第47回:恋も盗みもお洒落に決める!? |
怒涛のように発売されつづけるDVDタイトル。本当に購入価値のあるDVDはどれなのか? 「週刊 買っとけDVD!!」では、編集スタッフ各自が実際に購入したDVDタイトルを、思い入れたっぷりに紹介します。ご購入の参考にされるも良し、無駄遣いの反面教師とするも良し。「DVD発売日一覧」とともに、皆様のAVライフの一助となれば幸いです。 |
オーシャンズ11 特別版 | |
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価格:2,980円 発売日:2002年8月9日 品番:DL-22185 仕様:片面2層 収録時間:約117分(本編) 約25分(特典) 画面サイズ:16:9シネスコサイズ(スクイーズ) 音声:英語(ドルビーデジタル5.1ch) 英語(ドルビーデジタルサラウンド) 日本語(ドルビーデジタル5.1ch) 字幕:日本語/英語 発売元:ワーナー・ホーム・ビデオ |
どういうわけか、古今東西「大泥棒」と名の付く人物は、カッコイイと相場が決まっている。アルセーヌ・ルパンも、石川五右衛門も、怪人二十面相も、どこかミステリアスで粋な奴というイメージがある。盗む金額の大小はともかくとして、泥棒は泥棒に違いないのだが、不思議なものである。
今回登場する大泥棒も、例に漏れずイイ男だ。しかも総勢11人とくれば怖いものなしである。キャスティングをざっと紹介すると、窃盗団のリーダー、ダニー・オーシャンを演じるジョージ・クルーニー。彼の右腕ラスティ・ライアン役はブラッド・ピット。スリの名人ライナス・コールドウェルをマット・デイモン、ほかにもターク・モロイやケイシー・アフレック、ドン・チードルなどの面々が登場。盗みなどせず、全員でモデルでもやったほうがよっぽど安全に大金を手にできそうなものだ。
さらに、オーシャンの離婚寸前の妻、テス・オーシャン役にジュリア・ロバーツ。窃盗団のターゲットとなったラスベガスの帝王、テリー・ベネディクト役にアンディ・ガルシアと、ハリウッド史上類を見ない豪華なキャスティングになっている。
これほど豪華なキャストが集結したのには理由がある。ご存知の方も多いと思うが、この作品は'60年に公開されたフランク・シナトラ主演の映画「オーシャンと11人の仲間」のリメイク作品なのである。
オリジナル版に登場するのはシナトラを始め、ディーン・マーティン、サミー・デイヴィス Jr.、シャーリー・マクレーンと、こちらも豪華極まるキャスティング。伝説の映画に負けないためには、現代の人気俳優を集める必要があったわけだ。
「オーシャンと11人の仲間」は残念ながら未見の私。「オーシャンズ11」を見るのも、今回のDVDが初めてだ。店頭でパッケージの裏側を見ながら「登場人物を紹介しているだけで、映画が終わってしまうんじゃないか?」と、余計な心配をしてしまった。
■ シンプルなストーリー、服装や小物にも魅力あり
保釈中のカリスマ窃盗犯ダニー・オーシャンは、刑務所にいた4年間にラスベガスの巨大金庫から1億5,000万ドルの現金を盗み出すという計画を作り上げる。標的は、ラスベガスのホテル王ベネディクト。金庫は厳重にガードされ、不可能に近いミッションだ。
この大計画を実行に移すため、オーシャンの元にプロフェッショナルたちが終結する。スリの名人、爆破の達人、コンピューターのプロ、カード・ディーラー、サーカス団員などなど。こうして11人のメンバーによる大胆不敵な作戦がスタートした……。
ストーリーは単純明快。ラスベガスの地下200フィートにある巨大金庫から、現金を盗み出せるか否か? に尽きる。料理と同じで「素材(俳優)がいい時は、味付け(ストーリー)はシンプルに」ということだろう。見ている側としても、安心して彼らの華麗な盗みのテクニックを楽しむことができた。
映画の魅力は、キャスティングやストーリーだけではない。彼らの着ている服や車、小物なども実にお洒落だ。特にジョージ・クルーニー演じるオーシャンは、出所時にタキシードを着てみたり、次のシーンではシックなジャケットでカジュアルに決めるなど、男の私も唸るカッコよさである。また、豪華絢爛なラスベガスの街も、見る者の目を楽しませてくれる。
もちろん、他の共演者もそれぞれの魅力を感じさせてくれる。水を得た魚のように、楽しそうに演技をしていたのはブラッド・ピットだ。彼の場合、美女と共演するメロドラマより、男だらけの映画のほうがスクリーン映えすると思うのは気のせいだろうか?
11人の中でも特に印象に残ったのは、詐欺師の老人ソールを演じたカール・ライナー。彼はコメディアンであり、脚本や監督もこなす才人。さらに、あのロブ・ライナー監督の父親でもある。映画のほかに、アメリカでは多くのTVドラマに出演して人気だそうだ。
詐欺師を引退したという彼は、みすぼらしい老人として登場する。ところが、オーシャンの仲間に加わると、その印象がガラリと変わる。カジノに潜り込む重要な役を任され、富豪の老人に成り済ますのだが、カール・ライナーの変身ぶりは、敵はおろか、見ている観客までも騙してしまうほど。俳優を詐欺師に例えるのは失礼かもしれないが、違う人間を演じることの凄さを見せつけてくれた。
しかし、残念な点もいくつかある。まず、肝心の金庫のセキュリティの厳重さが足りない気がした。個人的には、第1関門、第2関門と、障害をクリアしていくアイデアやスリルを楽しみたいところだが、思いのほか簡単に金庫に入り込んでしまった印象があった。
また、思わぬタイミングで警備員や通行人が登場し、見つからないかとドキドキしたり、仲間のミスで警報が鳴りそうになったりするアクシデントをもっと見せてほしかった。失敗のない華麗な盗みと、手に汗握る展開は、両立できないものなのかもしれないが、他のハリウッドの大作映画に慣れてしまった目には、ストーリー展開が地味に見えてしまったのも確かである。
盗み出す行為そのものをメインにするのではなく、キャスティングの豪華さを売りにするのならば、音楽を巧みに使って、ミュージッククリップのようにテンポ重視の作品にしても良かったのではないか? と思う。現にそのような手法も見受けられるのだが、仲間を集める前半部分が長すぎたり、全体的にスピード感が不足しており、どちらかに絞った方が良かったと思う。
■ 特典は豪華、画質と音質はどうか?
本編ディスクは片面2層を使用。映像はシネマスコープサイズでスクイーズ収録。平均ビットレートは6.7Mbpsと、現在の洋画DVDでは平均的なレベルだ。25分の特典映像や、スタッフによる音声解説を2トラックも収録しているなど、ボリュームは十分。
そのせいか、画質の面では全体的にざらついたノイズが見られた。ラスベガスや泥棒が主人公のストーリーなので、夜の場面が多いことも原因の1つかもしれない。内容よりも圧縮ノイズが気になってしまったシーンもあった。どちらかというと、昔ながらの洋画を見ている気分だ。
Bit Rate Viewerで見た本編のビットレート |
音質の面でも、もう少し切れ味が欲しい。カーチェイスや爆発するシーンなど、派手な場面が少ないため、迫力で誤魔化されることはない。また、全体的にサラウンド効果が少なく、音がこもってしまうきらいがある。臨場感や音の広がりがもっと欲しいところだ。
一方、特典は非常に豪華。メイキングでは、撮影風景やインタビューなど、役から離れた素顔のスター達を見ることができる。さらに、監督のスティーブン・ソダーバーグと脚本のテッド・グリフィンによる音声解説、さらにマット・デイモン、アンディ・ガルシア、ブラッド・ピットによる音声解説まで収録している。登場した衣装や小物など、ファッションを解説する特典映像が入っているのも、このDVDならではの魅力といえるだろう。
また、DVD-ROMトラックには、PC上で遊べるゲームが沢山収められている。カジノでプレイするブラックジャックや、金庫のドアに爆薬を仕掛けたり、暗証番号を解読するゲームなど。DVDのおまけコンテンツとしては完成度が高く、関心してしまった。
■ 前作、次作も気になる作品
映画を通して印象に残るのは、やはり豪華なキャスト陣である。登場人物は多いのだが、それぞれのキャラクターの個性が出ているので、好きな俳優が登場しているのならば購入して損はないといえる。
また、前作「オーシャンと11人の仲間」と見比べてみたいという気持ちが強くなった。新旧のスターやファッション、音楽などの移り変わりがわかり、違った面白さを発見できるだろう。
余談だが、劇中の印象的なシーンで流れる「エルヴィス VS JXL/ア・リトル・レス・カンヴァセーション」という曲は、この映画で使用された後、NIKEのCM「NIKE FOOTBALL」で火がつき、現在大ヒットを記録している。
この曲は、エルヴィス・プレスリーが'68年にレコーディングしたものだが、当時あまりヒットしなかった。しかし、リミックスという形で再認識され、プレスリーの没後25周年となる今年、見事に甦ったというわけだ。古いものを現代的にアレンジし、良さを引き出すという意味で、映画と同じ展開である。
その時代における、最も豪華な泥棒集団が活躍するというこの映画の形式は、ハリウッド恒例のパターンになるかもしれない。何年、いや何十年後になるかもしれないが、再びこの作品がリメイクされるとしたら、次はどんなスター達が登場するのか、今から楽しみである。
●このDVDについて |
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□ワーナー・ホーム・ビデオのホームページ
http://www.whv.jp/
□製品情報
http://www.whv.jp/database/database.cgi?cmd=dp&num=468&UserNum=&Pass=&AdminPass=&dp=
(2002年8月23日)
[yamaza-k@impress.co.jp]
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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp