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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第59回:DVD Videoで夢の追記がついに実現!
~ 実は最も先進的なオーサリングツール「MyDVD3.5」 ~


■ できそうでできなかったDVDビデオの追記

 DVDメディアに対する一般PCユーザーの意見として「そんな4.7Gまでデータ貯まるまで待ってらんねーっての」みたいな話をよく聞く。やはり1時間2時間といった長時間の映像を扱わない人にとっては、データ保存ではCD-Rをこまめに焼くか、DVD系ならパケットライトで追記するという使い方になるようだ。

 データの場合はパケットライトでいいとしても、多くのオーサリングツールがサポートする「DVDビデオフォーマット」の場合は簡単に追記することができない。というのも、単に動画データを追記するだけでは全然ダメで、動画ファイルをVOBにしたりメニューなどの情報を格納しているIFOファイルを作り直したりと、全体的に再ビルドが必要になるからだ。

 書き換えを前提とした「DVDビデオレコーディングフォーマット」なら追記や編集が可能なのだが、パソコン上でそれを実現できる環境はあまりにも限られている。すなわち今のところそれをやるならDVD-RAMに行きなさいネ、みたいなところで落ち着いちゃってるのである。

 えーやだー、RW系でも追記とか編集しようよーという話は当然の流れとして出てくるわけで、その辺を何とかしてくれるソフトとして登場したのがソニック・ソルーションズMyDVDの新バージョンなのである。

 MyDVDというと今のところバンドルしかないため、「ああアレでしょ素人向けの自動でメニューとか作ってぺーっと焼けるオマケの」など、業界でも今ひとつパッとしない反応しか返ってこないのだが、筆者の個人的な意見としては、現状のDVDit!よりよくできていると思っている。だいたいメニューが自由に作れないと不満を言う割には、みんなほとんどカスタムのメニューなんざめんどくさくて作ってないのではないだろうか。

 先月末からPioneerの新型DVD-R/RWドライブ「DVR-A04J」の販売が開始されたが、多くの注目はクイックフォーマットができる「インスタントCD+DVD」に集まった。しかし陰ながらMyDVD派だった筆者としては、DVD-RWで擬似的ながらも追記や編集を実現するという「Edit-On-DVDテクノロジー」搭載の「MyDVD ver3.1」に注目していた。

 そしてさらに連休明け、MyDVDの新バージョン3.5が登場した。Ver3.1のEdit-On-DVDテクノロジーをもう一歩進めて、すでに「DVDビデオフォーマット」で書き込まれたVOBファイルを使って再編集できる「OpenDVDテクノロジー」を搭載したというのである。これは「DVDビデオフォーマット」ながらも「DVDビデオレコーディングフォーマット」並みの自由度が実現できるわけで、かなり画期的な技術。当Electric Zooma! ではいち早くMyDVD Ver3.5をお借りすることができたので、早速その新機能を試してみよう。


■ メディアの再編集は簡単

 RWメディアで追記や再編集を可能にする「OpenDVDテクノロジー」の概要を見てみよう。基本的な仕組みはこうだ。

メディア内には[VIDEO_TS]以外に[Sonic]というディレクトリが作られ、その中に必要なファイルが格納される

  1. 最初に映像ファイルをオーサリングして書き込む際に、メディア内にMyDVDのプロジェクトファイルも同時に書き込んでおく。

  2. 次に同じメディアに対して追記するときは、このメディアに書き込まれたプロジェクトファイルとVOBファイルを使ってオーサリングデータを展開。映像の追記や、すでに書き込んだムービーのトリミング、オーサリングのデザイン変更などを行なう。

  3. ここからがDVDフォーマットによって若干違いがあるのだが、DVD-RWの場合は書き込む際にいったんメディア内のデータを全部PCのテンポラリディレクトリにリッピングし、メディアをフォーマット。リッピングしたデータと新規のデータを使って再ビルドし、メディアにまた最初から書き込む。DVD+RWの場合は、再ビルドしたあとメディアのフォーマットなしに、そのまま追記する。

 今回はPioneerのDVR-A04Jを使って実際にこれを行なってみた。最初にMyDVDを使って、普通にオーサリングして書き込みをする。次にMyDVDのファイルメニューから「DVDの編集」を選び、メディアのルートを指定すると、自動的にメディア内に格納されたプロジェクトファイルがロードされ、前回オーサリングした状態が復帰する。

 既存コンテンツに対しての変更は、ムービーのトリミングやボタンのサムネイルポイントの変更、メニューデザインの変更、ボタンの順番変更など、基本的には通常のオーサリング時に可能なことはなんでもできる。もっともRWメディアからの読み出しであるため、HDD上での作業に比べればファイルアクセスに若干のもたつきはあるので、大まかな切り出しは最初にやっておいたほうが快適ではある。

「DVDの編集」を選ぶだけで、メディアの中身を編集できる 既存ムービーのトリミングやサムネイルの変更もできる

 編集作業を終わったら、通常の書き込み手順と同じく「ディスクの作成」を行なうだけで、自動的にリッピングやメディアの消去、書き込みを行なってくれる。ユーザーはただ待っているだけで、安全にコンテンツの再構成が完了するのである。また作成時に別のメディアをドライブに入れておけば、そのまま別メディアに書き込むこともできる。

 すでにビルド済みのDVDメディアの内容をいくらでもいじれるというのは、単純に便利というだけではなく、いつでもやり直しができるというRWメディアならではの特性を、ようやくDVDビデオで発揮できるようになったという意味を持つのである。


■ 意外に高機能なMyDVD

 MyDVDは潜在的には高機能なのだが、マニュアルなどもふくめ、あんまり世の中に周知されていない機能が多いアプリケーションである。

再エンコード時に現われる確認ダイアログ
 例えばエレメンタリストリームのMPEG-2ファイルを食えないと思っている人も多いようだが、実はビデオストリームだけのファイル(m2v)を読み込むと、自動的に同ディレクトリにあるオーディオストリームファイル(m2a)も読み込んでくれる。またDVDビデオフォーマットとして適合しているMPEG-2ファイルは、再エンコードなしで書き込めるし、再エンコードが必要な場合はダイアログで告知してくれたりする。

サンプルのスタイルをビルドして読み込んでみた。既存のスタイルを使ったカスタマイズもできる
 ボタンの順番の入れ替えも、Ver3.1から可能になっている。さらにメニューやチャプター付きのVideoCD2.0の作成も、Ver3.1から可能だ。メニューデザインなども、実は自分で作ることができる。これはAdobe PhotoShop6以降にSonic Style Createrというプラグインをインストールすることで可能になる。プラグインとチュートリアルがここにあるので、興味のある方は試してみるといいだろう。ここまで本格的にできない、と言う人には、既存のスタイルのパーツを組み合わせてオリジナルのスタイルを作ることもできる。

 再生順に関しては、従来のバージョンでは一つのムービーを再生したあといちいちメニューに戻ってしまっていたが、ムービーを連続して再生するように指定できるようにもなった。選択肢としてはON/OFFしかなく、ほかのバリエーションは選べないが、プライベートな作品保存という用途では十分であろう。

 見た目は易しいが、実は結構いろいろできる、そういうところが筆者の気に入っている部分なのである。今のところ筆者が気が付いた不具合としては、カノープスの「MTV1000」で録画した番組を同社の「Canopus MPEG Cutter」でCMカットを行なったファイルを読み込ませると、最初の編集地点までしか読み込まないという問題がある。まあこれはレアケースと言えるだろうが、この問題にはカノープスおよびソニック・ソルーションズ双方が関係しているため、解決には多少時間がかかるかもしれない。


■ 総論

 実はここんとこ筆者はどーかしたんじゃねぇのかと言わんばかりのイキオイでDVDメディアを消費している。というのもだ、関東ローカルな話で申し訳ないが、最近関東ローカル局が面白いことに気づいたのだ。テレビ埼玉とテレビ神奈川でゴールデンタイムにStartrek VOYAGERが放送中であるし、フジテレビでは深夜Startrek DS9が放送中である。

 週に3本もStartrekが放映されると、保存する方も大変だ。だいたい4Mbpsで録ると1枚のDVDメディアに3話入るのだが、3週分貯まるまで待ってからオーサリングして書き込みというのでは、下手すればくじけそうになるぐらい間があいてしまうのである。そればかりではなく、結局のところ3週分貯めているあいだのHDD容量が無駄なのだ。貯金は貯めとけば利子が付くが、MPEG-2ファイルは貯めといてもいいことは起こりそうにない。

 しかしMyDVDを使えば、録画した日にでもとりあえずDVD-RWに書いていけばいい。適当に追記していって、あとで時間があるときに整理すればいいのだ。早めにリムーバブルメディアに退避させておくのは、気分的にも安心できる。

 現在MyDVD3.5は、入手経路としてロジテックのDVD+R/+RWドライブ「LDR-R258U2」にバンドルされたものぐらいしかない。しかしこのバージョンからついに、店頭およびオンライン販売されることになった。発売日は6月7日、価格は1万円弱。旧バージョンユーザーにも、有償だがアップグレードパスがあるようだ。

 DVD-RWにしても+RWにしても、ドライブの性能としては追記能力があることは早くから知られていたが、実際にビデオ系で追記が可能なオーサリングアプリケーションは、今のところMyDVDしかない。RWメディアを活用しようと思う人には、必須ツールであると言えるだろう。


□製品情報(Sonic MyDVD)
http://www.sonicjapan.co.jp/mydvd/
□関連記事
【5月8日】ロジテック、USB 2.0対応のDVD+R/+RW外付型ドライブ
―ファンレス、コンパクト設計
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020508/logitec.htm
【4月9日】パイオニア、DVD-RWフォーマットが1分で完了するDVD-R/RWドライブ
―奥行きが1cm短くなり、DVD-Rの追記にも対応
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020409/pioneer.htm

(2002年5月15日)


= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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