気になるグッズを衝動買い


【バックナンバーインデックス】

第70回:ポータブル環境でMP3録音するには
エンコーダ搭載MP3プレーヤー「MPMan M-E2002」


 AV製品はピンからキリまでいろいろありますが、いわゆるメインストリーム以外にはいろんなおもしろいアイテムがたくさんあります。ここでは思わず衝動買いしたくなるけど、冷静に考えるとどうかな~? と、気になる「モノ」に積極的なアタックを繰り広げていきます。

MP3でボイスレコードファイルが管理できれば……

 この間ゲットしたボイスレコーダ「東芝 IC-SD2」は、ボイスレコーディング機能に加え、漢字表示対応のタグ情報表示機能も備えたMP3/AACシリコンプレーヤーとして使えるなかなかいい感じのブツでした。

 もちろん、ボイスレコーディング機能の方もかなり使いやすいです。が、しかし、面倒なことが一点だけ。本体のボイスレコーディング機能にはあまり不満はないんですが、録音されるファイルが独自形式になってしまうのがちょっと……。

 ボイスレコーダのメリットの1つに、録音可能時間が長いということがありますが、その録音時間の延長のためなのか、ほとんどのボイスレコーダは録音されるファイルはPC上では互換性の薄い独自形式になってしまいます。もちろん、ほかの形式に変換することは可能ですが、ちょっと管理を怠ったりしていると、そのファイル数は膨大に。変換にも時間がかかるし、直接MP3で録音できるのならラクなんだけどなー。

 などという思いを抱きつつ、いつものように量販店をうろうろしていると、MP3プレーヤーコーナーでちょっと気になるものを見つけてしまいました。それが「MPMan MP-E2002」でございます。

 この製品、MP3プレーヤーの老舗ブランドの「MPMan」シリーズとはいえ、見た目はただのシリコンMP3プレーヤー。本体に64MBのメモリを内蔵するほか、スマートメディアスロットを装備した珍しくないタイプです。しかし、MP3エンコーダを搭載し、内蔵マイクも装備して、ボイスレコーディングが可能。また、ライン入力とモノラルながらスピーカーも搭載しているなかなか高機能なブツだったのです。

 標準価格はオープンプライスですが、店頭価格は22,800円。ふむ、ただのMP3プレーヤーならば少々お高めの価格設定ですが、マイクとMP3エンコーダを内蔵していてこの価格ならいい感じかも。ボディサイズも59×17×88mm(幅×奥行き×高さ)、重量66g(電池除く)とかなりコンパクト。うーんいいね。では、これください。

 ということで、同梱品の確認を。本体のほかには、USBケーブル×1、ステレオイヤフォン×1、ステレオミニケーブル×1、単4型アルカリ乾電池×1、CD-ROM×1。MP3関連製品としては、まー標準的でないかと。改めて手に持ってみると、ボディは手のひらに収まる程度にコンパクトで、電池を挿入した状態でもかなり軽く、形状も握ったときにしっくりとなじみます。んじゃ、使ってみますかね。


プレーヤーとしては……貧弱です

 では、まずはプレーヤーとして使ってみることにしましょう。本体にMP3ファイルを転送するには、付属の転送ソフト「MP3 Manager」を使用する必要があります。ということで付属のCD-ROMからインストール。対応OSはWindows 98/98 SE/Me/2000/XP。このソフトとは別に、エンコーダとして「RealJukebox」が付属しております。

 インストール終了後に、USBケーブルを接続。ちなみに、本体の端子は通常のミニ形状なので、市販のケーブルも流用できると思います。と、ここでちょっと問題発生。この機器はドライバを要求するらしく、CD-ROMから改めてドライバを検索する必要がありました。ま、それ以外は特に問題なし。

 「MP3 Manager」のインターフェイスは、エクスプローラー風でわかりやすい。ただ、内蔵メモリとスマートメディアは別々に管理されるのがちょっと面倒かも。それ以外はまったくいい感じで、音楽ファイルの本体へのダウンロードのほか、本体側で録音したファイルもPC側に転送可能。とりあえずは、音楽ファイルを転送してっと。

 で、USBケーブルを外し、電源ON。……ここで重大なことに気づきました。このプレーヤー、ID3タグが表示できません。いや、漢字が表示できないとか、そういうレベルの話ではなく、本気でデジタル数字表示のみです。店頭で確認したときに、「ちょっと液晶が狭いなー」とは思ってましたが、まさかこんな罠が潜んでいるとは。バックライトもないし……。いや、確認しなかった自分も悪いんですがね。それにしてもトレンドに反した仕様だなー。

 んー、プレーヤーとしての価値は半減って感じですが、とりあえず聞き続けてみます。音質については、ま、可もなく、不可もなく、という感じ。ホワイトノイズは多少ありますが、それほど気になるわけでもなく、ノーマル状態では特に強調している音域もなし。イコライザは「JAZZ」、「ROCK」、「POP」、「CLASSIC」にノーマルを加えた5モードありますが、やはりノーマルが一番聞きやすいですね。

 操作ボタンの配置はわかりやすくていいと思います。ボリュームは左側にあり、ボタンも大きく押しやすい。けど、サーチは無音。うーん。本体右に備えられた「EQ/RPT」ボタンを2秒以上押すと、リピートモードを選択可能。1曲再生、オールリピート、ランダム再生などの定番のほか、珍しいのは曲の頭10秒だけづつを再生する「INTORO」モードも用意されていること。また、区間リピートも可能で、再生中に「A-B」ボタンを2回押すと、指定部分をリピート。サビだけ聞きたいときなんかには便利だと思います。

 それにしても、ID3タグに対応していないのがかなりつらい……。表示情報は、トラック数と再生時間、ビットレートくらい。電池持続時間も10時間と普通だし……。本体内蔵スピーカーがあったり、珍しいリピートモードがあったりで、個性的な部分もあるし、軽量な本体は携帯するにも便利そうですが、プレーヤーとしてはやっぱりねー。

 ま、プレーヤーとしてはお気に入りの曲を数曲入れておいて、「一人ヘビーローテーション」したい時に使用する、って感じでしょうか。

同梱品一覧。ま、こんなもんでしょう 本体正面。マイクは真ん中、スピーカーは上部の穴にあり、中央の三角形のボタンが+/-スキップ、停止 本体右側面。スライド式の「HOLD」スイッチと、EQボタン。その下にスマートメディアスロットを装備

本体左側面はボリュームだけ。ボタンが大きいので操作しやすい 本体上面にUSB端子、ライン入力、ヘッドフォン出力を装備 本体底面。スマートメディアのイジェクトスイッチと電池収納部がある

再生中の液晶表示。ID3タグは表示できず情報は数字のみ ファイル管理ソフト「MP3 Manager」。エクスプローラー風でわかりやすい


録音関連機能はかなり充実

 では、続けて録音を。録音するには再生ボタンの右脇にある「REC」ボタンを押すだけ。停止は停止ボタン。非常に簡単。音声を感知しての自動録音機能も搭載しており、なんと3段階から感度を設定することができます。おお、ここまでは期待してませんでしたよ。

 内蔵マイクの特性はというと、感度は少々高めな印象。3~4mほどの会話音も拾ってくれる代わりに、放射雑音も結構拾います。会議録音にも使えるんじゃないでしょうか。

 デフォルトでの内蔵マイク録音ビットレートは32kbps。このビットレートでも会話の内容は聞き取れるレベルですが、ビットレート192bpsで録音したところ、さすがに内蔵マイクでは性能に限界があるからか、放射雑音ばかりが耳に付きそれほど違いは感じられませんでした。ま、32kbpsではさすがに遠方の声が聞き取りにくくなる場合もあったので、64kbpsあたりが最適と思いますね。

 で、ライン入力からの録音は、デフォルトで128bpsでの録音。ライン入力ジャックにプラグが差し込まれると、自動的にライン入力モードに変わり、録音のタイミングを逃すこともありません。さらに、曲の始まりを感知して自動的に録音を開始する「シンクロ」モードも搭載。録音音質はというと、アナログ入力だけにちょっと劣化はありますが、リッピングしたものと聴き比べてみると、硬い音の輪郭がぼやける程度で、聴感上はほぼ同じ。

 ビットレートは内蔵マイク、ライン入力ともに16/32/64/128/192kbpsで切り替え可能。ううむ、細かい設定ができますなー。なお、デフォルトでは内蔵メモリに録音ファイルが作られますが、スマートメディアに録音するには、PCでのドライブ選択のように録音先を変更する必要あり。ここがちょっと面倒かな。いつも内蔵メモリばかり使用していると、スマートメディアの存在を忘れそう。

 それにしても、設定項目が多く、好みの状態にカスタマイズできる点がすばらしい。上記以外の設定項目以外にも、「MENU」ボタン(再生時のA-Bボタンと共用)を押すことで、残容量、ファイルの消去も可能。残容量を確認して、要らないファイルを消すことで、録音領域を確保することができます。だた、トラック数でしかファイルを確認できないし、曲を消去した場合残るトラックが繰り上がるため、管理はややこしいですが……。

 ま、液晶のデジタル数字表示はモードの確認に手間取ってしまうのが難点ですが、覚えてしまえば問題なし。外観こそはプレーヤーですが、ボイスレコーダと言ってもいいほどの録音機能を備えてるのがいいやね。

 そして、内蔵スピーカーを備えている点に注目。普段はイヤフォンで聞くことが多いですが、ボイスレコーダとして使用していると、イヤフォンの存在が結構じゃま。内蔵スピーカーの音質は「確認用」程度ではありますが、音楽の再生も可能だし、ボイスレコーディングした音声は、よほど遠くの話し声でない限り聞き取れます。

 うーん、プレーヤー、レコーダーの機能を比べてみると、この製品はレコーダーとしての機能に重きを置いている製品と言えるでしょうね。

内蔵マイクのビットレート設定画面。マイクのアイコンが出る ファイルの消去画面。トラック単位での消去のほかに、フォーマットも行なえる メモリの残容量表示。S1は内蔵、SEがスマートメディア


ポータブルMP3エンコーダとして使おう!

 まずですね、プレーヤーとしての使い勝手はかなーりよろしくありません。なんといっても表示機能が数字のみってのがいただけません。ID3タグ情報が、漢字で表示できるかどうかがMP3再生関連で一番気になるところだった自分にとって、これではあまりにもお粗末。おまけにサーチも無音だし。

 ただ、結構小さめのボディの中にMP3エンコーダを内蔵している製品というところがポイント。ビットレートの変更など、設定も本体だけで可能。MP3だけに、音声ファイルの管理もラク。録音関連機能は充実していて、本体で録音したものをアップロードすることも可能。しかも内蔵マイクによるボイスレコーディングだけでなく、ライン入力から直接MP3にエンコードできるので、再生機器があるなら出先でもクリアな音声でMP3ファイルで録音可能。一番のメリットは、気軽に持ち運べる「ポータブルMP3エンコーダー」として利用できることですな。

 内蔵マイクでライブ録音……はちょっとアレとして、例えばカラオケパーティーの様子を録音して、自分で運営しているサイトでMP3ファイルとして公開したりとか、友人宅で気になった音源をライン入力でMP3に録音したりとか。録音後は本体からPCにファイルを転送するのも簡単。汎用性の高いMP3を直接管理できるので、ファイル管理も簡単。

 ボイスレコーダとしてもかなり使いでがあって、ビットレート32kbpsで録音すれば64MBの内蔵メモリだけでも4時間程度の録音は可能。ま、電池持続時間は最大9時間ですが。

 ちょっと気になる点といえば、再生時のサーチが音付きでなかったり、長時間録音の際にブックマークする機能がなかったりと、本職のボイスレコーダなどと比較すると多少見劣りする点もあります。が、レコーディングしたファイルはPCでストレージする際に変換することなく、いろいろなアプリケーションで再生できるってのがいいですね。

 外出時に録音する機会が多く、それをPCで簡単に管理したい人や、自分の管理するサイトでMP3ファイルを手軽に公開したいという方には結構いい製品だと思います。間違ってもプレーヤーとして使いたい方にお薦めできませんが。

□丸紅インフォテックのホームページ
http://www.m-infotec.co.jp/
□製品情報
http://www.m-infotec.co.jp/news/0205_02.shtml
□関連記事
【5月24日】丸紅インフォテック、MP3エンコーダ搭載「MPMan MP-E2002」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020524/minfo.htm

(2002年7月10日)

[fujiwa-y@impress.co.jp]


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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