf
(約1.63MB)
【MPEG-4形式】
336×226ドット

平均622Kbps
fine.asf
(約1.06MB)
【MPEG-4形式】
336×220ドット

平均280Kbps
normal.asf
(約450KB)

MPEG-4の再生環境はビデオカードや、ドライバ、OS、再生ソフトによって異なるため、掲載した画像の再生の保証はいたしかねます。また、編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。


■ 「あくまでもAV機器」というスタンス

 シャープでは、女子高生やOLといった若い女性に向けたカジュアルツールとしてAV1を訴求している。そのためか、操作ボタンも極端に少なく、機能も意外なほどシンプルだ。愛称の「ケータイビデオ」が示すように、あくまでも「持ち歩けるビデオ」が本機の基本コンセプトとなっている。

 たしかに、ほとんど片手だけで行なえる操作体系や126gという軽さには、ポータブルMDプレーヤーが得意なシャープらしい完成度が感じられる。画質も「ファイン」以上なら視聴に耐えうる充分な品質なので、ビデオデッキやDVDレコーダでテレビ番組を録画するも、時間がなくて見れないような人にとっては魅力的なツールかも知れない。

 気になるのは、MPEG-4再生時のバッテリの持続時間が約1時間と短いこと。また、説明書には「充電池の残量なくなってから約12時間で、本体メモリ内のデータが消滅する」とある。結局、ACアダプタも携帯することになるだろう。

 もしかすると、この製品を欲しいと思ったユーザーが一番望んでいるのは「PCとのデータ連携を行なってくれるソフト」なのかも知れない。製品コンセプトからは著しく外れるが、活用範囲がさらに広がると思う。それができるようになった時には、ぜひ男性向けの落ち着いたデザインもラインナップして欲しい。


■ 主な仕様

本体メモリ64MB(録画・録音サイズ 約56MB)
液晶ディスプレイ3型透過型TFTカラー
記録・再生形式ビデオプレーヤー:MPEG-4(映像)、MP3(音声)、G.726(音声、再生時のみ)
ミュージックプレーヤー:MP3(CBRのみ)
動画解像度336×220ドット
音声ビットレートビデオプレーヤー:96kbps(ファイン)、40kbps(ノーマル)
ミュージックプレーヤー:128kbps(ノーマル)、96kbps(エコノミー)
量子化ビット数16bit
サンプリング周波数44.1kHz(MP3モード時)
22.05kHz(ビデオプレーヤー「ノーマル」時)
電源リチウムイオン充電池(EA-BL06)
使用時間ビデオプレーヤー:約1時間
ミュージックプレーヤー:約3.5時間
消費電力1.8W
外形寸法約85×82.5×18mm(幅×奥行き×高さ、フロントパーツなし)
重量約126g(電池含む、フロントパーツなし)




□シャープのホームページ
http://www.sharp.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.sharp.co.jp/corporate/news/020207.html
□製品情報
http://www.sharp.co.jp/pav/
□関連記事
【2月7日】シャープ、手のひらサイズのポータブルMPEG-4プレーヤー
―3型TFT液晶搭載、単体で録画も可能
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020207/sharp.htm

(2002年3月28日)

[orimoto@impress.co.jp]


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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