東芝の「液晶“FACE”ワイヤレス」は、映像をMPEG-2に変換し、IEEE 802.11bで無線伝送するワイヤレス液晶テレビ。オプションでワイヤレス化するシャープ、アイワの製品とは異なり、ワイヤレス伝送ユニットを標準で装備するのも特徴。ラインナップは20V型と14V型の2種類で、実勢価格はそれぞれ23万円前後、16万円前後となっている。今回はこのうち、20V型の「20LF10」を試用した。 製品構成は、ディスプレイ部と、地上波チューナおよび送信部の「ワイヤレスステーション」とに別れたセパレートタイプ。ディスプレイ部に映像ケーブルを接続する必要がないため、ベランダなどアンテナ線の引き込みがない場所や、1階にワイヤレスステーション、2階にディスプレイといった設置も考えられる。 加えて、液晶テレビだけに筐体が薄く、総じて設置の自由度は高い。また、本体が約6.4kgと軽い上、ディスプレイ後ろにキャリングハンドルを装備するのも特徴。20V型と比較的大きな画面サイズのため、「さすがに片手では持ち上がらないだろうと」と試してみたら、あっさり持ち上がった。大画面と可搬性のバランスを考えると、ワイヤレス液晶テレビでは20V型程度がぎりぎりの大きさなのかもしれない。
ディスプレイパネルの解像度は640×480ドット。松下電器製の液晶AI搭載機と同等の応答速度16msを実現し、業界トップクラスとしている。また、上下左右160度と、たいていのリビングでは十分な視野角を確保。輝度も業界最高の450cd/m2で、最高輝度時の明るさは、液晶テレビとしてはかなり明るく感じた。 映像入力は、ワイヤレスステーションに2系統(ビデオ1、ビデオ2)、ディスプレイ部に1系統(ビデオ3)を搭載。映像端子はいずれもS映像/コンポジット。なお、ディスプレイ部のビデオ3は、ワイヤレスステーションを介さない入力系統となっている。このため、ビデオ3を使うことでMPEG-2圧縮のない、ディスプレイ本来の画質を確認することができる。
■ 画質 伝送レートは3段階で、ビットレートは「画質3」が6Mbps、「画質2」が4.5Mbps、「画質1」が4Mbps。切り替えはワイヤレスステーションで行なう。最大ビットレートの画質3の場合、ワイヤレスステーションからの映像を映すのに10秒ほどかかった。今回はディスプレイとワイヤレスステーションを30mほど離して設置したが、各ビットレートとも映像取得後は目立ったコマ落ちもなく、滑らかに表示された。 プリセットの画質モードとして、「あざやか」、「標準」、「映画」、「お好み」の4種類が用意されている。このうち「お好み」がユーザー設定。「あざやか」と「標準」は、店頭で良く見かけるギラつき気味の調整で、輪郭に不必要な太い線が出るなど、本格的な映像観賞用には向かない。液晶ディスプレイにありがちな輪郭のくずれも目立つ。しかし、「お好み」でユニカラー(コントラスト)、色の濃さ、画質(シャープネス)を下げることで、階調が豊かになり、輪郭も落ち着いた。ユーザーが調整を重ねることで、絶対輝度は下がるものの、DVDビデオなどの表示にも耐えられるポテンシャルは持っている。 液晶特有の残像ぶれについては、画面全体が動くシーンでもほとんど確認できなかった。また、調整次第では黒浮きや白とびも抑えることができる。液晶テレビの弱点が、ここ1年ほどで徐々に改善されているのがわかる。 ワイヤレスステーションを経由した映像は、伝送レートが低くなるごとにモスキートノイズとブロックノイズが多くなる。とはいえ、最もビットレートの高い6Mbps(画質3)なら、平坦な部分だけにブロックノイズを感じる程度。直接入力のビデオ3に比べると劣るとはいえ、十分実用的な画質だと感じた。静止画のサンプルを下に掲載したが、一時停止した状態では、直接入力(ビデオ3)とワイヤレスであまり違いが感じられない。
■ まとめ
残像ぶれの少ないディスプレイ、実売23万円前後の価格、ワイヤレスを生かせる可搬性などは、大型のハイビジョンモデルにはない魅力。キッチンなど設置スペースが小さい場合は、14型の「14LF10」という選択肢もある。
□東芝のホームページ (2002年12月9日) [AV Watch編集部/orimoto@impress.co.jp]
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