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第36回:日本車がたっぷり登場!
接客時のデモDVDにも最適「ワイルド・スピード」

 怒涛のように発売されつづけるDVDタイトル。本当に購入価値のあるDVDはどれなのか? 「週刊 買っとけDVD!!」では、編集スタッフ各自が実際に購入したDVDタイトルを、思い入れたっぷりに紹介します。ご購入の参考にされるも良し、無駄遣いの反面教師とするも良し。「DVD発売日一覧」とともに、皆様のAVライフの一助となれば幸いです。


■ 非合法公道レースの世界を描く

ワイルド・スピード
コレクターズ・エディション
価格:3,800円
発売日:2002年3月22日
品番:TSUD-32937
仕様:片面2層
収録時間:約107分(本編)
画面サイズ:16:9シネスコサイズ(スクィーズ)
音声:1.ドルビーデジタル5.1ch(英語)
    2.DTS(英語)
    3.ドルビーデジタル5.1ch(日本語)
字幕:1.日本語
    2.英語
販売元:株式会社ソニー・ピクチャーズ エンタティンメント

 毎週土曜日にロサンゼルスを舞台に繰り広げられる非合法公道レース。一晩に1万ドルを稼ぎ出す猛者もいる世界。その世界に君臨するのがドミニクだ。そこに突如としてあらわれた新たなレーサー、ブライアン。彼は、タフな走りで熱狂させ、たちまちドミニクに気に入られる。

 しかし、ブライアンは、連続トラックジャック事件を追う、潜入捜査官だった――。

 ストーリーはこんな感じだが、一旦見始めればそんなストーリーなどどうでもよくなる。ただ、ただ、カリカリにチューンナップした車が、猛スピード駆け抜ける。それを楽しむ映画。

 実際、観ていてもストーリーを意識することはほとんどなかった。ブライアンは潜入捜査官という設定なのだが、その設定がなくても映画として成立するような気がする。


■ リアルなスピード感を追求!

 この映画で描かれている世界は実際にある。というのも、脚本自体が「ヴァイヴ」誌に載ったケン・リーの記事を元にして、ゲイリー・スコット・トンプソン、エリック・パーグキスト、デヴィッド・エイヤーの3人の脚本家が、トンフソンの原案から共同執筆している。

 監督は「デイライト」、「ドラゴンハート」などのロブ・コーエン。現実のストリートカーレースの世界を取材しつつ、CGと本物のカースタントを組み合わせて、そのスピードあふれる世界観を再現している。

 さらに、NIRA(National Import Racing Association)のクレイグ・リーパーマンと、インポート・カー企業家のRJ・デ・ヴェラが、オンセット・カー・コンサルタントを務めてリアリティを補強。加えて、クレイグ・リーパーマンのオレンジのスープラや、エキストラとして100台以上ものレーシングカーへと改造された車が登場する。

 現在、ストリート―カーレースで注目されているのは、日本のスポーツカー。向こうから見れば、輸入車になるわけだが、「ライス・ロケッド」といわれ人気を集めている。この映画に登場する車もRX-7、インテグラ、スープラ、スカイライン……、と日本人になじみのある車がほとんど。こういう映画を日本で制作するとスポンサーの関係から、大手各社の車を同列に登場させるのは難しいので、外国映画ならではといえるだろう。

 ただ、日本人としては、車ものといえば峠を攻めるとか、ラインどりを1mm単位で調節するというような、ワビ・サビの世界の方が好みの人も多いのではないだろうか。この映画では、もちろん、カー・アクションシーンもあるのだが、レースシーンは基本的にいわゆるゼロヨン。NOS(ニトロ噴射装置)に、車と人間がどれだけ耐えられるのかという我慢比べの様相を呈している。まあ、何も考えずに観れるという意味では、楽しいのだが……。

 とはいえ、全米での興行収入1億4,500万ドルを突破。日本でもDVDが初登場で売り上げ1位と、好調なセールスを記録している。映画としての迫力と、わかりやすさが、多くの人に受け入れられているのだと思う。


■ DVDとしては?

 映像はシネスコサイズでスクイーズ収録、平均ビットレート5.79Mbps。音声はドルビーデジタル 5.1ch(英語/日本語)、DTS(英語)。音声のビットレートは、日本語、英語ともドルビーデジタル5.1chは384kbps、DTSは768kbps(いわゆるハーフレート)。ロブ・コーエン監督による音声解説も入っている。ちなみに、この音声解説、1人で間をおかず、よくしゃべっているのに感心してしまった。

Bit Rate Viewerで見た本編のビットレート

 残念なのはDVDプレーヤーの音声切り替えボタンで、音声トラックを切り替えられないところ。おそらく、AVアンプなどがDTS非対応な場合への配慮だと思うのだが、かならずメニュー画面に入らなければ切り替えられない。また、多くのDTS収録ディスクでは、起動画面でDTSかドルビーデジタルかを選択する画面が出る。しかし、このディスクはとりあえずドルビーデジタルで本編が始まってしまう。DTSで聞きたい場合は、一旦メニュー画面を出してDTSに切り替える必要がある。

 この仕様にした弊害か音声解説も、メニュー画面からでないと呼び出せない。それに、メニュー画面もいちいちアニメーションして、結構うっとうしく思った。

 ビットレートは5.79Mbpsとあまり高くはないが、画質はそつなくまとめてあり、さすがSPEといったところ。高画質化した現在のDVDの中でも、最高画質とはいえないが、高画質に分類できる。また、音声もドルビーデジタル、DTSとも、見事に5.1chしていて楽しい。このタイトルではドルビーデジタル、DTSとの間にそれほど大きな音質の差があるとは言えないが、DTSの方がより奥行きを感じられることも確か。DTS対応の環境をもっていれば、やはりDTSで聞くべきだろう。

 映像特典も、「コレクターズ・エディション」の名に恥じない充実ぶり。列挙するだけでも、「メイキングドキュメンタリ」、「ロブ・コーエン監督による音声解説」、「レーサーX:製作原案記事」、「未公開シーン」、「マルチカメラアングルで見るスタントシーン」、「特殊効果解説」、「PG-13獲得のための編集風景」、「視覚効果モンタージュ」、「ストーリーボードと実写との比較」、「ミュージック・ビデオ」、「ミュージック・ハイライト」、「オリジナル劇場予告編」、「プロダクション・ノート」、「キャスト&スタッフ」と一段落を費やしてしまう。

 特に面白い試みなのが、「マルチカメラアングルで見るスタントシーン」と、「視覚効果モンタージュ」。「マルチカメラアングルで見るスタントシーン」では、1つのスタントシーンの各カメラからの映像を見られる。マルチアングル機能は使用していないので、切り替えながら見るということはできないが、それぞれの映像の使える部分をつないでいって、1つのシーンを作り上げるということが実感できる。視覚効果モンタージュは、同様の手法で実写とCGの合成過程を見せるもの。こちらも、どういう風にCGを使うのかがわかって面白い。

 個人的に特典の中で、一番面白いと思ったのが「未公開シーン」。最近のDVDでは、未公開シーンが映像特典として入っていることは珍しくないが、ワイルド・スピードには未公開シーンに音声解説が入っている。そのシーンを、監督がなぜボツにしたのかを語っている。特に、カットされたキスシーンでは、「撮っているうちからカットしようと思っていた。でも、このシーンではスタッフにも残業手当てが出たし、みんな得した」なんてことを語っていたりして、舞台裏が覗けて楽しい。

 ちなみに、このディスク、起動すると最初に現われるのが、USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)のCM。初めて見たとき、ちょっと面食らった。つづいて、流れるのが、主演のポール・ウォーカーが語る「訓練されたスタントマンが行なっているので……」というような、お決まりの注意。でも、英語そのままだし、字幕もなし。日本版DVDに、この注意を収録したことに意味があるのか疑問に思った。まあ、どちらもスキップできるので、その点は良心的といえる。


■ はたして買いか?

 大きなディスプレイ、DTS環境がある人なら、3,800円は文句無く買い。存分に所有システムのポテンシャルを引き出して欲しい。来客時のデモディスクとしても最適。あるいは、このディスクをきっかけに、5.1ch(もちろん、6.1chでも、7.1ch、8.1chでもかまわないが)を導入するのもいい。決して後悔しないと思う。映像特典もかなり充実しているので、そのことからも、決して3,800円は高くない。

 ただ、1点だけ。ストーリーには期待しない方がいい。1時間47分、ロブ・コーエンが作り出したスピードに乗っかる。それだがこの映画の正しい楽しみ方だと思う。ちなみに、1分46秒強のエンドクレジットの後に、エピローグが。さらにその後には、あまり見る機会の無いCCや、マクロビジョンのロゴも登場するので、是非とも最後の最後まで見てほしい。

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(2002年6月4日)

[furukawa@impress.co.jp]


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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