【バックナンバーインデックス】


“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第70回:【夏休み特別企画】
水中撮影ってすごい!
~ ミノルタ「Dimage X」で撮る水中の楽園 ~


■ 水中撮影のススメ

 会社ではどんなに偉い人でも家に帰ればただのお父さんであり、家族内でのポジションとしては単なる子供の成長記録係に貶められるケースは少なくない。なぁに心配すんな、筆者も仕事ではどんなにいい絵を撮ってもどんなにいい仕事しても、家に帰ればそんなもんである。そんな我々家庭内記録係としてはだ、それなりに楽しくそのつとめを果たすとともに、一致団結してその待遇向上に努めなければならないわけで。

 そんな記録係の楽しみとして、この夏筆者は水中撮影という新たなジャンルを開拓していくことにした。撮影の方法としては、ビデオカメラでやるかデジタルカメラでやるかということになるわけだが、予算的に手軽にできるのは本体が小型なデジタルカメラのほうだ。水中での使用に耐えられるよう、メーカーが提供する専用のマリンケースを購入するだけで、水中撮影が可能である。まあビデオカメラのほうでも基本的にはそういうことなんだが、本体サイズが大きくなるとそれだけいろんなことが大がかりになってくる。気軽に始めるにはまず小型デジタルカメラぐらいからのほうが無難だろう。

 筆者が購入したのは、ミノルタ「Dimage X」と、専用マリンケース「MC-DG100」。Dimage Xは光学3倍ズームを搭載しているが、レンズが前にせり出してこないので、このようなケースに入れての使用では便利。またマリンケースは、メーカー希望小売価格は25,000円だが、発売日の7月18日にはカメラ量販店で19,800円で売られていた。カメラアクセサリのとしてはまあまあ納得できる値頃感。

 筆者自身も水中撮影を行なうのは初めての経験なので、それほど濃いノウハウを提供することはできないが、実際にやってみた体験などを書いてみたい。この夏、何かの参考になれば幸いである。


■ マリンケースってどんなんだ?

 マリンケースには汎用というものはあまりなく、ほとんどはカメラごとに専用ケースが存在する。お手持ちのカメラ用ケースがあるかどうかは、各メーカーごとのWEBページで確認できる。こういうものは季節商品なので、今どきが一番情報が多く、またモノ自体も多く出回る。

 マリンケースと似たようなモノに、スノー&レインジャケットというのもある。これはいわゆるカメラの雨合羽であり、全然水中には持っていけないので、購入の際は注意してほしい。

 まずDimageX用マリンケースのパッケージ内容と構造を確認しよう。

 というのが1セット。このほかに「ダイバーズ保険」の申込書一式が入っている。水中という特殊用途でのトラブルに備えた、メーカー側の配慮だ。もちろん任意保険なので、希望者だけ申し込む。

同梱物一式。とりあえずカメラとコレがあれば水中に潜れる マリンケースを開けたところ。ゴムでカメラを支えるようになっている

 本体は透明ポリカーボネート製で、外側から中身がよく見えるようになっている。レンズ正面だけは透明度を確保するため、耐圧ガラスがはめ込まれているようだ。カメラを入れてみると、ゴムの突起がカメラ本体をきっちり取り囲むように配置されており、ガタついたりすることなくぴったり。なお付属している乾燥剤は、水中でマリンケース内が結露するのを防ぐためのもので、使用する際は必ずケース中に入れておく必要がある。

 グリスを塗ったゴムパッキンを開口部の周りにぐるっとはめ込み、完全密閉する。一度密閉具合を確認するために、、カメラを入れずにふたを閉め、洗面器などに水を張ってケースを沈めてみよう。もし気泡が出るようなら、ゴミや髪の毛などが挟まって密閉がうまくいっていない証拠だ。密閉に問題がないようであれば、カメラを入れてもう一度テストしてみよう。

シャッターボタンはかなり堅めになる レンズ前には透明度の高い耐圧ガラスを採用

光学ファインダは金属フレームに隠れて使用できない

 テスト撮影してみると、すべてのボタンやスイッチ類は完全に操作することができるので、カメラとしてのフル機能が問題なく使える。ただし光学ファインダは、レンズ前の耐圧ガラス固定用の金属フレームが視野に入ってしまうため、使えなくなる。

 ボタン類は大きいものの、かなり堅い。耐圧構造のためでもあるのだろうが、シャッターを押したつもりが撮られていなかったというケースもあり得るだろう。操作は確実に行なう必要がありそうだ。




■ 撮影するとこんな感じ

 では実際に海に行って撮影してみる。今回撮影したのは、沖縄県那覇空港から車で1時間ほど北に走った、万座ビーチ近郊の海である。筆者はわざわざこの原稿のために自費でそこまで出かけてうっそー。ホントは子供連れて家族旅行で行ったのである。

 このあたりはホテル主催のシュノーケリング・クルーズなどのコースがいくつかある。ライフジャケットのせいで水中に潜っていくことはできないが、水面付近でもかなりの魚を見ることができる。

 ではDimage X+マリンケースで実際に撮影したショットを何点か見て頂いて、しばし水中の楽園をお楽しみいただこう。

 マリンケースに入れたカメラは、水中では適度な浮力があり、手を離すとほとんどそこに静止しているか、ゆっくり沈んでいく程度のバランスになっている。うっかり手を離しても、あわてることはない。もちろん付属のストラップに手を通しておくことは基本だ。

 実際に撮影してみて初めてわかったのは、水中では液晶モニタはまったく役に立たないということだ。輝度を最大にしても全然見えないのである。原因はいくつか考えられるが、空中で見るのと違い、水中では目とモニタの間には、ゴーグルがあり海水がありポリカーボネートのケースがある。それぞれの不透明度が加算されていき、結果的に見えないということだろう。またポリカーボネートも水上からの太陽光を受けて反射するので、それもまた見えない原因の1つである。数メートル潜って太陽光の届かないところまで行けば、若干見えるようになるのかもしれないが、シュノーケリング程度ではまず液晶モニタは使えないと思っていい。

 ではどうするかというと、もうめいっぱいワイド端に設定して、カンでカメラを向け、とりあえず撮る。ばしばし撮る。魚追いかけながら撮る。「下手な鉄砲」方式である。できれば事前に、モニタを見ずにカメラの方向と撮れる画角を掴むトレーニングをしておくといいだろう。

 液晶モニタが見えないので、撮った映像もどんなのか見えない。したがってカメラの設定としては、オートでおまかせ撮影となる。天気のよい水面下は意外に明るいもので、フラッシュが点灯することはなかった。

 撮影が終わったら、すぐに船の上などでマリンケースのふたを開けてはいけない。ホテルに落ち着くまでそのままにしておき、真水で海水や砂を一度洗い流し、タオルで水気を拭き取った後にケースを開けてカメラを取り出す。空のままふたをして、しばらく真水に漬けておくといいだろう。その際、可動部分は何度か動かして、隙間に浸入した海水などを外に出すようにする。また、あたりまえだがマリンケースは内部まで水洗いしないように注意しよう。



■ 総論

 Dimage Xで一番不安なのが、バッテリの持ちである。海に出てしまえば途中でバッテリ交換などはまったく不可能なので、必ずフル充電したバッテリを装填することが必要。今回の撮影では、30分 + 30分のシュノーケリングであったが、後半残り10分というところでバッテリが切れてしまった。休憩中などに成果を確かめたくなるのが人情だが、極力節電に心がけた方がいいだろう。

 メモリも途中交換などできないので、撮影に十分な容量のものを用意する。画質設定にもよるが、今回撮影してみた限りでは、全部で84MB分ぐらい撮影できたので、容量としては128MBぐらいのものが必要になるだろう。

 今回はデジタルカメラを使用したわけだが、魚の動きがそのまま撮れるビデオカメラも撮影としては面白いだろう。ただその場合はサイズも何も変わらずだらだら撮りっぱなしになると思うので、編集はちょっとめんどくさそうだ。

 いやしかしこのようなシーンは、今まで記憶の中に留めておくのがせいぜいで、記録して残しておくことができなかったわけだから、筆者自身にとっても強烈な体験であった。また子供にとっても、自分の体験を思い出すのに、大いに役に立つことだろう。

 マリンケースは防水とともに防塵機能もあるので、単に海に潜るためだけではなく、単に浜辺の海水浴や磯釣りなどのときにも、大事なカメラを砂や塩害から保護するのにうってつけだ。操作ボタンが大きく、厚手の手袋越しでも十分操作できるので、冬場であればスキー場などでも活用できるだろう。レンズ前の耐圧ガラスはかなり透明度が高いので、地上でも通常の撮影時となんら変わりなく使うことができる。家族や仲間との楽しい思い出作りに、持ってて損のないアクセサリの1つだ。


□ミノルタのホームページ
http://www.minolta.co.jp/
□「Dimage X」の製品情報()
http://www.dimage.minolta.co.jp/x/
□「MC-DG100」の製品情報
http://www.minolta.com/japan/press02/optical/02-05-15-2_j.html
□関連記事
【2002年7月5日】ミノルタ、DiMAGE X用マリンケースの発売日を変更(PC Watch)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0705/minolta.htm
【2002年1月9日】ミノルタ、厚さ20mmの光学3倍ズームデジカメ「DiMAGE X」(PC Watch)
~世界最速、1.8秒の起動時間
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0109/minolta.htm

(2002年7月31日)


= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]


00
00  AV Watchホームページ  00
00

ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

Copyright (c) 2002 Impress Corporation All rights reserved.