【バックナンバーインデックス】


第58回:YAMAHAが発表した新AWシリーズとDTM関連製品群


 YAMAHAは6月11日、都内で新製品の発表を行なった。今回発表されたのは低価格なオーディオワークステーション「AW16G」をはじめ、USB端子を搭載したシンセサイザキーボード「S90」、USBオーディオデバイスの「UW500plus」や、「UW10」など。

 まだ、実際にモノが手元にあるわけではないが、発表会で見た感想などを元にして、これらの新製品をレポートする。


■ より手軽で低価格で登場した「AW16G」

 これまでYAMAHAでは「AW4416」、「AW2816」というDAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)をリリースし、特にAW4416はプロユーザーにも大きな評価を得てきた。AW2816はAW4416の機能縮小版として登場したのだが、コンシューマーユースというのには、やや高価だし、サイズ的にも大きかった。その一方で、FOSTEXやKORGなどのメーカーが、より手軽でコンパクトで低価格な製品をいろいろと出してきている。

 その混戦模様のパーソナル市場に対し、AWシリーズとして製品を投入したのが、このAW16Gだ。AWという名称だけに、当然エンジン部分もAWシリーズのものを継承しており、36チャンネルデジタルミキサー、2系統のデジタルエフェクター、CDと同じ16bit/44.1kHzで16トラック録音が行なえるHDDレコーダー(20G HD内蔵)、簡単にサンプリングやループが行なえるクイックループサンプラー、オーディオCD制作やデータのバックアップなど行えるCD-R/RWドライブを一体化(CD-RWドライブはオプション扱い)。

 AW4416やAW2816と比較すると、かなりコンパクトになっており、サイズとしては425×321.5×98.8mm(幅×奥行き×高さ)、重量4.4kg。価格はオープン価格となっているが、オプションのCD-RWドライブを搭載して店頭価格が10万円を切る見込み。

 ちなみに、CD-R/RWドライブはノートPC用のドライブが採用されているので、相性問題などを考えれば、オリジナルのものを搭載しておくのが無難そうである。

AW16G AW16Gの背面 オプションでCD-RWドライブを搭載


 もう少し機能面を見ていくと、まず従来のAWシリーズと比較してもより操作性がよくなっていることがあげられる。特に初心者にとってわかりにくかった、チャンネルとトラック間でのパッチの設定などが非常に簡略化され、簡単なスイッチ操作だけで接続できるようになっている。

 また全チャンネルには、4バンドのパラメトリックイコライザと、コンプレッサなどのダイナミックスが搭載され、YAMAHAのデジタルミキサー「02R」に匹敵する36チャンネルのミキサー機能を有している。この操作も新搭載のセレクテッドチャンネルノブにより、音を聞きながらツマミをまわすだけでのフィジカルコントロールが可能となっている。

 エフェクトも強化されており、AW4416やAW2816に搭載されていたものに加え、ディストーションやスピーカーシミュレーターなどギターの演奏や録音に最適なエフェクトを追加。もちろん、入力は従来どおりハイインピーダンス対応端子が用意されているので、ギターを直接接続するだけで、手軽に高品質なレコーディングが実現できる。

 ここまでの内容を見ると、AW4416やAW2816よりもAW16Gのほうが、上位クラスの機種のようにも思えるが、もちろん価格がずっと安い分、制限されている機能も多々ある。その最大のポイントは量子化ビット数が24bitではなく16bitに制限されている(ミキサー部は24bitに対応している)こと。また、最大同時録音も8トラックまでであり、大規模なレコーディングには向かない。


■ USBやスマートメディア対応のキーボード「S90」

 AW16Gと並ぶ、今回の目玉製品がシンセサイザキーボードの「S90」。従来からYAMAHAはSシリーズとして「S03」、「S08」を出していたが、これはその上位機種。また、YAMAHAはフラグシップモデルのシンセサイザとして「MOTIF」という別ラインナップも出ているが、このS90にはMOTIFと同様のシンセサイザエンジンを搭載。「MOTIF8」(325,000円)と同様の88鍵バランスドハンマー鍵盤を採用しながら、価格を248,000円に抑えている。

s
シンセサイザ・キーボードのS90 88鍵のバランスドハンマー鍵盤を採用

 基本的には、「AWM2」というYAMAHAのPCM音源のシンセサイザとなっているが、そのウェーブテーブルデータの容量は110MBと大容量(16bitリニア換算)。MOTIFと比較すると、アコースティックピアノ音源専用に26MBの新波形データを追加しているのが特徴だ。

スマートメディアも使用可能 プラグインボード用のスロットを3基装備

 こうした、シンセサイザキーボードとして完成された製品である一方、コンピュータとの接続にもかなりの重きが置かれているのがS90の特徴の1つともなっている。まずハード的な面からすればUSB端子を搭載するとともに、スマートメディアのスロットが用意されている。スマートメディアには、音色データなどが記録できる。また、mLAN用拡張スロットも用意されており、オプションのカードを挿すことにより、IEEE 1394での接続も可能になっている。

 また、拡張スロットとしてはmLAN用のほかに、Modular Synthesis Plug-in Boardスロットも3つある。ここには、YAMAHAの音源ユニットである「MU1000/2000」などでオプションとして利用できたカードを挿すことが可能。すでに発売されているプラグインボードである「PLG150-AN」(アナログシンセサイザー)、「PLG150-DX」(FM音源のDX7相当のシンセサイザ)などを追加することができる。


MIDI&オーディオシーケンサのSQ01 Voice Editor for S90 シーケンスソフトから各種パラメータをコントロールできる

 一方ソフトはというと、これがなかなか面白い。まず、S90にはWindows/MacintoshのハイブリッドのCD-ROMがバンドルされており、この中にWindows用としてはYAMAHAオリジナルのMIDI&オーディオシーケンサ「SQ01」が入っている。ユーザーインターフェイス的にはSOLとほぼ同じもので、スペックは下表のようにある程度制限されている。また、SOLに搭載されているタイムスライス/タイムストレッチ機能は搭載されていないようだ。

【SQ91の主な仕様】
基本機能・トラック数:∞
・テンポ:4.00~300.00
・外部同期:MIDI/MTC/MMC
・マルチソング対応
MIDI機能・音符分解能:四分音符/960
・データ入力方式=リアルタイム/ステップ/マウス/数値
・マルチチャンネルトラック対応
オーディオ機能・サンプリング周波数:96/48/44.1/22.05/11.025kHz
・量子化ビット数:32/24/16/8bit
・ASIO対応
・オーディオミキサー:8チャンネル(チャンネルごとに2インサーションエフェクト/1エフェクトセンド)
・2マスターエフェクト
・ソフトエフェクト:30種類
・ミキサーコントロール:オートメーション
・リモートコントロール
主なウインドウ・トラックビューウインドウ
・ピアノロールウインドウ
・リストウインドウ
・MIDIミキサーウインドウ
・オーディオミキサーウインドウ
プラグイン・オートアレンジャー
・Voice Editor for S90
・File Utility

 「Voice Editor for S90」という音色エディタも搭載されており、これでS90の音色のほぼすべてをコントロールできるようになっているようだ。さらに、CubaseVST用、Logic用、SONAR/Cakewalk Pro Audio用のリモートファイルというものも入っている。これを使うことで、各シーケンスソフトから各種パラメータをコントロールすることも可能になっている。


■ 新登場のプラグインボード「PLG150-DR」、「PLG150-PC」

 S90にプラグインボードの拡張スロットが3つ用意されていることを紹介したが、このプラグインボードとして新たな製品が2つリリースされた。ドラム専用プラグインボード「PLG150-DR」、パーカッション専用プラグインボード「PLG150-PC」で、それぞれ価格は29,800円。ともにAWM2音源=PCM音源を採用しており、付属のソフトを用いてWindowsおよびMacintoshからコントロール可能となっている。


PLG150-DR PLG150-PC Windows&Macintoshどちらからもコントロール可能

 ともに最大同時発音数32音となっているが、もちろん本体とは独立した音源なので、本体のポリ音数を消費することなく、32音ポリをアドオンできる。同様にエフェクトもそれぞれ独自に搭載したものがあり(リバーブ×11タイプ、インサーション×42タイプ)、これらも本体側には影響を及ぼさない。

 ドラム音源である「PLG150-DR」は、MOTIFと同等のドラムキットに加え、最新のステレオキットが2種類搭載されており、プロクォリティのドラムセットを計80種類利用することができる。またパーカッション音源である「PLG150-PC」には、サンプルライブラリーの定番、Q Up Artsの「Latin Groove Factory」からサルサ系/サンバ系を中心に多彩なパーカッションサウンドが搭載されている。音色数的には、こちらも80キットとなっている。




■ 新シーケンスソフトSQ01をバンドルして新登場「UW500」
  半年遅れで登場したUSBオーディオインターフェイス「UW10」

 PCとの連携を基本とした製品はこの他にも2つあった。1つは、USB接続のオーディオ&MIDIインターフェイス「UW500plus」。もう1つはコンパクトなUSBオーディオインターフェイス「UW10」だ。


UW500plus UW500plusの背面

 まずUW500plusは見た目からもわかるとおり、従来から発売されている「UW500」とハードウェア的には同じもの。スペックは下表の通りで、アナログおよびデジタルの入出力端子を持つとともにMIDI端子も装備している。

【UW500plusの主な仕様】
オーディオ録音/再生チャンネル数録音=ステレオ/モノラル×1系統
再生=ステレオ ※録音再生同時可能(ステレオ1系統)
AD/DA変換20bit
サンプリング周波数32kHz/44.1kHz/48kHz
MIDIチャンネル数MIDI OUT=16チャンネル(1ポート)
MIDI IN=16チャンネル(1ポート)
TO TG=OUT 80チャンネル(5ポート)/IN 16チャンネル(1ポート)
操作子・入力ボリューム×2
・入力ゲイン切替スイッチ(マイク/ギター/ライン)×2
・入力切替スイッチ(アナログモノ/アナログステレオ/デジタル/トラックダウン)
インジケーターPOWER/USBアクティブLED
接続端子・フロントパネル=インプット1/2(標準フォーン)
・ヘッドフォン(標準フォーン)
・デジタルイン(OPTICAL)
・デジタルアウト(OPTICAL)
・リアパネル=インプット3(ライン入力/RCAピン)
AUXイン(RCAピン)
・アウトプット(RCAピン)
・MIDI IN-OUT
・TO TG
・USBコネクタ(USB Type B)
・DCイン
電源方式セルフ電源(付属ACアダプターPA-3B)
消費電力10W
外形寸法・重量200×158×47mm(幅×奥行き×高さ)、800G

 EDIROL製品がMIDI音源も搭載した製品を出しているのに対して、UW500はそれを装備しない代わりに、ソフトシンセを利用するというコンセプトになっている。そして、UW500のバンドルソフトを前出のSQ01にしたがUW500plusというわけだ。Macintosh用には「XGworks lite V3.0A」が用意され、ハイブリッド製品となっている。

 また、従来からバンドルされていた波形編集ソフトであるTWEもバージョンアップし「Wave Editor TWEplus」として新登場している。主な変更点は、MP3エンコーダ&デコーダを搭載したこと。ユーザーインターフェイス的には大きな変更はないようだ。


Wave Editor TWEplus MP3エンコーダ&デコーダを新たに搭載 UW10

 そしてもう1つが、コンパクトでUSBバスパワードのオーディオインターフェイス「UW10」。これについては、2001年の10月に開催された2001楽器フェアにて参考出品されていたが、ようやく発売に漕ぎ着けた。これにもTWEplusがバンドルされているほか、ソフトシンセのS-YXG50もWindows用とMacintosh用がバンドルされている。価格はオープンプライスとなっているが、店頭では12,800円~13,800円程度となる見込み。


DTXPRESSII UD-Stomp

 このほかにも、エレクトリックドラム「DTXPRESSII」、空間系エフェクト「UD-Stomp」、エレクトリックピアノ「PF-1000」や、「PF-500」なども発表された。今回は発表会レポートという形をとったが、またモノが入手できれば詳細についてレポートしたい。


□ヤマハのホームページ
http://www.yamaha.co.jp/
□ニュースリリース(AW16G)
http://www.yamaha.co.jp/news/02061102.html
□ニュースリリース(S90)
http://www.yamaha.co.jp/news/02061101.html
□ニュースリリース(DTXPRESS II)
http://www.yamaha.co.jp/news/02061001.html
□関連記事
【6月11日】ヤマハ、オーディオワークステーションなど4機種
―USBオーディオインターフェイスも新発売
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020611/yamaha.htm
【2001年9月3日】【DAL】第25回「AW2816」が自宅にやってきた!!
~その3: マスタリングからCD作成~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010903/dal25.htm
【2001年8月27日】【DAL】第24回「AW2816」が自宅にやってきた!!
~その2:早速、レコーディング!~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010827/dal24.htm
【2001年8月20日】【DAL】第23回「AW2816」が自宅にやってきた!!
~レコーディングからCD制作までできるワークステーション~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010820/dal23.htm

(2002年6月17日)

[Text by 藤本健]


= 藤本健 = ライター兼エディター。某大手出版社に勤務しつつ、MIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase VST for Windows」、「サウンドブラスターLive!音楽的活用マニュアル」(いずれもリットーミュージック)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。


00
00  AV Watchホームページ  00
00

ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

Copyright (c) 2002 impress corporation All rights reserved.