気になるグッズを衝動買い


【バックナンバーインデックス】

第72回:α波で「癒し」が得られるオーディオ機器?
一体型CD/MDシステム「ビクター NX-X7WMD」


 AV製品はピンからキリまでいろいろありますが、いわゆるメインストリーム以外にはいろんなおもしろいアイテムがたくさんあります。ここでは思わず衝動買いしたくなるけど、冷静に考えるとどうかな~? と、気になる「モノ」に積極的なアタックを繰り広げていきます。

省スペースで癒されたい

 えー、近況をご報告いたしますと、我が家は今のところいまだカオスの只中にございます。日本語で言えば混沌でございます。気が向いたときに少しづつ整理しておりますが、この混沌から全面的に解放される日はまだしばらく先のようです。

 とまあ、こんな状況ですから、我が家に大型の機材を導入するのはしばらく無理。本当は大型テレビとか、本格的な5.1chシステムとかを導入したいと考えてはいるのですが、部屋の状況がそれを許してくれません。こんな部屋だから、本来自宅にあるはずの「癒し」などございません。

 そんな我が家に住みながら、「あー、何でもいいから癒されてー」などと都合の良い思いを抱きながら量販店に足を踏み入れたとですよ。そしたらあなた、以前目をつけていた製品が値下げされてるじゃないですか。それがビクターのCD/MDシステム「NX-X7WMD」でございます。

 この製品、いわゆる「ラジカセ」型の製品で、スピーカー、CD、MD、AM/FMチューナを一体化したもの。これは、まあ各メーカーからいろいろな製品が出てますから珍しくはありません。ポイントは独自機能。

 実は「α波と同じ周波数を作り出す」という、癒し系音場補正回路「αサウンド」を搭載しているのです。α波といえばリラックスしているときに出る脳波。医学的な知識は持ち合わせておりませんが、「コレが出るとリラックスしてる証拠」という程度の知識は持っていて、ニュース記事を読んだときは「うーん、いいかも」と思っておりました。

 しかし、その思いを阻んだのがその価格。標準価格はオープンプライスですが、2月15日の発売当初の店頭価格は43,000円程度。ちょっと気軽には手が出ない製品でした。しかし、発売から約半年が経とうとする現在、店頭価格は約8,000円下がって34,800円。うーん、まだ高いけど、これなら出せないでもない価格。

 一体型システムなので、設置スペースの少ない我が家でも運用可能、その上「癒し」も得られるかも……。ということで、結局購入してしまいました。カラーバリエーションはシルバーとブラックの2色がありまして、シルバーはスピーカーがネット、ブラックはメッシュ状の金属でカバー。うーん、ブラックだと芸がないから、ここはシルバーですな。


一体型システムとしてはまずまずのデキ

 では、同梱品の確認を。本体のほかには、リモコン×1、AMループアンテナ×1、リモコン用単3型乾電池×2本、電源コード×1本という構成。さすがに一体型システムだけあって、梱包構成品は簡潔ですな。

 本体にはキャリングハンドルや、ロッドアンテナなど、可搬性を考えた装備は一切なし。もちろん、電池など使えるわけはありません。うーん、形状はいわゆる「ラジカセ」に酷似しているけれども、システムとしてはなるほどミニコンポと同じような構成。「据え置き使用を前提として、設置スペースを少なくするよう一体化したシステム」と理解すればよろしいかと。

 が、一見した形状はまさに「ラジカセ」そのもの。自分も最初はそう思ってました。だから箱から出してキャリングハンドルがないことに愕然。しかし、背面にはプッシュ式のAMアンテナ端子と、75Ω同軸FMアンテナ端子を見て、「あ、なるほど、一応ミニコンポというコンセプトなのね」と納得した次第。

 デッキ類は、CD×1、再生専用のMD×1、録音/再生機能付きMD×1という構成。AM/FMチューナを内蔵して、背面にはAM/FM入力端子のほかに、ステレオミニのヘッドフォン、ライン入力端子を装備と。ヘッドフォン端子が背面にあるのは理解不能ですが、それ以外はこのサイズの音響機器としてはかなりいい感じではないでしょうか?

 MDデッキも2つついていて、MDのダビングも可能なことを考えると、このサイズの一体型システムとしては標準的構成。お値段も下がったことを考えると、他製品と比べても遜色のないシステムだと思います。

 ただ、いわゆる「高級ラジカセ」に比べると、外形寸法460×251×208mm(幅×奥行き×高さ)、重量約6.4kgと、少々大きめなのも確か。しかし、大型なのは据え置きでの使用を前提としているため。スピーカーのキャビネット容量も比較的大きく取れるので、低音再生にも結構期待が持てそう。「帯に短し、たすきに長し」という印象もありますが、ま、購入の際に納得できればいいんでないでしょうか?

 で、音質はというと、全体的にフラットながら、高音が少々不足気味、って感じでしょうか。ちょっと高音強調気味のミニコンポ、SOTEC「OP-VH7PC」に慣れた耳からだと、ちょっとシャープさに欠ける印象を受けますが、ノーマルで聞く限り、まあ、悪くない音質ですな。

 けれども、この感想は「一体型にしては」、という前提付き。やはり一体型ということで、キャビネット容量が小さく、低音は期待していたよりは迫力がないし、キャビネットの共振の影響なのか、どうも音がこもり気味です。おまけに一体型のため、スピーカーのL/R間の距離を確保できず、ステレオ感を楽しむには機器の正面で無いとダメ。うーん、そういえば昔使ってたラジカセもこんな感じだったなー、と過去を振り返ってみたり。

 けどまあ、こういうモンですわな。しかし、一体型故のメリットもあります。まず、設置スペースを節約できること。そして、デッキ間のシンクロ性が高いこと。CDからMDへの録音は、等速録音に加え、倍速録音にも対応。MDからMDへの録音もできるし、AM/FMチューナからの録音も可能。なによりも、これだけの操作を1台のリモコンで行えるのがすばらしい。

 リモコンはMDの操作がやりやすいように構成されたもので、MDLPグループモードの操作ボタンを上部に、再生/停止などの基本操作ボタンを中部に、独自機能の操作ボタンを下部に配した構成。

 各デッキの切り替えは、それぞれの再生ボタンを押すだけで可能で、機器選択後のスキップなどの操作は、中央部の十字状に配された共通ボタンで可能。うん、リモコンの操作性は上々、それでいてグリップ感も高く、大きすぎず小さすぎないサイズはしっくりきます。リモコンマニアのワタクシも満足のデキ。

 セパレートシステムもいいけれど、一体型システムの魅力も再認識できました。しかし、運用上不満に感じた点が一点だけ。ヘッドフォン端子は前面パネルにしてください。なんで背面についてるかなー? ……では、そろそろ本題に参りましょうか。

同梱品一覧。一体型システムだけに、同梱品は少なめ 本体正面。シルバーのスピーカーはネットでカバー(取り外し不可) 本体背面。ヘッドフォン端子は背面に装備。なぜ?

本体側面。奥行きは結構長めで、キャビネット容量も一体型システムにしては多いと思われる CDデッキ部。オープン機構は電動だが、開くまでに5秒程度かかり、ちょっとスピードが遅め リモコン。しっくりと手になじむサイズで、使い勝手も高い

本体の操作パネル部とMDデッキ部。十字状のキーは各デッキのスキップ/早送り/巻き戻し操作が行なえる CD再生時のディスプレイ。3m程度先からでも視認可能


はたしてα波は出るのか?

 さて、メインエベントです。えー、この「リラックス効果が得られる」という「αサウンド」機能は、リラックスしているときに出る脳波、α波と同じ周波数の8Hzのゆらぎを、サラウンド回路の左右の音の差成分(主に右と左の間接音)に与えることで、自然で心地よい音場効果を得られる、というもの。

 要するにバーチャルサラウンドの一種らしいのだけれども、この「αサウンド」では中音域を補正することで、埋もれがちだったボーカルなども明瞭なるのだそうな。このモードは、リモコン、本体の「α SOUND」ボタンを押すことで設定可能。モードは「NATURAL」と「DEEP」の2種類があり、ナチュラルが通常、ディープがより深くということか。ふむふむ、なるほど。とりあえず、試してみますか。

 最初に聞いたのは、最近お気に入りの1枚、ゲーム「Rez」のサウンドトラックですかね。最近ちょっと興味をなくしていたテクノ系の音ですが、有名アーティストのコンピレーションとなっているこいつは結構いい感じ。系統としてはトランスが中心と思いますが、ゴア系などもミックスされた1枚となってます。

 では、「α SOUND」ぽちっとな。……うーん、なんというか、バーチャルサラウンドな音ですね。輪郭が太くなったというか、いやいや単にリバーブがかかったような音というか。「Rez」に収録されたトランスに関しては、金属的なシャープな音が多く、それを多重演奏しているため、個々の音をシャープに聞けるのが理想的な環境。音に広がりが出るメリットがあるものの、リバーブの影響で個々の音が多少聞き取りにくくなり、あまりお薦めできないかも。

 対して、低音の迫力を、単音、もしくは小編成で効果的に聞かせることの多いゴアでは、多少の音の濁りを感じつつも、音の広がりが増すことで迫力がより大きくなる感じ。うん、これはこれでいいかも。

 肝心のリラックス効果はというと、うーん、どうだろ? 5~6分聞いていただけの印象は、上記の通りで、それ以上でもそれ以下でもない、というのが正直なところ。帯域は多少中域にまとまる傾向があるように感じましたが、それはそれで聞きやすい音になるから、まー、リラックスには向いた音作りでしょう。

 で、「α波が出るか?」と聞かれれば、「長時間聞いていれば」とお答えしてみます。読書なんぞをしながらBGM的に長時間リスニングを続けていると、まぁ、確かにリラックスできました。ま、「トランス系は不向き」など、ソースを選ぶ必要はありますが、ボーカル曲などは、バーチャルサラウンドによってボーカルが濁ることはそれほどない印象。楽器の広がりの中に、ボーカルが浮き立つ、という感覚でしょうかね。「α SOUND」オフ時とはまた違った印象になりますな。

 なにか作業をしながらのBGMにするにはバーチャルサラウンドで音が太くなってもさほど気にはならないし、ボーカルがしっかり聞こえるから違和感を感じることもなし。音に広がりが出ることで疲れにくいようにも思います。でもなー、「α波が出る」という感覚は正直実感がつかめません。

 長時間リスニングしていればたいていの機器でリラックス可能だし、「α波が出るぞー」という思い込みによるプラシーボ効果の疑いも排除できないですからねー。α波効果についての自分の意見は、「よくわからん」とさせていただきたく存じます。

「NATURAL」モード時のディスプレイ表示 「DEEP」モード時のディスプレイ表示


学生さんにオススメのシステムかも

 いわゆる「ラジカセ」と言われるCD/MDシステムしてはものすごく機能充実。でも、ミニコンポとして見ると、ちょっとどうだろう? という感じの微妙なラインの製品ですな。しかし、価格を見てみると、購入価格で34,800円。ミニコンポ製品の価格は大体5万円からのラインが中心になっていることを考えると、この製品は「高級ラジカセ」と見るのが正しい認識だと思います。

 まあ、キャリングハンドルがなかったりと、厳密に「ラジカセ」とは定義できませんが、考えてみれば「ラジカセ」を持ち歩くことはまれ。それにほかの「高級ラジカセ」を見渡してみても、ボディは持ち歩くには大型で、とても持ち運べるとは思えません。製品的には「ラジカセ」ですが、実際の運用では「小型のミニコンポ」とするのがよろしいかと。

 商品のジャンル分け的にはかなり微妙なラインにある製品ですが、実際の利便性を考えると「こういうアプローチもアリかなー」と思います。ターゲットはおそらく高校生や大学生。2月15日発売ということも考えると、おそらく新入学のお祝い需要に向けた製品(安くなったのは入学シーズンが過ぎたからでしょうなー)。学生さんの部屋は一般に部屋が狭く、セパレート型のコンポを置くスペースが少ない、という環境を想定すると、省スペースながらミニコンポ並みに高機能、というのは売りになりますしね。

 こういうコンセプトだと想像してみると、「ま、こういうのもアリかな」と思います。「αサウンド」の効果のほどは個人差があるかと思われますが、少なくとも長時間のBGM用途には邪魔にはならんでしょう。そんなことよりも、しばらく離れていた一体型システムならではの利便性に改めて感心してみたり。

 昔は「Wラジカセ」が売り文句だったものですが、最近では「W MD」なんですなー。グループ機能など、新しい機能は新たに覚える必要がありましたが、MDにはほとんど興味のなかった自分も昔の「Wラジカセ」感覚で使用でき、さすがに普及しているシステムは利便性が追及されているなと思いました。けど、マイPCの中に莫大なMP3データが保存されている現状を考えると、やはりMP3が使用できる環境の方を優先的に使うことになるかなー。

 とはいえ、MDを中心に使っている方には魅力的なシステムかと。MDダビングもできるので、ライブラリのバックアップも簡単。FMアンテナも同軸接続なので、より高音質なエアチェックも期待できます。価格の割に充実したシステムではないでしょうか。

 で、最後に一点だけ文句を。やはりヘッドフォン端子は前面パネルに持ってきて欲しかったです。ほんま、どないせいっちゅーねん。

□ビクターのホームページ
http://www.jvc-victor.co.jp/
□製品情報
http://www.jvc-victor.co.jp/audio_w/product/system/nsx7wmd/nsx7wmd.html
□関連記事
【1月25日】ビクター、α波と同じ周波数を作り出すダブルMD/CDシステム
―癒し系音場補正回路「αサウンド」を搭載
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020125/victor.htm

(2002年7月23日)

[fujiwa-y@impress.co.jp]


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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