■ 思ったより入手性はよかった
思っていたより人気ないのかなぁ? と心配になって、弊誌のDVD売り上げランキングを見てみると、ちゃんとトップを獲得している。どうも、かなりの量を初回出荷しているようだ。消費者としてはありがたい限りである。 ちなみに、「デラックス版」は1枚に本編と特典が入って3,800円、「足球箱」は本編ディスクと特典ディスクの2枚組みで6,800円。足球箱には特製Tシャツも付属している。 デラックス版と、足球箱は仕様を見る限りは本編の仕様は同じに見えたので、どちらを購入するか迷った。違いは足球箱の方が映像特典が多く、デラックス版には入っていない、「チャウ・シンチー来日記者会見映像」(約20分)、「チャウ・シンチー&ヴィッキー・チャオインタビュー映像」(約20分)、「NGシーン」、「プチお楽しみ映像」が収録されている。 ちなみに、デラックス版と足球箱の両方に入っている映像特典は、「メイキング・オブ・“少林サッカー”」(約20分)、「予告編集」(約5分)、「TVスポット」(約1分)、「プレミア試写会での舞台挨拶映像」(約10分)。 ハッキリいって、Tシャツは特に欲しくはないのだが、足球箱版には映像特典に「NGシーン」があるのが気になる。やはり、香港映画にはNGシーンはかかせない。ということで結局、足球箱の方を購入した。
■ サッカー + 少林拳 …… 少林サッカーは、2001年に公開された香港映画。世間に少林拳を広めようと試行錯誤するシンが、かつて「黄金の右脚」と呼ばれたファンと出会い、サッカーを通じて少林拳を広めることを思い付く。共に少林拳を修行した兄弟達を集めて、即席のチームを結成し、現役時代のファンを罠に陥れたハン率いるデビルチームに立ち向かっていく。 香港映画界の大スター、チャウ・シンチーが、監督・脚本・主演の3役をこなしている。チャウ・シンチーは、映像特典のインタビューの中で、サッカー + 少林拳というアイディアは、「サッカー、少林拳とも世界的に有名で、これを組み合わせた映画は成功すると思った」と語っている。思いつきのようなアイディアだが、チャウ・シンチー自身にはかなりの勝算があったようだ。 米ミラマックス社が手を加えたアメリカ版についても、「もう少し短いバージョンが欲しいといわれた。また、たくましさについての概念も違っていた。私が上半身裸のシーンも、痩せていて貧弱に見えるということでカットされた。彼らの考えるたくましさは鋼のような体ではなく、筋骨隆々というもののようだ。公開する地域にあわせて、ある程度の調整はしかたないと思っている」と語っており、映画をエンターティメントとして楽しんでもらうことを一番に考えていことがうかがえる。 実際、香港版アカデミー賞で作品賞を含む7部門受賞し、香港映画史上最高の興収6,000万香港ドルを達成。日本国内興行成績も35億円と、その勝算を証明してみせた。 映画のストーリーはとてもわかりやすく、安心できる予想通りのオチ、予想通りの展開。そういった意味での意外性はあまりない。しかし、そのおかげで安心して見ていられるというのも確か。 良質のアクション・コメディ映画であり、一番最初の練習試合なんて途中からまったくサッカーじゃなく、乱闘アクションになっている。笑いの部分も、「これは本当に笑わすためにやっているのか? 笑っていいのか?」というシーンも多い。そこで笑えるかどうかが、この映画を楽しめるかどかの分かれ道だと思う。 そこにハマれないと、まったくくだらない映画という評価になるだろう。個人的にこういうテイストは大好き。私の記憶の中で似たテイストの映画といえば、まったく題材もことなるのだが、「プロジェクトA」が思い浮かぶ。マンガならキャプテン翼? 子供にも安心して見せられる映画であることは間違いない。
■ DVDとしてどうか? 本編ディスクは片面2層で、ビスタサイズをスクイーズ収録する。音声は広東語をドルビーデジタル5.1chとDTSで、日本語は5.1chドルビーデジタル収録となかなか豪華な仕様。 最初に普通に再生してみると、思いのほか音が軽い。そこで、DTSに切り替えると格段によくなった。オーディオのビットレートを調べてみると、ドルビーデジタルは広東語、日本語とも384kbpsで、なんとDTSは1,536kbpsだった。 最近のDTS収録は、こだわった仕様で知られるSPEの「SUPERBITシリーズ」でも、768kbps(いわゆるハーフレート)が使用されていることが多いことを考えると、かなりがんばっているといえるだろう。できる限りDTSで見たいDVDである。 映像の方はというと、もちろんフィルム自体の画質もあって、ものすごく高画質とはいかないが、これもなかなかの画質を実現している。ただ、メイキングの中で、「CGが予算の半分を占めている」と語られているのだが、合成やCGが使用されている場面で画質が悪くなったり、その合成もブルーバック合成が丸わかりだったりと、現在の技術としては決して高いものではない。しかし、映画自体がそれも含めて笑える内容となっているので、その点では心配無用。 DVD Bit Rate Viewerで本編の平均ビットレートを見ると8.37Mbps。実写映画としてはかなり高い。そこで、気がついたのだが足球箱の本編ディスクには、本当に本編のみが入っているが、デラックス版は本編に加え映像特典も収録している。本編が109分であることを考えると、本編を8.37Mbpsで収録して、映像特典も入るのか疑問に思った。 疑問に思っていると、デラックス版を他の編集部員が購入。さっそく、それを調べてみた。すると、なんと平均ビットレートが7.84Mbpsと足球箱の本編ディスクより低いのだ。気になって、音声のビットレートを見るとこれは、足球箱の本編ディスクとまったく同じだった。 デラックス版と足球箱版のグラフを重ねてみると、60分あたりまでビットレートは同じだが、そこから、デラックス版の方が低くなっていることがわかった。つまりデラックス版は、映像特典も収録するために、本編にしわ寄せが行っているのだ。 実際に再生して見ると、画質にそれほど大きな差はなく、普通に見ている分にはわからないかもしれない。しかし、じっくり見ると動きの速いシーンでは、デラックス版の方がブロックノイズがわずかに多い。 目くじらを立てるほどではないが、本編に関してはデラックス版と足球箱版ともにまったく同じだと思い込んでいただけに、かなり驚いた。
特典としては、チャウ・シンチー、ティン・カイマン、ラム・チーチョン、チャン・クォックァンのよるオーディオコメンタリーも入っている。ただ、だれも喋っていない時間が結構あり、かなり落ち着いた雰囲気となっている。 また、期待していたNGシーンは、我慢できずに吹き出してしまうというパターンがほとんどで、ちょっと期待はずれだった。このためだけなら、足球箱を買う必要はなかったかもしれない。 あと、デラックス版と足球箱のデジパックを見比べてていると、足球箱版の方には、「少林サッカーをより楽しむための豆知識」というのが8項目印刷されているのが気づいた。また、気になったのが、デジパックが3面に開くようになっているのに、ヒモや留め具などがないこと。ほっておくと勝手に開いてしまう。足球箱に片付けようと思っても、Tシャツを抜くとその隙間ができて、どうにも収まりが悪い。もう少し工夫して欲しかった。
■ ノリが嫌いでなけば買って損なし また、少林サッカーという作品の持つパワーがテレビサイズではなく、映画サイズなので、購入した際にはできる限り大きな画面で、そしてDTSで視聴して欲しい。 ともあれ、個人的にはこういう映画をもっと見たいというのが偽らざる本音だ。ぜひとも、パート2に期待したい。
□パイオニアLDCのホームページ (2002年12月4日) [AV Watch編集部/furukawa@impress.co.jp]
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