■ 「MTV」ではなく「MTU」 昨年来、流行のMPEGキャプチャデバイス。といっても今までの主流は、PCIバス用の増設カードだった。しかし、PC用チップセットのUSB 2.0の対応などにより、標準的な機能としてUSB 2.0がサポートされ、USB 2.0対応のMPEGキャプチャユニットも9月よりエスケイネットの「MonsterTV P2H」が発売されている。その後もアイ・オー・データ機器やアダプテックなどから(両社の製品はTVチューナを内蔵しないが)製品が発売されるなど、にわかにUSBキャプチャ市場が活気づいてきた。
そんな状況下で、カノープスが投入してきたのがこの「MTU2400」。カノープスのキャプチャ機器といえば、ハードウェアMPEGキャプチャカードの定番とも言えるMTVシリーズが有名だが、この新製品には「MTU」の品番がつけられている。 同社によれば、「MTU2400は、MTVシリーズより一般向けの別系列の製品」とのこと。実際パッケージも、洒落たリビングで女性がノートPCを抱えながらくつろいでいる写真の上に「ワタシの新テレビ生活」というキーワードを配したもの。ハードウェアの写真を大々的にアピールしていたMTVシリーズとは全く印象を異としており、ターゲットが違う製品だというのがパッケージからも読み取れる。 ■ 早速インストール。.NET Frameworkを強制的に入れられました……
今回、カノープスから製品版の「MTU2400」をお借りできたので、早速テストしてみた。ハードウェアの設定自体は簡単で、RF端子にアンテナ線を、USB 2.0端子をPCに接続し、AVアダプタを接続するだけ。 本体の質感は結構プラスチッキーで、あまり高級感がない。本体サイズは、35.0×228.3×150.0mm(幅×奥行き×高さ)、重量約600gと結構大きめ。印象としては縦長の外付けHDDといったところ。標準価格59,800円の製品としては、もう少し高級感が欲しい。動作音は静かだが、本体が結構熱くなるのは意外だった。入力端子は前面に、S映像(コンポジット変換コネクタ付属)と、ステレオ音声(RCA)を備えている。
ちなみに当初、Athlon 800MHz搭載機にインストールしたが、推奨環境から大きくかけ離れた(カノープスによる推奨環境はPentium 4 2GHz以上)マシンだったため、Pentium 4 1.6GHz搭載機でテストを行なった。以下のレポートは特に注記がない場合、Pentium 4 1.6GHz機でのレポートとなる。 今回のテスト機では、OSにWindows XP Professional、マザーボードにUSB 2.0をサポートしたIntelの「D845EBG2」を使用した。なお、動作確認の条件や、外付けUSB 2.0カードの対応状況については、同社ホームページで公開されている。 早速、アプリケーションのインストールを始めると、いきなり「.NET Frameworkのセットアップを行なっています」との文字が。待つこと10数分でインストール完了。個人的には.NET Frameworkは、PCの動作が遅くなるように感じ、しばらく様子見にすることにしていたのだが、思わぬところで強制的に入れられてしまった。 ※.NET Frameworkは、マイクロソフトが提供する、Webサービスやアプリケーションの構築、導入、実行のためのプラットフォーム。 ■ 一括設定の難しい新UI。操作性にはやや難あり
.NET Frameworkに続いてMTU2400で初めて採用されたアプリケーション「c.r.e.a.m.」をインストール。MTVシリーズでは、統合アプリケーションとして「MEDIACRUISE」が付属していたが、「c.r.e.a.m.」はFlashベースとなった最新のアプリケーション。インターフェイスがなんだかかわいらしいのが、MTVシリーズとのターゲット層の違いを印象づける。 早速、使ってみると結構動作は重い。チャンネルの切り替えはそこそこ速いが、同クロックのマシンでMEDIACRUISEを使ったときと比べて、やや遅い印象を受けた。ただ、Pentium 4 1.6GHzのマシンでもややもたつく感じがあるが、実用上不具合を感じるところはない。 操作画面は、大きく分けて「簡単リモコン」と「フルコントローラー」の2画面が用意されている。簡単リモコンは、テレビ視聴や録画に特化しており、ビデオの詳細設定や画質設定などは一切行なえない。
一方、フルコントローラーは全ての機能を設定可能となっており、チャンネル設定や画質設定などの操作が行なえる。ただし、各設定ごとに階層が深くなってしまうので、どこで何が設定できるのか、ややわかりにくい。一括で各種設定が行なえないあたりは、MEDIACRUISEと同じであまり操作性がいいとはいえないと思う。 録画解像度は720×480/704×480/352×480/352×240ドット。VBRにも対応し、映像ビットレートはMPEG-2で2~15Mbps、MPEG-1で1.168~1.8Mbpsとなっている。オーディオは、128/160/192/224/256/320/384kbpsから選択できる。 プリセットで用意されているモードでは、MPEG2高画質(最高9,959kbps/平均8,441kbps、VBR)や、DVDビデオ(9,992kbps/5,439kbps、VBR)、DVDビデオレコーディング(10,021kbps/5,468kbps、VBR)などの7モードと5つのユーザーモードが用意されている。
また、入出力設定で2次元Y/C分離や3次元Y/C分離などが選択できるほか、Y/C分離と排他でノイズリダクションの強/弱も選択可能。10Tapまでのゴーストリデューサも利用できる。これらは、MTV2000などで既に搭載済みのもので特に新機能ではないが、3次元Y/Cやゴーストリデューサは、目下のライバルともいえる「MonsterTV P2H」には付いていない機能。高画質化を謳うMTU2400の大きな特徴といっていい。 簡単にテストしてみたところ、編集部の地上波受信環境もチャンネルによってかなり悪条件なのだが、特にゴーストリデューサはかなり効果的に働いていると感じた。 ただし全ての機能を使用すると、マシンの負荷も当然高くなる。Athlon 800MHzでも録画/再生など最低限の機能は使えるが、タイムシフトとノイズリダクションを使ってMPEG-2標準画質で録画を行なうと、プレビュー画面が激しくコマ落ちしていた(録画自体はきちんと行なわれていた)。なお、Pentium 4 1.6GHz機では、タイムシフト時のレスポンスが今ひとつだが、特に問題なく全ての機能が利用できた。 やや気になったのはインターフェイスのデザイン。全ての操作ボタンがアイコン化されているが、今ひとつどれがどの機能なのか把握できず、操作体系を理解するのに時間がかかった。慣れてしまえば問題ないことなのだが、この製品がターゲットとしているカジュアルユーザーの何割が、ディスプレイを型取ったアイコンが「表示設定」だと気づくのだろう? とちょっと疑問に思った。 iEPG機能については、c.r.e.a.m.からは直接アクセスできずに、so-netのTV王国などのiEPGサイトをブラウザで開き、番組表にアクセス。「予約」ボタンをクリックし、ブラウザのダイアログで「開く」を選択するというもの。タスクトレイのc.r.e.a.m.ラウンチャからショートカットキーがあるだけでも、ブラウザを開く手間が省け、だいぶ便利になると思うのだけれど、ちょっと残念なところ。 なお、予約待機に入ると、立ち上げていた「c.r.e.a.m.モニター」が自動的に終了してしまう。番組を見ながら録画を行なう際には、追っかけ再生をオンにしておく必要がある。その際には、録画中のチャンネル変更などは行なえない。 予約録画は、iEPGのほか時間指定でも可能。予約一覧は、コントローラの[予約一覧を開く]アイコンをクリックすると表示されるが、基本的に予約順に登録されてしまい、開始時刻別などでソートできないなどやや不満が残る。なお、予約録画中は、時間延長などを表示するダイアログが表示されるため、急遽延長したいときなどはかなり便利。延長時間は自由に設定できる。 予約したビデオファイルは、デフォルト設定では、[C:\Documents and Settings\All Users\Documents\Canopus\cream\movies]に保存される。c.r.e.a.m.上から視聴する場合は、フルコントローラ画面の[モード切替]でVIDEOモードにした後、[ビデオを開く]のアイコンを選択、ビデオ一覧から再生したいファイルを選択し、ファイルが再生可能となる。また、複数のファイルを登録する場合は、CTRLキーを押しながら、ファイルを選択することで登録できる。録画したファイルは全てライブラリに記録され、それぞれのジャンルや好みに合わせて管理できる。 やや不満なのが、予約録画画面では簡単に一覧表示されるのに、いざビデオを見たいといったときは、何階層も辿らなければ行けないという点。さっと録画を確認しながらすぐに見たいときにはちょっと面倒に思う。ライブラリ内のファイルをクリックすると再生が始まるようになるとわかりやすいと思うのだが……。また、複数ファイルの選択は、説明書を見るまでやり方がわからなかった。このあたりインターフェイスがこなれていない印象を受けてしまう。
■ 画質 画質については、以下にサンプルを公開したので参照して欲しい。MTU2400では、MPEG-2エンコーダチップがMTVシリーズで採用していた松下電器製の「VDSP3」から、「MN85572」に変更されている。なお、「MPEG2長時間」以外の全てのサンプルは、解像度720×480ドット、3次元Y/C分離とゴースト低減機能をONにしてキャプチャしている。
なお、ノンサポートとなるが、MPEG Toolsと呼ばれるソフトウェア群も付属する。GOP単位でのMPEGカットが可能な「MpegCutter」や、映像と音声を分離する「DeMultiplexer」、MPEGビットレート再変換ツール「MPEG-MPEG File Converter」などが同梱される。 なお、後日AC-3エンコードやDVD-RAMダイレクト記録に対応したアップグレードキットも発売予定だが、発売時期や価格は未定としている。 ■ 画質に不満はないが、カジュアルユーザーにはあまり…… 画質的には、ゴーストリデューサーや3次元Y/C分離など機能も満載で、地上波録画には申し分ないといえるレベルだと思う。お手軽かつ高画質なビデオ録画を楽しみたいという人には最適なデバイスと言えそうだ。 気になるのは、やはり価格。標準価格59,800円、実売50,000~57,000円(11月14日現在)というのは、初物ということを差し置いても、やや高額だと思う。目下のライバルといえるエスケイネットのMonsterTV P2Hは、36,000~40,000円程度で販売されており、その差は約15,000円~20,000円。画質以外の面では、MonsterTV P2HのFMラジオ録音などMTUに搭載していない機能も気になるところ。 高画質を求めるユーザーには、PCIバス用TVキャプチャカード「MTV2000」(店頭価格37,000~40,000円程度)や「MTV2200」(同47,800~52,000円)も、ライバルとなるだろうし、カジュアルユーザーにターゲットを絞っても、東芝のXS-30などのHDDレコーダの最新機種でも実売8万円後半より用意されている。 また、この製品の位置づけもちょっと不明瞭なところがある。というのもMTVユーザーのようなコアユーザー狙いでなく、カジュアルに録画できることを売りにしている割に、推奨スペックがPentium 4 2GHz以上と高いし、実際のハードウェア負荷も高い。もちろん、現在発売中のPCの大半ではキビキビ動くだろうが、ちょっとハードルが高いように思える。 また、インターフェイスや操作性も今ひとつこなれていないので、説明書なしで機能を理解するのは難しい(説明書は良くできているが)。もちろんTVキャプチャに慣れたヘビーユーザーにとってはそんなに難しいものではないが、ターゲット層に合った仕様になっていないように感じた。 カジュアル路線であれば、もう少し洒落たデザインにしたり、あるいはチップや機能の簡略化による低コスト化、UIの洗練による簡単操作といった方向で製品化したほうがわかりやすかったように思う。 ともあれ、USB 2.0接続で気軽に利用でき、かつ高画質も求めるというユーザーには最適な製品なのは疑いない。もう少し熟成されれば、お気楽なキャプチャデバイスの定番になる可能性を持っている。 □カノープスのホームページ (2002年11月15日)
[ AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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