■ 噂の高画質ディスクがついに登場
元はといえば、SUPERBITはColumbia Tristar Home Entertainmentによる登録商標で、米国ではすでに15本がリリースされている。一部米国盤ファンの間ではそのクオリティが話題となっていた。DVDの登場から6年、SUPERBITのようなマニアックな企画が可能になるほど、国内市場が拡大し、かつ多様化したのかと思うと、ちょっと感無量だ。 11月20日にリリースされた国内版の第1弾は、「グリーン・デスティニー」、「バーティカル・リミット」、「ガタカ」、「パトリオット」、「ドラキュラ」、「デスぺラード」の6本。いずれもすでに従来版が発売中。画質の向上もさることながら、各タイトルともDTS音声が追加されている点もうれしい。 第1弾タイトルの中から、今回は「ドラキュラ」を選んだ。古城の地下室や、月明かりに照らされた庭園といった薄暗いシーンが続く上、合間にはコッポラらしい濃密な画が混じるという、MPEG-2にとって過酷な条件のタイトルだ。 従来版はそつなくまとまっているものの、厳しく見ればノイズや黒の階調性に多少の不満があった。また、髪の毛やドレスの刺繍などに輪郭の甘さを覚えていた。とはいえ、作品自体の完成度や映像美については、個人的に文句のつけようのないタイトル。SUPERBIT化されたことで、どこまで品質が変わるのか楽しみにしていた。 買い物に出かけたのは、発売日の翌日にあたる11月21日。にも関わらず、近所のビデオレンタル店はおろか、東京・新宿の大手量販店、レコード店でも入手できない。 確かに、1,500円、2,500円といった廉価な再販キャンペーンが当たり前の現在、4,700円で特典もなしというマニアックなシリーズを、一部ファンのために大量入荷している店は少ないだろう。いくつかの店では、SUPERBITシリーズの存在自体を店員が知らなかった。 結局、新宿のヨドバシカメラ グッドギア東口店で購入。マニアックな新作を比較的入手しやすい場所として知られているが、今回も目当ての品を得ることができた。
■ 明らかに画質は向上している!! SUPERBIT版「ドラキュラ」のパッケージは、クリアカラーのトールケースで、表面と裏面の一部を切り抜いた紙箱に収まっている。紙箱のデザインはシリーズ共通で、くり抜かれた部分から、各タイトルのジャケット(従来版ジャケットの縮小のようだ)が覗く、という仕掛け。中のトールケースは従来版と同じか? と思いきや、ジャケットも白を基調としたSUPERBIT仕様に改められていた。 ディスクのレーベル面は金色で、梨地風の表面処理が施されている。高級感はあるが、レーベルのプリント文字が薄いので、プレーヤーにかける際、一瞬どちらが記録面でどちらがレーベル面か迷ってしまった。 封入されているパンフレット類は少ない。作品そのものに関連するのは、1枚のチャプタリストだけだ。それによると、従来版のチャプタ数52に対し、SUPERBIT版では28に減少している。そのほかは、「What's SUPERBIT」とのタイトルが付いたSUPERBITシリーズの解説、新盤紹介、アンケートハガキだけ。映像特典だけでなく、封入品までもが徹底的に削られているらしい。あくまでも「本編の品質で勝負する」との意気込みが感じられるものの、作品に思い入れのある身ににとっては、多少寂しさを覚えたのも確かだ。 従来版との仕様の違いは下表を見ていただきたい。確かに、平均ビットレートはおよそ2倍の7.85Mbpsを記録している。映像特典を省くのもSUPERBITの売りだが、本タイトルに関しては、従来版、SUPERBIT版とも特典はなし。つまり、平均ビットレートの差は、片面1層を片面2層にしたことによるものだろう。なお表中の平均ビットレートは、DVD Bit Rate Viewer Ver.1.4を用いて計測している。
映像のクォリティだが、思えば従来版とて、片面1層の割にはかなりの高画質ディスクだった。今回、平均4.23Mbpsというビットレートを見て、改めて感心した。しかし、片面2層の容量を得たSUPERBIT版は、大きくブラッシュアップされていた。輪郭の描写、暗部の階調性が目に見えて強化されており、今風のハイビットディスクに生まれ変わっている。 例えば、キアヌ・リーブスがトランシルバニアへ向かう汽車の中やドラキュラ城の地下室では、これまで見えなかった細かいデコレーションが良く見える。また、従来版では幾分べたっと感じられたゲイリー・オールドマンの赤いローブや、ウィノナ・ライダーの緑のドレスが、生地が変わったのかと思うほど豊かな階調になり、刺繍や服のひだ、体の線までもがはっきりと確認できた。 全体的な色調は従来版の印象とほぼ同じだが、劇場で見た記憶と同じなので、個人的にはこれがベストだと感じる。また、黒側の階調が滑らかになったせいか、コントラストが若干変化しているように見えるシーンもある。クローズアップなどは、輪郭が力強くなったせいか、コントラストが高まり、抜けがよくなったと感じる場面もあった。
もちろん、音質も変化している。特にDTSでは、微弱音による臨場感が増した。このタイトルで多いのは、怪しげなささやき声が四方から聞こえてくる場面。このささやき声が、DTSだとより近いところから包囲されているように聞こえる。慣れないうちはちょっと怖かった。
■ BigBuyなら2,500円……しかし、AVファンなら試すべし!! 問題は価格だろう。折りしも、SPEの再販キャンペーン「BigBuyキャンペーン 第1弾」で、ドラキュラが2,500円で販売されている。出荷期間は10月31日で終了しているが、店舗によってはまだ購入できるようだ。とりあえず2,500円の方を購入後、気に入ったらSUPERBIT版を求めるという手もあるが、AVファンならSUPERBITにぜひ挑戦してほしい。 もっとも、従来版とSUPERBIT版の両方を購入するのが真のDVDマニアなのだろう。当連載の都合で、同じタイトル、同じシーケンスを見比べたが、これが結構面白い体験だった。我ながら後ろ向きな楽しみだと思うが、作業を通じて、改めてAV機器やソフト技術の奥深さを確認できた。「グリーン・デスティニー」など、気に入っているタイトルについては、すべてSUPERBITに切り替えていこうと思う。
□SPEのホームページ (2002年11月26日) [AV Watch編集部/orimoto@impress.co.jp]
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