“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語” |
第69回:動画編集ソフト「デジオン DigiOnVideo2」
|
■ 編集は日本のココロ?
自分で撮った映像をDVDにしたいという人が、いったいどのぐらいいるのか定かではないが、例えば日米の差を見てみると、その傾向の違いは製品を見れば自ずとわかってくる。米国ではDVカメラ自体がそれほど普及していないが、持っている人はある程度活用するからこそ購入したわけで、そのあたりの計算はシビアである。
彼らの場合、ビデオ編集はマストではない。撮った時点ですでに完パケであるという、フィルム取材のニュースみたいなノリで撮ってしまう。そしてそれをまるごと見せることが、より真実に近いという発想が根底にある。したがってDVカメラの映像を直でDVDに焼くというソリューション、MyDVDやneoDVDといったアプリケーションで十分役に立つ。
日本人の感覚からすれば、「まるごと焼いちゃうのかよ(苦笑)」というような反応だろう。例えば豚の丸焼きがホントに1頭まんま串刺しでぐるぐる回して焼いちゃってるのを見て、日本人が「丸ごとってどうよ」みたいな反応をする、そんな根本的なカルチャーの違いがメディアの利用法にも現われていると見るのは、いささか考えすぎだろうか。
恥部を隠して表に出すものは綺麗なものを、という日本人的な発想は一種の美徳としてとらえていいと思う。人に見せるなら一応ちゃんとしようか、みたいなところが一発で押さえられるアプリケーションとして登場したのが、映像キャプチャからDVD作成までオールインワンの「DigiOnVideo」であった。
そのDigiOnVideoが、約1年ぶりに「DigiOnVideo2」としてメジャーアップデートした。以前のレビューでは筋のいいソフトとして長い目で見ていくことをお約束したわけだが、今回のアップデートでどのように育ってきたのか、興味のあるところだ。なお手元のバージョンはまだ最終版ではなく、RTM一歩手前のものである。そのため製品版とは仕様が違う可能性があることをあらかじめご了承願いたい。
■ 使いやすくなったビデオ編集機能
DigiOnVideo2の画面構成。1,024×768ドット程度の画面では狭く感じる |
起動してみると、まず基本的な画面構成は変わっていないが、以前の暗く渋めのカラーリングから、全体的に明るめになった。ビデオ編集作業がベースとなっているため、画面左から映像素材を探すためのソースブラウザ、素材の内容を見るソースモニタ、編集結果を見るプロジェクトモニタという2モニタ構成。下にはタイムラインがある。編集ソフトとしてはオーソドックスな構成だ。
まず映像の入り口として、DVキャプチャ機能からチェックしてみよう。以前からバッチキャプチャ機能はないが、今回からそれに代わる機能が数多く盛り込まれた。映像のキャプチャは、以前のようにAVIとしてもキャプチャできるが、リアルタイムにMPEG-2にエンコードしてキャプチャできるようになった。最初からDVDを作るつもりであればエンコード時間も短縮しようというわけだ。
MPEG-2エンコーダは2種類から選択できる |
エンコーダは、Ligos製とCustom Technology製の2種類を搭載し、ユーザーの好みで選択できる。ただ現バージョンではLigosを選択するとMPEGエンコードの設定が行なえるのだが、Custom Technologyを選択すると何も設定できなくなる。最終版もこういう仕様なのかは定かではないが、Custom Technology製エンコーダ目当てのユーザーにはちょっと気になるところ。
バッチキャプチャなしにテープから丸ごとキャプチャするという流れで作業を進めるが、そこで便利な機能が、オフタイマーだ。これはキャプチャを始めて何分後にキャプチャを停止するかを決めるもので、キャプチャを始めたらほっといてもいい。
素材が1本のファイルになっていると、普通は編集の時に不便でしょうがないのだが、DigiOnVideo2では、取り込んだファイルをスキャンして自動的にカット替わりを検出する「シーン検出」機能が付いた。これもまた設定したら、後はおわるまでほっとけばいいので、楽ちんだ。
オフタイマーでキャプチャ停止時間を設定できる | シーン検出機能で、キャプチャしたファイルを自動分割 |
分割されたファイルがソースブラウザに並ぶ |
自動分割が終わったところでその結果をソースブラウザに転送すると、各カットがずらりと並ぶ。このソースブラウザの仕様に関しては前回の記事でも同じことを指摘しているのだが、いやサムネイル表示がないとなにがなんだかわかんねってマジで。サンプル画像は前回のZooma!用にキヤノンXV2で撮影したものだが、約15分のソースで60カットぐらいに分けられている。このぐらいのカット数になるとユニークファイル名なんかまったく無意味だし、とりあえず一個一個ソースモニタに送ってどれがどの絵なのか確認するというのも辛い。ここまではいい具合に攻めてきてるのに、着地が惜しい。
編集機能に関しては、多くの点で改良されている。例えばMPEG-2ファイルがそのまま切り貼りできるようになったのは、大きな進歩だろう。画像劣化を編集点付近だけに押さえて、残りはオリジナル画質をキープする「スマートレンダー」方式は、CyberLinkのPowerDirectorが有名だが、同じようなことができるソフトが増え、ユーザーが選択できるようになるのは喜ばしい。ただMPEG-2を編集する場合、AVIの編集よりも全体的にレスポンスが鈍くなるようだ。映像のプレビューを出すためのMPEG-2デコードが内部的に行なわれるためだろう。
DigiOnVideoのタイムラインは、以前のバージョンから結構使いやすかったのだが、新たな機能に気が付いた。タイムラインに配置したクリップを別トラックに移動させる場合、カット&ペーストしか手段がなかったのだが、実はSHIFTキーを押しながらのマウスドラッグで、トラック間をまたいでクリップを移動させることができる。この操作はオンラインヘルプにも載っていないので、以前のバージョンからできたのかもしれないが、マウスによる直感的な操作で操作できるのは安心だ。
数も増え、パラメータも操作できるエフェクト群 |
エフェクト周りも大幅に強化された。以前はトランジションエフェクトなどはパターンを選ぶだけで、ユーザーはなにも設定することができなかったのだが、今回のバージョンからは、多くのパラメータをユーザーが操作できるようになった。またDigiOnオリジナルの強力なエフェクトも数多く搭載された。あまり派手なエフェクトは、現実にはそれほど使い道がないものだが、ユーザーが絵をぐちゃぐちゃにして遊ぶという要素もビデオ編集ソフトに望まれるのも事実で、そのあたりをうまく折り合いを付けた結果となった。
前バージョンではあまり機能がなかったタイトル(文字)インポーズ機能は、若干だが機能強化が図られた。ドロップシャドウ(影)が付けられるようになり、ロール/クロールといった動きも付けられるようになった。しかしまだまだここは改良の余地はありそうだ。例えばドロップシャドウの色がホワイトグレーに固定されているので、白文字に黒のシャドウといったもっともオーソドックスなスタイルが使えない。
この文字機能で最大にイタいのは、ロールのような動きを付けると、移動中の文字が設定したセーフティエリアのラインで切り取られてしまうところだ。確かにセーフティエリアの定義は、「文字はセーフティエリア内に配置すること」であるが、いや移動中はいいんですよ移動中は(苦笑)。このあたり、開発中にアドバイスしてくれる人が周りにおらず、概念を誤解したまま製品化まで行っちゃったことが原因だろう。この仕様はかなーりそのナンなので、早急に直した方がよろしいかと。
文字機能は動きが付けられるようになったのだが…… | セーフティエリアで文字が切れちゃう仕様はイタい |
■ オーサリング機能も進化
次にDVDへの書き出し関係を見ていこう。去年までは、多くのオーサリングツールでチャプタ機能というのは見送られていたのだが、今年に入ってからサポートするソフトが増えてきた。やはりDVDビデオ規格の持つ機能をなるべく使う方向というのをユーザーが求めてきた結果であろう。DigiOnVideo2でも、前バージョンでは見送られていたチャプタ機能が搭載された。
DigiOnVideo2におけるチャプタは、タイムライン上にマーカーを付けることで実現する。マーカーの機能は3つあり、編集時に目印としてつかうだけのもの、チャプタとして使うもの、サムネイルの映像を指定するために使うもの、といった具合に使い分かれる。各マーカーにはチャプタ名を入力することができ、この名前が作成するメニュー上に現われる。
マーカーの機能は3種類から選択する | タイムライン上のマーカーがチャプタポイントになる |
作成できるメニュースタイルは、大幅に改善された。まず背景やボタンの形など、デザイン的な要素が増えた。またメニュー内に表示されるサムネイル数もユーザーが指定できるようになり、以前のように使ってないメニューのところには穴が開いているという状況を回避できるようになった。
チャプタメニュー作成画面 |
メニュー構成は、編集プロジェクト単位の「タイトルメニュー」、その下位にチャプタポイントを表示する「チャプタメニュー」の2層構造となっている。
これだけでもかなり以前から改良されたわけだが、さらに同社のオーサリング専用ツール、「DigiOnAuther」と連携できるようなシステムも導入された。もっとマニュアルで細かいデザインにこだわりたい人はそちらを使ってくれ、というわけである。
■ 書き込みはVRフォーマット
さて、オーサリング機能が強化されたのはわかったのだが、DigiOnVideo2の特徴の一つに、DVD-RAMに対するVR(Video Recording)フォーマットのサポートというものがある。メディアの書き込みはこちらの方を試してみよう。
VRフォーマットに関してはこのコラムで何度か説明してきたが、簡単にまとめると、オーサリングが必要なビデオフォーマットに対して、メディアに対して簡単に追記ができると言う点で便利なフォーマット。現状VRフォーマットを積極的に推進しているのは、DVDフォーラム内ではDVD-RAM陣営。DigiOnVideo2でも、VRフォーマットをサポートしているのは、DVD-RAMだけである。
ではVRフォーマットによる追記を試してみよう。筆者の手元には、以前Panasonicの「DMR-HS1」や東芝「RD-X2」をお借りしたときにVRフォーマットで記録したDVD-RAMメディアがある。これに対して追記してみる。
書き出しの種類を選ぶだけで自動的にライティングが始まる |
方法は簡単で、タイムラインのところにある「Record」ボタンを押し、「書き出し種別」から「DVD-VR」を選択する。PCにDVD-RAMドライブがあれば、これだけでいきなりビルドが始まり、メディアへの追記が始まる。
メディアをPC上で見てみると、メディアのルートに「DVD_RTAV」というフォルダがあり、その中にある「VR-MOVIE.VRO」というのが映像ファイルだ。追記後は別ファイルが新たにできるわけではなく、この映像ファイル自体の容量が増える(もちろんIFOやBUPファイルも更新される)。実際にはドライバを通してファイルマネージャがそのように見せているだけなのかもしれないが、使ってみて難しい感じをユーザーに与えないという作りになっている。
記録されたメディアをソフトウェアDVDプレーヤーで再生してみると、DVD-RAM録画デッキで追記したときと遜色なく、以前記録した番組の後ろに新たなコンテンツが追記されているのが確認できた。
■ 総論
自分で撮影した映像をDVDにしたいと考えるのは、非常に建設的なモチベーションである。これから記録型DVDドライブを購入しようという人が、やってみたいことのトップに挙げる気持ちはわからないでもない。
しかし実際にそれをやるとなると、満足な仕上がりが得られるソフトウェアは少ない。ライティングソフトやオーサリングソフトでDVカメラ入力をサポートしているものも多いが、編集機能に関してはたいしたことなかったり、あるいは別ソフトを購入する必要があったりと、ちゃんとやりたい人ほどイラついて「まだまだ面倒なDVD」という結論になりがちだ。
DigiOnVideo2は、そんなちゃんとやりたい人のためのソリューションである。とりあえずこれ1本あれば、かなりのレベルの作品制作が可能だ。1年かけて着実に機能を上げてくるあたり、かなりDigiOnの本気度を感じる。ただかなりいいところまで詰めてきてるが、相変わらずユーザーのために良かれと思って一所懸命考えた機能が裏目に出ているという面は少なからずある。まあしかしこのような現象は「いい人」にはありがちなことなので、ユーザー本意に考えてくれる姿勢は企業として高く評価されてしかるべきであろう。
同じようなジャンルのソフトには、CyberLinkの「PowerDirector」、InterVideoの「WinProducer」があり、DigiOnVideo2も含めて三つ巴の様相を呈している。その中でDigiOnVideo2が頭一つ抜け出している機能としては、DVD-VRフォーマットのサポートだろう。
私見ではあるが、今後書き込み型DVDがより普及するためには、業界全体がオーサリングが簡単でメディアへの追記が可能なVRフォーマットをもっと推進すべきだと思っている。「ビデオ編集の吐き出し先がDVD」という流れを常識化していくためには、そのあたりがキーになっていくだろう。
□デジオンのホームページ
http://www.digion.com/
□ニュースリリース
http://www.digion.com/news/20020711.htm
□製品情報
http://www.digion.com/pro/dv2_main.htm
□関連記事
【7月11日】 デジオン、VRモードに対応した「DigiOnVideo2」
―ダイレクトMPEGキャプチャやスマートレンダリングも可能
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020711/digion.htm
【3月11日】デジオン、高機能なDVDオーサリングソフト「DigiOnAuthor for DVD」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020311/digion.htm
【2001年7月4日】【EZ】 第17回:“あったらいいな”を実現した「DigiOnVideo」
~ キャプチャからオーサリングまでDVD作成がコレ1本でOK!! ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010704/zooma17.htm
(2002年7月24日)
= 小寺信良 = | テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。 |
[Reported by 小寺信良]
00 | ||
00 | AV Watchホームページ | 00 |
00 |
ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp