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【バックナンバーインデックス】

第73回:最強MP3/WMA対応CDプレーヤー登場?
iRiver「SlimX iMP-350」


 AV製品はピンからキリまでいろいろありますが、いわゆるメインストリーム以外にはいろんなおもしろいアイテムがたくさんあります。ここでは思わず衝動買いしたくなるけど、冷静に考えるとどうかな~? と、気になる「モノ」に積極的なアタックを繰り広げていきます。

待望のプレーヤーが日本上陸

 MP3やWMAなどの圧縮音楽フォーマットに対応するCDプレーヤーは自分のストライクゾーンど真ん中に入るもので、現在でも通勤時をメインに一番活用されております。コレまでにも多くの製品を手に入れてきましたが、正直、「これで満足」と断言できる製品には遭遇しておりません。

 その中でも「もう少しで満足」の部類に入っているのが、ソニックブルー「RioVolt SP250」。リモコンは漢字表示対応の液晶ディスプレイを装備して、マルチセッション、パケットライトなどなど、普通に焼いたCD-R/RWメディアのほとんどを苦もなく認識してくれて、ジョグを中心にした操作体系は慣れればディレクトリの切り替えなどもらくらく。ついでにFMチューナもついてます。

 というように機能満載なんですが、一番大きな不満点を挙げるとしたら、ボディサイズがでかいこと。カバンの容量いっぱいまで荷物を入れると、「SP250」を収納するスペースが確保できず、泣く泣く置いていったということもしばしば。対して、ノーマルのポータブルCDプレーヤーを見渡してみると、厚さ20mm以下の薄型プレーヤーが人気を博している模様。うーん、うらやましいぞ。

 しかし、そんな現状を打破してくれそうな製品が登場しました。それが韓国iRiver製のプレーヤー「iMP-350」であります。

 iRiverという会社、実はSP250までの「RioVolt」シリーズの供給メーカーなんですわ。海外では自社ブランドで「SP250」と同等の「iMP-250」なんて製品も販売しており、「RioVolt」の新製品も期待しておりました。が、どういう事情があったのかは知りませんが、「SP90」から供給メーカーが変更。日本でのiRiverの販売代理店が存在していなかったため、新製品がでても個人輸入するしか購入方法がなかったのです。

 そんな状況の中で発売されたのが、「SlimX」という愛称の付いた「iMP-350」。とにかく革新的でした。厚さはノーマルの薄型CDプレーヤーとタメを張る外形寸法135×145×16.7mm(幅×奥行き×高さ)、重量約189g(電池除く)。このコンパクトなボディでMP3/WMAの再生に対応し、さらにFMチューナまで内蔵。もちろんリモコンは2バイト文字表示に対応。うーん、「SP250」の最大の不満点が見事に解消されつつ、長所は継承しているではありませんか。欲し~い!

 しかし、日本での販売代理店は存在せず。そんな状況がしばらく続いていたあるとき、某ショップの販売サイトを見ていると、「SlimX 7月26日発売予定」との情報が! ということで、発売日当日、ゲットしてしまいました。購入価格は19,799円なり。


その薄さにまずは驚愕

 では、同梱品の確認を。本体のほかには、リモコン×1、ステレオイヤフォン×1、外部電池ボックス×1、角型ニッケル水素充電池×2本、ACアダプタ×1、キャリングポーチ×1という構成。マニュアルもちゃんと日本語化されており、ローカライズは完璧と思われます。

 「SP250」にはWindows/Macintosh用のMP3エンコードソフトが収録されたCD-ROMが付属しておりましたが、「iMP-350」ではCD-ROM自体が付属しておらず、PDF収録だったマニュアルも紙の冊子になっておりました。個人的には紙のマニュアルのほうが好みなので、これはうれしい変更点。

 エンコーダソフトが付属していないのも、「現在ではエンコーダが普及している」との判断の元、少しでも価格を下げるための手段だったのではないでしょうか。ま、自分としてはいくつかのエンコーダを持っているし、手持ちのファイルを焼くことが多いから、エンコーダがなくてもまったく問題ありません。

 それにしても驚いたのが、やはりその本体の薄さ。写真で見ても薄いとは感じていたけれども、やはり実物を手にとって見ると、改めて驚いてしまいます。

 しかし、この薄さを実現するために犠牲にされたものがあります。それが電源。これまでの「RioVolt」シリーズではすべて単3型電池の収納部を本体に内蔵しておりましたが、「iMP-350」で乾電池を使用したい場合は、付属している単3型電池×2本収納の外部電池ボックスを接続しないとNG。

 もちろん、別途内蔵電源は確保されております。それが角型のニッケル水素充電池。ポータブルプレーヤー全般に使われているアレです。で、電池収納部はCDドアを開けたところ。この方式は、ノーマルのCDプレーヤーでもよく見かけますな。

 うーん、この薄さを実現するにはほかに選択肢がなかったんでしょう。なにせ16.7mm。「薄型」と謳っているノーマルCDプレーヤーでも20mm前後ものがありますから、MP3/WMAデコーダとFMチューナを搭載してこのボディサイズは驚異的。ただ、自分の好みのリスニングスタイルはアルカリ電池を何本も持ち歩き、電池が切れるたびに交換する「電池使い捨て型」なんですよねー。

 一応外付け電池ボックスが付属しておりますが、ケーブルを通じて接続するタイプで、本体と一体化せず、かなーり使いにくそうな構造。うーん、ここは本体内蔵のバッテリだけで使うのがいいみたいだね。同梱の充電池も三洋電機製の容量1,400mAと高容量。マニュアルでの内蔵充電池のスペックは、充電に6時間、連続再生が13時間。品質に問題はなさそうです。うん、一晩で充電できるし、これだけ再生できるなら実用上も問題を感じないでしょう。

同梱品一覧。「RioVolt」シリーズにあったCD-ROMはなし 本体上面。「SlimX」のロゴが意外と目立ち、デザイン的には好みが分かれるところ? 本体側面。上の「SP250」と比較すると大幅に薄型化されている

本体右側面の操作ボタン類。操作ボタンはあるが、液晶部がないので本体での操作は困難 電源入力端子。左がACアダプタ用。外部電池ボックスは右も併用する 本体底面。ホールドスイッチはココ。生産国表示は「Made in China」でした

CDドアオープン状態。内蔵充電池はドアを開けてここに収納 電池を収納した状態。電池は三洋電機製で、信頼性も高そう


充電池はちょっと使いにくいかも?

 ということで、一晩充電して充電池だけでの使用してみることにします。ただ、充電するには一手間必要。実はACアダプタをつないだだけでは充電を開始せず、一度再生ボタンを押して電源を入れてから、停止ボタンを数回押して電源を切り、そのときACアダプタが接続されていれば充電モードに移行する、という仕様になっているのです。

 さらに言えばACアダプタ接続で駆動中も、液晶ディスプレイのバッテリ容量表示は「EXT」となり、コンセントを示すアイコンが表示されているので、充電はされていない模様。

 うーん、これはちょっとめんどくさいな。完全放電モードが付いているのはかなりポイント高いんですけどねー。とりあえずマニュアルを確認しながら充電モードに移行してっと。液晶は本体にはついておらず、リモコンのみ。ポータブル環境では本体に液晶が付いていないのはあまり気にならないけれども、自宅ではコードが意外と邪魔に感じるので、リモコンの液晶部を確認する必要のある充電モードへの移行は多少おっくうに感じました。が、手間としてはわずか。ポータブル環境での使用感の高さに期待して、その日は床につきました。

 さて、6時間ほど経った翌日。スペック上はもう充電が済んでいるころですが、んー、まだ充電中ですよ? 充電が完了したのはその1時間後。ふむ、初回の充電時間は約7時間ってところですか。完全放電モードを持つなど、電源への配慮はされている製品。この結果は充電池慣らしが不十分で、特性がまだマニュアルのスペックに達していないと理解しておきましょう。

 では、ディレクトリを数階層切ってMP3/WMAを混在させて、3回マルチセッションで焼いたCD-Rメディアをセットして、再生ボタンをぽちっとな。ライティングはWindows XPのライティングエンジンを使っております。

 電源を入れると、ファームウェアのバージョンを表示。ファームウェアのアップグレードも可能ですが、製品には最新版の2.02Jがあらかじめ入っておりました。うーん、細かいところまでローカライズされてますな。ただ、設定画面は英語表記でしたけど。

 さて、MP3/WMA対応CDプレーヤーの欠点の1つは起動時間の遅さ。大抵の機種は約30秒というところですが、「iMP-350」はというと、やっぱり約30秒ですね。まー、標準的な起動スピードということで。これまでに焼いたCD-RやCD-RWを入れてみましたが、起動スピードはいつも変わらない感じ。ちなみに、今のところ認識に失敗したCDはありません。うーん、メディアの認識もあいかわらず優秀。

 今回は国歌を集めたCD(タイトル忘れました)からリッピングしたファイルを中心にリスニング。特に赤軍合唱団の迫力ある歌声が楽しめる、在りし日の「ソヴィエト社会主義共和国連邦賛歌」がお気に入りで、こちらはMP3、WMA双方でエンコードしております。

 で、音質はというと。うーん、「SP250」譲りの音かなー? MP3の音は合唱の個々の声の分離感が薄い代わりに、まったりと広がりを感じる音。WMAはエッジが利いていて、個人の歌声の分離感がMP3よりも高いものの、なんだがすっきりしすぎた音。個人的にはMP3はオーケストラなど大編成ものに、WMAはポップスなどの歌ものに向いてるかな、と思いました。もちろん、圧縮による劣化の影響は感じますけど。

 さらに、連続再生時に気になっていた曲間ブランクですが、なんと、まったく感じませんでした。同じディレクトリや、再生曲順が近い曲はスキップ時の再生も早かったので、あらかじめメモリに読み込んでいるみたいですね。なんと立派に進化したことか。

充電中の表示。容量も一応表示されるが、信頼性はいまいち? ファームウェアのバージョン表示は最新版の「2.02J」 設定画面は英語表記でしたが、マニュアルを確認しなくても大抵は理解できます


操作体系はどうよ?

 本体にも側面に操作ボタンを装備しておりますが、本体には液晶ディスプレイがなく、操作の基本となるのはリモコンです。再生時の液晶部の表示は4ライン。表示情報は上から再生時間、ファイル/ディレクトリ名、ID3タグ情報、ビットレートなどのファイル情報、という構成。解像度はかなり高く、かな漢字も明朝系のフォントでばっちり表示。ボタンを押したときにはバックライトが点灯するので、暗闇の中での操作も問題ありません。

 一度に表示される文字数は全角7文字で、1ラインに収まらないタグ情報の表示は、デフォルトでは1ラインごとの書き換えタイプになってます。もちろん、スクロール方式にすることも可能で、スクロールスピードも変更できます。うーん、マニアックでいいぞー。

 液晶部はちょっと小さめで、最初は読み取りづらいかとも思ったけど、リモコンだから顔の近くに持ってくるのも容易で、表示の解像度が高いから、情報を読み取るのもラク。しかも「SP250」のリモコンよりも大幅に小型化され、取り回しは非常に軽快。

 ただ、電池駆動時は一応バッテリの残り容量を示してくれるものの、この表示、ちょっと信頼性に欠ける感じですね。充電時にも容量を表示してくれるけど、こちらの信頼性もかなり怪しい。充電池がまだ安定していないのが理由なのかもしれないので、ちょっと断罪できませんけどね。なお、1時間ほどスキップなどの操作をした際の連続再生時間は約8時間半(内蔵充電池のみ)。カタログスペックの13時間まで伸びてくれることを祈ります。

 リモコンには再生、停止の基本操作ボタンと、押し込み可能なジョグが3つ、そしてスライド式のホールドスイッチがついていて、スキップ、音量調節などはジョグを使って操作します。

 ディレクトリの切り替えは、スキップに使用するジョグをクリック。すると現在再生されているディレクトリの内容が表示され、ジョグを上下させることで移動。ソート順はファイルネームになり、ディレクトリ内の表示もファイルネームですが、再生時にはタグ情報が表示されるのでご安心を。

 で、上の階層に移動する際は停止ボタンをクリック。その後の操作はジョグ+/-で移動、押し込みで決定、という感じ。停止ボタンを押す必要があるので、直線的なリモコン形状では片手での操作は難しいですが、「SP250」より小型になったメリットの方が大きいかと。

 FM放送の受信は、上面右側のジョグを1秒以上長押し。こんなにコンパクトボディなのに、チューナの感度も良好。地下以外であれば、在東京局はほとんどノイズなく受信できました。ただし、FMチューナからMP3/WMA再生への切り替え時に一度再起動がかかってしまうのですわ。うーん、自分としてはあまり使わないかなー?

 そのほかにも+10/-10単位でのスキップや、プログラム再生機能、全曲単位、ディレクトリ単位でのリピートやシャッフルなど、大量の曲が扱える圧縮音楽フォーマットプレーヤーならではの機能も装備。これまでに出会った再生関連機能のほとんどは搭載されてました。

 うーん、機能の数が多いだけに、「これがMP3/WMA対応CDプレーヤーデビュー」という方には操作を覚えるまでが大変かと存じますが、慣れてしまえばジョグを中心にした操作体系は使いやすいですぜ。いやホントに。

 不満点といえば、乾電池がスマートに使えないことくらいですな。自分は「電池使い捨て主義」なので、充電には手間を感じてしまうのです。まあ、2~3日に1回程度の充電を忘れなければ実用上困らない再生時間だから、外部電池ボックスの使用は緊急避難と考えておきますが。

 さすがに進歩の早い業界。1年ちょっとでここまで進歩した製品が出てくるとは正直驚きですねー。「RioVolt」シリーズで感じていた不満点はほぼ解消。本体には液晶表示部がないので、据え置き使用には向きませんが、ポータブル専用ならば最強ですわ。

リモコン。小型化されて、使いやすさは大幅に向上 リモコン上部の操作スイッチ。ジョグは左がスキップ/ディレクトリ操作用、右が+/-10スキップ/FMチューナ切り替え用 リモコン下部の操作スイッチ。左から再生、停止、ボリューム/プログラム/イコライザ用ジョグ

タグ情報切り替え中のディスプレイ表示。かなり小さいが、解像度が高く、認識はしやすい ディレクトリ操作はツリー式。4ラインあるので操作はかなりやりやすい


ポータブル環境では最強。現状ほかに選択肢なし

 ポータブル環境に特化したゆえ、デスクトップでは使いにくい部分もあるから、万能ではありません。しかし、逆に言えば、ポータブル環境では最強です。マジ最強です。感動するくらい最強です。

 なんといっても液晶ディスプレイの付いたリモコンで、CD-ROM内のファイル情報を確認しながらリスニングできる利便性に、薄型のボディでかばんのちょっとしたスペースへの出し入れが格段に向上して、ハードウェアとしての取り回しが良くなっているのが最大のメリット。このメリットに比べれば本体に液晶が付いてないだの、乾電池収納部がないだのはどうでもいいことですよ。

 ボディの小型化に伴って電源が変更になりましたが、これもノーマルのポータブルCDプレーヤーではスタンダードな仕様。薄型CDプレーヤーの使い勝手が捨てられず、これまでMP3/WMA対応CDプレーヤーに手を出していなかった御仁も、これで安心して移行できるというものです。ま、最初は起動時間の長さに戸惑うことにはなるでしょうが、そのうち慣れますよ。

 現在はまだ扱っている店舗は少ないようですが、8月に入ればニチメンも取り扱い、販売店舗はさらに増える模様。いや、いいですよ、このプレーヤー。約2万円という販売価格も「SP250」発売時の店頭価格、25,000円前後より安いことを考えるとなかなか良心的。起動スピードの遅さなど、まだ解決しがたい問題さえ我慢できれば、使い勝手はノーマルのポータブルCDプレーヤーと同等になったと言ってよろしいんじゃないでしょうか?

 細かい不満点はいくつかありますが、ほとんどは我慢できる範囲。ただ、バッテリの充電方式はよりフレンドリーにする必要を感じますが。とはいえ、現在のところ「とにかくポータブル環境で使いやすいMP3/WMA対応CDプレーヤーが欲しい」というニーズにはベストマッチです。個人的には、もう少し厚くてもいいから、乾電池収納部内蔵型のプレーヤーが欲しいんですけどね。

□iRiverのホームページ(日本語)
http://www.iriverjapan.com/
□製品情報
http://www.iriverjapan.com/product/imp350.htm

(2002年7月31日)

[fujiwa-y@impress.co.jp]


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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